うるさいこの音の全部 の商品レビュー
ゲームセンターで働きながら小説家としてデビューした女性が主人公。 現実の話と交え、小説の内容が作中作の様に語られる。 冴えないながらも平凡に暮らしていたはずが、小説家としてのデビュー作が思わぬ脚光を浴びた事で崩れていく日常。 現実の自分・長井朝陽と、嘘で作り上げられた作家・早...
ゲームセンターで働きながら小説家としてデビューした女性が主人公。 現実の話と交え、小説の内容が作中作の様に語られる。 冴えないながらも平凡に暮らしていたはずが、小説家としてのデビュー作が思わぬ脚光を浴びた事で崩れていく日常。 現実の自分・長井朝陽と、嘘で作り上げられた作家・早見夕日。 いつの間にか主人公自身も、読んでるこっちもその境界線が分からなくなっていく。 相変わらずの高瀬さんワールド! ざわざわする〜〜 ちょっと頭の中ごちゃごちゃってなりながらも面白かった。 何か事が起こると周りってすぐ騒がしくなるもの。 大なり小なり実際の日常でもあるあるだよなと思う。 そしてこんなに極端でなくても、現実とはちょっと違う自分を作ってしまう気持ちも分かる気がする。 実際の高瀬さんも会社員、兼、作家さんなので少し重なるとこもあったりするのかな? モヤモヤっと穏やかではない空気感があるけど、なぜかクセになる作家さんだ。
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この手の小説家が小説家を描く手法はあまり好きじゃないんですが、小説と現実の境界がだんだんなくなっていくというのが新鮮で面白かった。 それにしても、みんなはこんだけ気にしながらメールと書いたりラインを送ったりしてんのかね。そこからしか繋がった経験のない人たちには、とてつもなく労...
この手の小説家が小説家を描く手法はあまり好きじゃないんですが、小説と現実の境界がだんだんなくなっていくというのが新鮮で面白かった。 それにしても、みんなはこんだけ気にしながらメールと書いたりラインを送ったりしてんのかね。そこからしか繋がった経験のない人たちには、とてつもなく労力を使うことなんだろうね。そろそろ手紙を書いてみようかと逆に思ってしまいましたね。 ちょっと作者が心配になってきちゃいました。大丈夫ですか?
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芥川賞をとった女性作家が主人公なので、自然と著者の高瀬さんと重ねて読んでしまう。 物語の構成が、小説と現実を行ったり来たりするので序盤は理解が追いつかず、???となった。 本音を隠して、相手に期待されているであろう言動をしてしまうというのはあるけれど、ちょっと度が過ぎるのでは?と...
芥川賞をとった女性作家が主人公なので、自然と著者の高瀬さんと重ねて読んでしまう。 物語の構成が、小説と現実を行ったり来たりするので序盤は理解が追いつかず、???となった。 本音を隠して、相手に期待されているであろう言動をしてしまうというのはあるけれど、ちょっと度が過ぎるのでは?と突っ込みながら読んだ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
だまされた。もちろん、いい意味で。 会社勤めをしながら小説を書いていた主人公が新人賞を受賞し、周囲の態度がガラリと変わる。穏やかだった日常が突然騒がしくなり、否応なく波乱に巻き込まれていく──そういう話だと思うじゃないですか。いや、そういう触れ込みでしたよね。 本作は、2つのストーリーが並行して進む。主人公・長井朝陽の日常と、作家・早見有日の書いた小説。読み進めていくと、途中で「あ、これは主人公が書いてる小説の内容なんだな」と気づく。「それで、こっちが作者の現実の話なんだな」と。さらに読み進んでいくと、小説が現実に追いつく。そうか、小説の方はフィクションであると同時に、主人公の過去の話でもあるということか。なるほどなるほど。ところが、いきなり現実の中に小説の人物が出てくる。幽霊も出てくる。小説と現実が融合してしまう。この辺で読者は混乱する。いったいどこまでがフィクションで、どこからが現実なのか。『おいしいごはんが食べられますように』のときから思っていたが、高瀬さんは本当に食えない人だ。 数学者とはどんな人間か。机の上にリンゴが3つあるとする。普通の人は、実在するのはリンゴだと考える。だが、数学者は違う。彼らは実在するのは3という数字の方だと考える。それが数学者という人間なのだ。そう読んだことがある。小説家にとっては、たとえ作り話であっても、書いたことこそが実在なんだろうな。本書を読んでそんなふうに感じた。 遠藤周作氏は、「作家は読者が面白がってくれるなら、エッセイでも嘘を書くことがある」と言っていた。おそらく、書くことによって真実になるのだろう。だから、読む方もそのつもりで読んでくださいね。いかにも狐狸庵先生らしい。 ただし、嘘をつき続けるのは楽ではない。それが、併録の「明日、ここは静か」に書かれている。嘘をつき続けていくと、だんだん辻褄が合わなくなってくる。それで嘘の上塗りをする。それでもいつかは整合性が破綻する。男は嘘が下手だから、そうやっていつも女にバレる。 もしかすると、高瀬さんもすでに嘘をつきまくっていて、帳尻が合わなくなってきているのかもしれない。本書はそういう自白か。あるいは、いずれそうなったときのための予防線か。私が書いたことで何か不都合があっても、それが小説家というものだから許してくださいネ。いやいや、なかなかしたたかな人である。
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自分の内部にどんどんどんどん入り込んでいく心理描写が多かった。何が本音なのか自分の心の声が小さく、自分の立場や相手からの期待が自分の中に入り込む。そして、まぜこぜになった言葉がスラスラと出てくる。結果として全てが嘘で塗り固められていたとしても、止める術がない。 こんなことを...
自分の内部にどんどんどんどん入り込んでいく心理描写が多かった。何が本音なのか自分の心の声が小さく、自分の立場や相手からの期待が自分の中に入り込む。そして、まぜこぜになった言葉がスラスラと出てくる。結果として全てが嘘で塗り固められていたとしても、止める術がない。 こんなことを考えている人が他にもいるんだとおもった。自分が無いと言われることがある。移り変わるのも自分でしょと思う。でもそこには、誰かの意見が混じり込んでしまっているのかもしれない。 生きていると誰かと関わらずにはいられない。世の中の変化から影響を受けずにいられない。それは、自然なことでは無いだろうか。そんな変化を含めて自分だろうと思う。 止める術はない。ただ進むだけだ。
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まるで高瀬さんの自叙伝みたいな構成(本業の傍ら執筆活動し、芥川賞とっちゃう)。 会話をしながらいちいち妄想したり、他者の顔色みて察してる風で会話するって一気に年食いそうですね。 この本が世に出た後のインタビュアーはさぞや構えただろうと思う。 今や少し気になるとスマホでサクサク...
まるで高瀬さんの自叙伝みたいな構成(本業の傍ら執筆活動し、芥川賞とっちゃう)。 会話をしながらいちいち妄想したり、他者の顔色みて察してる風で会話するって一気に年食いそうですね。 この本が世に出た後のインタビュアーはさぞや構えただろうと思う。 今や少し気になるとスマホでサクサク検索できちゃうから、昔は芸能人くらいしか私生活をあばかれることはなかったけど、芥川賞や直木賞とっちゃうとサーチされちゃうから作家さんもおちおち嘘もつけない。 いやでも。本が書きたい、書きたくなくても書きたいのが小説家なのですね。やはり選ばれた人のみが出来る職業。その人たちのお陰で私は毎日楽しく暮らせるのだ。 底知れぬ心労を垣間見たのかも。
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表題作の中編1編と短編1編 どちらも実生活の自分と小説の中の自分あるいは小説家の自分の境界があいまいになって,嘘の世界が現実に侵入してくる様子が怖い
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
最初物語が2つあってどうやって繋がっていくんだろうと思ってたら小説家有日としての話と 朝陽としての現実の話しってことだったけど その境界線が徐々になくなって交わり合って 空想と現実が一緒になっていく。 なんとも言えない気持ちになりながら続きが気になって仕方ない本だった。
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日常で言語化し辛く感じるモヤモヤが細かく書かれていて共感しやすい。 読後もモヤモヤが残るけど個人的にはとても好きな残り方。 嘘はバレないレベルなら嘘じゃないし…と話を盛っちゃうことはあるけど、こんな話を読んじゃうと身につまされるというか… ありそうな範囲で歪みが生じていくのがゾ...
日常で言語化し辛く感じるモヤモヤが細かく書かれていて共感しやすい。 読後もモヤモヤが残るけど個人的にはとても好きな残り方。 嘘はバレないレベルなら嘘じゃないし…と話を盛っちゃうことはあるけど、こんな話を読んじゃうと身につまされるというか… ありそうな範囲で歪みが生じていくのがゾワゾワっとした。
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中華料理屋の息子の人になんて酷いことを…と不快感を抱きながら頁を捲るが…現実と空想、朝陽と有日が混在。人に嫌われることを書き、人の顔色を窺いながら嘘を吐く。辛かろう。『幽霊が遊ぶ箱』気になる。
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