星を掬う の商品レビュー
主人公が夫から逃げるために向かった「さざめきハイツ」で自分を捨てた母と再会するところから始まる物語。さざめきハイツに住む人達はみな「普通」の家族関係を築けなかった人達で、それぞれもがいていて。人間のその時々の感情が場面場面で溢れ出ていて、そのまま自分に同化して読んでいて辛くなる。...
主人公が夫から逃げるために向かった「さざめきハイツ」で自分を捨てた母と再会するところから始まる物語。さざめきハイツに住む人達はみな「普通」の家族関係を築けなかった人達で、それぞれもがいていて。人間のその時々の感情が場面場面で溢れ出ていて、そのまま自分に同化して読んでいて辛くなる。でも「私の人生は私のもの」など心に響くメッセージも多かった。ひとりが手に掬い取れるものは少なくても、その中に星のようにうつくしく輝きを放つ希望があれば、それだけで幸せなのだと思う。
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やっぱり町田作品、好きですね。いろんな闇を抱えた人が、これでもかというくらい出てくるのは、もはや定番。しっかり引き込まれて一気読みしました。読後は、皆が救済された爽やかさを覚えましたが、元ダンナや美保ちゃんのキャラクターは、読後の爽やかを超越する「嫌な人間」でした。「そのようなキ...
やっぱり町田作品、好きですね。いろんな闇を抱えた人が、これでもかというくらい出てくるのは、もはや定番。しっかり引き込まれて一気読みしました。読後は、皆が救済された爽やかさを覚えましたが、元ダンナや美保ちゃんのキャラクターは、読後の爽やかを超越する「嫌な人間」でした。「そのようなキャラ」として設定されたのでしょうが、不愉快すぎて読み飛ばしたいシーン、セリフとか…うん。
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元夫からのDVを受けていた千鶴がラジオ番組を通じて恵真と彩子、自分を見捨てた母と共同生活がはじまっていく…。母娘の夏の思い出に深い意味があったしそれぞれの人生に幸せとは何なのか考えながら。 お互い傷つけ合ったりしながらお互いのこと知ろうとしてたり。 母は若年性認知症を発症している...
元夫からのDVを受けていた千鶴がラジオ番組を通じて恵真と彩子、自分を見捨てた母と共同生活がはじまっていく…。母娘の夏の思い出に深い意味があったしそれぞれの人生に幸せとは何なのか考えながら。 お互い傷つけ合ったりしながらお互いのこと知ろうとしてたり。 母は若年性認知症を発症しているとのことで共同生活のなかで介護をしているシーンが出てくるけれど記憶があやふやになったり家族や大切な他人の名前を忘れたり、ろう便や尿失禁するなど日常生活にも支障が出てきたりして毎日終わりのみえない介護をするのはストレス過剰にもなるし心身共にやられる。 介護職で特養に勤務してるけど認知症ケアは何があってるのかこの人にはどう対応したらいいのかって思い悩んだりもしてしんどい。 介護とどう向き合っていったらいいのか考えさせられた 千鶴たちが生きづらさからいつか少しでも心や体の負担が軽くなれればいいかなと思う。
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タイトルとジャケットに釣られて購入…。 装丁がとても素敵です。 千鶴は幼き頃に母に連れられ、1ヶ月くらい旅行をして記憶がある。その後、母は失踪。捨てられたという感覚を持ち、生きてきた。 やがて職場のエースであった弥一と結婚をするが、DVを受けることに。弥一と別れた後も、変わらず...
タイトルとジャケットに釣られて購入…。 装丁がとても素敵です。 千鶴は幼き頃に母に連れられ、1ヶ月くらい旅行をして記憶がある。その後、母は失踪。捨てられたという感覚を持ち、生きてきた。 やがて職場のエースであった弥一と結婚をするが、DVを受けることに。弥一と別れた後も、変わらずDVを受け、金銭をせびられていた。 ある日、企画で報奨金の金銭目当てに母との思い出を手紙で綴り、ラジオ局にそれを送ると、その思い出がラジオで読まれることに。すると、千鶴の母を知っているという恵真からの便りに会う。弥一からのDVを避けるため、恵真の薦める「さざめきハイツ」で暮らすことにした千鶴。 そこで、若年性認知症に罹る母の聖子と再会し、家事を完璧にこなす彩子、彩子の娘で彩子と確執のある美保、聖子が面倒を見ていた恵真らと暮らすことになる。 そして、その中で自分を取り戻していく…。 とても綺麗なお話です。 綺麗な、というのは恋愛小説にあるような、表面的な話の美しさではなくて。 現実の世界によく見られるDVや病、介護の難しさ、親子の憎愛などを語りながら、それを理想的に描いたり、誤魔化したり、美化したりすることなく、その中で光を描いているからです。 人生って辛いことが多くて。むしろ辛いことの方が多くて。どんどんといろいろものが通り過ぎて、こぼれ落ちていく。 それでも生きていけるのは、手のひらに救える、そこに残るほんの少しの星が人生にはあるから。 「きっとこれからもお母さんは記憶の海を掬うんだよね。そしたらさ、どんなものを掬い上げたか。わたしに話してよ」 どれだけの綺麗な星を、人生では好きな人といっしょに眺められるんでしょうね。そして、それを忘れずに覚えていられるんでしょうか。 とても素敵な作品です。
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どん底の千鶴が、周りの人との関わりを通して成長していく姿に勇気をもらった。 子供は親のものではないし、子供の人生の責任を親が取る必要もない、親子って難しい。 自分の人生は自分だけのもの。
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認知症というのは、記憶や感情を自身の奥底にある海に沈める病気だ。 本人さえも、その水面は簡単に掬えなくなる。 ならばせめて、その手に掬い取れるものが星のように美しく輝きを放つものであればいい。 悲しみや苦しみ、そんなものは何もかも手放して、忘れてしまって構わない。 キラキラした星だけを広げ、星空を眺めるよう幸福に浸ってほしい。 その星々のひとつに、私との記憶もあったらいいなと思う。 人は皆綺麗な思い出だけ持ってるわけでは無いと思うけど、その深い海の中で眩しい幸せを持っていてほしいと願う彼女を心から暖かく、素敵だなって思えた作品でした。 住居人のそれぞれを丁寧に書かれてる様子もとても好きで、おすすめできる作品です。
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面白いっていう表現もちょっと違うのですが、のめり込んで読みました。良かったです!!!! 弥一はほんまに最低最悪大っ嫌いです
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※このレビューにはネタバレを含みます
主人公千鶴がゆっくりと、周りの個性的で思いやりのある人達に囲まれ、穏やかに幸せになるお話。 認知症という病気の具体的な現場のようなものもしれてよかった、自分だけでなく周りの人にも影響を与える。下の世話をするのはいくら大切な人でも辛い、でも支えたい、この葛藤は多くの人が経験するのだろう。 結城と恵真が結ばれてよかった。 結城さんは絶対かっこいい。
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最後の解説に、「町田その子さんは、世間という集団からはじかれた人を魅力的に描く作家です。」とあった。『52ヘルツのクジラたち』も、辛い出来事がいっぱいあったけど、この話もこれでもかというくらい壮絶な人生を送っている主人公が出てくる。しかし、暗い・辛いだけでなく、少しずつ再生される...
最後の解説に、「町田その子さんは、世間という集団からはじかれた人を魅力的に描く作家です。」とあった。『52ヘルツのクジラたち』も、辛い出来事がいっぱいあったけど、この話もこれでもかというくらい壮絶な人生を送っている主人公が出てくる。しかし、暗い・辛いだけでなく、少しずつ再生される親子の絆や、個性強めのキャラクターの同居人が、物語をいい方向に持って行ってくれているように感じる。そして、ラジオがうまく話を進めている。タイトル「星を掬う」、主人公は人との大切な絆を掬ったのかなぁ。
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幼い頃に母に捨てたら娘が母に再会して一緒に暮らしていき、事実を少しずつ知っていく話。娘の人生は全てが最悪になっていた。結婚した旦那は商売が上手く行かなくなると借金だけでなく暴力を振るうようになった。それから逃れる一瞬で離婚したが、夜逃げしたが見つかり、生活もままならない状態だった...
幼い頃に母に捨てたら娘が母に再会して一緒に暮らしていき、事実を少しずつ知っていく話。娘の人生は全てが最悪になっていた。結婚した旦那は商売が上手く行かなくなると借金だけでなく暴力を振るうようになった。それから逃れる一瞬で離婚したが、夜逃げしたが見つかり、生活もままならない状態だった。その時に賞金を得るために母との夏の思い出をラジオに投稿したことにより、母と暮らしているという若い女性と出会い物語は進んでいく。 人はうまく行かなくなると人のせいや環境のせいにして、自分で身動きを取れるなくすることを痛感した。社会人一年目、高校時代の部活はそうだった。問題を解決しようとするところから逃げ、顧問の先生、上司からから逃げていた。過度な教育は許されるものではないけど、自身を客観的に見て行動はもう少しできたと思う。主人公は同居人の娘と出会い、暮らしていくことで冷静に自分自身を見直すきっかけになったと思う。DV問題、認知症問題、相続、ストーカー問題、未成年妊娠、ネットで情報漏洩など、一つの物語で世界観を壊さず今ある全ての社会問題をピックアップしてしまう作品は素晴らしい。
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