我が友、スミス の商品レビュー
前代未聞の筋トレ小説。題材が興味深いこともあり気になっていた。読んでビックリ、ハードボイルド溢れる内容。主人公の造形が良くて、自己肯定感は低いのに読んでいて嫌な感情にならない。少し引いた目線で文章が書かれているので逆にカッコよく映ったのが原因か。加えて独特のツッコミワードなどユー...
前代未聞の筋トレ小説。題材が興味深いこともあり気になっていた。読んでビックリ、ハードボイルド溢れる内容。主人公の造形が良くて、自己肯定感は低いのに読んでいて嫌な感情にならない。少し引いた目線で文章が書かれているので逆にカッコよく映ったのが原因か。加えて独特のツッコミワードなどユーモアのセンスが自分にはバチっとはまって、笑えて仕方なかった(個人差あります)物語は筋トレ趣味の主人公がボディビルの大会に出る、というものなのだが、「別の生き物になる」というある意味普遍のテーマがそこにあった気がする。
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筋肉とトレーニングのストイックな向き合いが淡々とつづられるだけでこんなに「自我の物語」になるんだと新鮮な気持ちになりました。実はよくわかっていなかったボディビルダーの心の内ものぞかせてもらったような気がします。(たぶん、主人公の母親みたいな目線で彼らを見ていたように思います。)そ...
筋肉とトレーニングのストイックな向き合いが淡々とつづられるだけでこんなに「自我の物語」になるんだと新鮮な気持ちになりました。実はよくわかっていなかったボディビルダーの心の内ものぞかせてもらったような気がします。(たぶん、主人公の母親みたいな目線で彼らを見ていたように思います。)その「自我の物語」が俄然ドラマチックになっていくのは大会出場することになるあたりから。自分の筋肉だけの満足の世界から、自分の筋肉が人からどう評価されるか、という基準が入ったことで、筋肉以外に、衣装、髪型、脱毛、ポージング、そしてメンタル…テーマがいきなり拡がります。SNSって領域も拾っているし。そのすべては社会の基準にどう合わせるか、というジェンダーのテーマと被ってきます。読み進むうちに筋肉小説というより女子小説に思えてきました。O島(最初、男性だと思ってました…認識のアンカーですよね。)、E島、T井、そしてS子も、みんな応援したくなりました。女子小説ってのも限定しすぎかな…2022年のビルディングスロマンは筋肉女子によって成し遂げられた、って感じ。それが単なる成長ではなく、個の確立って終わり方も、今っぽいかな。
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20代後半の女性がジムで鍛え始め、ハマりにハマり、周囲との縁もあってボディビルのコンテストに出るまでになる。そのストイックな筋トレや減量と、大会に出るが故に必要な大ぶりのピアス、12センチのハイヒール、脱毛、タンニングやピーリングといった見せる技術や女性らしさという未知なる世界を...
20代後半の女性がジムで鍛え始め、ハマりにハマり、周囲との縁もあってボディビルのコンテストに出るまでになる。そのストイックな筋トレや減量と、大会に出るが故に必要な大ぶりのピアス、12センチのハイヒール、脱毛、タンニングやピーリングといった見せる技術や女性らしさという未知なる世界を主人公はこなしていく。それは、彼女の「別の生き物になりたい」という心の声とシンクロしていく。 大会に向けた緊張感の高まり、大会での思わぬ出来事、大会後の彼女の変化、どれをとっても文学作品として見事に昇華されているように思う。芥川賞に選ばれなかったのが残念。
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筋トレに励み、哲学する姿がカッコいい。 自分の筋肉のことばかり考え、黙々とトレーニングに燃える主人公が熱い。 他者に評価される競技としてのボディビルと、純粋に筋トレに励みたい主人公の間の葛藤が描かれている。そうだよなと、自分のための筋肉だし、筋トレだよなと突き進んでいく主人公が爽...
筋トレに励み、哲学する姿がカッコいい。 自分の筋肉のことばかり考え、黙々とトレーニングに燃える主人公が熱い。 他者に評価される競技としてのボディビルと、純粋に筋トレに励みたい主人公の間の葛藤が描かれている。そうだよなと、自分のための筋肉だし、筋トレだよなと突き進んでいく主人公が爽快で、めちゃめちゃ応援してしまう。
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ジムの独特の世界観とマシンに向き合いつつも、その独特の世界からそっと逸脱する主人公の孤独な戦いがとてもおもしろい。
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読書備忘録660号。 ★★★★★。 挑発的なタイトル! スミス。すなわちスミス・マシンです。 少なくとも週一で、ジムのフリーウェイトゾーンで翌日の筋肉痛をワクワク想像しながら、ウェイトトレーニングをしてる私のツボにハマる内容でした。笑 ただ、この小説を単なる女子BB(ボディー・ビルダー)が筋トレする小説と浅く捉えてしまうと、★ひとつとかに評価する人も出てくる。 この物語はそんなに浅くない。 外見として地味なU野。 毎日、Gジムに通いウェイトトレーニングを黙々とこなす。トレーニング後のプロテインが身体に染みていく快感。翌日に残る筋肉痛。 どうやら、鍛え上げられた肉体を持つことで、地味な会社員とは別の自分を作り上げたいという漠然とした願望があるのだろう。 そんなU野に、GジムのトレーナーであるO島から、自分が経営するパーソナルジムのNジムへの移籍と、BB大会への出場を勧められ、本格的なトレーニングと食事管理を始める。 しかし女子BBの世界は、どこまでも古い価値観としての女性らしさが求められた・・・。 美容、ファッション、ポージングなど。 そして職場の同僚は、彼氏が出来たのか?と訝しがり、女子は大変だとレッテルをはり、母親からは女がムキムキなんてと不気味がられ・・・。 そして、筋肉量を極限まで太らせ、大会に向けて表面の脂肪を落とし、体脂肪率12%くらいまで持っていき、血管を浮き出させ、12cmのピンヒールを履いて迎えた大会。 U野は、運もあり決勝の舞台へ。 そして気づく。U野がとった行動は! 同性、異性からのジェンダー論の中でもがき、それをウェイトの重さにぶつけ、不器用に生きるアラサー女子。 女子だけではなく、男子も生きにくい世の中。それをダンベル、バーベル、サイタマン・スクワット(笑)にぶつけた由緒正しい文学です! とにかくユーモアにあふれた文体で、読みながらマスクの下は自然と笑ってしまっている。 数々の筋トレ格言が俊逸。 さらに、PP(パーフェクト・プロポーション)大会に挑む脇役S子がまた素晴らしい! 扉絵も完璧。
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ステージという言葉をじんせいと読み間違えてしまった。 久しぶりに小説を面白い!と思い嬉しかった。 なんでも話せる友達もできていない、心許せる恋人もいない、家族との関係もちょっと微妙で、それでも別にあんまり気にしてなさそうで、それをユーモラスに表現できる自分でいられるのが羨ましい...
ステージという言葉をじんせいと読み間違えてしまった。 久しぶりに小説を面白い!と思い嬉しかった。 なんでも話せる友達もできていない、心許せる恋人もいない、家族との関係もちょっと微妙で、それでも別にあんまり気にしてなさそうで、それをユーモラスに表現できる自分でいられるのが羨ましい。 ボディビルの世界も未知だったから興味深く読めた。 筋トレにハマり、大会を目指すのだが、なんだか自分が気にしてなかった女らしさやら、他人の眼やらがチラチラし出して… そして次のステージなのである。 人生と読み間違えてもいいでしょう? スミスが友達なんだから。 私だって筋トレはしないけど本が友達なんだもん
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ボディビルあるあるや、競技への取り組みが初耳で興味深かった。 ボディビルの大会で女らしさを求められるってほんとなんなん?って感じ。 「見た目が整うと周囲の態度が変わる(舐められなくなる)」も目から鱗。
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いやー、面白かった。ほんとによかった。それでも、30年前よりは生きやすくなったところもあるよ。すくなくともこういう小説が読めるだけでも。ヒロインが、まあ、ほんとに、かっこいい。
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自分じゃない誰かに俺もなりたい。でも勇気がなくて変われない。全部考え過ぎてしまう。結局今日も何もしなかった。いつか変わる、絶対に。
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