慈雨 の商品レビュー
犯人を追い詰める緊迫感、永年の葛藤を克服することへの覚悟など、終盤に向けてさまざまな感情が交錯した後、しみじみとした余韻を味わえる。
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なかなか読み応えがあって、いい作品だと思います。それほど目新しいストーリーではありませんが、それぞれの登場人物の繋がりがしっかりと書き込まれていて、読んでいて心にぐっと来ます。神場夫妻や、幸知と緒方、鷲尾課長には幸せになってほしいなぁと思います。
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あらすじ 刑事を定年退職した神場は、妻と四国のお遍路に出かける。それは、過去におかした自分の罪を償うためであった。しかし、丁度神場の地元では、同じようえん罪な幼女殺人事件が起こり、過去の自演の事件について冤罪の可能性が出てきた。 主人公の警察人生とリンクさせるようにお遍路の旅は続く。一回で回ろうと思ったら1ヶ月以上もかかるんだな。お遍路しながら事件を解決するのが面白かった。ラストはどうなるんだろう。
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主人公の元刑事、神場の心の中には いつもいつも冷たくて悲しい雨が降り続いていたのだろう。 現役時代に関わった事件の被害者の慰霊と 自らの後悔と懺悔のため、四国巡礼の旅を続けても その雨は簡単に止んでくれることはなく、 正直であればあるだけ、善良であればあるほど 自らを責め続けてし...
主人公の元刑事、神場の心の中には いつもいつも冷たくて悲しい雨が降り続いていたのだろう。 現役時代に関わった事件の被害者の慰霊と 自らの後悔と懺悔のため、四国巡礼の旅を続けても その雨は簡単に止んでくれることはなく、 正直であればあるだけ、善良であればあるほど 自らを責め続けてしまう元刑事の姿が 痛々しいくらいに描かれる。 物語の最後に神場を包むように降った慈雨が上がったあとは 主人公の心に少しでも明るい光が差してほしいと願わずにいられないのでした。
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前作、「孤狼の血」は警察組織の中で犯罪と戦う熱い男たちを描いて傑作だったが…。 なんと今回、主人公は既に退職しておりお遍路の旅に出ている。このオープニングで意表を突かれたが、読み進めると、 現在進行の誘拐事件、そして主人公が退職後の遍路旅を選ぶことになった過去の事件、それらが少しずつ結びついていく。 ここらは想像できるが、遍路の進行と事件の捜査をする後輩との会話、アドバイスを通じて少しずつ再生していく主人公、そして成長していく若手刑事らが実に見事に描かれていて物語の世界に引き込まれる。 脇に配された人物も陰影が豊かでリアルに描きこまれていて、その思いは切なく涙を誘う。 本格警察ロードームービー(小説だけど…)という珍しい構成だけど、これまた傑作。 四国の美しい景色を背景に描けるので、前作より遥かに映画化に向いている。
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主人公は退職した刑事で、お遍路巡りをしながら、電話で事件のことを聞いて犯人探しに協力する。だらだらしていて読んでいてつまらない。とにかく主人公が嫌。なぜ全財産を投げ出さないといけないのか。
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初出は2014〜16年「小説すばる」 16年前の幼女誘拐殺人事件の受刑者が冤罪の可能性があるのに県警上層部の決定に逆らえなかったことを悔いている退職刑事が、妻と四国八十八個所巡礼の途上、ニュースで同様の事件が起きたことを知る。 彼の歩んで来た人生と抱えている重荷、刑事...
初出は2014〜16年「小説すばる」 16年前の幼女誘拐殺人事件の受刑者が冤罪の可能性があるのに県警上層部の決定に逆らえなかったことを悔いている退職刑事が、妻と四国八十八個所巡礼の途上、ニュースで同様の事件が起きたことを知る。 彼の歩んで来た人生と抱えている重荷、刑事魂の葛藤が描かれて、ついつい感情移入してしまう。そして彼の思いは人を動かしていく。語られることばかりでなく、散りばめられた脇のストーリーも無駄なく重みを持っている。 最後は涙腺決壊。十分に満足させられた警察小説だった。
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神場の駐在時代の夜長瀬でおきた事件がひどすぎる。裁判にまでついて書かれていないけど、節子さんがいったいどんな判決を受けたのか、そっちの方が気になってしまった。
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+++ 警察官を定年退職した神場智則は、妻の香代子とお遍路の旅に出た。42年の警察官人生を振り返る旅の途中で、神場は幼女殺害事件の発生を知り、動揺する。16年前、自らも捜査に加わり、犯人逮捕に至った事件と酷似していたのだ。神場の心に深い傷と悔恨を残した、あの事件に――。 かつての...
+++ 警察官を定年退職した神場智則は、妻の香代子とお遍路の旅に出た。42年の警察官人生を振り返る旅の途中で、神場は幼女殺害事件の発生を知り、動揺する。16年前、自らも捜査に加わり、犯人逮捕に至った事件と酷似していたのだ。神場の心に深い傷と悔恨を残した、あの事件に――。 かつての部下を通して捜査に関わり始めた神場は、消せない過去と向き合い始める。組織への忠誠、正義への信念……様々な思いの狭間で葛藤する元警察官が真実を追う、日本推理作家協会賞受賞作家渾身の長編ミステリー! +++ 定年退職したばかりの元刑事・神場智則が、遍路の旅で、これまで関わってきた事件と、それにまつわる様々な思いを見つめ直す物語なのだが、そればかりではなく、同行している妻や家族との来し方行く末を見つめる物語でもあり、趣き深い。一方、現実には過去に悔いを残す幼女殺害事件と酷似した事件が起きており、部下の刑事と連絡を取りつつ、捜査に協力してもいる。そしてそれは、とりもなおさず、過去の悔恨を暴き出すことでもあり、葛藤もあるのである。登場人物それぞれがそれぞれに誰かを思い、苦悩し、それでも深く信頼する姿に胸を打たれる。ただ、冤罪を疑われている服役囚に神場の思いが通じるとは思えず、それがいささかやり切れなくもある。静かな中にも心をざわめかせる一冊である。
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十六年の時を経て再び起こった幼女殺害事件。退職刑事のとある疑念と、過去の遺恨の物語。「死ぬまで刑事」という思いを持った彼らがとにかくかっこいい、重厚なミステリでした。 巡礼の旅と、その途中で会う人たちの物語も人情溢れるし、神場を巡る人間関係の物語にもじーんとさせられるものがありま...
十六年の時を経て再び起こった幼女殺害事件。退職刑事のとある疑念と、過去の遺恨の物語。「死ぬまで刑事」という思いを持った彼らがとにかくかっこいい、重厚なミステリでした。 巡礼の旅と、その途中で会う人たちの物語も人情溢れるし、神場を巡る人間関係の物語にもじーんとさせられるものがあります。だからこそ自らの苦悩と真正面から戦う神場を、誰もが支えたくなってしまうのですねえ。 事件の展開にもはらはらどきどき。頑張れ警察! と応援したくなります。たしかにさまざまな問題点を警察が抱えていたり、もしくは隠蔽したりしていることがあるにしても。こうして頑張っている捜査員たちの姿は、やはり勇姿です。
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