錦繍 の商品レビュー
元夫婦の勝沼亜紀と有馬靖明の間に交わされる往復書簡で構成される恋愛小説。文体からも内容からも昭和の時代を感じさせるが、丁寧な言葉遣いに相手を慮り、敬い、愛おしく想う気持ちが溢れ出る。 別れることになったいきさつ、別れてからの苦悩、それぞれの道での苦難や心の動きなどを手紙で相手にど...
元夫婦の勝沼亜紀と有馬靖明の間に交わされる往復書簡で構成される恋愛小説。文体からも内容からも昭和の時代を感じさせるが、丁寧な言葉遣いに相手を慮り、敬い、愛おしく想う気持ちが溢れ出る。 別れることになったいきさつ、別れてからの苦悩、それぞれの道での苦難や心の動きなどを手紙で相手にどのように伝えるか、伝えたい気持ちと伝わってほしくない気持ちの揺れ動きにもしみじみとさせられる。 古い文体だからと言ってけっしてわかりにくいことはなく、すんなりと心に響くのは自分が昭和の人間ってだからこそだろうが。これは昭和を代表する男優、女優の語りで聞いてみたい。
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おそらく若い頃に読んでいたら、不幸な終わり方と捉えたかもしれない。でも、中年の今は、辛い過去もしっかりと受け止めることで、今を生きることができる、強く生きるとはこういうことなのだろうと思う。 よい時期があれば、わるい時期もある。重ねた月日が、自分の考え方を変えた気がする。
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『金閣寺』『錦繍』は美しい文体の小説の最上位に君臨する。そんな書き込みを読んで、宮本輝さんの小説を手に取った。 別れた夫婦、靖明と亜紀が十年ぶりに再会し、そこから始まる往復書簡。二人が別れるきっかけになった事件の真相、夫婦の心模様が丁寧に時間をかけて綴られている。ふたりの手紙に込...
『金閣寺』『錦繍』は美しい文体の小説の最上位に君臨する。そんな書き込みを読んで、宮本輝さんの小説を手に取った。 別れた夫婦、靖明と亜紀が十年ぶりに再会し、そこから始まる往復書簡。二人が別れるきっかけになった事件の真相、夫婦の心模様が丁寧に時間をかけて綴られている。ふたりの手紙に込められた想いが織りなす錦繍(色鮮やかで最高級の織物)はたおやかな美しさ。分厚い手紙の中には二人の互いへの想いがそこかしこに残り、追想から昇華へとゆっくり熟成されていく。 二人の書簡に出てくる人物達も魅力的だ。 亜紀が通い詰めたモーツァルトの音楽しかかけない喫茶『モーツァルト』。亜紀の、「生きていることと死んでいることとは、もしかしたら同じことなのかもしれません」という言葉がマスターの心を揺さぶる。マスターのおすすめは交響曲第39番。「十六分音符の奇跡」だと。読み終わった後、このシンフォニーを聴きたくて、夜の散歩のお供に連れて行った。 でも、何より惹かれるのは謎の女性、由加子。彼女が願っていたことは何だったのか。それがこの小説の主題でないにせよ、心にいつまでも引っ掛かる。 宮本輝さんの小説。これから本棚に増えていきそう。
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宮本輝さん、昔よく読んだ作家さんだったので、何十年かぶりに読んでみました。 生きると言う事は、なんと大変なことか、、
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手に取ったきっかけはGeminiが勧めてくれたから。 あれやこれや愚痴やらなんやらをAIに聞いてもらいながら「そんな私に面白い小説を教えて」と言ったらこの本が挙がった。 そしてまんまと手に取り、あっという間に読了し、感想を書いている。 短い小説の割には、往復書簡で触れられる時...
手に取ったきっかけはGeminiが勧めてくれたから。 あれやこれや愚痴やらなんやらをAIに聞いてもらいながら「そんな私に面白い小説を教えて」と言ったらこの本が挙がった。 そしてまんまと手に取り、あっという間に読了し、感想を書いている。 短い小説の割には、往復書簡で触れられる時代は幅広く、それなりの数の登場人物が出てくる。のに読みやすくて良い。 元夫婦のやりとりで物語が展開される中で、夫からの書簡はちょっと、、、詳らかにあれやこれや書きすぎでは?と思ったけど、あれやこれや書いてくれたから、夫を取り囲んできた人たちの魅力が伝わってきた。そしてきっと、書簡の向こうの生活では虚勢を張っていたせいで、亜紀さんへのお手紙では少しナヨっとしてしまったのかなと思うと、愛しく思って、しまわなくもない。かな。 両人共に言葉が綺麗で、品がある。それに触れられるだけでもこの本を読んでよかったし、解説にもあったけど、通信手段が充実している現代で敢えて手紙を用いることは、それが手紙であることにより意味を与えるというのは非常に同感。 きっと、もうこんな綺麗な言葉でお手紙を書く方は少ないんでしょうね。そんなことを思うと少し寂しい。
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男女の往復書簡で書き綴られている小説。 学生の頃読んで印象に残っていたので、改めて読んでみたら内容を全く忘れていてこんなに悲しくて寂しい内容だったのかと思いました 昭和な感じがします
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恋人や夫婦でなくても、この世界のどこかに自分のことをとてもわかってくれている人がいて欲しいものだと思う。
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手紙のやり取りを通して、夫婦であった2人が過去と向き合い、またこれまでの人生を振り返り、未来へと目を向けていく様子が描かれていて、晴れやかな気分で読み終わることができました。 手紙を書くという行為は、自分と向き合うということなのかなと思います。
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人って愚かな生き物だなぁってつくづく思う。ほんの一瞬の小さな決断が小さな傷を生みその傷は癒えるどころか大きくひろがりやがて人を思いもよらないほどいたみつけていく。有馬が由香子の職場に会いに行ってしまったことが有馬の人生を大きく変えてしまった。あの日、由香子が有休でも取っていれば有...
人って愚かな生き物だなぁってつくづく思う。ほんの一瞬の小さな決断が小さな傷を生みその傷は癒えるどころか大きくひろがりやがて人を思いもよらないほどいたみつけていく。有馬が由香子の職場に会いに行ってしまったことが有馬の人生を大きく変えてしまった。あの日、由香子が有休でも取っていれば有馬が落ちて行くこともなかったのにと残念でならない。いや、有馬が弱かったのた。愚かな男。けれど有馬はいいヤツなのだ。亜紀も愛らしい人。二人の何でもない日常生活が見たかったな。 ずっと泥々と暗い地を這うようなストーリーだが小説の最後は明るい。ラスト近くの新しい登場人物によって有馬の本当の良さ、いや、今まで本人ですら知らなかったような新たな一面出てきて、そのことで亜紀までつられて明るくなっている。そして読んでいる私にもなんだかわけのわからない希望が湧いてきて、幾分優しくなれた気がする。気がするだけですけど。いつも私の本棚の一番手に取りやすいところに置いてある大好きな小説のひとつです。
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外的要因に対して因果を結びつけるのは不可能だ。 自分の納得のいく理由や意味を探したって、それが正解という訳ではない。 それでも考えずにはいられない。 そうでないと苦しい世界で生きられないから。
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