香君(下) の商品レビュー
圧倒されるような濃密な世界観を臨場感たっぷりと味わえ、中盤の展開が変化していくところの気分をはやらせるテンポと、通常の少しゆっくりめのテンポとの違いも良かった。
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植物や虫、人の心までも香りから知ることができる少女アイシャが、帝国の富を築いた稲の秘密に関わっていく。遺伝子組み換え植物が広がっていくとこんなことが起きるのでは…と怖くなった。 香君は、敬われる一方、他の人とその世界を共有できない孤独な存在だったが、新しい香君となったアイシャが、どんどん外に出て行って、「旅する香君」と呼ばれる存在になる。強い気持ちを持って慣習を変えていくことの大切さを感じた。明るい結末だったので良かった。
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子供の高校の入学式、校長先生の挨拶に「環境破壊の問題の最適解を機械に計算させれば、人間が滅びればいいと出るでしょう。でも私達はそうはできず、妥協のラインを探って生きていくでしょう」的な話が途中にあった。(勉学は大事だという話の一部)読み終えて、その言葉が思い出された。 アイシャを幸せにしてくれる人が、せめて孤独でなくしてくれる人が、現れますように。
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上橋菜穂子さんは、児童文学作家として世界的に評価されているけど、そんなカテゴリーにとらわれずもっともっと評価すべき作家だと思います。 本当に他には無い世界を作り上げて、そのベースには、社会や科学、何よりも自然に対するハイレベルの思想がある。多分、上橋さんの頭の中には、物語世界...
上橋菜穂子さんは、児童文学作家として世界的に評価されているけど、そんなカテゴリーにとらわれずもっともっと評価すべき作家だと思います。 本当に他には無い世界を作り上げて、そのベースには、社会や科学、何よりも自然に対するハイレベルの思想がある。多分、上橋さんの頭の中には、物語世界の中でのいろいろなシーンが溢れんばかりにあるのでしょうが、それを抑えて最適と思われる長さに抑える作家としての胆力や文章力。これから、世界でもっと評価されて、もっと多くの人に読んで欲しいです。 「最適と思われる長さ」と書いてしまいましたが、一読者としてはもっと読みたい!この本だけで無く、他のシリーズも含めて、続編、外伝を強く期待します!
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初っ端から登場したし、近親者ってこともあり、きっとそれなりの重要人物だろうと思っていたんだけど、特に表舞台に現れぬまま、エンディングを迎えてしまった。新・香君の弟とじいじ。これは、彼らを中心とした続編がある、ということの暗示なのか?細かいことはさておき、全体としては、いつもの上橋ワールド全開って感じで、読後感も含め、爽快かつ壮大な物語でした。
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悲惨さはそこまで描かれず、政争はあれど悪人は出てこずで、甘いといえなくもない書き方なのに、迫ってくるのはさすがの文章力。 絶対的に正しい何かがあるわけではない。そのときそのときに最善と思われることをするのが生きるということなのだろうと思わせてくれる。 そして、騙されたいと思う庶民の、安易に流れる罪。独裁に甘んじ、「お上」の人間性に期待する庶民の性か。自分で考えて選ぶのは、とても労力のかかることだ。忌避する人が多いのはむべなるかな。だが、独裁者の良識に賭けるのは危険だろう。この小説ではうまくまとまっているが。
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久しぶりの上橋ワールドでしたが、上巻から下巻まで、おもしろくて一気読み! 上橋ワールドはお話の中の世界なんですが、そこに住む人々の息づかいまで聞こえてきそうなほどリアルです。主人公であるアイシャの頬を撫でる風や様々な香りも、まるで自分も一緒に感じているかのような気持ちになりまし...
久しぶりの上橋ワールドでしたが、上巻から下巻まで、おもしろくて一気読み! 上橋ワールドはお話の中の世界なんですが、そこに住む人々の息づかいまで聞こえてきそうなほどリアルです。主人公であるアイシャの頬を撫でる風や様々な香りも、まるで自分も一緒に感じているかのような気持ちになりました。 早く続きを読みたい気持ちと、読み終わるのがもったいなくて、ずっとずっとずっとこの世界にいたい気持ちとで最後の方は葛藤してました。続編もしくは外伝が出ることを切に願っています。 この香君の世界のどこかに、カンバル王国やリョザ神王国があったり、バルサやエリンやヴァンやユナたちが生きているんじゃないか、そんな気がしてしまいます。
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上巻のラストから、2つの勢力が交わり物語が大きく動き出す。特殊な能力と、主人公の活躍で全て丸く収まった、めでたしめでたしという展開で無いところに安心。かといってがっかりするようなラストでもなく。 帝国はオアレ稲に支配されてしまった、もう昔には戻れない、という展開に人の力の及ばないところ、人も大きな生態系の一部に過ぎない、ということを考えさせられる。オアレ稲で収量が上がり、人口が増え、分業で集落や国が大きくなり、オアレ稲への依存が最大化され。ある日、オアレ稲が採れなくなると、他の作物は作られなく、作れなくなっていて、かといって狩猟や交易だけでは、大きくなった社会を支えられず。この流れ、小麦がホモ・サピエンスを乗っ取ったという、ユヴァル・ノア・ハラリの説に共通点。 こんな風に香りを感じることができれば、全く世の中が違って見えるだろう。その能力を使って人の役に立ちたい、と前向きに進むことだけでなく、知らなければよかった事が見えてしまったり。孤独や辛さを感じることも多いだろう。
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下巻、最初からスリリングな展開で上巻以上にハイペースで読破しました。人、虫、鳥、草木といった万象、それぞれが生きるために、少しずつエゴればバランスが崩れる。先祖が決めた決まりを変える意味とリスク、変えないリスク。登場人物それぞれの決断と思惑。稚樹環境変動が激しい今、考えさせられま...
下巻、最初からスリリングな展開で上巻以上にハイペースで読破しました。人、虫、鳥、草木といった万象、それぞれが生きるために、少しずつエゴればバランスが崩れる。先祖が決めた決まりを変える意味とリスク、変えないリスク。登場人物それぞれの決断と思惑。稚樹環境変動が激しい今、考えさせられました。物語はとても楽しかった。
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世界観に入り浸って夜半過ぎまで熱中して読み耽てしまった 上巻から何となく予想していた『蝗害』 それが大きな鍵となる1冊 虫などに負けない強くより良い稲の存在が生まれ、それが国土に普及する 飢えから救われ国の利益となる それらは良い事のはずなのに、暗雲立ち込める 守られてきた事を破った代償が始まる それが現実世界で言う蝗害の始まり 喰われる稲は虫を呼び、その虫が崩壊をあまねくものであった どうなるのか、解決できるのか、と、ドキドキしながら読んでいた 何事にも適度に、自然界の摂理に従え、と言うような教訓として身に染みる そして終わり方、収束の仕方が凄く好き アイシャが香君として矢面に立つ瞬間、目の前の王ですら1人の民として圧倒する姿、そして香君として、1人人間としての言葉 神としてでは無く、香君という名の1人の人間として王に委ねる姿に胸が震える 登場人物1人1人、異なる考え方異なる人格を持ち存在する 政治絡みや個人の欲、周囲への思いやり どの登場人物も実に人間らしくて誰1人嫌いになれない 沢山の人が出てくるので覚えるまでが大変だけど、人と人との関わり方を読みながら理解していくのはとても楽しい 上橋先生の世界観 本当に本当に大好きだ 特に実際にあるような病気や災害などを題材にするから、他人事ではないように感じられる いつか見に起きるかもしれないと考える 読了後の余韻がずっと跡を引いているように
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