街とその不確かな壁 の商品レビュー
著者独特の難解な世界観に満ちた新作長編を読み切ったこの達成感たるや! ハルキストじゃないので過去作も途中挫折したりであまりちゃんと読めてないのですが、多分、これまでで一番わかりやすい類いなのではないかと。 あと、年齢を重ねたからなのか、16歳の少女への憧憬や、自分自身が若返る...
著者独特の難解な世界観に満ちた新作長編を読み切ったこの達成感たるや! ハルキストじゃないので過去作も途中挫折したりであまりちゃんと読めてないのですが、多分、これまでで一番わかりやすい類いなのではないかと。 あと、年齢を重ねたからなのか、16歳の少女への憧憬や、自分自身が若返る描写など、晩年期に入ったことを伺わせる内容でした(古希超えてるので当たり前か?) 映像化したらこの長編の世界を万人がもっと気軽に楽しめそうな気がしました。
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村上ワールド、満喫。 著者のここ数作の中では一番面白かった。 登場人物も著者も読む方も歳を重ねたからか(新しい読者もいるのでしょうけど)、読んでいて今作では色々と解決されていくようだなと思ったけど、やっぱり謎のまま残ったことも多かった。次がまた期待出て良いのかもしれない。 “自分...
村上ワールド、満喫。 著者のここ数作の中では一番面白かった。 登場人物も著者も読む方も歳を重ねたからか(新しい読者もいるのでしょうけど)、読んでいて今作では色々と解決されていくようだなと思ったけど、やっぱり謎のまま残ったことも多かった。次がまた期待出て良いのかもしれない。 “自分のことが書かれている・・・”と思う人が多いのでは無いかな。 『世界の終わりと....』を読んだのは学生の時だったが読み直したくなりました。
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流石の村上春樹さんです。 分厚い本ですが、一気読みです。 しかし終わり方には賛否両論があると思います。 全ての伏線放置で終了 気になって仕方ない お願いだから続きを書いて欲しい。
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40年の時を経て発行された本書。作者の中で温め、研磨し、育て、醸成したまさに村上文学の集大成。 パラレルワールドの作品を多く残してきた作者。今作はパラレルワールドでありながら、現実と非現実の間にあるのは不確かな壁とし、どこまでも曖昧なものとして描かれています。言うなれば村上春樹流...
40年の時を経て発行された本書。作者の中で温め、研磨し、育て、醸成したまさに村上文学の集大成。 パラレルワールドの作品を多く残してきた作者。今作はパラレルワールドでありながら、現実と非現実の間にあるのは不確かな壁とし、どこまでも曖昧なものとして描かれています。言うなれば村上春樹流のマジック・リアリズム作品として捉えられます。 巻末にボルヘスを引用しているように、一生のうちに語ることのできる物語は数が限られており、これから何作村上文学に触れることができるかはわかりません。 しかし、あえて今言わせて頂くと、今作が間違いなく村上春樹の最高傑作だと確信しています!
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主人公が中年の男性で自分の年頃に近いこともあり、また基本的に主人公の目線で物語が進んでいくので、他の村上作品と比べても自然と共感を覚える部分が多かったです。 1980年に一度文芸誌で発表したものの内容に納得がいかず、40年以上経って書き直して書籍化されるという本書の経緯も、とて...
主人公が中年の男性で自分の年頃に近いこともあり、また基本的に主人公の目線で物語が進んでいくので、他の村上作品と比べても自然と共感を覚える部分が多かったです。 1980年に一度文芸誌で発表したものの内容に納得がいかず、40年以上経って書き直して書籍化されるという本書の経緯も、とても興味深いと思いました。 過去の作品は書籍化されなかったようなのでお目に掛かるのは難しそうですが、比べて見ることができれば「書き手自身の変化(作家としてのキャリアや人生経験など)が作品にどう反映されるのか?」を考えることもできて面白そうですね。
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久しぶりの長編に期待して読んだ。 第一部は村上さん節が心地よく(焼き直しのようでもあるが熟練された言葉遣いと映像的で流れるような文章)、第二部では物語の新たな展開にグッと引き込まれていった(子易さんや少年の可愛いけれど少し不穏な存在感、コーヒーショップの彼女との進展)。しかし、第...
久しぶりの長編に期待して読んだ。 第一部は村上さん節が心地よく(焼き直しのようでもあるが熟練された言葉遣いと映像的で流れるような文章)、第二部では物語の新たな展開にグッと引き込まれていった(子易さんや少年の可愛いけれど少し不穏な存在感、コーヒーショップの彼女との進展)。しかし、第三部は語られるべきことが語られていないようで物足らず(疑問が多すぎた…)、寂しく思ってしまった。 素敵な箇所はあったし、全体的には楽しく読んだのだけれど、誰に批判されようとも、村上さんの考える結末を書ききって欲しかったというのが現在のところの率直な感想。
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ファンタジー感は素敵なのだが、 お決まりの「それを考えることは意味をなさない」で全て片付けられてしまいあまり腑に落ちず。 フワフワ感が魅力なのかもしれないがそこまでハマれなかった。 女性を値踏みする感じの表現も好きになれない
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どこかで読んだ。どうも既視感のある作品だ。壁に囲まれた一角獣のいる街。この長い小説である本書を読了した後に、書棚から取り出した作品『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を開く。やはりそうだ。その古い作品(谷崎潤一郎賞を受賞している!)は、二つの物語『世界の終わり』と『...
どこかで読んだ。どうも既視感のある作品だ。壁に囲まれた一角獣のいる街。この長い小説である本書を読了した後に、書棚から取り出した作品『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を開く。やはりそうだ。その古い作品(谷崎潤一郎賞を受賞している!)は、二つの物語『世界の終わり』と『ハードボイルド・ワンダーランド』を別々に語り継いでどこかで合体させてゆく小説なのだが、『世界の終わり』こそが、この新作『街と不確かな壁』で構成し直された奇妙な街の原形である。 さらに言えば、専任作家になる前の村上春樹によって書かれ、文芸誌に掲載されたが書籍化はされなかった原形となる作品があったそうだ。壁に囲まれた一角獣のイメージを描いた<街>の物語だということである。デビュー作と言われる『風の歌を聴け』より前のエチュード的作品。『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』は、1985年にその原型に肉付けを施した大作であったが、もう一つの形を遂げたのが、その四十年後に三年かけて書き上げたという本書ということになるらしい。 村上春樹も30代から70代に成熟した。ぼく自身も村上春樹を読み始めた20代から、気づいてみれば60代後半の年齢になってしまった。死の足音が少しずつだが確実に近づいてくるような、今となると残された生を考えねばならない微妙な時間軸に立っているのだ。 そう。ぼくの村上春樹作品にいつも強く抱く最大のイメージは、実は<死>である。若い頃の作品から、いつもずっと形を変えつつ、<死>と向かい合い、<死>を描いてきた作家であると言う概念を村上春樹という作家にぼくは抱き続けているのだ。 『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』そして、かの大ヒット作『羊をめぐる冒険』で完結する三部作でも、<死>は最大のテーマとされてきた感が強い。『ノルウェイの森』では<生(性)>と<死>が同様に強く浮き彫りにされていた。命のパーツとしての性描写は、死の対極である<生>の象徴として村上作品に執拗につき纏ってきたように思う。しかし作者の青春現役時代と70代になった現在は、村上春樹と言えども少しずつ変化を遂げているようだ。全体に動よりも静の描写が作品全体を覆っているかに見える。そして現在よりも過去を見つめているように捉えることもできるような気がする。 本作は、相対的にとても静なる作品と言っても良いだろう。とりわけ作品の大半を占める第二部は、静かな日常を送る主人公と、静かな山間の町の図書館を中心に描かれる。冬と雪と静けさ。静かな図書館でひたすら本を読み続けるとても無口な少年M**。小さなコーヒーショップでコーヒーとブルーベリー・マフィンを前にする主人公は、店を経営する女性と静かに心の交流を持ち始める。 そう言えば登場人物たちに名前がないのも不思議である。ぼく。きみ。私。M**。図書館にまつわる数名の人物は、幽霊を含めて名前が与えられたりしている。名前のある人とない人。この違いは何なのだろうか? 名前のない人の方が、より主体的な重要な役割を与えられている、というのがぼくの印象ではあるけれども。 そもそも作者からの特段の説明はどの作品においても特に与えられては来なかった気がする。どんな不思議な出来事も、その意味を説明はされて来なかったような気がする。村上作品においては、多くのことが特段の説明が与えられないままに進んでゆくように思える。それが村上春樹という作家の特徴であるのかもしれない。それでいて村上作品には不思議な迷路にも似た魅力がある。読み慣れた方にとっては、それらのことは、説明がなくても特に不都合ではないように感じられる。もちろんぼくにとっても。 さて、村上作品においてもうひとつ不思議かつ素敵なのは、読み易さ(Readability)だと思う。どの作品でもそうなのだが、その点はいつもながら抜群である。本書は他の作品に比べ、静けさに満ちた動きの少ない作品であるにも関わらず、とにかく読み進む。650ページ弱の長大な作品、かつ静かで動きの少ない物語であるにも関わらず。村上春樹入門者にも、村上作品は全部読むという熱烈読者にも自信をもって推奨したい(後者には不要だろうけれども)そういった作品なのである。 村上春樹はこの後も作品を書き続けるのだろう。しかし年齢から言って、このような大作をこの後、何作書いてくれるのか微妙なところだと思う。そんな想いを込めて大切に読んだつもりの一作であった。唯一無二の個性ある作品がまたひとつこの世に出現した。そんな印象とともに本を閉じた次第である。
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※このレビューにはネタバレを含みます
★3.5 久しぶりに村上春樹ワールドに浸った感じ。 文章が独特で、最初は苦戦。 結局、初恋の子はなぜいなくなったのかはわからず。 そして、高い壁に囲まれた世界は、男の妄想なのかと思っていたが、イエローパーカーの少年はそこへ失踪したので、現実にはあるってことか。 男は最後に現実世界に戻ったけど、その間は、イエローパーカーの少年のように人形などが身代わりとして存在しているのだろうか。 数十年も初恋の女性を思って、結婚もしないってすごい純愛。彼女には、男の正体に気づいて欲しかった。別世界なので無理だけど…
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自分の分身(=自分自身)を信じること、人生が移り変わっていくこと、それをありのままに受け入れること。 「要するに、真実というのはひとつの定まった静止の中にではなく、不断の移行=移動する相のなかにある。それが物語というものの神髄ではあるまいか。僕はそのように考えているのだが」(...
自分の分身(=自分自身)を信じること、人生が移り変わっていくこと、それをありのままに受け入れること。 「要するに、真実というのはひとつの定まった静止の中にではなく、不断の移行=移動する相のなかにある。それが物語というものの神髄ではあるまいか。僕はそのように考えているのだが」(あとがき)
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