批評の教室 の商品レビュー
テクストをどう精読し、分析し、批評を書くかの入門書。やさしい言葉で書かれていてとても分かりやすかった。専門的な批評理論の詳細までは踏み込まず、代わりに巻末にブックガイドが掲載されている。後半、著者とゼミ生それぞれが書いた2本の映画についての批評が載っており、それに対するコメントや...
テクストをどう精読し、分析し、批評を書くかの入門書。やさしい言葉で書かれていてとても分かりやすかった。専門的な批評理論の詳細までは踏み込まず、代わりに巻末にブックガイドが掲載されている。後半、著者とゼミ生それぞれが書いた2本の映画についての批評が載っており、それに対するコメントやディスカッション含めて興味深く読んだ。自分の書いたものについて忌憚なくやりとり出来るコミュニティは貴重だと思う。ゼミっていいなぁ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
この本を読んだのは、自分がずっとハマって読んでいた漫画の終わり方に納得がいかず、けれど周囲の人たちは大絶賛していて、自分が疑問に思った点を言うことを憚られたからだった。 好きなところは好き、でもこういうところはおかしいと思ったし好きではない、とどうやったらうまく言葉にできるのか。むしろしてもいいのかどうなのか。そういう疑問への答えが欲しくて読んでいたら、なんだかとってもすっきりした。一番嬉しかったのは「芸術作品というのは現実の世界と異なり、あらかじめ受け手によって探索され、理解されるためのものとして作られているからです」というフレーズ。美術にしろ文学にしろ、世の中に出たものが世の中の人によって議論されたがゆえに今に残っているものがたくさんある。当たり前だけど忘れがちで特にSNSの同調主義に屈しないために心にこの言葉を持っておきたい。 とりあえずその漫画の精読から始めようかなと思えたのが自分にとっての何よりの学び。
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シェイクスピアの研究者であり、フェミニスト批評の立場から映画などの批評活動をおこなっている著者が、作品の批評をおこなうための具体的な方法を解説している本です。 ロラン・バルトの「作者の死」などの概念について紹介する、批評理論についての解説書とかさなる内容もふくんでいるのですが、...
シェイクスピアの研究者であり、フェミニスト批評の立場から映画などの批評活動をおこなっている著者が、作品の批評をおこなうための具体的な方法を解説している本です。 ロラン・バルトの「作者の死」などの概念について紹介する、批評理論についての解説書とかさなる内容もふくんでいるのですが、より実践的な指南書としての側面をもっているのが本書の特徴といえるように思います。著者自身が授業で学生を指導してきた経験が活かされているようで、小説や映画を鑑賞するさいに留意するべきことや、批評を書くための具体的なテクニックなどを知ることができました。 批評をおこなうにさいして、「自分の性的な嗜好が評価に影響を及ぼす可能性がある」ということを自覚しておくことの必要性を指摘しているのは、ネット上で個人的な感想を書きつづっているわれわれにとって有益だと感じました。著者は映画『ジュピター』について、「子供が書いたみたいなメチャクチャな脚本で本当にひどい映画だと思いますが、女の子の夢を恥ずかしげもなくブチまけたみたいな展開やら、チャニング・テイタム演じる狼男っぽいボディガードやら、ジュピターがつけているとんでもなく派手なヘッドドレスやら、いろいろぐっとくる様子があって私にとっては嫌いになれない映画です」とコメントしています。作品に魅力を感じる理由をことばに表現することで、みずからのヴァイアスを自覚するとともに、その価値を語ることができると著者は述べ、そのうえで「このような場合は自分の愛がどこからくるのかを冷静に考えましょう」とアドヴァイスしています。 とくに身構えて批評という営みにとりかかろうとするひとでなくても、「おもしろかった」「つまらなかった」という感想で終わらないために、重要なアドヴァイスだと思います。
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著者にはツイッタランドで燃えている可燃物のイメージしかなかったんだけど、文章の読み方伝え方を面倒見良く教えてくれる良い先生だった。 その上で、深く考えずに作品を見て楽しむのも十分価値ある体験で、優劣はつけられないとも言ってくれている。優しい
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何日か前に、はてブのトップに著者のブログがあった。その中身そのものは今の自分からは距離があったのでブックマークしていない。しかしながら論理展開が見事だったので、その著作を読んだ。批評をやるためというよりも、フィクション(舞台、映像、音楽、文学などなど)の鑑賞手法の入門みたいで面白...
何日か前に、はてブのトップに著者のブログがあった。その中身そのものは今の自分からは距離があったのでブックマークしていない。しかしながら論理展開が見事だったので、その著作を読んだ。批評をやるためというよりも、フィクション(舞台、映像、音楽、文学などなど)の鑑賞手法の入門みたいで面白く最後には批評を比べあうことまでやって読者サービスがとてもよい。
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世間では好評のようだが自分にはちょっと難しすぎる。 参考文献もしっかりしているが自分にはピンとくるものがない。 精読 作品内の事実を認定し、しかし語り手を含めた人物を信用しないこと。 一般的に「語り手=作者の意向の反映」や「この作品のメッセージは何か?」といったような捉え方をし...
世間では好評のようだが自分にはちょっと難しすぎる。 参考文献もしっかりしているが自分にはピンとくるものがない。 精読 作品内の事実を認定し、しかし語り手を含めた人物を信用しないこと。 一般的に「語り手=作者の意向の反映」や「この作品のメッセージは何か?」といったような捉え方をしたくなるが、 作者の作品に対する支配性を排除することで、読者は自由な読解が可能になる。 本書では「とりあえず作者には死んでもらおう」といった言い方がなされており、 自分なりに受容することで先入観にとらわれない読解ができる。 分析 時系列、人物相関図に書き起こす。物語を要素に分解する(構造分析)。 「仲間」の作品を見つけ、ネットワーキングする(インターテクスト化)。 書く 分析の切り口を決め、読者対象を想定する。 書く時には、内容が正確に伝わるように。 「誰からも好かれようと思うな」 共同体をつくる 批評が書けたら、それを基に議論をする。 人と意見を交換することで作品の周りにコミュニティができる。
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批評の書き方について大学の授業を受けているような本。 勉強になった。大学生にはいい本だと思う。ブログなどでも応用できると思うがもっと気楽に書きたい気もする。
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全然読む気はなくって、多分図書館で予約する時に間違った。 それでも何かのご縁と思ったんだが、予想外に面白く。 批評というものへの初心者向けの心得、技法の本。軽いけど。 ただざっと読むには必要ないが、きちんと精読して、解釈して、批判することの、多分「面白さ」を教えてくれる。プロ...
全然読む気はなくって、多分図書館で予約する時に間違った。 それでも何かのご縁と思ったんだが、予想外に面白く。 批評というものへの初心者向けの心得、技法の本。軽いけど。 ただざっと読むには必要ないが、きちんと精読して、解釈して、批判することの、多分「面白さ」を教えてくれる。プロでもあるまいしいつでもこの読み方をする必要はなく、特に小説なんかは、自分の感性で出来栄えを噛み締めるだけで十分だと思うのだが、そこを突っ込む事もまた面白い。 分析する事で、自分の「感想」の理由わかるだろうし、例え面白いと思わなくても、その理由を分析する面白さもまた、ある。 そうだよね。 また結構大事だと思ったのは、自由な感想とか、いろんなセオリーをぶっ壊すこと。 きちんと身についたものがあって、必要があって壊すとかならいいが、何の訓練も受けていない、おそらく経験も未熟な自由は、ただの偏見の檻の中で暴れてるだけなので要注意。 最近のSNSなんかで、色々荒れるにもこの辺がありそう。 また、本当に才能のある人間は、そんなセオリーや枠を当てはめられても、毀損することはないので心配はないともいう。この本は、「初心者」向けだときっちり明言しておられた。 巨人の肩には乗るべきなのだ。 先人の功績を踏まえた上でその先に進める。 意外に示唆深い本だった。 最終章の、具体的な批評例と、感想戦が面白くなかっただけ。 共有するものがなかったからだろうね。
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批評とはどのような行為かを知り、作品を分析的に見る方法を身につけ、実際に批評を書いて発表できるようやさしくガイドする入門書。 プロレベルの批評を書くには精読と参考資料集めが一番大変なはずだが、これはゼミなどで実践しないと身につかない。本書はそういうところをサラッと「大変ですよ...
批評とはどのような行為かを知り、作品を分析的に見る方法を身につけ、実際に批評を書いて発表できるようやさしくガイドする入門書。 プロレベルの批評を書くには精読と参考資料集めが一番大変なはずだが、これはゼミなどで実践しないと身につかない。本書はそういうところをサラッと「大変ですよ」で流しているので(反復されるモチーフの書きだしなどヒントはだしているが)、本当の意味で実践的ではないのかもしれないが、とにかく「批評はこわくないよ」「作品を褒めようが貶そうが、あなたが楽しんでいればそれでいいんだよ」をくり返し伝えてくれる。どんなジャンルでも何かしら創作物を見聞きして感想を発信したり読んだりする人(つまりオタクのほとんど)は一読して損はない親切な一冊だ。 特に重要だと思ったのは、自分のなかに確実に存在するバイアスに気づき、意識することが大事だというくだり。著者はハッキリと「性欲」がバイアスを生むとしている。 これは性的指向とは別で、オタクが「性癖」と言い換えて自らの趣味嗜好を押しだした感想を出力するときにやっていることだと思う。好みが明確ならそれをオープンにして書くことも個性になりうるが、自覚せずあたかも中立的な意見のように言ってしまうと批評としてはアウトなのだ。 バイアスがあることではなく、バイアスがないかのように振舞うことが罪。これは差別的なことを書いていないか意識するためにも必須の視点だ。こういうふうに、批評の技術やテクニックよりも心得を丁寧に教えてくれるのが本書のよさである。 Web上に感想があふれる飽和時代、「批評」という言葉にはいつのまにかネガティブなイメージもついている。批判や非難と区別がついてない人もいるのだろう。しかし当たり前だが、オタクだからってポジティブな感想だけを拡散して作品の評判に貢献する広告塔にならなきゃいけないわけじゃない。いろんな角度から「ストーカー的に」作品をしゃぶりつくし、読み解いてくっちゃべること自体に楽しみがあるのだから大いに楽しもうじゃないか、とオタクたちを鼓舞する本書の姿勢に私も賛成である。
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本でも映画でも、ここでのちょっとした”評”を書くような時にでも役に立つ、作品・あるいは人のコメントなどについてちゃんと受け取る時の作法全般に役に立つと思う。自分の最初の反応も大事だけど、それを掘り進めることで新たに見えてくるものがある。自分の中の"偏り"に自覚...
本でも映画でも、ここでのちょっとした”評”を書くような時にでも役に立つ、作品・あるいは人のコメントなどについてちゃんと受け取る時の作法全般に役に立つと思う。自分の最初の反応も大事だけど、それを掘り進めることで新たに見えてくるものがある。自分の中の"偏り"に自覚的になることは大事。
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