犬の力(上) の商品レビュー
2010年版このミス海外編1位作品ということで読んでみた本。詳細→http://takeshi3017.chu.jp/file4/naiyou16101.html
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一言でいえばメキシコのドラッグ・ウォー(麻薬戦争)を舞台にしたアメリカ・プロパガンダ本である。アート・ケラーはDEA(アメリカ麻薬取締局)のエージェントだ。 http://sessendo.blogspot.jp/2014/03/blog-post_23.html
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正に最高傑作。 「犬の力」は メキシコの麻薬撲滅に取り憑かれたDEAの捜査官アート・ケラーと叔父が築くラテンアメリカの麻薬カルテルの後継 バレーラ兄弟の30年に及ぶ壮絶な麻薬戦争の物語。 アメリカとメキシコ両政府の思惑が働いて、もはや誰が敵で誰が味方かわからない混沌とした状況の中...
正に最高傑作。 「犬の力」は メキシコの麻薬撲滅に取り憑かれたDEAの捜査官アート・ケラーと叔父が築くラテンアメリカの麻薬カルテルの後継 バレーラ兄弟の30年に及ぶ壮絶な麻薬戦争の物語。 アメリカとメキシコ両政府の思惑が働いて、もはや誰が敵で誰が味方かわからない混沌とした状況の中、麻薬捜査官のアートだけは信念を貫いて アメリカにとって不利な真実を暴こうとする…というお話。 米国政府、麻薬カルテル、マフィアなど、様々な組織の思惑が交錯した、まるっきりのフィクションではなくかなりの事実に基づいて書いてある。(…っと、あとがきに書いてあった) と云うワケでとてもリアリティがあり具体性もあって面白かった。 アメリカとメキシコにまたがる麻薬ビジネスは中南米の難民やメキシコ大統領選、中国の武器商人まで巻き込んで壮絶な様相を呈してくる。 国家並みの軍事力、資金力、そしてそれを司る圧倒的な権力。 裏切りに次ぐ裏切り、罠の裏をかけばそれがまた罠、信じていた仲間は敵だった、など….。 しかし血で血を洗う復讐の無限ループの中にも人間ドラマがあり 用意周到綿密に練られた作戦のシナリオも最高に面白い。 興奮冷めやらずドン・ウィンズロウの凄さに感嘆。 さて、あなたはこれを読まずして死ねるか?(笑) 私はセーフ!(笑)
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ここまで麻薬犯罪物に真正面からぶつかって書き上げた著者に拍手。人種も国も関係ない人間が産んだ歪のあるシステムと動物の本能に振り回される悲哀をドラックとセックスとバイオレンスを通して描く。 様々な登場人物たちは、すれ違い、どこかで繋がっていく。登場人物たちがまさにぎりぎりのところで...
ここまで麻薬犯罪物に真正面からぶつかって書き上げた著者に拍手。人種も国も関係ない人間が産んだ歪のあるシステムと動物の本能に振り回される悲哀をドラックとセックスとバイオレンスを通して描く。 様々な登場人物たちは、すれ違い、どこかで繋がっていく。登場人物たちがまさにぎりぎりのところで息継ぎをしながら、自らを、もしくは誰かを犠牲にしもがき続ける。 真実と虚構の混合比率の絶妙さと表現は過去形と現在形のミックスにより、読者は自然にこの世界に入り込み、登場人物たちの横であたかもその場面に直面しているような錯覚に陥り、読み出したら最後、一気に下巻へ突入する。こんな読み応えのある本に出合えたことに感謝。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
やっと読み終えた…何せ1000ページ越えの大作だ。一月近くを費やした。 南北アメリカを舞台としたこの強烈な物語は、争う事が共存する為の条件とばかりに大国と小国、弱者と強者、悪と善などの戦いを描く。 善を為すが為の悪行…酷く矛盾したロジックが、リアルを生みながらグイグイと引っ張り込んでゆく。 権力、金、麻薬、性、、、なぜ欲望には終わりがないのか?欲望の虜と化したまま疲弊し、麻痺し、壊れていくそれでも止められない。 悲しい話だ。 作者の作品は「フランキー・・・」に続いての2作目だが本当に読ませるいい作品です。
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最初に言っておくとすれば「ゼッタイに読むべきだ!」。まず原題の『The Power of The Dog』を『犬の力』と直訳したことに敬意を払いたい。内容はアメリカン・バイオレンスの王道たる「麻薬・金・暴力・セックス」だが、そこに国際麻薬シンジケートだったり、アメリカの対外政策な...
最初に言っておくとすれば「ゼッタイに読むべきだ!」。まず原題の『The Power of The Dog』を『犬の力』と直訳したことに敬意を払いたい。内容はアメリカン・バイオレンスの王道たる「麻薬・金・暴力・セックス」だが、そこに国際麻薬シンジケートだったり、アメリカの対外政策などが複雑に絡み合い、混沌とか不条理とか運命とか、克明に描かれる。ドン・ウィンズロウ初体験だが、筆力はハンパない。客観的描写命。会話に情緒を委ねないところがすばらしく、英語で目を通してみたくなる(たぶんさっぱり分からんと思うけど)。この物語の鍵となっているのが、アメリカとメキシコの国境地帯の状況だろう。メキシコ人たちは国境を違法に行き来し、どちらの国にもアイデンティティーを持たない(あるいは持っている)「チカーノ」と呼ばれるカテゴリーを形成している(今福龍太『荒野のロマネスク』)。本書の登場人物たちもアメリカとメキシコのハーフだったり、アメリカ人とメキシコ人が結婚していたりと、「チカーノ」として生きることを余儀なくされている。物語はメキシコの麻薬シンジケートに関わる抗争から幕を開けるのだが、東海岸からコロンビアまでスケール広く展開される。そして、登場人物たちは当初、「揃ってなにも持っていない」のだ。様々な群像が描かれるので、冒険ロマンとしても楽しめる。そして、「武装勢力」との闘い。アクション映画で描かれる激しい戦闘はどこか遠い話だったが、2013年1月のアルジェリアでの事件を見るともはやそれがグローバル社会では現実として十分ありえる、と覚悟せざるを得ないと思う。主人のいない「犬たち」は原罪を背負いながらなにを見ようとするのか。面白い!
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自分の読解力がないのか、登場人物がカタカナなのがとっつきにくいのか、はたまた訳者の翻訳に問題があるのか… ストーリーとしては中南米を中心としたマフィアと警察の話 まぁあの辺の大まかな地理や人種、文化などがわかる人は入り込めみやすいと思うが、如何せんその知識がない人は映画やほかの作...
自分の読解力がないのか、登場人物がカタカナなのがとっつきにくいのか、はたまた訳者の翻訳に問題があるのか… ストーリーとしては中南米を中心としたマフィアと警察の話 まぁあの辺の大まかな地理や人種、文化などがわかる人は入り込めみやすいと思うが、如何せんその知識がない人は映画やほかの作品を参考に妄想するしかない 日本海から出たことない自分としては妄想力が足りないのだろうか…
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ファージング3部作を読み終わったので、文芸春秋ミステリーベスト10 2009年の海外ミステリー第2位をチョイス。 ミレニアムやファージングと比べると翻訳が合わないな~っていう印象が強くて、中々話に入りきれませんでした。 特に無駄にメキシコ語のルビが多い。自分はルビありの場合は...
ファージング3部作を読み終わったので、文芸春秋ミステリーベスト10 2009年の海外ミステリー第2位をチョイス。 ミレニアムやファージングと比べると翻訳が合わないな~っていう印象が強くて、中々話に入りきれませんでした。 特に無駄にメキシコ語のルビが多い。自分はルビありの場合はできるだけその文字で読んでいるんですが、これのせいで話がぜんぜん頭に入ってこないんです。 ※読み方が悪いだけなんで、書評とは別なんですがね。 で、文体に慣れ始めると・・・映画(というよりアメドラ)のような展開で、引き込まれてきます。 個性的な登場人物が多く、一人ひとりがちゃんと息をしています。 さっきまでの敵は見方になり、正義は悪になり、逆もまた。 だた、グロ注意ですね。
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メキシコを舞台にした30年間に及ぶ麻薬戦争を描くクライムノベル。 一気に上下巻読み切りました。 クライムノベルや映画は結構好きで読むとハマっちゃう。 自分がその世界にいることを想像するとぞくぞくする。 恐らくさっさと殺られる手下か、拷問にびびってペラペラ情報喋るポジションなのは間...
メキシコを舞台にした30年間に及ぶ麻薬戦争を描くクライムノベル。 一気に上下巻読み切りました。 クライムノベルや映画は結構好きで読むとハマっちゃう。 自分がその世界にいることを想像するとぞくぞくする。 恐らくさっさと殺られる手下か、拷問にびびってペラペラ情報喋るポジションなのは間違いないんですが。 この手の作品が好きなのは、金だの女だの地位だの人間の欲や生き様がシンプルに浮き出るからなのかな。 男臭い世界観が楽しい。 逆に大概の作品で女性があまり魅力的じゃないというかステレオタイプな描かれ方をすることが多い。 この作品もそれは感じる。 やや読みにくい文体ではあるけれども、登場人物に魅力があるので人死にに抵抗がない人なら面白く読めると思います。
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ドン・ウィンズロウ! なんて、久しぶりなんだ。 ニール・ケアリー・シリーズがなんだか呆気なく幕切れとなってしまった(らしい)シリーズ最終作『砂漠で溺れるわけにはいかない』以来の日本お眼見えだったか。それが1996年の作品。本作は2005年の作品。ウィンズロウの上にその間...
ドン・ウィンズロウ! なんて、久しぶりなんだ。 ニール・ケアリー・シリーズがなんだか呆気なく幕切れとなってしまった(らしい)シリーズ最終作『砂漠で溺れるわけにはいかない』以来の日本お眼見えだったか。それが1996年の作品。本作は2005年の作品。ウィンズロウの上にその間9年の時間が経過していたのか。なんと! だからというのじゃないだろうけれど、ニール・ケアリーのシリーズとはまた違った空気。違いすぎるくらいに。作者名を伏せたらすぐに回答が出ないくらいに。その代わり全部読み終えたら、何となくわかりそうな気もするけれど。独特のテンポ。音楽的な語り口は、柔らかな青春スパイの日々を描くにしても、血も涙もない皆殺し現場を描くにしてもあまりにリズミカルで淡々と淀みがない。 しかしそれだけではない。何かが違う。透明感はそのままだ。しかし透明感は、ぴんと張り詰めた鉄線のように危険な匂いがする。ひりつくような熱気が血のような鉄分のにおいを運んでくるのかもしれない。とにかく決定的な部分でウィンズロウの物語世界はよりハードでタフな方向に色合いを変えた。 それも本作の場合、大河小説でもある。作者の最長編記録であることは言うまでもない。三人の同郷の男の人生を幼少の頃からそのいずれかの死に至るまで(正確には殺し合うことになる)の腐れ縁を延々と描いたビルディングス・ロマンだ。その間、殺し合いや追跡や逃走や化かし合いや、恋人の獲り合いや、裏切りやらが山ほど積み重なり、それらばかりが淡々と、ただただ砂漠の獣たちの獰猛な闘いみたいに、ばかみたいに繰り返されるのだ。本当にばかみたいに。 アート・ケラーはDEA捜査官、パレーラ兄弟はヤクの元締め。片方には正義、片方には無法の自由と金があり、お互いに凌ぎを削ってサバイバルを繰り返している。他には何の人生も残されていないみたいに。他には幸せの選択肢なんてどこにもないみたいに。 それにしても死闘で築き上げられた一台国境絵巻。こんなタフ・ワールドを書く作家ではなかったよな、というのがウィンズロウに対する今までの勝手な解釈だった。ところがどっこい、奇なんか少しもてらわずに、まったくストレートに物語を語り続けることのできる人だったのだ。けれんみも何もなく、本当に特徴なありゃあしない。ただただ銃をぶっ放して、鮮血と砂が交じり合う乾いた大地の物語。そして美女の悲鳴とコヨーテの遠吠えが交じり合う。 サム・ペキンパの世界だ、まるで。 だけど決して嫌いじゃないぜ、この世界。
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