十字軍物語(1) の商品レビュー
さすが著者の「物語」はおもしろい。ヨーロッパから中近東にいたる地域の十字軍の歴史の詳細を知ることができたと思えた。本書で扱っている時代は西暦1000年ごろから西暦1100年ごろだが、日本において鎌倉幕府以前の時代にこのような戦いの歴史があったとは、人間のおろかさなのか、それとも...
さすが著者の「物語」はおもしろい。ヨーロッパから中近東にいたる地域の十字軍の歴史の詳細を知ることができたと思えた。本書で扱っている時代は西暦1000年ごろから西暦1100年ごろだが、日本において鎌倉幕府以前の時代にこのような戦いの歴史があったとは、人間のおろかさなのか、それとも宗教の業の深さなのかと深く考えさせられる思いがした。 本書では、十字軍がどのように組織され、はじめられたのかが詳細に物語られている。「ローマ法王ウルバン二世」、「神聖ローマ帝国皇帝ハインリッヒ」の軋轢は、政治闘争そのものと思えた。 第1次十字軍の主要な登場人物の「トゥルーズ伯サン・ジル」「法王代理司教アデマール」「ロレーヌ公ゴドフロアとその弟ボードワン」「プーリア公ボエモンドと甥のタンクレディ」等がつむぎだす物語は、とても興味深く読めたが、登場人物が多すぎてややこしいとも感じた。 しかし、本書での西暦1096年にヨーロッパを出発した第1次十字軍が3年間でイェルサレムを陥落させ、その後の18年を費やしてイスラムの海の世界に十字軍国家を確立させる過程には、多くの犠牲者がいたと思われるが、その争いがある意味で現在まで続いているかと思うと、西洋の歴史の深さと宗教のもつ意味を考えさせられる思いがした。 続編の「十字軍物語2」も、楽しみだと思った。本書を高く評価したい。
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知識・歴史認識の弱い分野を補えると思い読みました。ただ、ローマの物語に比べると1巻は人あるいは十字軍というもの、そのものへの思い入れが薄くなっている気がします。
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第1巻を読破.ヨーロッパの諸侯がなんとか十字軍国家を作り上げた所までの物語だが,「ローマ人の物語」と同様に登場人物がいきいきと描かれている. 第2巻が楽しみだ.
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塩野ワールドの最新シリーズ、いよいよよ「十字軍物語」 「神がそれを望んでおられる」 1095年から1118年まで 十字軍の結成から第一次十字軍による十字軍国家の成立まで、 「戦争とは、諸々の難題を一挙に解決しようとしたときに、人間の頭の中に浮かび上がってくる考えである。…」 ...
塩野ワールドの最新シリーズ、いよいよよ「十字軍物語」 「神がそれを望んでおられる」 1095年から1118年まで 十字軍の結成から第一次十字軍による十字軍国家の成立まで、 「戦争とは、諸々の難題を一挙に解決しようとしたときに、人間の頭の中に浮かび上がってくる考えである。…」 「人間には善人と悪人のちがいがあるのではない。一人の人間の中に「善」と「悪」が共生しているのである。…」 「陽の下に新しきものなし」
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三巻すべて揃ったところで読み始めましたが、この第一巻の感想としては、塩野七生先生も書かれていますが、「究極の目標」を持つ集団と、それを持ちえない集団の差が、第一次十字軍の成否を分けた(キリスト教とイスラム教の戦いの勝敗)ということでした。 その「究極の目標」というのは、いわゆるXXX欲(金銭・領土など)という世俗的でないことが、人間関係が対立的もしくは不仲であってもまとまることができたということでした。 キリスト教側は、「異教徒からの聖地の解放」これにより本来ならあまり良好といえない人間関係もバラバラにならなかったこと、本当に重要な局面では、その一つの目標に向かう。 逆に、イスラム教世界は、部族、そしてシーア派とスンニ派の違いだけでなく親族間でもバラバラで、救援する代わりに、その治めているところを差し出せという形で、全然向かえないし、この段階では宗教対立という理解ではなくまとまれずに、隙あらば、同じイスラム教でもその領土を取ろうとする。 この差が分けたんだと理解しました。 この第一巻で自分の認識が改められたのは、世界史で習ったときに、「カノッサの屈辱」でローマ法王が皇帝を破門し、皇帝がローマ法王に雪降る中、立ちつくし許しを乞うたことにより、法王が権威と権力において皇帝を凌駕する存在になり、それが、十字軍につながると理解していましたが、その後、皇帝の反撃で、ローマ法王はローマにいることもできず、さすらい続け、屈辱時点では法王が勝者であったが、その後の展開では歯医者同然であったこと この状況を打破する方法として、次のローマ法王ウルバン二世が提唱した「十字軍=異教徒からの聖地の解放」ということであったということでした。 もう一点は、戦力、兵数が十字軍側はとても少ない、それだけ騎士の強さを認識させられました。それだけこの第一次十字軍のリーダーたちの資質の優秀さ、信念の強さ、兵の質の良さなどが際立った結果でもあるんだと思いました。
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神がそれを望んでおられる! ということで法王ウルバン2世の呼びかけで、ヨーロッパ各地の領主が第一次十字軍に参加する。その後のエルサレムまでの行程とその後到着 その維持に命をかけた諸侯の話。本当はヨーロッパ史の中世は自分は単に暗いルネッサンスまでの暗闇の時代かと思っていましたが、そ...
神がそれを望んでおられる! ということで法王ウルバン2世の呼びかけで、ヨーロッパ各地の領主が第一次十字軍に参加する。その後のエルサレムまでの行程とその後到着 その維持に命をかけた諸侯の話。本当はヨーロッパ史の中世は自分は単に暗いルネッサンスまでの暗闇の時代かと思っていましたが、そうではなかったということで結構よくわかった。 だが、やはり、ローマ人物語と較べると動きが鈍い気がする。しかし、中に出て来たタンクレディという人の活躍が光っていましたね。名前も覚えやすい! さて続きを読もう!
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「絵で見る・・・」にエッセンスが凝縮されていることと、作者のモチベーションを「ローマ人」ほどに感じないためか、全体に薄く、文章に魅力が乏しい。
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教科書で聖地奪回に行ったとは学んでも、実際には何をしていたのか分からない十字軍。第四次とか教科書に特筆してある事件の印象で、宗教的熱狂で行ったはいいけどグダグダに終わった印象しか有りませんでしたが、第1次の頃は聖地奪回の元それなりに纏まって目標を達成していた模様。 あとは奪回した聖地を十字軍国家をどうやって維持していくかが楽しみです。 でも、ローマの時ほどの爽快感はないんだろうなぁ。 中近東で鉄の鎧は想像しただけで汗が吹き出そうです。十字軍の騎士って凄い。
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歴史の教科書で見ると簡単に終わるような十字軍の物語なのだが、中世のヨーロッパとイスラム教世界との関わりが現代まで引きずる遺恨の歴史の始まりとして見ると、その内容を知っておく意義はある。 十字軍物語の1はその最初の遠征から十字軍国家の建設までについて、ヨーロッパの騎士、諸侯がどう...
歴史の教科書で見ると簡単に終わるような十字軍の物語なのだが、中世のヨーロッパとイスラム教世界との関わりが現代まで引きずる遺恨の歴史の始まりとして見ると、その内容を知っておく意義はある。 十字軍物語の1はその最初の遠征から十字軍国家の建設までについて、ヨーロッパの騎士、諸侯がどう関わってきたか、それに対するアラブ、パレスチナ、エジプトのイスラム勢の一筋縄ではいかない抵抗の様子を旨く描き出している。
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