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謎の独立国家ソマリランド の商品レビュー

4.4

77件のお客様レビュー

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2017/08/20

 内戦の末に国内が大混乱に陥った失敗国家ソマリア。  という先入観があったのだが、この国はいったい何なんだ。  自治政府を名乗る民主主義国家ソマリランド。  独自の通貨を発行(しかも印刷はイギリス)し、通貨は周辺国よりも強い。  長老会と政党政治による民主主義は、どこかの国の衆...

 内戦の末に国内が大混乱に陥った失敗国家ソマリア。  という先入観があったのだが、この国はいったい何なんだ。  自治政府を名乗る民主主義国家ソマリランド。  独自の通貨を発行(しかも印刷はイギリス)し、通貨は周辺国よりも強い。  長老会と政党政治による民主主義は、どこかの国の衆愚制よりも優れている。  エチオピアと港湾都市からの関税以外に産業は全くないのに、首都ハルゲイサは活気がある。  そして東に位置するのが海賊国家を称するプントランド。  海賊行為による収入が莫大なんだから取り締まる人間がいるわけがない。  その海賊行為はスマートで、全ては金で動く。  海賊はONE PIECE的なロマンではなく、ビジネスである。  そして首都モガディショを含む南部ソマリアは北斗の拳状態の戦乱が続いているのに、人はなぜか笑顔で落ち着いている。  ホテルの外から銃声が聞こえてきても「ソマリアン・ミュージック」だと気にしない。  昨日また死体が転がってたよ、は挨拶代わりの日常生活の一部だ。  さらに南部ではイスラム主義の過激派組織アル・シャバーブが跋扈している。  この混乱の中で生まれた民主主義は何なのか。  ブラックホーク・ダウン。大国が関わるとろくなことが無い。

Posted byブクログ

2017/08/15

お盆で読み切ったーーーー!!!!!! 文庫化したら絶対読もうって決めてました、分厚さに怯んだけど高野さんなら読めると確信して読み終えました。 高野さんはすごいよね、どこへ行ったってどこにいたってぜったいにぶれない、自分の目で見たことが事実。だから絶対的に面白い。説教臭さなんて欠...

お盆で読み切ったーーーー!!!!!! 文庫化したら絶対読もうって決めてました、分厚さに怯んだけど高野さんなら読めると確信して読み終えました。 高野さんはすごいよね、どこへ行ったってどこにいたってぜったいにぶれない、自分の目で見たことが事実。だから絶対的に面白い。説教臭さなんて欠片もなく、ただただ高野さんが見たこと感じたことを面白おかしく時に真剣な言葉で伝えてくれている、何より高野さんという人柄にほだされてしまう。 高野さんに連れられて私たちもあっという間にソマリランドに夢中になる、ソマリ人が近くに感じられる、こんなノンフィクション作家いないよ。ソマリランドの人たちは自分たちの国のことを真剣に考え議論し行動して幾度も戦闘を乗り越えソマリランドを作った。私たち日本人なんて彼らの足元にも及ばない。この国では誰も自分の国のことについて真剣に語ったり怒ったりしない。それって異常なことだし、何ていうか、国としてけっこう絶望的なことなんだよね。 だからこそソマリの人たちが生き生きと見えるんだろうし、高野さんがソマリ人化していくのだって頷ける。いそいそと大黒屋からワイヤッブに送金する姿だって最高にいい。高野さんがソマリのみんなに愛されていく姿を想像して嬉しくなる。ほんと、こんな人いないよ。 恋するソマリアも絶対に読みます! そして頭が足りなくて分からないこともあったけど、高野さんの本、引き続き読み続けるよ!!

Posted byブクログ

2017/07/13

高野秀行『謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』集英社文庫。 以前から気になっていた本がやっと文庫化。ソマリランドとプントランド、ソマリアという謎に満ちた国々を巡る紀行ノンフィクション。かなりの労作だと思うが、自分自身が高野秀行とは波長が合わな...

高野秀行『謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』集英社文庫。 以前から気になっていた本がやっと文庫化。ソマリランドとプントランド、ソマリアという謎に満ちた国々を巡る紀行ノンフィクション。かなりの労作だと思うが、自分自身が高野秀行とは波長が合わないためか、面白いとは思わなかった。 これまでに何冊か高野秀行の作品を読んでいるが、唯一面白かったのは『未来国家ブータン』のみ。 興味深いテーマの作品を手掛けているのに、面白いと思わないのは何故かと考えてみると、文章が肌に合わないのだ。昭和軽薄体と呼ばれた椎名誠の文章に似ていながら、椎名誠のようにデフォルメして面白可笑しい表現がなく、ついつい流して読んでしまうのだ。 高野秀行の熱烈なファンには申し訳ないが、自分にとっては金と時間の無駄だった。

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2017/07/06

単行本の頃から気にはなってて、文庫化に当たりいち早くゲット。自分の予備知識としては、ソマリアがアフリカにあるってことくらい。だから正直、細かいことを書かれてもチンプンカンプンだし、思ったより凄いボリュームに、読む前からちょっと不安な気持ちが… でもそれは全くの杞憂でした。氏族の関...

単行本の頃から気にはなってて、文庫化に当たりいち早くゲット。自分の予備知識としては、ソマリアがアフリカにあるってことくらい。だから正直、細かいことを書かれてもチンプンカンプンだし、思ったより凄いボリュームに、読む前からちょっと不安な気持ちが… でもそれは全くの杞憂でした。氏族の関係とかを詳しく知りたい人でも、分かりやすいように日本史に準えられているし、それ抜きで、”氏族とは”って部分だけでも十分楽しめる。周りからの干渉を受けず、独力でここまでの民主主義国家形成を成し遂げたのは、圧巻の一言。作者も書いてるけど、今の日本にこそ、ここから学ぶべきことが数多あると思える。形だけの二院制とか、一瞬で喝破されてるけど、国民個人が自分の所属する国家に対してよく考えているからこそ、見えてくることなんでしょうね。考えさせられることも多かったです。良書。

Posted byブクログ

2017/07/03

国際的には独立していると認められていない独立国家で平和なソマリランド、海賊で有名なプントランド、内戦中の南部ソマリアで成り立っているソマリア。氏族を日本の武将に例えて説明してあるので、判りやすかった。というか、カタカナの氏族名だけだときっと挫折していました。カート宴会でカート中毒...

国際的には独立していると認められていない独立国家で平和なソマリランド、海賊で有名なプントランド、内戦中の南部ソマリアで成り立っているソマリア。氏族を日本の武将に例えて説明してあるので、判りやすかった。というか、カタカナの氏族名だけだときっと挫折していました。カート宴会でカート中毒になったり、籠の中のカモネギ状態になりながらも現地の人の懐に飛び込み、やがてお友達まで作ってしまう高野さんの人間力に脱帽です。

Posted byブクログ

2017/07/02

 内乱や海賊といったワードとセットで海外ニュースで取り上げられることが多いソマリア。その国内に存在するという独立した平和国家「ソマリランド」。  その国を訪れた著者が、なぜ内乱の続くアフリカ諸国の中で、ソマリランドだけが独立国家として、平和を維持できているのか、について実際に見た...

 内乱や海賊といったワードとセットで海外ニュースで取り上げられることが多いソマリア。その国内に存在するという独立した平和国家「ソマリランド」。  その国を訪れた著者が、なぜ内乱の続くアフリカ諸国の中で、ソマリランドだけが独立国家として、平和を維持できているのか、について実際に見たり聞いたりした体験を通して分析していく。  もう、タイトルだけで面白いことが保証されているような本書だが、実際に講談社ノンフィクション賞も受賞していて、世間からの評価も高いようだ。  500ページ以上ある分厚い本ではあるが、最終章以外は、一気に読めてしまった。最終章についてはソマリランドの謎の解明という点では必要な章であることはわかるのだが、突然理屈っぽくなってしまったのが気になった。  とはいえ、著者の貴重な体験記録も併せて、最近読んだドキュメンタリー物としては、突出した出来の作品だと思う。

Posted byブクログ

2017/06/30

ノンフィクション作家の高野秀行氏によるソマリア紀行。 自分がソマリアと聞いて想像するのは、タンカーを襲う海賊が棲んでいるとか、部族同士の争いが絶えない地域とかなのだが、なんとソマリアの一部には民主主義国家が存在しているらしい。 一言でソマリアと言っても大まかには、南部ソマリア、...

ノンフィクション作家の高野秀行氏によるソマリア紀行。 自分がソマリアと聞いて想像するのは、タンカーを襲う海賊が棲んでいるとか、部族同士の争いが絶えない地域とかなのだが、なんとソマリアの一部には民主主義国家が存在しているらしい。 一言でソマリアと言っても大まかには、南部ソマリア、プントランド、ソマリランド、という3つの地域に分かれている。その中でも紛争が絶えないのは南部ソマリア、海賊が頻発しているのはプントランド、そして欧米にも勝る緻密な民主主義を実践しているのがソマリランドなのだ。 まずソマリアという地域を理解するには、「氏族」の複雑な関係を理解することが不可欠なのである。高野氏はこの難題の解説を日本の氏族や武将へ置き換えるという、非常に大胆で画期的ではあるが少々乱暴な手法で行っている。しかしこの手法で無ければ、次々に登場するアフリカ独特の固有名詞を覚え、氏族同士の相関関係を理解するのは不可能だったと思う。 高野氏は世界中のどこへ行っても、人の懐に入るのが非常に上手く、本作でもその才能を十分に発揮している。今回はカートと呼ばれる幻覚植物を地元の人々と食べて盛り上がるという、ある意味想像通りの手段で思わず笑ってしまった。続編の『恋するソマリア』もぜひ読んでみたい。

Posted byブクログ