ミス・サンシャイン の商品レビュー
引退して余生を送っている戦後を生きた大女優の人生と、その身辺整理のアルバイトを担当する若者の交流と青春のような作品 同じ著者の「国宝」の女優版のような雰囲気だがこちらの方が馴染みやすいし読み易い
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大学院生・岡田一心と昭和の大女優・和楽京子の交流を描く物語。 戦後、日本の映画界を支え、一時はハリウッドにも進出した和楽京子。辛い出来事が続く一心は、年の差に戸惑いながらも、和楽京子に惹かれていく。恋ではないが、ただの年配の女性、という感覚でもなく。 とにかく和楽京子がカッコ...
大学院生・岡田一心と昭和の大女優・和楽京子の交流を描く物語。 戦後、日本の映画界を支え、一時はハリウッドにも進出した和楽京子。辛い出来事が続く一心は、年の差に戸惑いながらも、和楽京子に惹かれていく。恋ではないが、ただの年配の女性、という感覚でもなく。 とにかく和楽京子がカッコいい。引退した後も凛として、優雅に暮らしているが、決して自ら語らないことがいくつかあるのだった。
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ミス・サンシャインにそんな意味があったとは、と驚く。読み始めは思ったより淡々とした印象だったが、後半につれて良い、という思いが溢れてきた。鈴さんという引退した昭和の大女優の元でアルバイトすることになった大学院生の一心。一心は鈴さんと共に過ごすうちに彼女を崇拝するようになる。一心の...
ミス・サンシャインにそんな意味があったとは、と驚く。読み始めは思ったより淡々とした印象だったが、後半につれて良い、という思いが溢れてきた。鈴さんという引退した昭和の大女優の元でアルバイトすることになった大学院生の一心。一心は鈴さんと共に過ごすうちに彼女を崇拝するようになる。一心のキャラが横道世之介っぽくて微笑ましくなるが、恋人役は世之介と違って酷い女だった。私ははじめから「やめとけ」と思ったよ。一心が鈴さんに恋心というのは中途半端な設定のような気がしたが、女優の生き様や佳乃子さんとの友情に胸が熱くなった。
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大女優の「和楽京子」 その魅力ははかりしれない。 一心の失恋話も味付けになり 長崎という地も重要な役割を果たし 鈴さんと一心の心のやりとりが清らかに進む。 もちろん架空であろうが和楽京子の出演映画がその時代を象徴してて興味深い。
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吉田修一さんはある人物の人生譚を扱うのが本当に上手い。 読み終えたときにいろいろな感情を掻き立てられた。 これはぜひ映画化して欲しい。 ★4.0
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主人公である大学院生の岡田一心は、伝説の映画女優「和楽京子」こと(鈴さん)の家に通って、荷物整理のアルバイトをしている。鈴さんは一心と同じ長崎出身だった。前半は、ハリウッドでも活躍していた鈴さんの女優史みたいな体を取ってある。そこに挙げられた数々の映画はさすがに著者が映画通と思わ...
主人公である大学院生の岡田一心は、伝説の映画女優「和楽京子」こと(鈴さん)の家に通って、荷物整理のアルバイトをしている。鈴さんは一心と同じ長崎出身だった。前半は、ハリウッドでも活躍していた鈴さんの女優史みたいな体を取ってある。そこに挙げられた数々の映画はさすがに著者が映画通と思わせる。架空の監督や作品が並び、どれが実在したものなのか分からなくなるほど。 中でも和楽京子がフランスのカンヌ映画祭で女優賞と千家監督が作品のグランプリをダブル受賞した架空の『竹取物語』が興味を引いた。 吉田さんが仮想したオリジナルなのだろうか? それとも本当にあるのだろうか?読後も気になった。『竹取物語』本来の慈愛溢れるおとぎ話感を排除して、リアリズムで平安の世に生きた男や女たちを描いたものに転化されていた。育てた老父母は輝夜姫(かぐや)を強引に貰い受けようとする郡司を惨殺したり、輝夜が京の都に住む殿上人の求愛を退けて野武士と出奔する。輝夜が残してきた老父母を思い「誰も悲しませずに生きていくことはできるでしょうか?」と涙する。それを聞いた野武士は「悲しいとはなんじゃ?」「こうしてあなたといることでございます」「ならば、悲しいとは自分の思い通りになるということか」と笑って答える会話が切ない。その後野武士はイノシシに襲われ命を落とし、一人残された輝夜は尼になったというストーリーだった。 「いい映画女優ってね、呼吸するように演技するのよ」も名言だ。 被爆で鈴さんは親友の林佳乃子と一心は妹を亡くしているが、佳乃子と妹は申し合わせたように「私たちは早死にするからといって不幸な人生ではなかった。周囲に愛され十分幸せだったことを忘れないで」と、言残している。胸に響く言葉だ。鈴さんに寂しい時には、胸の窪んだところ“膻中(だんちゅう”を押さえて深呼吸をしなさいと教えてもらった。 一心が鈴の訃報を知り、仕事の場でささやかな良心的な行動をして物語は閉じられる。きれい事だけでは生きていけないと分かっていても、鈴が亡くなった日だけでも理想に生きてもいいんじゃないかと・・・。 本作に関する吉田さんのロングインタビューは↓ https://bessatsu-bunshun.com/n/n8fbf21fe97f8
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余白と行間が広いのもあり、あっという間に読了。 あの大女優はモデルがいるのかな? 短期間でも記憶に残る人とのステキな出会い、羨ましい。
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小学生の時に妹、一愛を亡くした一心(大学院生からの大手不動産の営業)と今は引退した大女優で長崎で被爆し、それが原因でたったひとりの親友、佳乃子を亡くした鈴さん芸名は和楽京子の心の結びつきが感動的だった。 特に、鈴さんと佳乃子のお互いを思いやる気持ちに。 そりぁあ、契約違反になっても最期の時は撮影を投げ出しても帰国するよね。 この鈴さん、歳は80歳過ぎてるみたいだけど、全然感じさせない。昔、映画に出てた頃の若々しい肉体美のまま少し歳をとった感じにしか見えない(感じ取れない) 資料整理のバイトで知り合った一心も好きになってしまうわね。 元彼を忘れなれない桃ちゃんよりもよっぽどね。 この鈴さん役、誰がいいかなと考えてしまう悪い癖。 岸恵子?大地真央?いやいやもっと肉感的な個性は美人なんだよな。 生きていたら太地喜和子がぴったりかも。
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往年の大女優和楽京子こと鈴さん、大学院生の一心は彼女の倉庫の整理のアルバイトをすることになり鈴さんに惹かれていく。物語は彼女の女優人生と一心の失恋がメインだが、原爆へのやり切れない思いも強く感じた。 一心の彼女だった桃ちゃんだけは許せないぐらい嫌いだった。そしてこういう人を好きになる一心にもガッカリしている。
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1回、声に出しちゃえばそうなる!なるほど。 鈴さん。 へーこの人すごい!という積み重ねが、尊敬につながるのだと思う。 桃ちゃんと映画に行った日の夜の出来事は、胸が苦しくなった。 人の心は、大人になってもよちよち歩きで、ゆっくりとしか歩けない。立ち止まって、でもゆっくりでもちゃんと...
1回、声に出しちゃえばそうなる!なるほど。 鈴さん。 へーこの人すごい!という積み重ねが、尊敬につながるのだと思う。 桃ちゃんと映画に行った日の夜の出来事は、胸が苦しくなった。 人の心は、大人になってもよちよち歩きで、ゆっくりとしか歩けない。立ち止まって、でもゆっくりでもちゃんと前に進んでく。焦る必要はない。 胸に手のひらを置いて 「ここに膻中(だんちゅう)というツボがあるの。寂しい時はここを押さえるの」 鈴さんの中指がグッと胸の中に押し込まれる。 私も眠れない時には、ここに手を置いて深呼吸をしてみようと思った。 大女優からもらった宝物。 まるで魔法にかけられたようになった。 それが和楽京子という女優が持っていた最大の魅力。 長崎の夏は原爆の夏。 魅力的な人に惹かれたら、 歳の差は関係ないと思う。 大人の恋の話だった。
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