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ミス・サンシャイン の商品レビュー

3.8

85件のお客様レビュー

  1. 5つ

    12

  2. 4つ

    42

  3. 3つ

    21

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2024/02/25

国民的、いや世界的大女優である50も年上の女性と、倉庫整理のアルバイトとして出会った一心。 一心が生まれるずっと前の彼女の作品を観つつ、一般人としての鈴さんとの交流が描かれている。 鈴さんの人生は魅力的である。そして鈴さん自身も魅力的である。さすが吉田修一さん。魅力的なキャラクタ...

国民的、いや世界的大女優である50も年上の女性と、倉庫整理のアルバイトとして出会った一心。 一心が生まれるずっと前の彼女の作品を観つつ、一般人としての鈴さんとの交流が描かれている。 鈴さんの人生は魅力的である。そして鈴さん自身も魅力的である。さすが吉田修一さん。魅力的なキャラクターを描く天才だ。 鈴さんの人生の中で親友とのエピソードは読んでいて涙が止まらなかった。 関東出身の私にとって長崎も広島もあまりに遠い。原爆のことは大昔の出来事になってしまっている。でも、長崎も広島も、どんなに時が経っても、世代交代しても原爆のことを心の奥底にずっしりと抱えているのだな… 長崎出身の吉田修一さん自身もその一人なんだな… 長崎、広島の人とそれ以外…ではなくて、被爆国である日本人として本来抱えていないといけないものなのだと恥ずかしく思う。 被爆したことは、鈴さんの人生の中の一瞬だ。それに囚われて不幸でいたわけではない。だけど、なかったことにはなるわけのない事。この小説の中でのその辺のバランス感覚がすごいと思った。

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2023/11/30

往年の大女優・和楽京子という80代の女性の 身辺整理をするバイトに雇われた 青年・一心を通して 昭和初期の芸能界が描かれています。 たぶん複数のモデルを組み合わせて この物語は創られていると思うのですが 小さな役をつかんだ後 見出されてハリウッドに招かれ やがてアカデミー賞を受...

往年の大女優・和楽京子という80代の女性の 身辺整理をするバイトに雇われた 青年・一心を通して 昭和初期の芸能界が描かれています。 たぶん複数のモデルを組み合わせて この物語は創られていると思うのですが 小さな役をつかんだ後 見出されてハリウッドに招かれ やがてアカデミー賞を受賞し 帰国後もずっと第一線で活躍した女優を中心に そこに描かれている映画史が興味深い。 和楽…本名「鈴さん」がそれらを直接 一心に語ることはほとんどなくて 彼が膨大な資料を紐解き 古い映画を見返すことで少しずつ その栄光と苦悩が浮かび上がってくる。 同時にこれは、バイトの間に 恋愛や人生の変化が生じた一心の物語でもある。 手放しのハッピーエンドではないかもですが 余韻の残る幕切れでした。

Posted byブクログ

2023/11/01
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鈴さんが出てきてからら自分の周りの空気まで澄んだように錯覚するほどきれいだと思った。一心、ちょっと世之介みたいだった。 吉田さんの「読者を説得するのをやめた」というインタビューを読んで、重いテーマのわりに余白を感じられた背景に納得した。

Posted byブクログ

2023/10/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「ミス・サンシャイン」 一見するととても華やかで晴れやかなイメージの呼び名。 けれどこの呼び名にまつわる本来の意味を知った時、明から暗へと突き落とされた。 戦後の日本映画を代表する名女優"和楽京子"。 華々しい経歴の持ち主で、まだ敗戦の色濃かった昭和初期の日本を、正に太陽のように明るく照らした女優の一人。 そんな伝説的女優と出逢った大学院生・一心。彼目線の"和楽京子"は、映画の中だけでは知ることの出来ない魅力溢れるチャーミングな女性"鈴さん"だった。 昭和の大女優と令和を生きる平凡な若者との接点なんて無さそうに思えるけれど、彼女の主演作の映像を観ることにより二人の距離は徐々に縮まっていく。 「男なんか、もう信じるもんか」 「あたしが幸せか不幸か?そりゃ、あたしが自分で決めるわよ」 「食べることは生きること。生きることは食べること」 「人ってね、失敗した人から何かを学ぶのよ」 彼女の放つ生々しい言葉の数々と、歳を重ねて自然と積み上げられた穏やかな包容力は、どんどん一心を魅了していく。 「ミス・サンシャイン」 こう呼ばれる度に、悔しさをひた隠しにし涙を堪えながら観客の前で堂々と演ずる"和楽京子"。現実から決して逃げることなく胸張って生きる彼女の生き様は、混沌とした令和の時代を生き抜くためにも必要なことかもしれない。 "和楽京子"みたいな女優さんは昭和にはたくさんおられた気がする。令和の今、こんな「呼吸するみたいに演技する」女優さんが少なくなってとても寂しい。

Posted byブクログ

2023/10/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「夜明けのうた」を猛烈に聴きたくなった。 読了後に胸に重くのしかかるこの感じはきっと、鈴さんが歩んできた歴史の重みなんだろうな。 ミス・サンシャインの意味、親友・恋人・マネージャーの存在、今までしてきた全ての選択、この帯を吉永小百合さんが書く重みなどなど...。改めて吉田修一さんってほんとに素敵な作家さんだなぁと。 本文に「自分にとってエンターテイメントとは観客であるからこその喜びを見出せるもの(だと気づいた)。」というフレーズがあり、分かるなぁと思った。だからこそ女優業を全うした鈴さんを一心は心から尊敬し、好きになったんだと思う。憧れと恋心は似ているところがあるから。

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2023/10/08

吉田修一「ミス・サンシャイン」books.bunshun.jp/ud/book/num/97… 久々の吉田修一は悪人も意地悪な人も1人も出てこない優しく美しい世界だった。設定がファンタジー寄りな点も含めて「きのう何食べた?」と近い線にある。喪失と罪悪感を抱えて生きる、全く境遇の違...

吉田修一「ミス・サンシャイン」books.bunshun.jp/ud/book/num/97… 久々の吉田修一は悪人も意地悪な人も1人も出てこない優しく美しい世界だった。設定がファンタジー寄りな点も含めて「きのう何食べた?」と近い線にある。喪失と罪悪感を抱えて生きる、全く境遇の違う2人が出会う。心正しい人たちの悲しみの話◎

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2023/08/13

この作品の主人公(ストーリーテラー)は岡田一心といういかにもまっすぐそうな名をもつ長崎出身の青年。どことなく横道世之介くんを彷彿とさせる。そんな彼が往年の名女優・和楽京子のもとへ資料整理の手伝いに通った日々が描かれる。一心と世之介が重なるようでもあり、そして人生の大先輩たる方々に...

この作品の主人公(ストーリーテラー)は岡田一心といういかにもまっすぐそうな名をもつ長崎出身の青年。どことなく横道世之介くんを彷彿とさせる。そんな彼が往年の名女優・和楽京子のもとへ資料整理の手伝いに通った日々が描かれる。一心と世之介が重なるようでもあり、そして人生の大先輩たる方々にかわいがられ好かれながら大人の階段を一歩昇るストーリーはなぜか吉田修一とも重なる。吉田修一がプライベートでどんな人生(若い頃)を歩んできたか知らないけれど、これまでの作品からも彼はそんな若い頃があるような気がする。 フィクションだけどあの頃のあの人を思わせるような和楽京子の活躍ぶり、そして実在していた人たちが散りばめられたのを読んでいくのは自分好みで楽しい。きっと吉田修一もこういう世界が好きで書くのが楽しかったんじゃないかな。 一方で、長崎の原爆禍を描いた一面もある。前半のキラキラとミーハー魂を満たしてくれる筋に比べ、後半はやや重くなる。とはいえ、ちょっとありがちで甘ったるいおセンチさが舌に残るような感じも。そうはいっても一心の早逝した妹への思いや恋した桃ちゃんとのやり取りも相まって、それが原爆禍とあまり違和感なく混じり合い、このへんは軽めに書いても及第点に達する吉田修一のうまさ。力作的な作品というよりは軽い気分で読み、面白くてちょっと考えさせられたという読後感を得るのがちょうどいい。

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2023/08/03

8月9日を思い出す。 僕の祖父・濵田松之助は大正元年生まれで、第二次世界大戦の末期、昭和18年に召集された。当時31歳。妻と男の子3人、女の子2人の家族6人を佐世保に残し、長崎市へ向かった。 2年後、昭和20年には、二等兵から兵曹となり18人の高射砲隊の一員として、稲佐山に駐...

8月9日を思い出す。 僕の祖父・濵田松之助は大正元年生まれで、第二次世界大戦の末期、昭和18年に召集された。当時31歳。妻と男の子3人、女の子2人の家族6人を佐世保に残し、長崎市へ向かった。 2年後、昭和20年には、二等兵から兵曹となり18人の高射砲隊の一員として、稲佐山に駐屯していた。敵の戦闘機を狙っていたのだ。 「何機かは、撃ち落としたけどね、グラマン(戦闘機)は撃ち落とせんかった」 と、松之助は後に長男(僕の父)へ語っている。8月9日も、彼は稲佐山にいた。11時2分、突き刺すような光を感じた瞬間に近くの防空壕(ごう)へ飛び込んだ。戦後、しばらくして「自分は運がよかった。でも、部隊の半分が即死。残り半分も、精神錯乱や病気で死んだ」とつぶやいたそうだが、詳細は決して話さないまま50歳の若さで、車を運転中に突然死んだ。医者の僕が想像するに、状況から心筋梗塞か脳卒中だったのではないかと思われる。もちろん、原爆の影響がどこまであったのかは今となっては分からないのだが。 亡くなったのは僕の初節句を祝った1カ月後だったそうである。ほほ笑みながら、僕を抱いた写真が1枚残っている。それから半世紀の時が流れ、80を超えた長男(僕の父)は、松之助を被爆者名簿に掲載してもらえないかと役所に相談したそうだ。気持ちはなんとなく分かる。結果は、なかなか難しいとのことだった。恐らく、松之助のような記録されない被爆者はたくさんいるに違いない。                 今回紹介するのは、長崎市出身の芥川賞作家・吉田修一さんの『ミス・サンシャイン』。僕はこの本を読んだ時、なぜか、全く覚えていない祖父のことを感じた。恐らく主人公が長崎出身で、原爆症の親友や長崎大学病院を描いた場面があるからだろう。この本はエンターテインメント風に仕上げてあるが、名もなき被爆者を描いたドラマだ。長崎市出身の吉田修一にしか書けない「原爆文学」の流れの中にある傑作ではないか、と読後勝手に感動していた。 先月、『ミス・サンシャイン』がなんと、島清恋愛文学賞を受賞した。え~、これって恋愛文学!?と、思わず僕は絶句した。著者ご本人も「恋愛小説として書いたわけではなかったが、人間を書くと必ず恋愛の部分が出てくる。歴代受賞者を見てもかなりユニークな賞であり、頂けるのは本当に光栄だ」と、戸惑いと驚きのコメントを出していた。 いずれにしろ、この本が脚光を浴びて僕はうれしい。女優の吉永小百合さんが本の帯文を書いている。 「作者の故郷への思いを私は今、しっかりと受け止めたいです」 もしかすると、どんな形でも、1945年の8月9日を思い出すことが重要だとの思いで、吉田さんはこの本を書いたのかもしれない。 もうすぐあの日が巡ってくる。僕は、今年もサイレンの音を聞きながら、祖父がいた稲佐山に向かって手を合わせる。 ※以上は2023年7月23日掲載の長崎新聞記事を再編集したものです。

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2023/07/18

昭和を代表する大女優、今は引退に近い状態の女性を孫ほどに年齢の離れた青年の目を通して描く。女優の人生のみならず、青年の恋愛や今までの人生体験を絡ませることで、単なる昭和、戦争、原爆等を振り返るような単純なストーリーにはなっていない。 80代の女性ではあるが、若々しく、上品で魅力的...

昭和を代表する大女優、今は引退に近い状態の女性を孫ほどに年齢の離れた青年の目を通して描く。女優の人生のみならず、青年の恋愛や今までの人生体験を絡ませることで、単なる昭和、戦争、原爆等を振り返るような単純なストーリーにはなっていない。 80代の女性ではあるが、若々しく、上品で魅力的な人物として描かれ、本当にこの女優は実在したのではないかと思わせる。著者の中で女優のストーリーがしっかりと構築され、その上で作品に反映されていると感じさせられる。

Posted byブクログ

2023/06/23

大学院生の僕は女優だった80代の女性の資料整理のバイトをすることになった。 そこで、80代の和楽京子こと鈴さんと出会い、彼女がハリウッドスターだった頃の話や、都内を散歩して食事をしたり、一緒の時間を過ごすうちに芽生えた恋心。 吉田修一さんの話は、面白い。それだけ。

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