謎の独立国家ソマリランド の商品レビュー

高野秀行(著者)

2022/09/07

高野さんの現地への染まりっぷりは、今回も健在。ミャンマーではアヘン、ソマリランドではカート。タブーってもんがない。最終的には手前勝手で言いたいことだけさっさと言って会話を終わらせるというソマリ人気質さえ身につけてしまう。さすが。
とはいえ、やっぱりソマリの人たちに翻弄される様子に笑わされつつ、国家ってなんだろう？民主的ってどういうことだろう？最後にはそんなディープな問いさえ自分の中に湧き起こってくる名著。

乱立するバーチャル国家(吉里吉里国かと思いました)、木陰で長老たちが話し合って紛争解決、基幹産業としての海賊。もう訳がわからない。
けれど、その中身をひとつひとつ見ていくととても筋が通っていて、なるほど、そりゃそうなるよね、の連続だった。
海賊産業が無くならない理由に踏み込むところも面白かったけれど、やっぱりソマリランドの民主主義の洗練具合に驚かされる。自分たちで守れるルールを自分たちで手作りして、壊さないように頑張る、という原則がこんなに丁寧に守られている国があるとは！なんでもお任せの日本とはえらい違い。なんたって、ソマリランドの人たちは自分たちの戦争を自力解決している。そこからして胆力が違う。
民主主義も、平和も簡単に失われてしまうもの。その自覚がソマリランドを国として成り立たせているのだと思った。

終盤、高野さんを見れば金をむしるばかりと思っていたソマリランドの人たちが、一転、高野さんのために人肌脱ぐ場面に、ほろりときた。
「サーヒーブ(友よ)、俺たちはもうそういう段階を過ぎたよ」

2022/08/28

高野秀行の秘境国探検の傑作本。

一般の人には、ソマリランドという国家があることも知らないし、
自分も知らなかった。
その東アフリカのソマリランドの近隣がヤバイ。
謎の海賊国家プルトランド。そして、リアル北斗の拳、戦国モガディショ。

この本の主の目的である、ソマリランドの住人達のことを
著者は可笑しく紹介する。
国のあり方、特に氏族のことを分かり易くするため、著者は
日本の戦国時代の武将名を付けて分かり易くしている。
例えば、バーレ清盛、イサック義経、とか、色々でてくる。

この本を読むことでソマリ族のこと、歴史等を知る機会になって欲しい。

2022/05/21

公共政策などの提言をデータサイエンスや経済学、テクノロジーの観点からされている成田悠輔さんが「法定通貨による市場経済と法律やマクロ経済政策などの国家による管理はそろそろ統合できるかも」と考えてそれを実現する手段に「独立国家が早いのでは」と考えているみたい。なかなかチャレンジングな発想だが、ルネサンス期にまさにそのような発想からより大きな自由と経済的利益を求めて都市国家が乱立した。

ということで、独立国家という発想について調べたくて「読みたい」リストに入れたけどまだ読んでません。

2023/07/29

アフリカの角、ソマリア内に存在するソマリランドの、ユーモア・驚き・発見に満ちた骨太ルポルタージュ。
文庫版で600ページに迫るほど分厚い本だが、生き生きと描かれる登場人物と、ユーモアを交えて描かれる未知の世界に惹き込まれて、一気に読めてしまう

2022/01/09

とても面白いです。ソマリランドの実情からは、社会構造の新たな可能性が感じられます。氏族という日本人にはなかなか理解しづらいものを、丁寧に解説しています。おすすめです。

冒頭に写真が数ページにわたってありますが、実際にその場所に行ったことのない限り、読んでる際になかなか風景などをイメージしづらかったです。なのでグーグルマップなどを活用するのもいいかもしれません。海外の旅youtuberのIndigo Travellerさんがソマリランドの動画を出していたので、それを参照してみるとイメージを掴みやすいですよ。

2021/10/15

2021.78
・氏族を基盤としたハイパー民主主義
・国連が介入しなかったからこそ、平和でいれた
・国際社会に認められるために、規定路線と違う国づくり

2021/10/10

常にお金の心配をしながら、読み進めていた。日本と金銭感覚も道徳も違っていて、生きている世界が違うと感じた。

2021/09/29

ケニアからそう遠くない場所にある、国連未承認国家ソマリランドの内情に深く迫った一冊。外国人が誰も知らない政治文化の中枢に切り込んでいく冒険の術と気概が凄まじい。読書を進めていくうちに、自分も覚醒植物で酔っていく感覚になるから不思議だ。

2021/08/01

ソマリ民族を現地で取材した本。
ソマリアと言えば、ソマリア沖・海賊、の言葉しか知らないので、野蛮で発展途上のアフリカの国、と思っていた。しかし本書を読むと、その土地に住む方々の考え方や論理に触れることができ、文化や慣習も相当洗練されていると理解できる。

●勉強になった所
　ソマリを理解するにはニュースには出ないが、“氏族”が重要とのこと。ソマリは遊牧民族で一期一会のため、牽制力がなければ幾らでもタカってくる。しかし氏族に属すれば、集団的自衛力を得られるため、ソマリ人は男女年齢を問わず、大小に規模が異なるいづれかの氏族に必ず属している。そしてソマリで戦争が止まないのは、この氏族同士の利権抗争のためとのこと。
　作中で筆者は、テレビ会社や政府機関の方々の輪に入り、その文化を観察していたが、これら近代的な枠組みの中でも、“氏族”的な考え方や仕組みが整備され、結果として優れた運営成果を発揮している点が興味深かった。
　国内で意識することは難しいが、民族ごと（国ごと）に考え方は独特で相互に異なる。全人類で最も優れた仕組み、というものは存在しない。なので、日本で暮らし発展する上では、ムラ社会の考えの色が濃い日本民族の特性にあった運営ルールが有効なのだと認識できた。

2021/07/26

もともとソマリアにある程度興味はあったが、気になっていたところがたくさん書かれていて、充実感でいっぱい！
内容と文章どちらも好き！