ザリガニの鳴くところ の商品レビュー
カイアが一度だけ登校した日の帰りに浜辺で泣くシーン、もうこの情景描写の美しさだけでこの本を読んだ意味があると思った。小説を読んでこんなに映像美を感じたことはないです。最後までとにかくずっと景色がきれいだった。
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戻って来る人がいること待っててくれる人がいることの幸せ。自然に育てられたカイア。読んでいても自然に癒された。絶望的なのに強いカイアに励まされた。テイトの父が考えを改めて裁判に来たときやカイアの肩に手を添えた場面がよかった。ジャンピンも好き。またゆっくり読みたい、
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森で暮らす少女が都会の男と関わり合い、やがて出世や殺人に巻き込まれていく話。 最初は冗長な描写が続くと思っていたが、その描写自体が主人公の将来に深い意味を持つ。最後の最後まで謎を引きずって、感動と納得を読者の心に落としてくれる。 2022年で1番面白い作品だった。
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友人に強く勧められて読んだ。 久しぶりの海外作品だったため、慣れるまではペースが上がらなかった。 けっこう分厚い本だが、読み応え十分で面白かった。
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ハトマメ(鳩に豆鉄砲)なフレーズ 「きみのもとを去ったことは、ただの間違いなんかじゃない。将来も含めて人生最大の過ちだ。ずっと後悔してきたし、これからもするだろう。きみのことを思わない日はない。この先一生、置き去りにしたことを悔やみつづけるはずだ」 「愛なんて実らないことのほうが多いってな。だが、たとえ失敗しても、そのおかげでほかの誰かとつながることができるんだ。結局のところ、大切なのは“つながり”なんだよ」 「ぼくは、これまでもこれからも、きみを忘れたりはしないよ」
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動物学者でもある著者は、 あるインタビューの中で、 「人間の行動は動物に近いものがあり、 本能に突き動かされることが多く、 時に本能のみに従って、 薄っぺらな行動をとることがある。 そして、それは我々が生き延びるための、 自然からのメッセージでもある」 というようなことをおっしゃ...
動物学者でもある著者は、 あるインタビューの中で、 「人間の行動は動物に近いものがあり、 本能に突き動かされることが多く、 時に本能のみに従って、 薄っぺらな行動をとることがある。 そして、それは我々が生き延びるための、 自然からのメッセージでもある」 というようなことをおっしゃっています。 生物は生きることに執着するとともに、 運命を受け入れることにも躊躇がありません。 そういった意味では、 主人公はとても野性的であるように思えます。 また、孤独であることに満足しながらも、 やはり誰かと繋がりたいという 気持ちを捨てきれず生きている姿も、 生物としての本能なのでしょう。 本書の中でザリガニの鳴くところとは、 「茂みの奥深く、 生き物たちが自然のままの姿で生きている場所」 とされていますが、 ザリガニの鳴くほんとうの場所は、 主人公の胸の奥底にあったのですね。 人間も自然の一部なのでしょうが、 自分には人間が自然界の中で、 とても異質な存在であるように思えます。 生物の種は、 常に多様化の方向に向かおうとするそうです。 生物種の多様性は 地球上の生命をひとつのものとしたときの、 生命維持対策であり、 環境がどのように変化しようが、 地球上の生命の火を絶やさないための 安全対策なのだそうです。 人間の行いは、 果たしてそのように機能しているでしょうか。 地球にとって、 人間が特別な存在だとは思えないのですが、 まるでそのように振る舞う人間は、 自然界のバグのように思えて仕方ありません。 べそかきアルルカンの詩的日常 http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/ べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え” http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2
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売れてる海外ミステリなのに、分厚くてパラパラとめくるととても静謐な文章で、これがどうして売れるのか……?と不思議に思いつつ買ったら、これがぐいぐいとひきこまれた。 家族に置き去りにされ、一人で生きる湿地の少女カイアと、湿地の生物たちの描写が瑞々しく、ほして痛々しく「生きるとは」に...
売れてる海外ミステリなのに、分厚くてパラパラとめくるととても静謐な文章で、これがどうして売れるのか……?と不思議に思いつつ買ったら、これがぐいぐいとひきこまれた。 家族に置き去りにされ、一人で生きる湿地の少女カイアと、湿地の生物たちの描写が瑞々しく、ほして痛々しく「生きるとは」について描かれてゆく。 これはヒットするよなぁと思う。映画も観てみたい。
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分厚い本だったがすっかり没入してしまった。 小さい女の子が家族に見捨てられ 湿地の古い小屋で命ギリギリで生きて行くのは あまりにも孤独で想像を絶する。 自然や動物の描写が繊細で美しく 同時に残酷だった。 クズ男を亡き者にするのは 生きて行くために必要なことだったんだと 単なるミステリー以上に納得した。
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孤独と絶望に打ちひしがれながら生を求め、愛を求める 読み書きを覚えてから生きるしかできなかった生活に光がさしすこしばかり心豊かになる 詩と出会い、言葉のもつ力強さに惹かれた 母さんが残した少ない残り香を嗅ぎ痕跡を探すように、下線の引かれたその詩に意味を見いだす、こじつけと分かっていても縋りたい 期待したときに裏切られるそれでもまだ失われていない残酷な希望を恨みながら "閉じ込められてしまえば 愛は檻にとらえられた獣となり その身を食らう 愛は自由に漂うもの 思いのままに岸に着けば そこで息を吹き返す" 無名の詩人、アマンダ・ハミルトンの詩を辿りながら 雄をしたたかに喰らう蛍のように、カマキリのように、1人湿地の少女として弱く美しく強かに生きた ザリガニが鳴くところに真実を隠して
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美しくも残酷な湿地の生態系を知りつくし、原始的な生存本能の前には人間も同じく残酷であることを理解しながらも、見捨てられ続けた深い悲しみと人間不信にもがき苦しむカイア。 蛍やカマキリの雌が交尾の後に雄を捕食すること、クチバシの赤い点をつつけぬ子には決して餌をあげぬ親鳥、傷ついた親ぎつねが子を見捨てるらしいこと。それらを受け止めながらなお、母に、兄弟に置いて行かれた理由を探し続け、いつか戻ってきてくれるのではないかという淡い期待を捨てきれないカイアに、人間の持つ本質的な「つながり」への渇望、それゆえの孤独を強く感じた。 人種、性別、さらには貧困などによる徹底的な差別が色濃く残る1960年代アメリカの日常の様子に心をいためつつ読み進めた(想像するべくもないけれど)が、無罪を勝ち取り、数々の出版をし、受賞をし、あからさまな差別がなくなったであろう後も外の人とはほぼ交わらず「湿地の少女」であり続けたことを思うと、異端であることを生き切ったカイアには感嘆を禁じえない。 恋愛小説という文脈では、思春期ならではの性の欲望がまるで湿地の動植物を描くように自然に語られ、花開いていくカイアの肉体の成長をとても好ましく感じた。 その一方で、圧倒的な孤独ゆえにテイトやチェイスを人生の拠り所にしてしまうカイアには、恋愛に依存的になってしまう女性像がみてとれ、親との関係性などから男性に依存(あるいは共依存)的になってしまう状況は、時代を問わず普遍的にあるものだということも考えさせられた。 あまりにもテーマが多岐にわたっているため、なんと長いブクログ! 最後にミステリーについて。 ここまで書いたように、ミステリーというよりはカイアという女性の物語に心躍らせながら読み進めていたので、中盤、時代を行きつ戻りつを繰り返すのがややしんどくなり、少しだけ頑張りが必要だった(勢いづいてくる後半の公判シーンが始まるまで)。 個人的にはミステリーとしての結末(犯人探し)以前に、冒頭死体として発見されたチェイスの人物像が、わかってくるにつれてあまりにもクソ野郎(他にいいようが見当たらない)で、犯人が誰であろうともはや殺されたのは致し方なし、、、という気分に。「ミステリーの被害者は、同情がわくような人でないと、犯人探しに熱心になれない」という法則があるのだなと新たに発見した。 長々と書いてしまったけれど、動物学者であるディーリア・オーエンズでなければ書けなかったであろう、なんと読み応えのある、美しく圧倒的な小説だったことか。 読書中に味わった湿地での体験。 至福の時間でした。
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