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熟柿 の商品レビュー

4.2

178件のお客様レビュー

  1. 5つ

    66

  2. 4つ

    71

  3. 3つ

    30

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2025/11/09

お話も文体も、無駄なものがなくシンプルなのがとても良かった。 あるべき場所にきちっと並べられているような小気味いい文で、不思議と映画を見るように脳内にイメージがどんどん湧いてきて、佐藤さんの他の作品も読みたいなと思った。 話の展開や主人公の思いが一貫してシンプルだからこそ、言葉...

お話も文体も、無駄なものがなくシンプルなのがとても良かった。 あるべき場所にきちっと並べられているような小気味いい文で、不思議と映画を見るように脳内にイメージがどんどん湧いてきて、佐藤さんの他の作品も読みたいなと思った。 話の展開や主人公の思いが一貫してシンプルだからこそ、言葉や情景に没頭できる。 思ったようにはいかない、自分ですら自分の想像を裏切る。物事はそんなに単純ではないし、一つ解決したと思えばまた違う壁にぶつかる。それでもただ止まっているだけでなく時間は進み、状況も変わる。 そういうとてつもないリアリティが、絶望だけで終わらない明るさがこの作品にはあった。 いいことだけ、綺麗なところだけを語らない潔さがあった。 何か恩恵を受けるというのは、その周りにある恩恵とは言えない部分も一緒に引き受けるということ。 美味しい時期に美味しい部分だけ食べるのではなく、「熟した柿の実が自然に落ちるのを待つように、気長に時機が来るのを待つこと」。 それが簡単ではないということはこのお話でしっかりと描かれているし、だからこそとても大切なことなのだと分かる。子育ての経験は無いけど、大切にしたいと思える相手にほど、焦らず、時機を待つということが大事なのだと、この年齢だと分かり始めてくる。 そんなタイミングで読めて良かったなと思える一冊。

Posted byブクログ

2025/11/08
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※このレビューにはネタバレを含みます

最後には息子と会えるのだろうと思いながら読んだ そしてとうとう会えた時の二人の間のやりとり 舞台設定は秀逸 このシーンは泣けた  また夫とのすれ違う記憶 空白で生まれるズレ 細部に及ぶメリハリ さすがと思った

Posted byブクログ

2025/11/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

良い評判を聞いていただけに期待値を上げすぎてしまったかもしれない。 主人公が周りが見えていなくて行動が浅はかすぎるし、そもそも人にぶつかったかもしれないのに逃げるところも共感できない。 可哀想ではあるけれど、自業自得だしな…と思う。 子供がいたら少し共感できるところもあるのかも。 「熟柿」の意味は彼女の人生を肯定しているようでよかった。 ルームメイトの斉藤さん本当にイライラした。笑

Posted byブクログ

2025/11/03

けんごさんの動画を見て、そして装丁にも惹かれ購入。 スタートして速攻事件発生。大雨の中パジャマ姿のおばあちゃんを車で引いてしまい、そのまま逃走。その事件を境に生活は一変。お腹の赤ちゃんは刑務所で産み、出所後は離婚…。 本作はその後の「かおり」の物語でした。前科が付いてしまっ...

けんごさんの動画を見て、そして装丁にも惹かれ購入。 スタートして速攻事件発生。大雨の中パジャマ姿のおばあちゃんを車で引いてしまい、そのまま逃走。その事件を境に生活は一変。お腹の赤ちゃんは刑務所で産み、出所後は離婚…。 本作はその後の「かおり」の物語でした。前科が付いてしまったかおりは働き口を求め、全国を転々とする日々。色んな人に出会い、色んなことを体験し、色んなことを思う日々の中で常に引っかかるあの日の事件。あの事件さえなければと読者の自分も思ってしまいました。 ただ、後半思わぬ展開に急ハンドル。元夫との出会い、久住呂さん、実の息子、そして土居さん。色々な人との出会いを経て移り変っていく心情、状況にのめり込みました。 『熟柿』という言葉の二つの意味は伏線回収的な要素があり個人的にGood!ただ、結局晴子おばさんの特徴的なキャラは『熟した柿』を食べるおばさんの位置付けで直接物語に関わってくるわけではない??

Posted byブクログ

2025/11/03

装丁やタイトルのシンプルさと同じく、ただひたすら息子に会いたいというとてもシンプルでひたむきな想いが描かれている。かおりの罪はどんなことがあってもしてはならないことで後から悔やんでも裁かれることは致し方なく、息子が将来、本当の母親の過去を知った時にどう思うかを考えるといたたまれな...

装丁やタイトルのシンプルさと同じく、ただひたすら息子に会いたいというとてもシンプルでひたむきな想いが描かれている。かおりの罪はどんなことがあってもしてはならないことで後から悔やんでも裁かれることは致し方なく、息子が将来、本当の母親の過去を知った時にどう思うかを考えるといたたまれなくなる。でも、自分が同じ立場だったらやはり会いたくて堪らないだろう。長い年月の間にたくさんの苦労や絶望がありこれでもかとの追い討ちが辛すぎる。その先でのやっと叶った息子との邂逅には涙が出た。淡々と語られる中に、陰と光を見た。

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2025/11/03

2025年57冊目 本の帯で 2025年上半期1位とか 最高傑作とか 絶賛されてるコメントとかで 読む前のハードルが高くなりすぎたこの小説 そのハードルを悠々と超え、何かすごい物語に出会えた感動を噛み締めてる 熟柿、じゅくし 読めて良かった

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2025/11/03

口当たりのよい、アルコール度数弱めのお酒を、ごくごく飲み干すかのように、すごい勢いで読了しました。 こういう読書は久しぶりでした。 評判に違わぬ良作。しみじみと味わい深いお話でした。 主人公が設定の世代よりも上に感じるところがなきにしもあらずでしたが、そんなことには目は瞑って物語...

口当たりのよい、アルコール度数弱めのお酒を、ごくごく飲み干すかのように、すごい勢いで読了しました。 こういう読書は久しぶりでした。 評判に違わぬ良作。しみじみと味わい深いお話でした。 主人公が設定の世代よりも上に感じるところがなきにしもあらずでしたが、そんなことには目は瞑って物語を堪能できると思います。 あらゆる登場人物の人間描写も生々しく、おそらく映画化されるだろうな、女優はこの主演がてきたら何らかの賞は取れるだろうな、などと夢想が膨らみました。 しかし、読者がそれそれ思い描く「かおり」にはまるのは、なかなか大変そうです。

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2025/11/02

主人公 市木かおりの27才〜44才の話 主人公は大雨の中運転中に人身事故を起こしてしまう。 視界が悪いとはいえスマホを操作していたかおりは、 その場を逃げ去ってしまう。 ひき逃げだ。しかも殺人。 その後服役し罪を償いひっそりと暮らしていく。 服役中かおりは男の子を出産していた。 ...

主人公 市木かおりの27才〜44才の話 主人公は大雨の中運転中に人身事故を起こしてしまう。 視界が悪いとはいえスマホを操作していたかおりは、 その場を逃げ去ってしまう。 ひき逃げだ。しかも殺人。 その後服役し罪を償いひっそりと暮らしていく。 服役中かおりは男の子を出産していた。 旦那からは離婚を伝えられ、 自分もそれを受け入れる。 服役を終えた後のかおりは、 ちょっとおかしくなってしまったのかな? と思うくらいの文体の表現で 読んでいてゾワゾワした 罪を犯してしまうとその後の人生は 真面目に誠実に生きていても 常に何かに怯え、 住む町、職場をその度に変えていかなければいけないのか、と心が休まるときがなくてとても苦しい。 会えない息子への思いだけで主人公は生きている。 最後の章ですら勝手に読み手の自分に不幸癖が付いてしまい、穏やかに終わるわけがない、 と邪推してしまった 途中で読むことに疲れてしまったが、 希望を願って最後まで読むと このラストが『熟柿』とゆう事なんだなとわかった。

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2025/11/01

おかしてはならない罪をおかしてしまったかおり。 罪を償った後、 千葉から西へ西へと追われていくが その都度、 手を差しのべてくれる人が現れて 何とか生きながらえていく。 最後の地で出会えた土居さんの言葉がいつも深い。  咲ちゃんも真っ直ぐないい子だよね。 苦しくて辛い展開が続くけ...

おかしてはならない罪をおかしてしまったかおり。 罪を償った後、 千葉から西へ西へと追われていくが その都度、 手を差しのべてくれる人が現れて 何とか生きながらえていく。 最後の地で出会えた土居さんの言葉がいつも深い。  咲ちゃんも真っ直ぐないい子だよね。 苦しくて辛い展開が続くけれど それでも読み終えて良かったと思う。 熟柿の意味を噛み締める。

Posted byブクログ

2025/11/01

一時の判断の誤りのゆえに、刑に服すことになり、獄中出産した息子を思いながらも会うことも叶わず流転を続ける主人公。彼女の切々とした言葉、息子への思い、後悔などがとてもリアルで、彼女の身を案ずる身内であるかのように引き込まれて読み続ける、なかなか重い読書体験だった。

Posted byブクログ