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街とその不確かな壁 の商品レビュー

3.9

540件のお客様レビュー

  1. 5つ

    147

  2. 4つ

    195

  3. 3つ

    118

  4. 2つ

    32

  5. 1つ

    7

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2023/05/06

村上春樹「街とその不確かな壁」読了。地味だけど、持ち味の世界観が久しぶりにしっくりきて存分に楽しめた。特に2部の図書館の展開が良かったな。自分の現実と非現実も混ざり合ってくるような点がいくつかあって摩訶不思議な気分になった。読書する際の自分のコンディションも良くておかげで良いGW...

村上春樹「街とその不確かな壁」読了。地味だけど、持ち味の世界観が久しぶりにしっくりきて存分に楽しめた。特に2部の図書館の展開が良かったな。自分の現実と非現実も混ざり合ってくるような点がいくつかあって摩訶不思議な気分になった。読書する際の自分のコンディションも良くておかげで良いGWを過ごせました。

Posted byブクログ

2023/05/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

最初は既視感を覚えながらもなかなか入り込めず、読むのに時間がかかったが、子易さんが死んだ人間であることがわかってから物語の中に没頭してしまって、一気に最後まで読んでしまった。ただ、最後は彼の作品でよくあるように、後は読者にお任せと言う感じでちょっと物足りなかった。色彩を持たない多崎つくるのように沙羅の返事がイエスかノーかを読者に任せる位なら良いが、この作品では読書に任せるものが多すぎる。もしかしたら続編があるのか?個人的にはあって欲しいが。

Posted byブクログ

2023/05/06

日本では、村上春樹の新刊が出るとニュースになる。まるでボジョレーヌーボ解禁のニュース華やかかりしバブル期みたいで、お祭り騒ぎ感を無理やり演出しているのがちょっと恥ずかしくなる。村上春樹の小説が国語の教科書に載っているのも、ちょっと恥ずかしくなる。そんな仰々しいものじゃないんだよ、...

日本では、村上春樹の新刊が出るとニュースになる。まるでボジョレーヌーボ解禁のニュース華やかかりしバブル期みたいで、お祭り騒ぎ感を無理やり演出しているのがちょっと恥ずかしくなる。村上春樹の小説が国語の教科書に載っているのも、ちょっと恥ずかしくなる。そんな仰々しいものじゃないんだよ、村上春樹って。 70歳を過ぎた、フィジカルな営みとして小説を書いている作家の最新作は、たしかに昔のようなワクワク感はないかもしれない。『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』みたいな冒険を期待している人にとっては肩すかしかもしれない。でも、この静謐な世界で繰り広げられるある種の〈補完の物語〉こそが、この老作家の到達した峰々の1つなのだなあと思うと、感慨深くなる。 そして思い至る。ああ、これはバトンタッチの小説なんだ。『ドライブマイカー』を換骨奪胎してものすごい傑作に仕上げた濱口竜介監督は、イエローサブマリンの少年なのだ。夢語りを誠実に行う若い世代との邂逅と一体化。すると、子易さんは河合隼雄か?そんなイメージで引き継がれていく夢とうつつの3世代交流の物語。 そしてガルシア・マルケス。ひょいと越境するマジックリアリズムの技法が、村上春樹史上おそらく最も自然に展開された物語。洞窟とか井戸とかじゃなくて、気づいたらしれっと境界線を超えていたこの感じに円熟みを感じた。

Posted byブクログ

2023/05/05

やはりここに村上春樹がいる。ただそれを読んで味わうだけ。それははじめて読んだ海辺のカフカから変わっていない、どの小説も。 (本人が言っている通り)本文や内容に意味がないとわかっていても、ここにある影が本体で、私はただの影に過ぎないんだって。 読むたびにこんな感じになってしま...

やはりここに村上春樹がいる。ただそれを読んで味わうだけ。それははじめて読んだ海辺のカフカから変わっていない、どの小説も。 (本人が言っている通り)本文や内容に意味がないとわかっていても、ここにある影が本体で、私はただの影に過ぎないんだって。 読むたびにこんな感じになってしまうのは許容しよう。 軍人が見た左側しか見えない白い美人が独立したエピソードになっていることや、 街と行き来している間に影なのか本体なのかが曖昧になる構成は、 今までにもあった形で、やはり村上春樹がいると感じられてよかった。 ブクログの感想は、あとがきや解説を読む前に書くようにしている。村上春樹作品なら尚更だ(そもそもあとがきがない)。 が、あとがきがあることに驚いて数行を目で追ってしまった。私の目は1980の中編の書き足しだと見つけてしまったのだった。 だとすると私が今までにあった形と感じたのは、本作がオリジナルのようだ。 あとがきも楽しませてもらえそうだ。そして次の長編まで、どこまでも柔らかな暗闇へ。

Posted byブクログ

2023/05/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

幻想的な壁に囲われた街とはいったい何を表しているか考えながら読んだ。読み手によって解釈が変わってくるのだろうけれど、別の次元に存在する意識の世界ではないだろうか。量子力学ではこの世界は11次元であるといわれ、意識というものは我々が暮らしているこの4次元空間とは別にあるという見解。その解釈と繋がってくるなぁと読んでいて思った。サヴァン症候群や名だたる天才はその世界と自由にアクセスできるといわれている。イエローサブマリンの少年もその一人。 「心と意識は別である」と本文にあったので、おそらくは意識とは自分とは別に存在する「影」のようなもの。でもどちらが影でどちらが本体かはあまり関係がない。世界で経験した美しい思い出を「夢読み」という他者に共感してもらうことで救われる。私たちがこの世界を生きる目的とは、意識が「共感」によって一つに繋がり大きな物語を形成するためのもの。時間とか、自分と他者が別物であるとかは一切関係なく、すべてが一つになるために私たちは日々学んでいる。

Posted byブクログ

2023/05/05

GWにじっくり読もうと積んでおいた本。久しぶりの村上春樹ワールド、なんだろうこの感覚は。若い頃に読んだ世界観を思い出す感じ。不思議な世界なんだけど、どの情景も目に浮かぶ。 あちらの世界とこちらの世界、今生きている(と思っている)存在って?かりそめの姿を生きているだけなのかもしれ...

GWにじっくり読もうと積んでおいた本。久しぶりの村上春樹ワールド、なんだろうこの感覚は。若い頃に読んだ世界観を思い出す感じ。不思議な世界なんだけど、どの情景も目に浮かぶ。 あちらの世界とこちらの世界、今生きている(と思っている)存在って?かりそめの姿を生きているだけなのかもしれない、、どっちが自分、本体と影、そんな感覚。 自分も長い年月を重ねて感じ方も変わってきたのかもしれない。壁に見えるものはどこにでもある、ただそれは自分で作ってしまっているだけなのかもしれない。 心と体が少し離れたところにある感覚は誰にでもあるもの、そんなときはじっと待つことも大事。心の中に大切にしているもの、どこか懐かしく温かいもの。心から強く望むことで生き方も周囲も変わる。そして時がくる、、 本体も影もどっちも自分なんだと、そう思えたとき、どこか心も落ち着く。 図書館にふと行きたくなります、、 コーヒーショップの彼女とのひと時がいい時間を過ごしていてとても印象的。

Posted byブクログ

2023/05/05

あとがきによれば、80年に発表された未書籍化の中篇を膨らませた作品らしい。 高い壁によって外界と隔てられ、入ることも出ることもできない街は、まるで牢獄のようだ。その物語がコロナが猛威を振るい始めた2020年から書き始められ、とりあえず終息(?)した年に刊行されたことにも意味がある...

あとがきによれば、80年に発表された未書籍化の中篇を膨らませた作品らしい。 高い壁によって外界と隔てられ、入ることも出ることもできない街は、まるで牢獄のようだ。その物語がコロナが猛威を振るい始めた2020年から書き始められ、とりあえず終息(?)した年に刊行されたことにも意味があるのだろうか。 ぼくは村上さんの熱心な読者ではない(『カフカ』以降)ので、本作と関連付けられた作品は未読だ。 655頁に及ぶ大長篇を読み終えてもなにも残らないというのには徒労感を覚えるが、読んでいる間は楽しかった気がする。よく眠れたし。

Posted byブクログ

2023/05/05

久しぶりに読書に、小説に没頭できた。 ハードカバーの本を持ち歩いてまで読んだのはいつぶりだろう。 穏やかな展開ながら、ぎゅっと惹きつけられてその世界にいるのが楽しい時間だった。 村上春樹はエッセイが好きなんだけど、それと似たようなスローなテンポ。一つ一つの情景がありありと思い浮...

久しぶりに読書に、小説に没頭できた。 ハードカバーの本を持ち歩いてまで読んだのはいつぶりだろう。 穏やかな展開ながら、ぎゅっと惹きつけられてその世界にいるのが楽しい時間だった。 村上春樹はエッセイが好きなんだけど、それと似たようなスローなテンポ。一つ一つの情景がありありと思い浮かぶ。

Posted byブクログ

2023/05/04

強固な壁に囲まれた街がいきなり出てきて、おっ、進撃の巨人かキングダムか?なんて軽い感じ読み進めたら、当然そんなことはなく、17歳で背負ったしまった未完の恋を、壁のあちら側とこちら側、リアルと非リアル、影と肉体、夢読みと本読み、を行ったり来たりすることで自分なりの出口を見付けて次へ...

強固な壁に囲まれた街がいきなり出てきて、おっ、進撃の巨人かキングダムか?なんて軽い感じ読み進めたら、当然そんなことはなく、17歳で背負ったしまった未完の恋を、壁のあちら側とこちら側、リアルと非リアル、影と肉体、夢読みと本読み、を行ったり来たりすることで自分なりの出口を見付けて次へと進んで行く孤独な男のワンダーランド 誰もが意識の中に持ち得るであろう「もうひとつの世界」が壮大な処方箋となって心の傷を癒していく 手厳しい書評を先に読んじゃってたので、それに引っ張られそうになったけど、テッパンの村上ワールドに楽しくのめり込めました

Posted byブクログ

2023/05/04

現実世界から距離を置いた人の再生の物語。それまでには30年の月日が流れ、幽体の導きと、非現実世界を必要とした少年の犠牲あるいは承継とを必要とした。そして、少年がジャンプしたように、現実世界へジャンプしなければならない。現実世界でともかく生きている分身を信じて。 それは疫病にも似た...

現実世界から距離を置いた人の再生の物語。それまでには30年の月日が流れ、幽体の導きと、非現実世界を必要とした少年の犠牲あるいは承継とを必要とした。そして、少年がジャンプしたように、現実世界へジャンプしなければならない。現実世界でともかく生きている分身を信じて。 それは疫病にも似た現実世界をも信じることなのだと思う。 現実世界への1点の攻撃を通じて、世界を自分にひきつけて、変えようと試みる人たちには、この物語がどう映るのだろうか。彼らの「街」には、外部から常に攻撃がしかけられ略奪が行われているのか。防護する壁が強固でなくところどころが損壊しているのか。 現実世界でともかくも生きていけるように基盤をつくること。それを支援していくこと。それが必要なのかと思う。

Posted byブクログ