みかんとひよどり の商品レビュー
こんなにもグルメ×ミステリー小説が多いなか、どういうジャンルの料理を取り込むかは、ある種のニッチ産業のように思います。そうだ、ジビエ料理というのはこれまでありませんでしたね。 料理学校では優等生、星付きのレストランで修業もしたのに、いざシェフを任されると次々と店を潰してしまう主...
こんなにもグルメ×ミステリー小説が多いなか、どういうジャンルの料理を取り込むかは、ある種のニッチ産業のように思います。そうだ、ジビエ料理というのはこれまでありませんでしたね。 料理学校では優等生、星付きのレストランで修業もしたのに、いざシェフを任されると次々と店を潰してしまう主人公・潮田。ジビエを偏愛する女性オーナーの目にとまったものの、またしても閑古鳥。猟に入った山で遭難しかけたときに助けてくれたのは、いたって無愛想な猟師・大高。 なんとも美味しそうな料理にヨダレが出そう。だけどこの著者のことだから、予想していたよりもずっとミステリー。鹿の出没にうんざりするわが家の周辺ですが、本作を読むと少し見方が変わる。
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読み終えて、あー良い話だったと自然と笑顔になれた。 「生きることには時間がかかる」 便利になったのに複雑になっている。 ただ普通に暮らしたいのに、いつの間にか 複雑と共存してしまっている。 その通りだなと思った。 進み続けるのも凄い事だけど、 立ち止まる事にも、努力やエネルギーがかかる。 立ち止まることは悪いことではない、 必要な事なんだなと思わされた。 立ち止まっている時に、このことを思い出せば 立ち止まっている自分にも勇気を与えれる気がした。 料理もすごくおいしそうでした。
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雇われフレンチシェフの亮、無愛想な猟師の大高、ジビエが好きなオーナー。それぞれがとても個性的なんだけどリアリティがあって、犬のピリカとマタベーも含めてみなが魅力的だった。 “そこで生きていた命を、ひと皿の料理にする。” そんな料理をこれまで食べたことはない。みかんの香りのする...
雇われフレンチシェフの亮、無愛想な猟師の大高、ジビエが好きなオーナー。それぞれがとても個性的なんだけどリアリティがあって、犬のピリカとマタベーも含めてみなが魅力的だった。 “そこで生きていた命を、ひと皿の料理にする。” そんな料理をこれまで食べたことはない。みかんの香りのするひよどりって何?ひよどりどころかジビエもほぼ食べたことがないけれど、文章をたよりにどんな味なのか、どんな香りなのかを考えるのは楽しくて想像力がかきたてられた。
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物語云々よりも、途中からいきなり主人公が大高に対してタメ語使い始めたことに対する疑問があたまから離れない笑 めっちゃどうでもいい話だけども。 ジビエはその言葉の意味だけで、それがどういった存在として世に受け入れられているのか知らなかったので、興味深かった。ただ物語に出てくる、狩猟反対派の存在が小説の中で何だか付け足された感が強い気がした。
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ピリカとマタベーが可愛い オーナーと若葉ちゃんそんなに出てないけどとてもいいのでスピンオフとかで2人の短編でもいいからでないかなと思いました。 潮田と大高の関係性がとても好きです。 人間性は違えど根の部分は似てる2人なのかなと思いました。 お互いの人生に少しずつ影響を与えている2人いいですね。 最後大高と再会した時、描写はなかったですが個人的な想像として大高が笑ってた気がしてほわっとしてしまいました。 また再会の場が山の中ってのがいいですね。 山で出会った2人の再会の場が山。ただ今度は大高ではなく潮田が大高を見つけるというのがすごくよかったです。
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評判の良い本みたいだけど、物語に深みが足りないように感じる。 物語の主題を担う人物である大高に起こるトラブルが、取って付けた様で違和感を感じる。 物語上、それほど重要とは思えないエピソードなので、もう少し自然な理由付けとなるものではいけなかったのだろうか? ジビエを題材に、ハン...
評判の良い本みたいだけど、物語に深みが足りないように感じる。 物語の主題を担う人物である大高に起こるトラブルが、取って付けた様で違和感を感じる。 物語上、それほど重要とは思えないエピソードなので、もう少し自然な理由付けとなるものではいけなかったのだろうか? ジビエを題材に、ハンターとシェフを軸に人生と絡めて掘り下げていくのは、良いアイディアだと思うが、シェフを取り巻く人々が、弱いというか物語を深めるために機能していない。 文章は読みやすいので、少しもったいないように思った。
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ジビエを出すレストランの雇われシェフが遭難して出会った猟師とのあれこれ 以下、公式のあらすじ -------------------- 「肉を焼くことは、対話だ」ジビエを通して繋がる、ふたりの成長物語 始めたばかりの猟で遭難してしまった潮田亮二、35歳。相棒の猟犬と共に途方に...
ジビエを出すレストランの雇われシェフが遭難して出会った猟師とのあれこれ 以下、公式のあらすじ -------------------- 「肉を焼くことは、対話だ」ジビエを通して繋がる、ふたりの成長物語 始めたばかりの猟で遭難してしまった潮田亮二、35歳。相棒の猟犬と共に途方に暮れていたところ、無愛想な猟師・大高に助けられる。 かねてからジビエを料理したいと考えた潮田は、大高の仕留めた獲物を店で出せるように交渉する。しかし、あっさり断られてしまい――。 夢を諦め、ひっそりと生きる猟師。自由奔放でジビエへの愛情を持つオーナー。謎の趣味を持つ敏腕サービス係。 ふつうと少し違うけど自分に正直な人たちの中で、潮田は一歩ずつ変わっていく。 人生のゆるやかな変化を、きめ細やかに描く、大人の成長物語。 -------------------- 近藤史恵さんが食を主題にした作品と言えば、ビストロ・パ・マルシリーズ、ときどき旅に出るカフェ それらが連作短編のアラカルトだとすると、今作は一連のコース料理のように思える 全部を通して読むと、命を頂くという意味を考えさせられる 生きるために食べなければいけない 食べるために殺さなければいけない では、食べるためならどんな命でもいただいていいのか? 罪悪感を抱かない場合との境界線は? 食肉として生育されたものではないので、当然安心安全が100%保たれたものではないけれど、それでもお店として提供する基準はある では、野生動物でなければよいのかというと、色々な境界がある 過激な人達は人が動物の命を奪うことは一切辞めるべきという主張のために強硬手段をとる場合もある 一般の人としては、スーパーで加工済みの食肉に対しては嫌悪感はないだろうけど、元々の命が垣間見えるとちょっと拒否感が生まれるかもしれない まぁ、野生動物も作物を荒らす害獣としての側面もあるし それを駆除する事すら拒否するというのも自然をわかってない人達と言わざるを得ない 大高の家が燃えたり、猟師仲間のが銃を盗まれたり、車を当て逃げされたりとサスペンス要素もあり シェフの自尊心、オーナーのような考えの人など複数の問題が絡み合っていて単純な物語になっていない 大高が言う「人生を複雑にしたくない」という主張はある程度は理解ができる オーナーはパスポートを持っていれば海外に行くことができると言うけれども それは突然海外に行かされる可能性もあるという事なんですよね ま、オーナーはそんな場合は拒否するという選択ができるのでしょうけど、大高はその選択をしなければいけない時点で複雑になってるんですよね 「生きることには時間がかかる」というのもわかる 便利な世の中になったけど、省いた手間を全て自分でやるとすると、食べるために一日中動くことになる シンプルなキャンプなんてそんな感じでしょうね そして解説が坂木司さん 好きな作家さんのコラボみたいで嬉しい 真面目な書評と最後の私信めいた文章のギャップがまたよい 確かに近所にビストロ・パ・マル、カフェ・ルーズ、レストラン・マレーが欲しい 読み終わった後にジビエ料理を食べに行きたくなる でも、私の近所にはそんなお店がないようで残念
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羊肉大好き、鴨肉好き、 主人がジビエ割と好きなので、私も鹿、猪、ダチョウ、七面鳥くらいは食べたことあるけど (鹿肉はふるさと納税、カレーはもちろんローストビーフみたいに調理しても美味しかった) ひよどり、ベランダによく来て鳴いてる… どんな味なんだろう? 熊は?興味はある… ...
羊肉大好き、鴨肉好き、 主人がジビエ割と好きなので、私も鹿、猪、ダチョウ、七面鳥くらいは食べたことあるけど (鹿肉はふるさと納税、カレーはもちろんローストビーフみたいに調理しても美味しかった) ひよどり、ベランダによく来て鳴いてる… どんな味なんだろう? 熊は?興味はある… 哺乳類を人間の都合で駆除して命を奪うのなら、せめて美味しく食べて供養にしたいシェフやオーナーの気持ち…分かる。虫やゲテは絶対無理だけど… マタベーとピリカが可愛い。
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2023.7.18 読了 9.5/10.0 食をめぐる、食べることそのものを問う物語 人間は生きている以上、食べることから逃れることはできない。そして食事のたび、取捨選択を迫られる。 「何を食べるか」「どう食べるか」、あるいは「誰と」「どこで」「いつ」。 この物語は、ジビエ...
2023.7.18 読了 9.5/10.0 食をめぐる、食べることそのものを問う物語 人間は生きている以上、食べることから逃れることはできない。そして食事のたび、取捨選択を迫られる。 「何を食べるか」「どう食べるか」、あるいは「誰と」「どこで」「いつ」。 この物語は、ジビエを介してその取捨選択に向き合い続ける人々を描いている。 【命を平等に見ることの矛盾】 飼っている小鳥と、撃たれた小鳥。山に連れて行く犬と、そこに横たわる鹿。これら二者の間にどれほどの距離があるだろう。 命を等しく見るのなら、鹿と犬の延長線上に人間もいる。 では、命を等しくみた場合、食物にさえならない害虫はどうだろうか。 ノミやゴキブリを殺すことを「残酷だ」と叫ぶ人々はいるだろうか。動物実験のサルやラットに対して同情心を持っても、飛べなくしたハエの遺伝子解析実験に心を痛めることはないのは、何故だろうか。 〜〜〜〜〜印象的な言葉〜〜〜〜〜 "よく考えれば、人は野山で一晩過ごしただけで死んでしまいそうになるのに、野生動物はその環境で日々生活し、食べ物を探し、敵から身を守っている。賢くないはずがないのだ。 なのに、人間は野生動物たちよりも自分たちの方が賢いと思い込んでいるのだ" "不思議な気がした。養豚場の写真や動画はメディアに出ることがあっても、食肉処理施設にスポットが当たることはない。ぼくたちは、肉になった姿だけしか知らない" "命から、適切に管理された肉になるまでに多数の工程がある。多くの人は、そのことをすっかり忘れて生きている。 牛でも豚でも同じだ。食肉処理施設で、人の目に触れることなく行われるだけだ" 害獣の焼却施設にて "だがここにいる鹿は、肉になることすらない。焼かれて、そのまま骨になる。 この施設が悪いわけではない。必要があって建てられたものなのだろう。だが、胸が張り裂けそうに傷んだ。 殺しながら、食べることさえせず、ただ命を無駄に投げ捨てる。手間さえかければ美味しく食べられるものを、焼いて骨にして捨てるのだ。 殺さなければ良いという問題ではない。(害獣に食い荒らされる)畑の作物も、森の木々も、それで生活している人たちがいる以上、守らなくてはならない。 誰が悪いわけではない。なのに僕は、そこに傲慢の匂いを感じ取る。 傲慢なのは、殺して持ち込む人ではなく、ここで働く人でもない。 命と食べ物を効率で簡単に切り分けてしまう社会こそが傲慢で、それには僕も否応なく加担している" "そう。殺し、食べるのは生き延びるためだ。ぼくたちは、殺した命に責任がある。彼らを殺してまで生きようとしたのだから、なんとしても生き延びるべきだ" 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 この本が見事なのは、読みやすくて美味しそうな物語という"お皿"に、これら食をめぐる問題や食べることそのものへの問い、社会に生きる私たちも効率的な食社会に組み込まれていること、などなどを読みやすく"調理"してさらりと載せて私たちの前に運んでいることだ。 圧巻の読後感。食べることを意識して暮らすことの大切さを痛感しました。
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生き物を食べることに対して向き合った一冊。ジビエを殺して捌いて手の込んだ料理にする。とにかく生きることには時間がかかるものだ。スーパーでパック詰めされている肉を買っても空いた時間に何かしらの仕事があり、忙しさは変わらないが生き物を食べているということも忘れてしまう。何か大切な物を...
生き物を食べることに対して向き合った一冊。ジビエを殺して捌いて手の込んだ料理にする。とにかく生きることには時間がかかるものだ。スーパーでパック詰めされている肉を買っても空いた時間に何かしらの仕事があり、忙しさは変わらないが生き物を食べているということも忘れてしまう。何か大切な物を見失おうとしている現代人に向けて見方を変えてくれる。
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