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東京プリズン の商品レビュー

3.4

104件のお客様レビュー

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2024/11/19

小説としての切り口で、勝者が報復として敗者を裁いた「東京裁判=A級戦犯」「横浜法廷=B、C級戦犯」を再審査する。20世紀の戦争で一方が侵略国で全面的に悪いと言うことはあり得ない。で、戦後世代の「戦争責任」とは?父祖の行為を否定し無理解になることか?アメリカに留学した語り手はハイス...

小説としての切り口で、勝者が報復として敗者を裁いた「東京裁判=A級戦犯」「横浜法廷=B、C級戦犯」を再審査する。20世紀の戦争で一方が侵略国で全面的に悪いと言うことはあり得ない。で、戦後世代の「戦争責任」とは?父祖の行為を否定し無理解になることか?アメリカに留学した語り手はハイスクールでハンティングに参加し獣と人間の絶対的格差を実感する。それはアジア人と白人の格差に似たものだったのか?「日本について」発表することを求められた彼女は「天皇の戦争責任」をタブーとするための生け贄が戦犯でありプリズンであったと…

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2024/04/07

主人公のマリは、時代を飛び越えたり色々な人格を経験しながらも、少しずつ自分なりの答えを探していく。 「自分たちの過ちを見たくないあまりに、他人の過ちにまで目をつぶってしまう」 という終盤に出てくる文章が印象に残りました。 他人の罪に対して、自分にも罪がある事で許してしまう。 他...

主人公のマリは、時代を飛び越えたり色々な人格を経験しながらも、少しずつ自分なりの答えを探していく。 「自分たちの過ちを見たくないあまりに、他人の過ちにまで目をつぶってしまう」 という終盤に出てくる文章が印象に残りました。 他人の罪に対して、自分にも罪がある事で許してしまう。 他人の罪は自分の罪とは関係ないのに、混同して何も言えない自分になってしまう。 『東京プリズン』では、「天皇の戦争責任」というセンシティブなテーマを主人公がディベートしてく中で、答えを出していく様子が描かれています。 責任感の強い民族だからこそ、自分達が戦争で犯した過ちを忘れてはいけないという、「東京=日本」という監獄の中に囚われ続けているという解釈をしました。 自ら檻に入ったのか、仕掛けられた檻なのか分からないけど、これからの人生の自分の行動に一つのキッカケを与えてくれた著作でした。

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2022/07/25

1964年生まれのマリ。16歳になったマリは,日本の高校になじめず母にアメリカ留学させられる。ある日,授業で天皇の戦争責任についてのディベートを行うことになった。終戦時マリと同じ16歳だった母,戦後東京裁判で関わった仕事とは?母と戦争という過去の歴史から自己をみつめる。

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2020/01/01

小説の力、言葉の力を存分に味わえる傑作。豊潤なイメージに満ち、読者を迷宮へと誘い込む。純粋に小説として読めるならば、この作品の完成度の凄さにひれ伏したくなってしまうほどだ。ただし、天皇制の是非などという政治的な要素に囚われる人にはこの小説はまったく響かないであろう。 東京裁判を模...

小説の力、言葉の力を存分に味わえる傑作。豊潤なイメージに満ち、読者を迷宮へと誘い込む。純粋に小説として読めるならば、この作品の完成度の凄さにひれ伏したくなってしまうほどだ。ただし、天皇制の是非などという政治的な要素に囚われる人にはこの小説はまったく響かないであろう。 東京裁判を模したハイスクールでのディベートを軸に、「私」の意識は過去と現在、母と娘、「I」と「people」、昔住んでいた家と森、鏡のあちらとこちらを縦横無尽に移行する。「大君」とヘラジカの存在も印象深い鍵となる。アメリカの地で日本人である「私」を突き詰めていくうちに、日本とは何か、そこにある天皇とは何か、という根底に行き着く物語、と僕は感じた。 文化的に、そして歴史的に、初めて聞くようなエピソードや新しい物の見方が随所に散りばめられているのも魅力的だ。

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2019/05/21

そうか、ここでは十七歳になると、自分で運転して学校に行くのか。これもまたひとつのカルチャーショックだった。日本の学校では、免許や乗り物は、危険なものとしてとにかくティーンエイジャーや学生から遠ざけられていたから。そういうものに乗るティーンエイジャーは、反社会的存在ですらあった。日...

そうか、ここでは十七歳になると、自分で運転して学校に行くのか。これもまたひとつのカルチャーショックだった。日本の学校では、免許や乗り物は、危険なものとしてとにかくティーンエイジャーや学生から遠ざけられていたから。そういうものに乗るティーンエイジャーは、反社会的存在ですらあった。日本はバイクや車を造って外国に売るのを国策のようにしているにもかかわらず。 (P23) 「戦時中の話を読むと、ベートーヴェンを聴いていたら憲兵に取り締まられたとか言う話があってさ、それもおかしいよね、同盟国なのにさ」 「言われてみればそうね。西洋のものは区別がつかなかったんじゃないの?」 敵をそこまで知らない者たちが、よくも戦争などしようと思ったものだと感心する。 (P77) この「法廷」はアメリカ人の大好きな野球《ベースボール》を思わせる「ゲーム」でもあった。同じフィールドで、攻守をがらっと入れ替える。思えばそんな変なルールを持つスポーツはない。ある時間帯しか点を入れられない構造のルールなんてものはめったにない。翻って、日本人が野球を、あるいはビール片手に楽しむナイター中継を、これぞ日本人の娯楽でありスポーツであるかのように愛しているのはなぜなのか。私は母国の男たちが「ナイター」というものをどれほど愛しているかを思った。アメリカのものだったからだろうか?日本人は野球を、法廷に近いなどと思ったことがあるだろうか?そう思ってもまだ好きだろうか?それとも野球と法廷が似ているなど、私の妄想なのだろうか? (P346)

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2019/03/10

自伝と東京裁判、さらにアメリカと日本各論、戦前戦後の日本人の意識変革分析などを織り交ぜる着眼はとても興味深かったのだが、作風なのだろうか、リアルと幻想がシームレスで織り込まれるために悪い方向に幻惑してしまう。修辞のつもりだろうが多用される指示代名詞、無駄な倒置法、作為的な体言止め...

自伝と東京裁判、さらにアメリカと日本各論、戦前戦後の日本人の意識変革分析などを織り交ぜる着眼はとても興味深かったのだが、作風なのだろうか、リアルと幻想がシームレスで織り込まれるために悪い方向に幻惑してしまう。修辞のつもりだろうが多用される指示代名詞、無駄な倒置法、作為的な体言止めを繰り出すものだからどうにも読みづらい。はっきり言って文章がへたくそなのだ。英語での憲法原文や、アメリカ人気質など、興味深い点は多いのだけれど。  度々飛躍する幻想ないし夢描写であっても小説ならばのロジックが入りそうなものだが、ユングやフロイトあたりを持ち出して解釈しても、意味が不明な箇所が多すぎる。他人の夢の話ほど退屈なものはないのだ。

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2019/03/10

作者の自伝的な小説。最後の留学先でのディベートは圧巻!恐らく実際に作者の留学時代の事実ではないだろうが。

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2018/11/08

久しぶりに読み応えのある本だと感じた。 一部書評では、天皇の戦争責任をテーマにという記述もあるが、どう見ても、死者との交流をめぐる本であり、亡くなった英霊たちへのメッセージなのではないか。

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2018/03/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

赤坂真理さんが「戦争と戦後」についてすべての日本人の問題として書いた大作「東京プリズン」を読了。今の日本・日本人が抱える問題に関して敗戦、天皇の戦争責任の免除、戦勝国アメリカとの同盟国とならざるを得なかった事実がどう影響しているのかを存分に考えさえてくれる大作だ。明確には触れてはいないが、天皇の戦争責任関しても考えさせらえる要素があることを隠していない本作は問題作でもあろう。 話の筋としては、第二次世界大戦後の東京裁判関連の翻訳サポート業務に関わっていた経験を持つ母親に送りこまれる形で、アメリカの片田舎に留学した女子高生が進級をかけるという形で第二次世界大戦における天皇の戦争の有無に関するディベートへの参加をもとめられ、その準備の過程で湧き上がってきた疑問,思い・ディベート本番でのやり取りとのなかでアメリカ人というもの、アメリカの持つ痛み、闇の部分にも触れながら日本人、日本が抱える問題に関しても思いをはせながら、ディベートにおいて勝ち負けには寄与しないがしっかりと自分の主張を見事に展開するというものだ。 作者からの定義というか投げかけは、ある民族や国家というものがあれだけの大きな損害を受けひしがれたのちに、あれだけの損失や傷を60年ー70年で忘れ去ってしまうことは本当はありえないだろう。ではそれでも忘れたようにふるまっている日本人はなぜそうできているのだろう?というものだ。 それらの問いに直接の解は小説では示されない。しかしアメリカの片田舎で天皇の戦争責任について考えることになった少女が踏み込むベトナム戦争によって受けたアメリカ人の傷、アメリカ人の多くが帰依しているキリスト教におけるキリストに対する思いなど、自分の立場・自分の歴史のみによりどころを求めて議論を展開するのではなく、相手の懐に入り相手が論理を展開するもととなる素地に思いをはせながらディベートをする少女の経験・思い・考えを読み込むことで、答えは示さないが、深く考えることを求められ自分なりの考えを持つことに導かれる構造を持っている力のある小説だ。 昨今、自衛隊の存在の憲法への明記、日米地位協定が抱える問題点、集団的自衛権に関する論議など様々な議論がメディアを賑わせているが、これらの議論は戦後処理における天皇の戦争責任に関する日本人の本心、アメリカの同盟国としてしか国際社会に戻れなかった日本の国政の在り方、その国政に大きく(ほぼ内政干渉に近い形で)プレッシャーを与えその方向をコントロースしてきたアメリカの存在との距離感みたいなもろもろの問題の根源にあるものを議論・消化せずに意見をたたかわせているような気がしてならない。 この本を読んで強く思わされたのは、戦争に負けた日本としてのいままでの国家のあり方を再度しっかりと見直し、これからの50年、100年の行くべき方向性を考えるべきとう事だ。そのことにしばらく時間を割いてみたいと思う。もちろん小説は読み続けるが。 そんな戦争をわすれても戦争は終わっていないんだということを痛烈に考えさせられる物語を読むBGMに選んだのがMiles Davisの”Tribute to Jack Jonson"だ。 ひとところに収まらないマイルスが凄い。 https://vimeo.com/59238431

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2018/02/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

A級戦犯のクラス分けについてや、枯葉剤作戦、パールハーバー奇襲の正当性?(『宣戦布告から一定の期間を経て攻撃する』という規定の一定の期間という曖昧な定義がそもそも破綻していた)など、興味深いところは多々あったものの、説明文としても散文としても中途半端という印象。 やはりこの人は短編か、せいぜい中編が、私としては好み。 ただ、この作品でもやっぱり感性は好きだなぁと思うところは多々あって、例えば 『私はそこで抱きすくめられて溶けそうになる。私の体は私のものだし私の心も私のもの、けれど私の欲望が誰のものか、私にはわからない。私は抱かれて、私のかたちを確認する。抱かれなければ、私は誰?いや本当は、抱かれたらさらに混乱する。わかっている。でも。抱かれることは、安楽。でもそれを得るのに何かを捨てた。何をなのか、よくわからない。わからないふりしているのかもしれない。いつかそれに、復讐される、そんな気もする。』 の部分とか、ああ、赤坂さんだなぁと思う。 結局母親の過去に関して何もあきらかにされることはないので(あきらかにされているところすら妄想との区別がついていない)、すっきりはしない。 赤坂真理の「女性の弱さと愚かさを恐れずにえぐり出せる」というところを秀逸として評価している私としては、日本とアメリカの罪と罰、勝ち負けよりも主として上記のようなものを中心に据えてほしいと欲に、どうしても駆られてしまう。 途中までは「この人ってこういう具体的な文章も描けるんだ」と思ったけど、中盤くらいから置いて行かれた感じがした。無論半生記である故に結末がつかないのは仕方ないところではあるけど。 実験的小説と言ったところか。

Posted byブクログ