犬の力(上) の商品レビュー
メキシコ麻薬戦争とアメリカの中米反共政策をモチーフに、数多くの登場人物たちが交錯する。これまで翻訳されたドン・ウィンズロウ作品の中では、群を抜いてハードかつヘビーで、重々しい物語。構成の複雑さも際立っている。今回も東江一紀さんの翻訳は素晴らしい。下巻も読了済み。 麻薬の利権を...
メキシコ麻薬戦争とアメリカの中米反共政策をモチーフに、数多くの登場人物たちが交錯する。これまで翻訳されたドン・ウィンズロウ作品の中では、群を抜いてハードかつヘビーで、重々しい物語。構成の複雑さも際立っている。今回も東江一紀さんの翻訳は素晴らしい。下巻も読了済み。 麻薬の利権をめぐる熾烈な競争と苛烈な報復。共産主義勢力に対する非情な制裁。それらが目を覆うばかりに残酷で、読みながら何度も顔をしかめてしまったのだが、このあたりを読むと、作中の暴力は別に誇張でもなんでもなく、現実そのままだったんだなと茫然。 ■メキシコ麻薬戦争 列伝 http://www10.plala.or.jp/shosuzki/edit/la/cartel/mexdrugwar.htm ほかのウィンズロウ作品と同じく、ヒーロー・ヒロインでも弱みや短所が描かれ、ヒールでも美点や長所が描かれている。例えば、部下を麻薬組織の拷問によって殺されたDEA捜査官・アートは、組織を率いるバレーラ兄弟を逮捕することに執念を燃やすのだが、そのことにあまりにも情熱をかけすぎて意固地になり、家庭を失ってしまう。 一方、バレーラ兄弟は兄弟の絆は固く、特に兄のアダンは妻と重い病を患う娘を愛し、愛人のノーラにストレートに恋心をぶつけるという憎めない男でもある。また、バレーラ兄弟の叔父で、麻薬組織を統括していたティオの食わせ物ぶりも、恐ろしいものの魅力的。 登場人物の善悪や正邪が単純に色分けされていないことで、誰が嘘をついているのか、誰を信じていいのか、読んでいるこちらもわからなくなる。そこに、史実が適度にまぶされたシリアスな出来事が展開されて、読み始めるととめられなくなる。 ノーラとカランの逃亡が、なんだかそれまでの物語の雰囲気とは違う、青春モノっぽいムードになることに違和感を感じて、星一つマイナス。 しかし晩年のアートの穏やかそうな日々に、ちょっとしんみりしてしまったのだった。
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このミス海外小説部門で1位の作品です。このミスの選定には時々疑問を感じる本がありますが、この本は大当たりです! 南米の麻薬戦争が題材ですが、とにかく読みごたえがあります。 麻薬戦争サーガといっていいくらい、その起こりから現在までの権力争いが描かれ、新しいボスが出ては消え、...
このミス海外小説部門で1位の作品です。このミスの選定には時々疑問を感じる本がありますが、この本は大当たりです! 南米の麻薬戦争が題材ですが、とにかく読みごたえがあります。 麻薬戦争サーガといっていいくらい、その起こりから現在までの権力争いが描かれ、新しいボスが出ては消え、また出てては消えます。ゴッドファーザーの世界に似てますが、比較にならないほど理不尽に、どんどん人が殺されていきます。 麻薬の生産から、供給ルート、それにまつわる利権争いと、黙認する国家。複雑に絡み合う問題を手を抜かずに、読者も覚悟しろよ!と迫るかのように重厚に書きこんでいます。 物語の進行は3人の主要人物の人生を追って進んでいきますが、あまりの登場人物の多さに、上巻の8割くらい読んでから、最初に戻って読みなおして相関図を頭の中で整理しなおしたくらいです。 フィクションの形式を取っていますが、麻薬戦争の全貌を理解するためにはこれを読むのが一番です。日本の覚せい剤取り締まりとはまるでスケールが違います。本当の戦争です。
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http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20100323/1269285826
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ミステリーにカテゴライズしているがあまりミステリーっぽくはない ハリウッド映画を見てるような印象 メキシコに旅行するのが怖くなった一冊
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舐めてた。壮大なスケールの麻薬マフィアもので、登場人物、南米の地図を整理しながら読めばもっと味わえたかも。 大きく分けると、マフィア側と刑事側に分かれてストーリーは進む。それぞれに内部抗争のようなものがあり、そして残酷。 実際、意識して世界のニュースを見てみると南米の麻薬がらみの...
舐めてた。壮大なスケールの麻薬マフィアもので、登場人物、南米の地図を整理しながら読めばもっと味わえたかも。 大きく分けると、マフィア側と刑事側に分かれてストーリーは進む。それぞれに内部抗争のようなものがあり、そして残酷。 実際、意識して世界のニュースを見てみると南米の麻薬がらみの残酷なニュースがあるのが怖いとこ。 この上巻のラストは何の救いもない、ただ気が沈むだけ。はやく、下巻を読まねば。
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中米の地理に疎いので地理関係の想像力が働かなかったけど、文句なく面白かったです。 下巻の展開が楽しみです。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
うーん、面白いミステリーとしてどこかで見かけたので読んでみたが、まぁまぁって感じ。久しぶりに海外小説を読んだせいか、それともこの小説の登場人物が多いせいか、苗字と名前が混ざって出てくるせいか、結構読みにくかった。というか、読むのに時間がかかった。 まぁ内容的には、南米とアメリカの麻薬に関わる犯罪組織とそれを負う捜査官みたいな感じ。ところどころ状況を把握するのが難しかった。でもつまらない内容ではない。 うーん、やっぱりスティーブン・キングとかにはかなわないね。 ★3かな。
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複数の登場人物が、メキシコでの麻薬犯罪に関わり、 愛憎を絡めて怒涛の如くドラマが生まれて行きます。 パラーダ神父の奇妙だけど芯のあるキャラクターに引き込まれました。 アイルランド人のカランや、バレーラ兄弟、アメリカ人のケラー。 多国籍間の麻薬や犯罪者が絡み、 凄惨ながらも史実を読...
複数の登場人物が、メキシコでの麻薬犯罪に関わり、 愛憎を絡めて怒涛の如くドラマが生まれて行きます。 パラーダ神父の奇妙だけど芯のあるキャラクターに引き込まれました。 アイルランド人のカランや、バレーラ兄弟、アメリカ人のケラー。 多国籍間の麻薬や犯罪者が絡み、 凄惨ながらも史実を読んでいるかのような臨場感のある書き口がスゴイ。
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お気に入りの作家ドン・ウインズロウの長編。メキシコを舞台に繰り広げられる凄惨な麻薬戦争。合衆国は反共勢力を援助し、見返りに麻薬取引を黙認する。その腐敗しきった構図の中で独り奮闘する主人公。作者の得意な「暴力」「セックス」「矜恃」「家族愛」の絶妙なバランス。息もつかせぬ展開と、メキ...
お気に入りの作家ドン・ウインズロウの長編。メキシコを舞台に繰り広げられる凄惨な麻薬戦争。合衆国は反共勢力を援助し、見返りに麻薬取引を黙認する。その腐敗しきった構図の中で独り奮闘する主人公。作者の得意な「暴力」「セックス」「矜恃」「家族愛」の絶妙なバランス。息もつかせぬ展開と、メキシコマフィアの独特の感覚の描写が面白い。
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やはりまだ上巻。煮え切らないかんじで下巻へ続く。とはいえ、何人もの登場人物を絡ませながら、一つの物語として練り上げているのは見事。血みどろのストーリーの中に、ノーラとパラーダ神父が出会う地震の場面が挟み込まれているのがとても好き。非常に色っぽい作品。
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