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ザリガニの鳴くところ の商品レビュー

4.3

168件のお客様レビュー

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2024/07/08

著者ディーリア・オーエンズの本業が動物学者であるということに、まず驚かされる。小説家としてのデビュー作で、こんなにも壮大で奥深く完成度の高い作品を生み出してしまった。終盤は、ページを繰る手を止められなくなる。 その一方で、この小説は、動物学者である彼女だからこそ書くことができの...

著者ディーリア・オーエンズの本業が動物学者であるということに、まず驚かされる。小説家としてのデビュー作で、こんなにも壮大で奥深く完成度の高い作品を生み出してしまった。終盤は、ページを繰る手を止められなくなる。 その一方で、この小説は、動物学者である彼女だからこそ書くことができのだとも強く思う。 青年の不審死を巡るミステリを縦糸として通しながら、家族に捨てられ天涯孤独となった主人公の少女のサバイバルストーリーが骨太に語られる。 崩壊した家族の悲壮、共同体における理由なき差別の醜悪、救いの手を伸べる善意の尊さ、思春期における異性への押さえきれない欲望の純粋さと残酷…人の世における苦しみと希望が多面的に描かれると同時に、湿地の環境に溶け込んで暮らす主人公は、生き物たちと交流する中で、人智を超えた自然の真理を学び取っていく。その見地からすれば、所詮人間の営みやエゴなど、人の意識が生み出した幻想でしかないと思えてくるのだ。 この崇高さ。 格の違いを感じさせてくれる小説。

Posted byブクログ

2024/07/07

ミステリ色もあるが、少女の人生の物語。 両親と兄姉皆それぞれが家を出ていき、10歳から街はずれの湿地の小屋で一人で暮らす少女の造形と物語世界の湿地の自然の描写がすばらしく、”湿地の少女”が感じる不安・孤独・怖れが伝わってくる。 この静かな作品がアメリカでもベストセラーになったと...

ミステリ色もあるが、少女の人生の物語。 両親と兄姉皆それぞれが家を出ていき、10歳から街はずれの湿地の小屋で一人で暮らす少女の造形と物語世界の湿地の自然の描写がすばらしく、”湿地の少女”が感じる不安・孤独・怖れが伝わってくる。 この静かな作品がアメリカでもベストセラーになったという。都会的な、刺激的な、エンタメ作品が溢れているイメージがあるが、アメリカも捨てたもんではない。

Posted byブクログ

2024/07/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

前半はなかなか読み進められなかったけど、後半は一気に。家族が次々と去って行ってしまい一人残された少女カイアが自分独りの力で生き抜く姿と彼女を取り巻く自然の描写。小さな町であるが故に排他的で、少女は黒人の夫婦だけに見守られてなんとか生きていく。やがてテイトという青年が関わってくれて、文字を覚えてからは世界が広がり、テイトにも愛を感じるが、進学を機に棄てられたと思ってしまう。傷心のところに現れたチェイスに身をゆだねてしまうが、騙されていることに気づく。チェイスも貝殻のペンダントを肌身離さずしていたなら、カイアを愛してはいたんだろう。ただ、その愛情表現が乱暴であったためにカイアは身も心も傷つけられてしまう。 チェイスが死んで、その犯人捜しの章と、少女カイアが成長していく章が交互に進み、やがて収束し、そしてハッピーなエンディングへ、と思いきや。 フーダニットのミステリー、少女の成長と愛情、貧困と孤独、差別と偏見、そして環境問題も含まれる小説だった。

Posted byブクログ

2024/07/05

分厚い本でしたが、とても面白かったです。細かな自然描写が多い小説は読むことに疲れるため、あまり好きではなかったのですが、本作はそこに住む生物含め、情景が目に浮かぶほど詳細に描かれていて、逆にそれがなければ主人公の心の描写や世界観をここまで深く描くことはできなかっただろう、と思いま...

分厚い本でしたが、とても面白かったです。細かな自然描写が多い小説は読むことに疲れるため、あまり好きではなかったのですが、本作はそこに住む生物含め、情景が目に浮かぶほど詳細に描かれていて、逆にそれがなければ主人公の心の描写や世界観をここまで深く描くことはできなかっただろう、と思います。少女のときから強く生き抜いてきた彼女の強さと、そしてその静かな生涯にとても感動しました。孤独だけれども、支えてくれる人が少なからずいた彼女はその意味で幸せだったとも思いました。

Posted byブクログ

2024/07/04

そっか、やっぱりそうなんか。だよな、「貝殻のペンダント」が出て来ない時点で、それしか無いかぁ。もしや、テイト?はたまたジャンピン?といろいろ選択肢が狭まり…でもカイヤは人生を全う出来て良かった…のか?

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2024/07/04

非常に面白い作品でした。登場人物もそれぞれの個性があり、物語に没入するのに時間は殆ど必要ありませんでした。ミステリーという枠では捉えきれない幅の広い物語で、描写も細かくページを捲る手が止まりませんでした。主人公のカイアを幼いころから優しく見守ってきたジャンピンとその妻であるメイベ...

非常に面白い作品でした。登場人物もそれぞれの個性があり、物語に没入するのに時間は殆ど必要ありませんでした。ミステリーという枠では捉えきれない幅の広い物語で、描写も細かくページを捲る手が止まりませんでした。主人公のカイアを幼いころから優しく見守ってきたジャンピンとその妻であるメイベルそして恋人のテイトのような偏見を持たずに困った人に寄り添えるような人物に自分もありたいと思わせてくれる一冊でした。

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2024/07/03

自然や生物が動物学者ならではの視点で表現されていてとても良い!言葉の持つ力、美しさを再確認させられた作品でした。 海外ミステリと思って読み始めたけれど、ミステリは一種の要素で自然学、少女の成長譚、社会派小説などなど色々な側面を持った、一言では言い表せられない素晴らしい小説です。

Posted byブクログ

2024/07/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

海外文学のこの感じ、すごく懐かしい感じがして一気読み! 「彼女たちのはしゃぎ声はカイアの沈黙を際立たせ、仲のいい姿はカイアの孤独を増幅させた。」 この文章で、自分自身の孤独を感じた瞬間が鮮明によみがえってきた。それまでカイアの孤独について事実としてしか捉えられなかったのが、まるで自分ごとのように孤独を感じて、ページを捲りながら心がヒリヒリと痛んだり、チェイスに怒りを覚えたり、優しくしてくれる人たちの暖かさを心から感じたり。 誰かと一緒にいるために自分を手放すっていうのが、忘れられない。人間関係を築く上である程度自分を犠牲にしている部分はあるように感じて、だけどやっぱり本当の孤独では生きていかれないと思うし、なんだか切ない気持ちになった。 解説の、カイアが自然そのもののシンボルであるというのに物凄く納得。 あと、「心臓があばら骨を叩いていた」っていう表現が好きすぎる

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2024/07/01

結末は予想外ではない。 納得と共感は容易い。 他の道は危険すぎたのだから。 保安官がコレクションに魅了されてしまうところ、漁師が自分の記憶を疑ってみるところ、チェイスが生物の学名を聞いて呆気にとられるところ。渡る世間に鬼はなし。単に弱者の選択肢はより限定的だというだけ。 60...

結末は予想外ではない。 納得と共感は容易い。 他の道は危険すぎたのだから。 保安官がコレクションに魅了されてしまうところ、漁師が自分の記憶を疑ってみるところ、チェイスが生物の学名を聞いて呆気にとられるところ。渡る世間に鬼はなし。単に弱者の選択肢はより限定的だというだけ。 60年代のノースカロライナは遠く感じるが、見えないところで同様の目に遭う人は現代でもそこかしこに居る。 古本市で見かけて題名が読みたい本リストとして記憶にあったため気まぐれに購入。スマホも忘れてあっという間に読んだ。充実した時間だった。

Posted byブクログ

2024/06/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

めっっちゃいい。厚みのある本で、途中で離脱しかけつつようやく読み終わった。読み終わった瞬間2周目に入りました。アマンダ・ハミルトンの詩はどのあたりから出てきてるんだ! どれだけ寄り添ってくれる人にも本当の姿を全ては見せないカイアの生き方は、湿地に住む生き物そのものだなと思う。 湿地も沼地もこの時代背景も知らないけど、叙情的な描写で想像力が膨らむ。 ちょうど読み終わったらNetflixに映画が上がってた。 こんな奥行きのある長い本を2時間で…どういうふうに映像化されてるのか観るのが楽しみ!

Posted byブクログ