ザリガニの鳴くところ の商品レビュー
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分厚い本だったがすっかり没入してしまった。 小さい女の子が家族に見捨てられ 湿地の古い小屋で命ギリギリで生きて行くのは あまりにも孤独で想像を絶する。 自然や動物の描写が繊細で美しく 同時に残酷だった。 クズ男を亡き者にするのは 生きて行くために必要なことだったんだと 単なるミステリー以上に納得した。
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孤独と絶望に打ちひしがれながら生を求め、愛を求める 読み書きを覚えてから生きるしかできなかった生活に光がさしすこしばかり心豊かになる 詩と出会い、言葉のもつ力強さに惹かれた 母さんが残した少ない残り香を嗅ぎ痕跡を探すように、下線の引かれたその詩に意味を見いだす、こじつけと分かっていても縋りたい 期待したときに裏切られるそれでもまだ失われていない残酷な希望を恨みながら "閉じ込められてしまえば 愛は檻にとらえられた獣となり その身を食らう 愛は自由に漂うもの 思いのままに岸に着けば そこで息を吹き返す" 無名の詩人、アマンダ・ハミルトンの詩を辿りながら 雄をしたたかに喰らう蛍のように、カマキリのように、1人湿地の少女として弱く美しく強かに生きた ザリガニが鳴くところに真実を隠して
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美しくも残酷な湿地の生態系を知りつくし、原始的な生存本能の前には人間も同じく残酷であることを理解しながらも、見捨てられ続けた深い悲しみと人間不信にもがき苦しむカイア。 蛍やカマキリの雌が交尾の後に雄を捕食すること、クチバシの赤い点をつつけぬ子には決して餌をあげぬ親鳥、傷ついた親ぎつねが子を見捨てるらしいこと。それらを受け止めながらなお、母に、兄弟に置いて行かれた理由を探し続け、いつか戻ってきてくれるのではないかという淡い期待を捨てきれないカイアに、人間の持つ本質的な「つながり」への渇望、それゆえの孤独を強く感じた。 人種、性別、さらには貧困などによる徹底的な差別が色濃く残る1960年代アメリカの日常の様子に心をいためつつ読み進めた(想像するべくもないけれど)が、無罪を勝ち取り、数々の出版をし、受賞をし、あからさまな差別がなくなったであろう後も外の人とはほぼ交わらず「湿地の少女」であり続けたことを思うと、異端であることを生き切ったカイアには感嘆を禁じえない。 恋愛小説という文脈では、思春期ならではの性の欲望がまるで湿地の動植物を描くように自然に語られ、花開いていくカイアの肉体の成長をとても好ましく感じた。 その一方で、圧倒的な孤独ゆえにテイトやチェイスを人生の拠り所にしてしまうカイアには、恋愛に依存的になってしまう女性像がみてとれ、親との関係性などから男性に依存(あるいは共依存)的になってしまう状況は、時代を問わず普遍的にあるものだということも考えさせられた。 あまりにもテーマが多岐にわたっているため、なんと長いブクログ! 最後にミステリーについて。 ここまで書いたように、ミステリーというよりはカイアという女性の物語に心躍らせながら読み進めていたので、中盤、時代を行きつ戻りつを繰り返すのがややしんどくなり、少しだけ頑張りが必要だった(勢いづいてくる後半の公判シーンが始まるまで)。 個人的にはミステリーとしての結末(犯人探し)以前に、冒頭死体として発見されたチェイスの人物像が、わかってくるにつれてあまりにもクソ野郎(他にいいようが見当たらない)で、犯人が誰であろうともはや殺されたのは致し方なし、、、という気分に。「ミステリーの被害者は、同情がわくような人でないと、犯人探しに熱心になれない」という法則があるのだなと新たに発見した。 長々と書いてしまったけれど、動物学者であるディーリア・オーエンズでなければ書けなかったであろう、なんと読み応えのある、美しく圧倒的な小説だったことか。 読書中に味わった湿地での体験。 至福の時間でした。
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久しぶりに一気読みした。 飽きずに乗れる本読めると嬉しい。 途中までカイアが白人なのか黒人なのか分からんくて混乱してたけど。 まぁカイアが犯人か、味方全員犯人かのどっちかだと思った。テイトが連れてかれた時はそっちかーと思ったら次ページで明かされた。ちがった。 死ぬタイミングは誰が決められる、の詩はカイアじゃなくてチェイスのことだったのか。 判決のシーンはドキドキしたし、気になるけど知りたくない怖い、と思った。登場人物と同じ気持ちになる。 「今までの偏見を捨てて判断してくれ」が新しい偏見を生むのね。ポジティブアクション。悲しいかな現代社会の皮肉になっててつらい。今回の事件は公平に裁くとしたら懲役何年が妥当なんだろうね。 人ひとり殺して死刑か無期懲役、日本の価値観だと厳しく感じる。情状酌量の余地あり、みたいなそんな判断が下せる時代じゃないんだろうけど。 一読者としてはカイアが自分の力で自分の人生を幸せにできたので良かった嬉しい。
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孤独な少女にそっと寄り添うかのような自然と動物の描写が心に響く。少女も自然の中で溶け込んで生きているが、そんな彼女でも誰かと話したいという思いがずっとあり、孤独を感じている。ミステリーの結末はなんとなく予想できたものだったが、そう導いたものを考えると、胸がつまる。
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いやぁ〜。カイヤ。1人で頑張って生きてきて容疑者にまでされて。って思った私の意見は裁判員たちと同じ気持ちだったのかな。 カイヤを可哀想と同情してしまっていた。 からの最後の衝撃。 カイヤが幸せになるための、生きて行くための選択だったんだと思う。 前半はひたすら心が締め付けられるような時代と差別と。その中で優しいテイトやジャンピンのシーンでうるっときてしまう。 後半からは読む手が止まらない。 生物とか自然とか興味ないけど、読んでいてすごく美しい描写作品だと思った。さすが自然の先生?プロが描いた作品だなと。
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感想 心を蝕む孤独。どれだけ勇気を持っていても。どれだけ知恵をたたえていても。私たちは孤独と永遠に付き合い続けることはできない。
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湿地を始め、自然の描写が良かった。 動物学者である著者だからこそ描けるところだと思う。 世界には、似た境遇の人が居ると思うし、救われて欲しい思いです。 面白くて一気に読みましたが、 個人的には大衆的な恋愛やミステリーの方へ走るのではなく、もっともっと自然観みたいなのを掘り下げ...
湿地を始め、自然の描写が良かった。 動物学者である著者だからこそ描けるところだと思う。 世界には、似た境遇の人が居ると思うし、救われて欲しい思いです。 面白くて一気に読みましたが、 個人的には大衆的な恋愛やミステリーの方へ走るのではなく、もっともっと自然観みたいなのを掘り下げた、湿地文学を見たかったです。
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これはすごく考えさせられる小説。 偏見や差別などなく、子供の頃からカイアに寄り添い、最後まで味方でいてくれた人たちの優しさに、自然と涙が出てきて止まらなかった。 子供の頃からずっと成長を見ていたから、カイアにかなり感情移入してたのかもしれない。 だからこそ最後カイアの真実を知っ...
これはすごく考えさせられる小説。 偏見や差別などなく、子供の頃からカイアに寄り添い、最後まで味方でいてくれた人たちの優しさに、自然と涙が出てきて止まらなかった。 子供の頃からずっと成長を見ていたから、カイアにかなり感情移入してたのかもしれない。 だからこそ最後カイアの真実を知った時はかなり衝撃だった。
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親に捨てられて湿地に一人住む少女カイア。6歳で生活の糧を全て自分で得て生き抜いていく。誰の助けも借りず、湿地の貝を売り生活を繋ぐ。大好きだった母親がいつか帰る日を待ちながら…。読んでいて胸が締め付けられるような息苦しさ、悲しみを感じつつ少女に感情移入してしまう。学校にも行かないが、兄の友人に読み書きを教わり、湿地の動植物や貝をスケッチ、生態を詳しく観察した記録は出版社の目に留まり少女は生物自然学者としての道を歩き始める。逞しい少女でも孤独からは逃れたい気持ちが強く、恋する異性を求めてしまうのは仕方ない。交尾をする雄を食いちぎる雌のカマキリ。自分に死の危険が迫るとき、人間も動物も生き延びるDNAが動き出す…。最後は幸せに暮らすカイア。その早い死から過去の真実が明らかになる…。 作者は当時69歳の自然科学者。動植物の生態の描写はさすが。これが処女作とは思えない筆致で、このチャレンジは私たちに勇気を与えてくれる。間違いなく記憶に残る一冊となった。
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