悪童日記 の商品レビュー
戦争の激化に伴い、双子は祖母の家に預けられる。 ケチで不潔、粗暴な彼女の元で 双子は悲観にくれることなく 自身の鍛錬にいそしみ、労働を覚え、生き延びていく。 この作品内に個々の感情は吐露されることなく、 淡々と、発せられた言葉、行動がつづられている。 双子は鍛錬を通して、絶対的...
戦争の激化に伴い、双子は祖母の家に預けられる。 ケチで不潔、粗暴な彼女の元で 双子は悲観にくれることなく 自身の鍛錬にいそしみ、労働を覚え、生き延びていく。 この作品内に個々の感情は吐露されることなく、 淡々と、発せられた言葉、行動がつづられている。 双子は鍛錬を通して、絶対的な精神の強さ、冷酷さを得る。 歪んだ性の描写、不潔な暮らし、戦争がもたらした破壊、死、 歴史的事実に基づく社会の揺らぎ あらゆるインパクトのある題材を用いながら 冷徹な文章を貫くことで、奇妙で薄暗い人々の陰、残虐性を感じた。 双子の名前すら明かされることなく、どちらの発言、行動なのかも 明言されることはない。 個々を没することで一心同体となり、超越したものとなる。 神を信じない、というスタンスの作品を近頃読むことが多い。 どの作品でも、自分自身の鍛錬がより必要になり、 ストイックに生きていくことを選ぶ。 神に頼ることなく自分に課していく。 死に物狂いに精錬されたものは強い。
Posted by
本文では物語の場所・時期等全く具体的に表記されていないが、史実・時代的背景の知識が乏しいワタシでも、訳注を確認しながら読み進める事で、この作品の凄さ・倫理観を再認識させられた。 何かこう書くと『難しいコト』を書いているんじゃ…と思われるかもしれないけど、そんなことはない。なんって...
本文では物語の場所・時期等全く具体的に表記されていないが、史実・時代的背景の知識が乏しいワタシでも、訳注を確認しながら読み進める事で、この作品の凄さ・倫理観を再認識させられた。 何かこう書くと『難しいコト』を書いているんじゃ…と思われるかもしれないけど、そんなことはない。なんってったって、子供の日記だから。 ただあまりにも酷い惨状、人間の愚かさ・弱さが浮き彫りとなっている反面、感傷に浸るコトを許さないし、出来ない。ワタシに出来るコトは、受け入れ、感謝する事だった。それは、今を生きるワタシ達が必要としている事の全てであるとも思う。 歴史のベンキョーを暗記だけの退屈な科目と感じる学生サンに、読んで貰えたら授業への参加意識が変わるんじゃないかなと思います。 ちなみに、第二次世界大戦下のヨーロッパが舞台デス。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
思っていた以上にハードな内容だったけど、面白さの方が先に来てどんどん読み進められる。 読み進めるうちにヨーロッパ圏での戦時中であることが伺えて、極寒の地なんて言葉でシベリアと連想されて、はっきりとは書かれていないが各国の関係性が見えてくるので、歴史を押さえておくとよりリアルに感じられるかも。 しかしラストでの双子の周到さには感服してしまう。 そして調べていたらアゴタ・クリストフ氏が7月に亡くなられているのを知り、他の作品も早く読もうとの思いをあらたにした。
Posted by
最近、作家のアゴタ・クリストフが死んでしまった。この本を思うと、いつも頭を垂れてしまう。こんなすごい物語にはなかなかであったことがない。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
いやー、クールな双子。でも悪童じゃないな、怪物だけど。悪童日記って邦題、音的に最高だけど。異常な環境を生き抜くためにすべきことを、泣きも笑いもせず着々とやっていくんだね。戦争の悲惨がテーマかと思ったけど、それにしちゃ双子がインパクトありすぎだし。変に社会風に見ないで、やっぱり双子そのものを見なきゃ損だな。吝嗇も堕落も怠惰も淫欲も倒錯も全部自分たちが生き抜く環境に取り込んでしまうんだな。最後の行動が驚きだけど、これもきっととんでもない計算に基づいてるはず。彼ら、どんな大人になるか想像すると。。やっぱり怪物。
Posted by
「ぼくら」少年二人の日常がだんだん血みどろになっていくごとに 少しずつ、自分の体から血を抜いていく作業をしているような「訓練」を、日ごとに書き留めて行く。 このひどい日々をいかに、傍観者として冷静に判断できるか。 〈大きな町〉〈向こう側〉という、変哲もない地名の呼び名は、 戦争な...
「ぼくら」少年二人の日常がだんだん血みどろになっていくごとに 少しずつ、自分の体から血を抜いていく作業をしているような「訓練」を、日ごとに書き留めて行く。 このひどい日々をいかに、傍観者として冷静に判断できるか。 〈大きな町〉〈向こう側〉という、変哲もない地名の呼び名は、 戦争なんてものも、町や国なんかもどうでも、騒ぎ立てるほどのだいそれたものじゃないなんて、冷静に思おうとしているのかなんて思った。
Posted by
戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。その日から、ぼくらの過酷な日々が始まった。人間の醜さや哀しさ、世の不条理――非情な現実を目にするたびに、ぼくらはそれを克明に日記にしるす。戦争が暗い影を落とすなか、ぼくらはしたたかに生き抜いていく...
戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。その日から、ぼくらの過酷な日々が始まった。人間の醜さや哀しさ、世の不条理――非情な現実を目にするたびに、ぼくらはそれを克明に日記にしるす。戦争が暗い影を落とすなか、ぼくらはしたたかに生き抜いていく。人間の真実をえぐる圧倒的筆力で読書界に感動の嵐を巻き起こした、ハンガリー生まれの女性亡命作家の衝撃の処女作。
Posted by
はるか昔、若かりし頃に面白いよ!と友人に勧められて漸く読んだ。 うん。面白い。面白かったんだけど。 何ていうか、これは面白い本。じゃないね。 泣ける本。だね。 これは私が年を取ったから?
Posted by
戦時中、母親に祖母の元へ預けられた双子の少年は、敗戦の影が色濃い荒んだ町で、あまりに純粋な探究心から倫理観を疑うような行為に手を広げていってしまう。 祖母、将校、隣人の娘、司教、司教に仕える女性…どの人物にも歪んだ面があり、心のネジは外れている。 それは主人公の双子も例外ではなく...
戦時中、母親に祖母の元へ預けられた双子の少年は、敗戦の影が色濃い荒んだ町で、あまりに純粋な探究心から倫理観を疑うような行為に手を広げていってしまう。 祖母、将校、隣人の娘、司教、司教に仕える女性…どの人物にも歪んだ面があり、心のネジは外れている。 それは主人公の双子も例外ではなく、ただただ淡々と出来事のみを記す日記のような文体が、異常な出来事を逆に生々しく伝え、背筋が寒くなりました。 病んでいるが純粋さも同居する世界観は、読んでいて少し不快でしたが、一気に最後まで読ませてしまう魅力ある本でした。 2冊出ているという続編も気になります。
Posted by
打ちのめされるようなすごい本とはこういった本のことをいうのだろう。戦争によって翻弄される人々が生々しく描かれている。普通でいられない不幸とそんなことを気にもせずに表面的には淡々と、必要な処世術を学び、自らに負荷を課しながら生きていく双子に戦慄するのである。悪童日記は、本来双子た...
打ちのめされるようなすごい本とはこういった本のことをいうのだろう。戦争によって翻弄される人々が生々しく描かれている。普通でいられない不幸とそんなことを気にもせずに表面的には淡々と、必要な処世術を学び、自らに負荷を課しながら生きていく双子に戦慄するのである。悪童日記は、本来双子たちだけの日記である。それは読者は盗み見ることで少なからず、罪悪感を抱きながらも彼らが経験した出来事を共有することで、共犯者になってしまうのである。とにかく読んでない人は読んでみるといい。
Posted by