謎の独立国家ソマリランド の商品レビュー

高野秀行(著者)

2021/05/23

政治的な細かいところも多いが、全体的には軽いタッチで読みやすい。
本当に新しい世界をみれたというか、密着しているだけあって風習や住民のニュアンスなどがありありと描かれていて面白かった。

2021/05/14

作者の著書では一、二を争う読み応えのある一冊。国際社会において理解されてないソマリアという国の実態をここまで克明に明かした本はないのではないか。続編の恋するソマリアも含めて、ぜひ読んでほしい。

2021/05/05

わたしは地理が好きで、ソマリアという国もその首都がモガディシオ(本作中の表記は「モガディショ」)であることも知っていたが、あくまでも地図からわかる表面的な智識しか持ち合わせておらず、ソマリアが分裂状態にあることも、本作のおもな舞台である「ソマリランド」の存在も知らなかった。そういう世界のことを知ることができるだけでも本作は興味深いが、しかし内戦状態にあって政府が事実上崩壊しているような国ならばほかにもある。ソマリランドが真にユニークなのは、そのような状況にありながらも、なんとか「平和」を維持しているところである。本作はその背景などを考察しつつ、著者がじっさいに訪れることによってその「国」としての実態をあきらかにしている。ソマリランドを語るうえで欠かせないキイワードが「氏族」で、本作中では源平や戦国武将に譬えているが、とにかく氏族社会であることから現在のような独特の状況が生じている。本書を読んで思ったのは、氏族には氏族の論理があるということで、じっさいにそれによって曲がりなりにも民主主義が実現し、平和も保たれている。国際社会がある国を援助する場合、とかく押しつけになってしまいがちであるが、このように氏族の論理が存在することをまず認識しなければならないだろう。本書はそういった国際支援のありかたについても問題提起的であるという読みかたもできるという点で、文学賞を複数受賞している点にも頷けるのである。

2021/05/05

ソマリアというアフリカの分断国家について、ものすごく詳細に書かれているマニアックな本。
辞書みたいに分厚い…

情報の少ない未知の国家や紛争地域に、行けば分かると言いながら、踏み込み、現地人にアプローチしていく筆者の度胸がスゴい。マニアックな所を取材するのには莫大な金を要するらしい。
ミャンマーではアヘン中毒になった筆者は、ここではカート中毒になっていて、そのような嗜好品は現地に溶け込む有効なツールのようだ。

2021/03/27

めちゃめちゃ勉強になります。
単純に読み物としても面白いし、ソマリ人の文化についてもよくわかります。出てくるキャラクターも魅力的。
複雑なソマリの氏族争いも独自の工夫でわかりやすく説明してくれています。
著者のソマリ愛がすごくて、読み終わる頃には自分もソマリ人に愛着がわいていました。すごい文才！
命がけの取材で、現地では苦労も多かったはずなのに、ライトなタッチで書かれているのでどんどん読み進められました。
『バッタを倒しにアフリカへ』を読んだときも思ったのですが、目的→実験→考察の繰り返しがシンプルなのに見事で、学生のときにこの本に出会えていればレポートの質も上がっただろうなあ…と思わずにはいられませんでした。

2020/11/20

氏族制度が伝統的に受け継がれてきた文化に、最も適した政治システムを生み出し、運用している様子は、政治のあり方として日本よりも優れているように映る。世界は広く、人間の営みは幅広く、自分の世界観は狭いことに気づく。

2020/09/08

ソマリアに興味を持ったのは映画「ブラックホークダウン」だった。高野さんのソマリランド、プントランド、ソマリアの滞在記。イスラム教の国で遊牧民の国。ルールも掟も違いすぎて、相互理解は難しそうだと思ったが、高野さんの郷に入りては郷に従うスタイルで謎の国の正体が少しずつ明かされていく。「国際社会が無視していたから和平と民主主義を実現できた」は現地ガイドの言葉だが、本当にその通りなんだな。争いの絶えない国ではあるが、その中でもそれなりの筋は通しているのが興味深い。

2020/08/30

2020.8.29 82
ひっじょーによかった。
高野さんの文章好きだ。
自分で見た上で判断するする。
ソマリ人の生き方いいなあ。主張をしっかりする。爆速でききる。カートもやってみたい笑

2020/08/23

内戦のイメージしかなかった（まさに北斗の拳）ソマリア近辺のイメージがガラッと変わって、むしろ、モガディジョですら行ってみたくなるくらいの衝撃。
ただ、独立に至るまでの歴史云々については、分かりやすくはまとめてくれてるとはいえ、ページ数の限界なのか、歴史の教科書読んでるみたいで、やや退屈。

2020/07/09

大変な情報量でなかなか頭が追い付かなかったが抜群に面白かった。氏族制は初めて出会った概念だし、海賊を実施する場合の見積もりのエピソードでは笑いました。