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美しいこと の商品レビュー

4

106件のお客様レビュー

  1. 5つ

    29

  2. 4つ

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  3. 3つ

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  4. 2つ

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2022/12/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2019年6冊目。 人を愛するってどういうことなのか。 無償の愛と呼ばれるような精神的な愛の場合、対象の性別を問われることはほとんどないのに、性的欲求が絡んだ途端、対象が同性であることはマイノリティになる。 寛末に拒絶され関係が壊れても想いを断ち切れない松岡と、恋人関係にありながら自分は寛末に愛されていないのではと不安がる葉山の、それぞれが恋をする気持ちは根本的に同じものだ。 なのになぜ、同性愛は受け入れられないのか。 その主題を、それこそ読者が苛立ちを覚えるほど丁寧に描き出したから、この人の小説は文芸として評価を得ている。 愛されたいと願う。 その願いから起こしたはずの行動が空回るたび自己嫌悪に陥る。それでも、誰かを愛しいと思うその気持ちは美しいこと。 江藤葉子に対する寛末の接し方と松岡や葉山に対する寛末の接し方の落差がありすぎて、最終的に私のなかでの寛末の人間的魅力はゼロになったので、もし寛末と松岡がうまくいったとしてもあっというまに破局するのではないかと思わなくもない。 そもそも松岡も寛末も福田も藤本も、ほとんどの登場人物がうんざりするほど自分勝手なのだけれど、まあ人間の本質なんてそんなものだよね。葉山にしても、事情を知らない人から見れば、イケメン同期に恋愛相談を持ちかけては人前で泣く面倒な女性だし。 conclusion──── 「お願いだから……」  声が震えた。 「俺が寛末さんを好きだってことを、逆手に取らないで……」  遮断機が降り、ガタンガタンと電車が行き過ぎる。「すみません」の謝罪は電車の音に掻き消された。  早く好きだと言って……握り締めてくる右手に、松岡は願いを込めた。自分だけを好きだと、ほかが目に入らないぐらい好きだと言って。こんな気持ちから、早く助けて……。 ─────────

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2018/09/11

人を好きになることでこんなにも傷つき合わなくてはいけないのかと、哀しさのような切なさがまとわりつきました。

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2018/01/05

本作『美しいこと』は、BL界で不動の人気を持つ木原音瀬(このはらなりせ)氏の代表作である。 正直に言おう、BLは苦手だ。 ヘテロセクシュアルの女性達が、ホモセクシュアル(バイセクシュアル)同士の営みを描いた漫画や小説を好む心理に違和感を感じている。 その昔、とある「腐女子」に当...

本作『美しいこと』は、BL界で不動の人気を持つ木原音瀬(このはらなりせ)氏の代表作である。 正直に言おう、BLは苦手だ。 ヘテロセクシュアルの女性達が、ホモセクシュアル(バイセクシュアル)同士の営みを描いた漫画や小説を好む心理に違和感を感じている。 その昔、とある「腐女子」に当時の彼氏を餌食にされ(笑)、そのデリカシーの無さが一層BLを撥ね付けさせた。 しかしBL界の芥川賞とも謳われた第二の代表作『箱の中』はその設定に惹かれ(平たく言えば獄中BL)、猛烈に読み進め、違和感無く読了した。 疑心暗鬼の心を解いたのは、その文章力だった。 続編の『檻の外』にも全く期待を裏切られず、寧ろとても良い読書体験となったのだ。 本作は、主人公が交際していた女性の洋服やメイク道具を拝借し、ストレス解消として始めた女装が、ひょんな事から出逢った男性と愛し合う切っ掛けとなる。 元々二人も、ヘテロセクシュアルだ。 紆余曲折を経た物語は結末を見せずに幕を閉じる。 「その後」は、読者の中に生きる二人に委ねられた。 最後までBLと言う要素が主張してこないにも関わらず、その分野の愛好家にも愛されるのが『箱の中』読了時と同様、不思議な点として残った。 多くのBL作品に漂う性的な危うさを排除しても、文芸として広い層に受容される。 大手の版元から文庫として出版されている事からも、彼女がBL界の風雲児である事が読み取れる。 本作も、紛う方なき文芸作品であるからこそ、BL界から反旗を翻してデビューする事が叶ったのだろう。 最新作『Love Cemetery』は、幼児性愛を取り扱う。 文芸界でも、もっと評価されるべきだろう。 <Impressive Sentences> 「お願いだから……」 声が震えた。 「俺が寛末さんを好きだってことを、逆手に取らないで……」

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2017/07/05

心底惚れた女が実は女装男子だと明かされて、距離を置こうとしたら逆に付きまとわれて…と中盤まではこれホラーかな…と若干寛末に同情しながら読んでいた。しかし、寛末への気持ちを忘れようと苦しむ松岡が切なくて、もどかしくて、最後にはちょっと泣いた。反対に、最後まで煮え切らない寛末にはモヤ...

心底惚れた女が実は女装男子だと明かされて、距離を置こうとしたら逆に付きまとわれて…と中盤まではこれホラーかな…と若干寛末に同情しながら読んでいた。しかし、寛末への気持ちを忘れようと苦しむ松岡が切なくて、もどかしくて、最後にはちょっと泣いた。反対に、最後まで煮え切らない寛末にはモヤモヤさせられたけど、ある意味リアルなのかも。ただ、葉山さんへの態度などを見ていると、優しいというよりただの優柔不断のだめ男のような気がして、この2人の幸せな未来のビジョンが見えてこなかった。タイトルの「美しいこと」ってなんだろう?寛末は果たして松岡の外面の美しさだけではなく、内面の美しさに目を向けてくれる男だろうか。

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2017/04/08

男が男を愛する。 それは世の中では少数派なのだろうが、完全に否定してしまうほど嫌悪感を抱くものではない。 たぶん身近にそういった例がないせいだろうけれど。 愛するという感情はとても不安定で身勝手で傲慢なものだ。 気持ちが高ぶっているときにはどんな言葉を口にしてもその時点では真実な...

男が男を愛する。 それは世の中では少数派なのだろうが、完全に否定してしまうほど嫌悪感を抱くものではない。 たぶん身近にそういった例がないせいだろうけれど。 愛するという感情はとても不安定で身勝手で傲慢なものだ。 気持ちが高ぶっているときにはどんな言葉を口にしてもその時点では真実なのだろう。 あくまでそのときの、そのときだけの真実なのだけれど。 最初は軽い気持ちで寛末と付き合っていた松岡の変化が切ない。 より多く好きになったほうが恋愛の駆け引きではどうしても分が悪くなる。 松岡の「好きだってことを、逆手に取らないで…」という言葉は寛末に本当に届いただろうか。 恋愛に限らず、何かを決断するときに誰かに委ねたほうが楽にきまっている。 失敗したときに誰かのせいに出来るからだ。 それがわかっているからこそ、松岡は寛末自身に決断してほしかったのだろう。 二人の未来に何が待っているのかはわからない。 でも、松岡の気持ちがどんな形であれきちんとした形で決着できればいいと思う。

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2017/04/07

性別を超えるくらい好きになってくれればいいのに、と望む松岡。 どんな姿であっても愛せる、という寛末の言葉を聞き、真実を打ち明ける。 裏切られたと苛立ちを隠せない松岡だが、寛末の反応は自然かと。性別を偽られていたら、やっぱり騙されていたと思ってしまう。 それでも、真実の愛の前に性別...

性別を超えるくらい好きになってくれればいいのに、と望む松岡。 どんな姿であっても愛せる、という寛末の言葉を聞き、真実を打ち明ける。 裏切られたと苛立ちを隠せない松岡だが、寛末の反応は自然かと。性別を偽られていたら、やっぱり騙されていたと思ってしまう。 それでも、真実の愛の前に性別って枷にしかならないのかもしれない、など考えさせられる一冊。叶わぬ愛の苦しみも伝わってくる。 不器用で鈍感で…純粋な寛末がたどり着く答えとは。

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2017/02/27

女装した自分を好きになった彼に男と告白し愛されていた女装の自分と愛されない男の自分という構造に苦しめられる松岡。 嫌われても尚愛してしまっている松岡、、切ない。

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2017/01/11

内容(「BOOK」データベースより) 別れた女の服を着て、夜の町を歩き男の視線を浴びる快感にはまった松岡。ある夜、行きずりの男に乱暴された松岡を救ったのは、会社の冴えない先輩・寛末だった。寛末の純粋な愛に惹かれた松岡は「女装」のまま逢瀬を重ね、告白を受ける。叶わぬ愛の苦しさと美し...

内容(「BOOK」データベースより) 別れた女の服を着て、夜の町を歩き男の視線を浴びる快感にはまった松岡。ある夜、行きずりの男に乱暴された松岡を救ったのは、会社の冴えない先輩・寛末だった。寛末の純粋な愛に惹かれた松岡は「女装」のまま逢瀬を重ね、告白を受ける。叶わぬ愛の苦しさと美しさを描き、舞台化もされた、木原音瀬の最高傑作。 いわゆるBLに属する小説のようですが、前回の箱の中がかなりよかったのでもう一冊読んでみました。露骨な性的描写はほとんど無くでプラトニックな恋愛です。自分に男色要素が無い為、主人公が女装を辞めた時点で自分としてのときめきは無くなりましたが、話はそれから先が本番。報われない思いに胸を焦がす姿は、昔制約の濃い時代の恋愛のもどかしさを現代に表現するにはBLが一番しっくり来るのかもしれないですね。

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2016/07/25

松岡が一途で気が遣えて素敵すぎた。 女装姿の江藤葉子として寛末と出逢って、恋に落ちてってところは凄く好きでした。 寛末さんが余りにも甲斐性無しで、なんだか読んでてモヤっとしてしまい、他にも良い人いるよ!って思いながら読んでました。 同性だからって理由で松岡を遠ざけた寛末は、...

松岡が一途で気が遣えて素敵すぎた。 女装姿の江藤葉子として寛末と出逢って、恋に落ちてってところは凄く好きでした。 寛末さんが余りにも甲斐性無しで、なんだか読んでてモヤっとしてしまい、他にも良い人いるよ!って思いながら読んでました。 同性だからって理由で松岡を遠ざけた寛末は、結局は女性のフリをしてた松岡の姿に惹かれた。でも松岡を振った後で知り合って付き合い出した松岡の同期である葉山に松岡の評価を聞いて、松岡の事が気になり出したって事は、結局はそこに寛末の気持ちはないような気がして。 その決断を、今後しっかり寛末が決めてくれる事を信じて☆は4つ。

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2020/08/21

前に読んだ作品は興味深かったが、今回はちょっと期待外れだった。主人公の心の内の描き方は上手いが、作品の進め方にどこと無く違和感や無理な所を感じた。 でも「俺が寛末さんを好きだってことを、逆手に取らないで...... 」のフレーズは切なくて綺麗だと思った。

Posted byブクログ