キュレーターの殺人 の商品レビュー
「キュレーター」とは、日本では、博物館や美術館等の学芸員の事だが、欧米では『企画監督を司る者』の意味があるそうで、本書の意味もこちらになります。 待望の、「ポー&ティリー」シリーズ三作目だったが、これまでで最も後味が悪かったかもしれない。 まあ、事件はこれまでも猟奇的要素の高...
「キュレーター」とは、日本では、博物館や美術館等の学芸員の事だが、欧米では『企画監督を司る者』の意味があるそうで、本書の意味もこちらになります。 待望の、「ポー&ティリー」シリーズ三作目だったが、これまでで最も後味が悪かったかもしれない。 まあ、事件はこれまでも猟奇的要素の高いものだったから、その辺は変わらないのだが、今回はそれに加えて、ネット社会に救いを見出そうとする、社会的弱者の心理に付け込んだ非道さであったり、事件の真相に主要人物が大きく関わっている展開には、作者の、このシリーズにかける本気度を感じさせられたが、読んでいる側にとっては、たまらないものがある。 また、前作までは犯人の動機が理解不能であったから、まだ病気として捉えられそうな救いがあったのだが、今回は・・なんで、こうなっちゃったのだろう。いくら繋がりが密であっても、そこまでの執着心を持ってしまう怖さには、色々な意味で、人間の心の弱さを実感させられたし、それは、「ワシントン・ポー」刑事の最後の行動も、ある意味そうなのではと思ってしまうところが、またやるせなくて、現代社会の心の闇なのかな。 ポーの気持ちは分かるし、私もそれだけの事をされたら、そんな気持ちに駆られるかもしれないけど、何だか、ポーが「ダーティー・ハリー」みたいに見えてきて、フィクションの映画ならいいんだけど、私は現実にそんな社会は望んでいないんだよ(小説もフィクションなんだけどね)。何か、もっと別の解決策だってあったんじゃないかって、思ったりする事が甘いとか言われると、いつまでも人の心から殺伐としたものは消えないと思うし、おそらく、永久に繰り返すよね。そんな社会ってどうなんだろうと考えさせるのも、作者の狙いなのかもしれないけれど。 ポーの事を、ちょっと悪く書いてしまったけれど、破天荒な行動がトレードマークの彼も、実は、本書が一番まともに思われたし、勘に頼るというよりは、『人間の脳は目で見たものを言葉で正確に表現するようにはできていない』といった、これまでの経験やデータを重視する冷静な一面もあるし(そして過去の犯罪歴史の勉強家でもある)、『花は治癒する過程で欠かせない存在』といった、体だけでなく心を癒やすことの大切さを知る、優しい一面も持っている彼は、純粋さの固まりである相棒、「ティリー・ブラッドショー」から大きな信頼を寄せられているのも納得の人間性なのだが、そこには、彼自身の母親への思いもあって、シリーズを重ねる毎に、その個人的調査も少しずつ核心に迫っているようで、今後、ますます目が離せない。 それから、前作でも書いたけど、ポー&ティリーのファンとしては、もっと二人のパーソナルなやり取りを見たいんだよね。お互いに励まし励まされる姿もいいし、ポーの体を心配する健気なティリーもいいんだけど、何だか事件を追うことにページを割きすぎてるような気もして・・・まあ、警察捜査小説だから仕方ない点もあるのだろうし、見方を変えれば、それだけ事件の展開は目まぐるしく、先が気になるということになるんだけどね。 そして次回作は、「Dead Ground」とのこと。 こちらも、いつ邦訳されるのか、今から楽しみです。
Posted by
前半はだるい感じだったけど、青い鯨ゲームから怒涛の展開で夢中になって読んだ。ラスト近くはシリーズの中で一番キツい展開だったように思う。フリン警部の今後が気になる。
Posted by
「ワシントン・ポー」シリーズの第三弾。 面白かったです。人体切断事件にいい感じの伏線張られつついい感じのミスリード役がでてきて~の犯人あて。「いい意味で」ベタベタでコテコテの本格ミステリって感じで。ちょうどいい塩梅のミステリ。 しかもなんというかこのシリーズ、ろくでもないことをし...
「ワシントン・ポー」シリーズの第三弾。 面白かったです。人体切断事件にいい感じの伏線張られつついい感じのミスリード役がでてきて~の犯人あて。「いい意味で」ベタベタでコテコテの本格ミステリって感じで。ちょうどいい塩梅のミステリ。 しかもなんというかこのシリーズ、ろくでもないことをした人はみんなろくでもない目に遭っている気がしますね。犯人だったり被害者だったりで。勧善懲悪感がとても心地よい。 個人的にはブラッドショーの活躍というか見せ場がもっと見たかった気はしますが。これまでの二作に比べるとちょっとおとなしめ?
Posted by
どうしてこんなにも面白いものが書けるんだ? 名探偵シリーズの最高峰だと思う。決してすべてがハッピーエンドではないのが、このシリーズのいいところ。謎を解く度に何かを失うポーだけど、新しいものも得ていく。面白くて次も早く読みたい。
Posted by
シリーズ3作目も最後まで目が離せない面白さ。今回、後半は強烈な展開がありちょっと驚いたけど。じっくり読める推理小説なので、時間がある時にゆっくり読みたい本。ポーとティリーの2人がよりバディらしくいいコンビになってる。恋愛要素が全くないところもいい。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
イギリスのNCA(国家犯罪対策庁)に所属する部長刑事・ワシントン・ポーを主人公に据えたシリーズ第3作。 ミステリーで妊娠した女性が登場した場合、読者としてはその安全が最後まで守られるかどうか、常にハラハラしながら読む羽目になるのだけれど、今作はそれを良い意味で超えてきたと思う。甘過ぎる展開と言われようが、心からほっとさせられた。 物語の展開は今作も巧みで、最後まで様相を変え続ける事件に夢中になって読み進めることができた。 以降の作品として、本国イギリスではすでに2本の長編と1本の短編集、1本の中編が刊行されているとのこと。邦訳を心待ちにしたい。
Posted by
猟奇的な事件を扱うものの最後まで楽しませてもらった。 600頁超でも中弛みせずに一気に読めるところが良い。 単純にストーリーが面白いのもあるけれど、ポーとティリーのコンビが見たくて読んでいる作品でもある。 終盤でゾッとするような真相が明かされ、迎える結末には驚いた。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
このシリーズの特長だと思うけど、他の小説より事件の警察の捜査過程の描写が細かくてリアル。 そこから主人公ポー刑事が推理を展開する流れが自然でいつも引き込まれる。 事件が複雑すぎて、序盤から伏線はずっと張られたことに全然気がつかなかった、 最後まで読んでようやく気がついた。 現代社会だからこそのおぞましい事件にぞっとした。 でも犯人や殺人の動機は至ってシンプル、 それがまた意外すぎて、これぞ謎解き推理小説って感じ!!
Posted by
たまに読みたくなる海外のミステリーだが、これは面白かった。いわゆるサイコな殺人事件を追う、頭脳明晰な刑事とギークのコンビ。それぞれ複雑な過去を抱えているようだが、それは明らかにならない。クリスマス、オフィスのパーティーや精肉店、協会などで人間の切断された指が見つかる。一件無差別な...
たまに読みたくなる海外のミステリーだが、これは面白かった。いわゆるサイコな殺人事件を追う、頭脳明晰な刑事とギークのコンビ。それぞれ複雑な過去を抱えているようだが、それは明らかにならない。クリスマス、オフィスのパーティーや精肉店、協会などで人間の切断された指が見つかる。一件無差別なようである共通点があり、それを辿っていくと、犯人に近づいているようで、いきなりのどんでん返しの連続。本書はかなりの長編だが、テンポよく謎が解決されると同時に、新たな疑問が湧いてきて、全く飽きない。二重三重のトリックが仕掛けられててページを捲る手が止まらない。主人公の過去も全く明かされず、次の話を読みたくなる。非常によくできた推理小説。
Posted by
展開も早く、伏線も散りばめられ非常に面白かった。犯人にはちょっとびっくり。ティリーもどんどん成長し、二人の関係も面白い。次作の翻訳が待ち遠しい。
Posted by