ミス・サンシャイン の商品レビュー
ひさびさの吉田修一本。あたかも実在していたかのような女優の人生と、その一部にかかわりつつ、それがまた自身の人生の大切な一部となってゆくある青年の話。おたがいに自分の根底にある何かを、伝えてよかった、伝えなくても伝わってよかった、そんな感想です。
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大学院の教授の伝手で、昭和の大女優だった和楽京子こと鈴さんの倉庫の資料整理のアルバイトをすることになった一心。 目の前にいる鈴さんと和楽京子がなかなか重ならないのだろう。和楽京子という女優に興味を惹かれていくようになる。 これは恋、なのかなぁ。一心くんはどうもちょっと何かあると...
大学院の教授の伝手で、昭和の大女優だった和楽京子こと鈴さんの倉庫の資料整理のアルバイトをすることになった一心。 目の前にいる鈴さんと和楽京子がなかなか重ならないのだろう。和楽京子という女優に興味を惹かれていくようになる。 これは恋、なのかなぁ。一心くんはどうもちょっと何かあると好きだと思い込む癖があるのかな?なんて思ってしまったけれど。彼が恋だというのだから恋なのだろうな、という感じで読ませてもらった。 「吉永小百合さんを頭の片隅に置いていた」と著者のインタビュー記事で読んだのだけれど、私にはどうしても吉行和子さんが頭に浮かんで仕方がない(笑) 話し方とかざっくばらんさとか体当たり的な生き方をするのは吉永小百合さんのイメージではない気がするのは、私が往年の彼女たちを知らないからかもしれないけれど。 鈴さんについて何を言っても、残念ながら私では彼女の魅力を伝えることはできない。うまく表現はできないことはもどかしいけれど、簡単に表現できないからこそ良い本なのだと個人的には思っている。 大切にしたい1冊。
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今の私にストライク!の本でした。 どんなことが起きても、それは日常の一部で、常に光と影があって、満面の笑みの下にはさっきまで泣きわめいていた顔があったりするものなのだと、それが優しさと強さになるのだと、この本を読みながら何回も思いました。 一心が、和楽京子が出演していた古い映画を見る場面が時々出てくるのですが、そこがまた良い味を出していました。今と昔、演じることと素の部分、これらの切り替えが読んでいて心地よかったです。 読み進めていくうちに、これはフィクションで、「和楽京子」は実在した人物ではないかとネット検索したほどでした。そのくらい彼女は魅力的でした。私も一心と一緒に、和楽京子から大事なことを教えられた気がしました。
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優しい時の流れ。 梅、取り木。 呼吸のあり方 佳乃子との絆 膻中というツボ 長崎、夾竹桃。 〜人の心ってね、大人になってもよちよち歩きなの〜
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往年の女優と自分の生き方を見つけられない青年。軸はしっかりしている人でも迷う事はあるんだね。このキャラクターの話は読んだ事がない。どんな結末になるか楽しみだった。 予想よりずっと重くて、思考させる内容だった。 胸に寂しい時に当てる壺がある。 覚えておこう。 抱えてしまった亡くなっ...
往年の女優と自分の生き方を見つけられない青年。軸はしっかりしている人でも迷う事はあるんだね。このキャラクターの話は読んだ事がない。どんな結末になるか楽しみだった。 予想よりずっと重くて、思考させる内容だった。 胸に寂しい時に当てる壺がある。 覚えておこう。 抱えてしまった亡くなった人の形を大事にしている優しすぎる人達の幸せを祈る。
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若い男性が80歳の女性に恋をする話ーーー どういう話なんだろうと言う興味から図書館で借りてきた。 はじめは、女優さんの話だとわかり、 そりゃ80歳になっても綺麗だろうから、 若者でも恋をしちゃうだろうねと納得したし、 結局そういう優しいラブストーリーなんだと腑に落ちた。 でも、途中から恋愛色が一気に変わる。 長崎の原爆、ピカドン。 ハッとした。 これまでの全ての話にこの小説のヒロインであり、女優である 鈴さんの女優になる前の人生を垣間見得ていたことに気づいた。 そうだった、彼女は戦後の映画歴史のなかで 輝いてきた女優なのだ。それは、原爆がピカピカする ように止まらない。 タイトルのミスサンシャインが、 読めば読むほど、胸を刺す。 苦しくて、でも現実に近いものがここにあると ページをめくる手を止められなかった。 彼女の人生には光があり、影があった。 そんなことを20代の男性の目を通して見る 映画のような小説。
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引退した伝説の女優、今は80代の和楽京子(鈴さん)の元で、資料の整理のアルバイトをすることになった大学院生の一心。 戦後、日本はもとよりアメリカでも活躍した大女優ではあるが、若い一心からしたら、上品で綺麗なおばあちゃんでしかない。 でも、全盛期の和楽京子の作品を観返すうちに、鈴さ...
引退した伝説の女優、今は80代の和楽京子(鈴さん)の元で、資料の整理のアルバイトをすることになった大学院生の一心。 戦後、日本はもとよりアメリカでも活躍した大女優ではあるが、若い一心からしたら、上品で綺麗なおばあちゃんでしかない。 でも、全盛期の和楽京子の作品を観返すうちに、鈴さんと親しくなり人間性を知っていくうちに、一心の気持ちに変化が訪れる。 自分の心の中にいるのは、和楽京子なのか?鈴さんなのか? 一心が和楽京子の映画を観ている場面では、和楽京子の演技が細かく描かれていて、戦後のモノクロの映画を実際に何本も観た気分になります。 その映画と鈴さんの当時の実生活、そして一心の今の心情が重なって、なんともドラマチックな構成になっています。 どんなに特別な人も普通の人なのだということ、あんなに激しく恋をしたり悲しんだりした経験があるからこそ、今の平凡な毎日が幸せだと感じられるということ、そんなことを教えてくれる物語でした。
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長らく積読だったものを一気読み。原爆の日からそう経っていないこの時期になぜか手に取る。 ビビットって、カタカナで書くと間抜けなんだけど、吉田修一の作品は、中の人の心象風景が鮮やかに自分の中で再現される。 世之助寄りの主人公かと思ったら、また違う線の細さがある人だった。 もうちょい...
長らく積読だったものを一気読み。原爆の日からそう経っていないこの時期になぜか手に取る。 ビビットって、カタカナで書くと間抜けなんだけど、吉田修一の作品は、中の人の心象風景が鮮やかに自分の中で再現される。 世之助寄りの主人公かと思ったら、また違う線の細さがある人だった。 もうちょい、妹関連の散漫さがどうにかなってたら、もっとよくなったかもしれないとは思いつつ、これからも読み続け(買い続け)ます。
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八十を超え、父母の世代の一つ上は確実に旅立っている。想いを受け継ぐだけでなく、時間を遡って、その人生に寄り添い共に感じることで生まれる感情には、先代日本人へのリスペクトが含まれている。
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大学院の先生からの紹介で 一心は大女優和楽京子(鈴)の書庫の整理のアルバイトをすることになる 鈴や家政婦の昌子の話を聞き 穏やかな時間を過ごす と共に桃子への恋に振り回される 戦後映画→テレビ→舞台で活躍する鈴 実際の芸能の歴史をみているようで 鈴が実際に存在する女優をみている...
大学院の先生からの紹介で 一心は大女優和楽京子(鈴)の書庫の整理のアルバイトをすることになる 鈴や家政婦の昌子の話を聞き 穏やかな時間を過ごす と共に桃子への恋に振り回される 戦後映画→テレビ→舞台で活躍する鈴 実際の芸能の歴史をみているようで 鈴が実際に存在する女優をみているようだった 幼なじみと原爆の被害にあった鈴と佳乃子 光と影 「返せー」と連呼する場面は胸が苦しくなった 皆本当は平等に夢をみて叶えて 未来は明るいはずなのに それを許さない戦争の爪痕が憎い
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