熟柿 の商品レビュー
人を殺害する気はなかったがパトカーに乗せられ 捕まった人と 明らかに殺意を持ってナイフを刺したがパトカーに乗せられず捕まらなかった人 ひき逃げを起こし獄中で出産し 息子に会えない人生 母親が犯罪者の子供の母親に死なれた子供どっちがより不幸か、子供が成長して社会に出て生きていくう...
人を殺害する気はなかったがパトカーに乗せられ 捕まった人と 明らかに殺意を持ってナイフを刺したがパトカーに乗せられず捕まらなかった人 ひき逃げを起こし獄中で出産し 息子に会えない人生 母親が犯罪者の子供の母親に死なれた子供どっちがより不幸か、子供が成長して社会に出て生きていくうえでどっちが障害になるか考えてみろと夫に言われる 話せないし姿も分からない 写真も送ってもらえない 息子に会いに行こうとするが会えない 前科、コロナのため職を転々ともしなければならない ただ自分が死んだ時に息子にお金を残すために 運転は本当に気をつけなければならないんだなと 気を付けていてもどうしようもならないこともあるけれども 夫が酷すぎる 見放しすぎる 写真くらい送ってあげてよ 熟柿ってそういう意味なんだ その時が来て本当に良かった
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年代に寄って大きく読了感が変わると思う。 その人の境遇や環境、経験で この本の理解度は変化する。 焦ってもいい事はない。 けどどうしても焦ってしまう。 人生ゆっくりでいい。 『熟柿』この言葉の意味をきちんと理解できた時、 自分の心は成長し、熟柿していく。
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妊娠中のかおりは伯母の葬儀の帰り道、泥酔した夫を助手席に乗せ、ひき逃げ事件を起こしてしまう。 服役中に息子を出産するも、 「母親が犯罪者の子供と、母親に死なれた子供と、どっちがより不幸か、考えてみろ」 夫にそう言われるがままに離婚する。 息子に会うこともできず、写真すら見せて...
妊娠中のかおりは伯母の葬儀の帰り道、泥酔した夫を助手席に乗せ、ひき逃げ事件を起こしてしまう。 服役中に息子を出産するも、 「母親が犯罪者の子供と、母親に死なれた子供と、どっちがより不幸か、考えてみろ」 夫にそう言われるがままに離婚する。 息子に会うこともできず、写真すら見せてもらえず、ただただ会いたいと想い続ける。 真面目なかおりは、自分の犯した罪を重く受け止め、ひたすら働き続ける。 自分の罪は許されない。 人として当然のことを当然に行わなかったがゆえに、人生を踏み外してしまったのだ。 しかし息子に会いたい想いだけは断ち切れない。 投函することのない息子への手紙を心の中で語りかけながら、会いたいと願う。 長い長い16年間… 主人公のかおりは、どこかふわふわと危うさがあり、しっかりして!と思ってしまう。 そんな彼女だから悪意を持つ人間も近づくが、また助けてくれる人も現れる。 そんな長い月日が淡々とした文章で綴られていくのだが、ぐいぐいと惹き込まれ、先へ先へと頁を捲る手が止まらない。 私はどうしても、かおりの元夫に苛立ってしまう。 何故、妻と子を守ってあげられなかった? もやもやしたままラストへ向かう。 そして十一章、怒涛の展開が! 『熟柿』 このタイトルが素晴らしい。 静かな文章に心を揺さぶられる一冊だった。
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熟柿とは── 熟した柿の実が 自然に落ちるのを 待つように、 気長に時機が来るのを 待つこと。 この物語はまさにそのタイトルの通り あっ! やってしまった… 妊娠中の女性は激しい雨の降る夜、車で老婆をはねてしまった あっ! やってしまった… 助けずにその...
熟柿とは── 熟した柿の実が 自然に落ちるのを 待つように、 気長に時機が来るのを 待つこと。 この物語はまさにそのタイトルの通り あっ! やってしまった… 妊娠中の女性は激しい雨の降る夜、車で老婆をはねてしまった あっ! やってしまった… 助けずにそのまま逃げ去ってしまった あっ! やってしまった… その取り返しのつかない過ちが、あったはずの平凡な幸せを奪い去った その後は… 服役中に息子出産 夫とは離婚 出所後息子には会えず 自らの罪を隠して生きる 16年… 彼女が柿が熟すの待った期間だ 長かったのか、短かったのか、それは彼女にしかわからない ただ、これで熟柿が終わるかどうかもわこらない ここからが新たな熟柿の始まりなのかもしれない
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妊娠中にひき逃げ死亡事故を起こした主婦は、服役中に出産し、刑務所を出てすぐに離婚した。 出産以来一度も会っていない我が子。 ひき逃げ犯の息子という事実を抱えて生きていかなければならない幼い我が子に「会いたい」などという感情をもつことも憚られる母親。 罪を償えば、その後のことは誰に...
妊娠中にひき逃げ死亡事故を起こした主婦は、服役中に出産し、刑務所を出てすぐに離婚した。 出産以来一度も会っていない我が子。 ひき逃げ犯の息子という事実を抱えて生きていかなければならない幼い我が子に「会いたい」などという感情をもつことも憚られる母親。 罪を償えば、その後のことは誰にも遠慮せずに生きていくことはできるものだろうか。 「自分も一歩間違えれば」 その一歩を踏みとどまれた側の人間と、自分との隔たり。 将来への展望を考えることが、果たして正しいのかと疑いたくなる現実。 いずれ自分の罪は息子に露見する。 なぜ母親は父と離婚したのかを知る事になる。 服役中に刑務所内の産室で生まれた事実に衝撃を受けるだろう。 その時息子は、自分を拒むかもしれない。 いっそ死んだ母親でいてほしかったと、別れた元夫のように願うのかもしれない。 どんなに言葉を尽くし心からの謝罪をしたとしても、ひと一人が亡くなっているという現実が取り返しがつかないことに変わりはない。 息子に一目会いたいという母親としての感情と、息子の苦しみや拒絶を避けたいという母親の感情。 もしも自分だとしたらどちらを選ぶのだろうかと考えるも、答えは出なかった。 この作品は、被害者や被害者遺族との関係性にはあまり触れていない。 大抵の小説はこの場合『贖罪』をテーマに、主人公の苦しみや葛藤を描くものが多い中、本作はその描写がわずかであり新鮮だった。 それは、この「熟柿」という物語が、時機がくるのを待つことという「成就」をテーマにした一冊だからだろう。 熟柿。 物事の成就には適した時期がある。 罪を犯した母親と、その息子の対面。 その対面が叶ったとき、今まで母親が見ることのできなかった将来の展望を温かな光とともに見た気がした。
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一気に読んだ。途中何度も苦しくなりながら。 確かにひき逃げは罪だ。もし大雨の中、人をはねたとしても、すぐに車を降り、救急車を呼ぶべきだ。でもできなかった。罪だ。でもこの小説を読むと、そんなこともあるのかもと思える。普通のいい人でも、一瞬の判断を間違ってしまうこともあるかもと思う。...
一気に読んだ。途中何度も苦しくなりながら。 確かにひき逃げは罪だ。もし大雨の中、人をはねたとしても、すぐに車を降り、救急車を呼ぶべきだ。でもできなかった。罪だ。でもこの小説を読むと、そんなこともあるのかもと思える。普通のいい人でも、一瞬の判断を間違ってしまうこともあるかもと思う。 2年半服役して罪は償えたはずなのに、その後の人生、なかなかうまく進まない。いや、要所要所でいい人と出会ったりもしてるので全く不運だということでもないのかもしれない。でも息子にも会えず、それが何よりの罰となっている。 こんなに頑張ってるのになかなか復活できないと思って読んでいて苦しかったが、だんだん将来の展望が見えてきて、土居さんとの出会いもあって。 とうとう息子とも会えた。本当に良かったと心の底から思えた。御涙頂戴の劇的再会でないのも良かった。リアルな感じだった。
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良かった… 読み終えてしみじみ感動に包まれた。 人生を踏み外した女性の話。 前科があり、それ故に家族を失い職を失い、コロナ禍に遭い、切り詰め、働き詰めながら貯めた全財産を盗まれ、やりきれない人生だけど、粛々と生きてきた。 デリカシーのない友達や同僚の言葉に読みながらイライラし、...
良かった… 読み終えてしみじみ感動に包まれた。 人生を踏み外した女性の話。 前科があり、それ故に家族を失い職を失い、コロナ禍に遭い、切り詰め、働き詰めながら貯めた全財産を盗まれ、やりきれない人生だけど、粛々と生きてきた。 デリカシーのない友達や同僚の言葉に読みながらイライラし、息子の写真すら見せてもらえないことに憤り… この物語は女性の途中までだ。きっとこの後も必死に生きていく。ただ、それまでよりも豊かな人生になると思えた。
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1人の人生の時間の長さを感じられる1冊だと思いました。 物語って、時系列が経った流れだとしても1冊読む中では一瞬に感じるのに、これは自分の時間すらかなり経ったのかと錯覚する感覚でした。 1人の女性の普通の家庭で普通の幸せを過ごすはずの一生と、先の見えなくなった暗くて苦しい一生の対...
1人の人生の時間の長さを感じられる1冊だと思いました。 物語って、時系列が経った流れだとしても1冊読む中では一瞬に感じるのに、これは自分の時間すらかなり経ったのかと錯覚する感覚でした。 1人の女性の普通の家庭で普通の幸せを過ごすはずの一生と、先の見えなくなった暗くて苦しい一生の対比が、ぶつかり合うというよりかは、なだらかに進んでいくからいい意味で呆気なくて、でも確かに心に残る描き方だと思います。 そしてハードカバーも特徴的なデザインだと思いますが、このデザインだからこそ物語の綺麗さが際立つような気がしました。
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急に人生が暗転する恐怖、とてもあり得る話で、続きが気になり一気読み。 思ってた通りに悪い方向にいくのは、まだ楽観的思考が残ってて隙も抜けもあるから? 自分が壁からコッチ側の人間であることを、もっと自覚する必要があるの? 一度の過ちが、周りの目も、自身の人格まで変えて、幸せになって...
急に人生が暗転する恐怖、とてもあり得る話で、続きが気になり一気読み。 思ってた通りに悪い方向にいくのは、まだ楽観的思考が残ってて隙も抜けもあるから? 自分が壁からコッチ側の人間であることを、もっと自覚する必要があるの? 一度の過ちが、周りの目も、自身の人格まで変えて、幸せになってはいけない想いが染み付いてしまう過程がリアルだった。 辛くてやるせないことが多いけど、拾う神もあり、いろんな縁と繋がって、流れに身を委ねて受け入れて、劇的じゃない日常の一環として今を生きていく、強さも感じた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
本の雑誌2025年度上半期ベスト10 1位。 今年読んだ本の中でマイベストかもしれない。 『伯母の呪い』など噂しながら伯母の葬儀からはじまるこの本。書き出しから心を掴まれました。(ちなみにわたしも柿をスプーンで食べるジュクジュク派) いまひとつしっかりしていない主人公・市木かおり、自分勝手な発言をする夫、一癖ある友人…。どこか心の底にもやっとしたままストーリーは進み、そしてそして…。 そう、あの時、くじゅうろさんをなぜ待てなかったんだろう、と涙。拓と話しながら、かおりは母親らしくなっていっていきます。 前を向きながら読みおえました。5時間3分で読了です。 熟柿…とてもいい言葉です。 翻訳されて、全世界の人に読んでもらえたらいいな、と思います。
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