あとかた の商品レビュー
【2022年62冊目】 千早茜さんの綴る言葉や世界観がとても好きで、本作の短編集もじんわりと沁みるなと思いながら拝読しました。なんだか青い空気感を漂わせた話の数々。別々の話かと思ったら、細く細く繋がっているのも良かったです。
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短編。 婚約中に不倫していた相手が自殺したことを知り、生前一緒に行った旅行で焼き付いた思い。 自殺した上司が残した手形を思い出しながら、仕事と妻と幼い子供にいっぱいいっぱいになる俺。 夫や母にバイトと噓をついて子供を預けて、ゆびわを外して男に会いに行く私の気持ち。 中学生...
短編。 婚約中に不倫していた相手が自殺したことを知り、生前一緒に行った旅行で焼き付いた思い。 自殺した上司が残した手形を思い出しながら、仕事と妻と幼い子供にいっぱいいっぱいになる俺。 夫や母にバイトと噓をついて子供を預けて、ゆびわを外して男に会いに行く私の気持ち。 中学生のときに関係を持った男につけられた背中の痕を抱えたまま、ずっと孤立しているあたしと、一緒に住まわせてくれている同級生の松本の思いと二人の関係。 流産してしまった自分よりも世界の困っている人を優先させる恋人にたいする寂しさを隠しながら生きるわたし。 孤独が染みるねえ。生きるって大変。
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連作の短編集。 黒崎という男性と、婚約者がありながら関係を持つ女性。 黒崎の部下の男性。 部下の男性の妻と、若い男の恋。 その若い男の隣室に居候している女性。 居候させている、男性。 居候している女性が慕っている、フィドルを演奏する女性。 それぞれの視点で描かれる、愛。結婚。...
連作の短編集。 黒崎という男性と、婚約者がありながら関係を持つ女性。 黒崎の部下の男性。 部下の男性の妻と、若い男の恋。 その若い男の隣室に居候している女性。 居候させている、男性。 居候している女性が慕っている、フィドルを演奏する女性。 それぞれの視点で描かれる、愛。結婚。家庭。 もっと自分勝手でいいんだよと、この作品に言われているような気持ちになりました。少なくとも、恋愛においては。 それが自然で、且つ、素敵な事なんだと。 短編ごとにクオリティーにバラつきがあるのでこの評価ですが、読んでよかったと思います。 2014年9冊目。
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人は孤独で寂しがり屋で、繋がりたいのに、距離を置いて、時々突き放す。自分が傷つかないように立ち回ってみても、思いもよらぬところで誰かを傷つけて、傷つけられている。「自分」が何者かよく見失うし、誰かに委ねてしまいたい衝動にもかられる。それを、どこかでギリギリ保っている。そういう危う...
人は孤独で寂しがり屋で、繋がりたいのに、距離を置いて、時々突き放す。自分が傷つかないように立ち回ってみても、思いもよらぬところで誰かを傷つけて、傷つけられている。「自分」が何者かよく見失うし、誰かに委ねてしまいたい衝動にもかられる。それを、どこかでギリギリ保っている。そういう危うさが潜んでいる。自分を通過した人のことを思いながら、別の人を通過させる女のズルさ。無責任に、潔癖に、心理的に、物理的に縛る男もまたズルい。互いにそのズルさを許容した時に交わされる情というものは確かにあるのかもしれないと思った次第。
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久々にヒリヒリする恋愛ものを読んだ。当たり前だけど物語の中では主人公だけではなく他の登場人物達も、人からの影響を受けて同時並行的に変化していっているんだなと感じられた作品。
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かたちの無い愛を、かたちのあるものに残すことに焦点を当てた短編集。 この作品の登場人物はどれも繋がっている。生きている空間(距離)がとても近くて各々に関わりがある。 でもそれぞれの空間(世界)は一つ一つ全く違って独立している。それでも浮遊した愛はなんだか似た存在のように感じる。 ...
かたちの無い愛を、かたちのあるものに残すことに焦点を当てた短編集。 この作品の登場人物はどれも繋がっている。生きている空間(距離)がとても近くて各々に関わりがある。 でもそれぞれの空間(世界)は一つ一つ全く違って独立している。それでも浮遊した愛はなんだか似た存在のように感じる。 「ゆびわ」は特に鳥肌がたった話。
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各章の主人公の語りが、淡々としていてどこか他人事なのがどこか切ない。どの話もグレーがかった彼らの日常をみているようで、でも最後に少し色味がついておわるような印象を受けた。 彼らは皆孤独を感じているが見て見ぬふりをし、無意識のうちにその寂しさを埋めようともがいてる(その結果さらに無...
各章の主人公の語りが、淡々としていてどこか他人事なのがどこか切ない。どの話もグレーがかった彼らの日常をみているようで、でも最後に少し色味がついておわるような印象を受けた。 彼らは皆孤独を感じているが見て見ぬふりをし、無意識のうちにその寂しさを埋めようともがいてる(その結果さらに無力を感じる)。そして最後、自認するところで物語が終わっているようだ。フロム的に言うところの、人の孤立を克服したいと言う欲求の強さがよく描かれているか。 主人公たちが気づきを得るのは大体周りの人との会話だったが、特に印象に残ったセリフのメモ。 「望まれなかったから何もしませんでしたってのは、痛覚ないっていうから殴りました、と同じだ。人のせいにしてる。」 ちょっと飛びすぎな気もするが。他の人の感情は一生真の意味で知ることはできず、共感も優しさも結局尺度は自分、と考えると優しさは自己満足であって正解か。(考えは持ち越し)
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「あとかた」という言葉は、「あとかたもなく消える」というように「消える」という言葉をつれてくる。無ではなく消。消えてしまったあとに、存在していたことをまざまざと知らしめる、人と人との間には、そのような、かたちとして留まらない恋だとか愛だとかがある。 読んでいてそんなことを考えた。...
「あとかた」という言葉は、「あとかたもなく消える」というように「消える」という言葉をつれてくる。無ではなく消。消えてしまったあとに、存在していたことをまざまざと知らしめる、人と人との間には、そのような、かたちとして留まらない恋だとか愛だとかがある。 読んでいてそんなことを考えた。
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- ネタバレ
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よかった。 千早茜さんの本はなんとなく寂しくて好き。 こういう話を読みたかったのでなお満足。 連作短編集は、私の中でよくあるものになってしまって最近の気分は長編なのだが、この作品は一見繋がってると思わないような感じでよかった。
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連作短編集で、それぞれのお話がつながってる。 みんなそれぞれ心に傷や痛みを抱えてるんだけど、それさえも綺麗と思えるようなお話でした。
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