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箱の中 の商品レビュー

4.3

166件のお客様レビュー

  1. 5つ

    76

  2. 4つ

    61

  3. 3つ

    17

  4. 2つ

    3

  5. 1つ

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2013/08/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 愛を知らない、無垢な獣のような男が初めての恋に落ち、不器用に乱暴にひたすら一途にその想いを表現しようとして藻掻きあがいて愛しい相手に手を伸ばす。  スマートな王子様系男子も良いけど、こういう不器用獣系男子が最近の私の好物である。頑張って切なく苦悩する姿にキュンキュンする。  それが少女漫画的恋愛モノでも、BLでも同様に。  久しぶりに時間を忘れて一気に読んだ小説だった。  『箱の中』は、いわゆるBL――男同士の恋愛を描いた物語である。  舞台は刑務所。男子校、マフィア任侠と並んでBLにとってはもはや王道の舞台装置だ。  主人公・堂野崇文は、冤罪でとある刑務所に入る事になった平凡な元公務員である。普通に真面目に生きてきたのに突然痴漢の犯人にされ、やってもいない事を認める事は出来ないと裁判で戦った結果、執行猶予無しで前科がついた。  不幸極まりない、しかし取り立てて美男でも不細工でもなく強くも弱くもない、普通の男であるにも関わらず、服役中の生活の中でいつの間にか、その刑務所にすでに10年服役しているという年下の男・喜多川圭に、想いを寄せられる事になる。  BLというと展開が異常に早い――元々ゲイでも無いのに男相手に恋愛感情を抱くのが早すぎて不自然、というのがよくある事だが、この作品がよくあるBLと一線を画し、BLレーベルでなくあえて講談社文庫で再版された理由はこの堂野と喜多川の感情の動きが丁寧に描かれて不自然さが無く、人間同士の物語として完成度が高い、という点に尽きると思う。  喜多川は、母親からネグレクトを受けていた。  ほとんど親の顔も見た事のない状態から施設に引き取られ、中卒で仕事を始めたと思ったら久しぶりに会いに来た母親に金を無心され、挙げ句母親の犯した(であろう)殺人の罪で逮捕される事になるのだ。  そんな幼少期を経て十代で刑務所に入れられ、以後10年そこにいる喜多川は、世間一般の平凡な愛情を一切知らずに育った。まともな情操教育をされていない喜多川は『普通』の事がわからない。    喜多川には、堂野の『普通』が非常に異質なモノに見えただろう。  何かをしてやれば「ありがとう」と言われる。本や写真を見る事、絵を描く事を教えてくれて、絵が上手ければ褒めてくれる。  彼の『普通』さは喜多川にとって驚きであり、『特別』だったはずだ。初めてのそれがやがては恋愛の情に変わったとしてもおかしいことはひとつも無い。なぜならそれは喜多川にとって、男女問わず初めて触れる事が出来た優しさだったのだから。  そしてその好意を向けられる堂野の心情も読者にとって理解しがたい流れではない。  結論から言えば、堂野が喜多川を受け入れるのは物語の最終盤、本当に最後の最後である。そこまでの堂野はひたすら揺れる。  無愛想な動物のような男が自分だけを特別扱いする、というのはやはり嬉しいものだろう。冤罪で入った刑務所の中で、常に側にいて自分を気遣ってくれる存在がいれば気持ちも安らぐし情も湧く。  ただその情は、恋愛なのか友愛なのか、それとも不幸な生い立ちの彼に対する同情なのか。そしてその情は、刑務所という非日常の空間だからこそ生まれ存在するものなのか。出所した後の喜多川とどう付き合うか。日常空間で彼を受け止める事は出来るのか。  これだけの葛藤を丁寧に描いたからこそ、2人の選択には説得力が生まれる。  男同士だとか関係無い、そう納得できるだけの心情描写を充分にされていたと思う。      ところで、巻末の解説は三浦しをん氏である。  主人公2人のその後について、「この文庫には収録されていないが元々発売されていたノベルズの方に入っている短編を是非読んで欲しい」という事が書かれていた。怒濤の如く泣ける、とまで。  通販即買い余裕でした。届くのが楽しみである。

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2013/07/31

評判がいいので読んでみましたが、最初はとっても暗くて、え、これBLなの?って感じでした。でも話が進むにつれてページをめくる手が止められなくなり、酷く不器用でもどかしい気持ちがすっごく切なくて、もうここじゃ書ききれません。 好きって何?愛って何?と問いかけてくるようでした。 恋愛小...

評判がいいので読んでみましたが、最初はとっても暗くて、え、これBLなの?って感じでした。でも話が進むにつれてページをめくる手が止められなくなり、酷く不器用でもどかしい気持ちがすっごく切なくて、もうここじゃ書ききれません。 好きって何?愛って何?と問いかけてくるようでした。 恋愛小説は大好きでよく読みますが、なんか新鮮でした。 機会があればこの作者さんのほかの作品も読んでみたいです。

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2020/03/07

▼あらすじ 痴漢の冤罪で実刑判決を受けた堂野。収監されたくせ者ばかりの雑居房で人間不信極まった堂野は、同部屋の喜多川の無垢な優しさに救われる。それは母親に請われるまま殺人犯として服役する喜多川の、生まれて初めての「愛情」だった。『箱の中』に加え、二人の出所後を描いた『檻の外』表題...

▼あらすじ 痴漢の冤罪で実刑判決を受けた堂野。収監されたくせ者ばかりの雑居房で人間不信極まった堂野は、同部屋の喜多川の無垢な優しさに救われる。それは母親に請われるまま殺人犯として服役する喜多川の、生まれて初めての「愛情」だった。『箱の中』に加え、二人の出所後を描いた『檻の外』表題作を収録した決定版。 *** カバーを掛けなくても普通に読めるぐらい表紙はBLっぽくないですが中身はちゃんとBLです。 でも、巷に溢れてるようなBLではなくリアリティを追求した作品になっています。 BLというよりは同性愛と言った方が近いかと思います。 意味的にはどちらも同じですが。 前半の刑務所生活の描写はまるで自分も実際に囚人になったような気分を味わえます(笑) おかげで刑務所の中の生活や仕組みがどのようなものなのかちょっとだけ分かりました。 それぐらい良く勉強して書かれているのが分かる内容です。 とりあえず自分は喜多川の一途さに心を打たれました。 ちょっと頭おかしいんじゃ…って思うぐらい一途。 純粋な心を残した子供をそのまま大人にしたような彼にひたすら愛されてしまう堂野の葛藤。 巧みな心理描写に一気に引き込まれてしまいました。 ページ数はかなり多く、ずっしりと重みがありますが面白かったのであっという間に読んでしまいました。 寧ろ一度読み始めると止め時が分からない…! 変わったBLを読みたい方、またはBLを読んだ事ないという方にもお勧めしたい作品。 ただ、内容はかなりシリアスで重たいのである程度覚悟して読んだ方が良いかと思います…。

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2013/06/23

借り物。 喜多川がただただ愛しい。今まで受けにばっかり目がいってたけどこれは喜多川…もう喜多川…… 冒頭の堂野の悲惨っぷりもなかなかだけど、終始、喜多川の無垢な目がつらい。堂野が拒否できないのもそりゃな…ってなる。 安っぽい、萌えとか絡みとか重視しただけのBLなら多分、もっと堂野...

借り物。 喜多川がただただ愛しい。今まで受けにばっかり目がいってたけどこれは喜多川…もう喜多川…… 冒頭の堂野の悲惨っぷりもなかなかだけど、終始、喜多川の無垢な目がつらい。堂野が拒否できないのもそりゃな…ってなる。 安っぽい、萌えとか絡みとか重視しただけのBLなら多分、もっと堂野が喜多川に優しくするだろうし、「箱の中」の終わり方はもっと救いあるものなんだろうけど、堂野は迷い続けるしそう簡単には愛してる!ってならない。そこがいいな。 「箱の中」だけで終っちゃったらエッここで終わるのってなるけど、でもそれはそれでよかったかもしれない。 脆弱な詐欺師は芝のヒーローっぷりと大江の救いなさがイイネ。喜多川は相変わらず愛しいけど。 大江は完全に物語の外側の人だけど、この人相当……うん…… 終わり方の残酷さが好きだな。 「檻の外」からこの話は始まるんだと思う。喜多川と堂野の子どもが仲良くする展開は予想してなかったなあ。喜多川が「寂しい」っていうの、つらいな。 堂野の人生あまりに波乱万丈すぎないか…途中から堂野の妻に腹が立って仕方が無かった… 最終的に喜多川と一緒になるとは思ってなかったから意外だったけど、ほんとうに最後にたどり着いたところが喜多川だったのか…

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2013/06/13

ずっとずっと気になっていた小説。 BLは漫画は読むけど小説まで手を出したことはなかった。 こうして文庫にしてくれると、手に取りやすくて確かに助かる。 最初のほうは喜多川の無垢な愛情にきゅんとして、「え、ふつうにかわいいBLじゃないですか!」と思ってたんだけど、刑務所という非日常...

ずっとずっと気になっていた小説。 BLは漫画は読むけど小説まで手を出したことはなかった。 こうして文庫にしてくれると、手に取りやすくて確かに助かる。 最初のほうは喜多川の無垢な愛情にきゅんとして、「え、ふつうにかわいいBLじゃないですか!」と思ってたんだけど、刑務所という非日常の空間だから始まった恋でしかなかったという現実が次第につきつけられ……堂野の出所後はとにかくオロオロしながら読みました。 愛ってなんなんでしょうね。いくら喜多川の境遇が不憫とはいえ、あそこまで言われて逃げない堂野は相当優しい。そこにはもちろん、同性だからこその同情もあるのかもしれないけど。

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2020/08/21

最初はどの様なものかと思いながら読んだ。 三篇に分かれている連作であるが、それぞれが違う味がする。 刑務所という特異な状況下での人間ストーリーから始まり、平凡な家庭生活で起こる事件、顛末へと続いていく。 女性が書いた作品だから、一部分、それは無理かな〜という所もあったが 人の心...

最初はどの様なものかと思いながら読んだ。 三篇に分かれている連作であるが、それぞれが違う味がする。 刑務所という特異な状況下での人間ストーリーから始まり、平凡な家庭生活で起こる事件、顛末へと続いていく。 女性が書いた作品だから、一部分、それは無理かな〜という所もあったが 人の心の内を書き込んでいる箇所もあり、内容が多岐に亘っていて面白い。 又、ストーキング行為とは、自分の思いだけを主張し相手の事を自分に都合の好い様にしか理解しない事だと良く分かった。

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2013/06/02

一気読みしましたね〜 最初の60ページまでが辛かった。重い話だったので読み始めたのが休日で良かったです。

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2013/05/30

本屋で何気なく見かけたポップに惹かれて買ったんだけど、なんとも胸締め付けられる。 愛を知らぬして育った男がはじめて愛に目覚める話なのだけど、とてもピュアなのだ。 下手するととんでもなく変なんだけど、その馬鹿なほどのまっすぐさに泣けてしまう。

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2013/05/29

読み終わった後の三浦しおんの解説でBLだと知りました。侮るべからずBL。 書店ガールでも書かれていましたが腐女子は敏感なのかもしれません。 内容は男性同士の愛情関係について。 嫌悪はありませんでした。リアルかどうかは確かめようもないですが、ストレートの男性が同性を愛していくプロセ...

読み終わった後の三浦しおんの解説でBLだと知りました。侮るべからずBL。 書店ガールでも書かれていましたが腐女子は敏感なのかもしれません。 内容は男性同士の愛情関係について。 嫌悪はありませんでした。リアルかどうかは確かめようもないですが、ストレートの男性が同性を愛していくプロセスが違和感なく描かれていたと思います。 読み終わった後、喜多川にも堂野にも、また二人の友人にもなりたいと思いました。

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2013/05/12
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※このレビューにはネタバレを含みます

愛を知らない男が愛を知り、一人の男を愛す。そんな感動的な物語かもしれない。 「檻の外」の後の物語が知りたいとも思う。 だけど、納得できないことがある。 堂野の妻が自分勝手な女に描かれている。 そして、堂野と喜多川が結ばれるために、幼い子どもが犠牲になったとしか思えない展開。 愛する二人が結ばれました、終わり。で済まない。 単たるご都合主義にしか感じなれない。 元妻は自分勝手な女として悪く描かれるが、堂野だって、喜多川ってそうじゃないの? もっと、違う形で二人が結ばれる展開にならないのかと思った。 堂野の妻が出産した男の子を思うと不憫でならない。

Posted byブクログ