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首里の馬 の商品レビュー

3.4

98件のお客様レビュー

  1. 5つ

    12

  2. 4つ

    29

  3. 3つ

    39

  4. 2つ

    10

  5. 1つ

    2

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2021/02/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

沖縄に暮らす孤独な女性が、不可思議なバイトと、誰にも必要とされていない記録保持を掛け持ちながら、変化に対面していく物語。 荒を感じる部分はあるが、テーマの捉え方と、ややとっぴながらも鮮やかなモチーフの結びつきに、たいへん好感を覚えた。 本作のテーマは「接続」だと考える。 孤独を自認する主人公は、役に立たないかもしれない記録を保持し続け、同じく島の記憶を存在に背負った馬の背に乗る。記録は誰にも用いられることはないかもしれない。しかし、記録は記録されることそのものに、きちんと意味を持つ。照会のために記録があるのではなく、記録は記録という行為のためにも存在して良い。主人公は照会のためではなく、記録という行為のためにデータを残し、それにより社会へと接続している。このデータが役立つ日は来なくて良い、と思いながら。この物語において記録とは、いつか役立つ日を待つデータの群ではなく、作成者の意図を反映する魂でもある。 主人公には物語の開始地点から「喪失」があり、作中でも「喪失」は訪れる。しかし、この物語において「喪失」の対義は「獲得」や「回復」ではない。失われ、事実と物体となったものを保持していくこと。それが提示されている答えであり、魂はデータとして生き続ける。大きな肯定がないことこそが、物語のなかで貫かれている彼女の人生への肯定である。 より考えを深めて読みたい一冊。とても好きな小説だった。

Posted byブクログ

2021/02/25

幼い頃に母を亡くし父と沖縄で育った 主人公の未名子は、当時中学生だった10年前から(不定期で通学しながら)、元研究者の順が営む「沖縄及島嶼資料館」で保存されている資料の管理などを手伝ってきた。 だが、あくまでも 無給。 未名子が主としている仕事は、遠く離れた地で孤独に暮らす相手...

幼い頃に母を亡くし父と沖縄で育った 主人公の未名子は、当時中学生だった10年前から(不定期で通学しながら)、元研究者の順が営む「沖縄及島嶼資料館」で保存されている資料の管理などを手伝ってきた。 だが、あくまでも 無給。 未名子が主としている仕事は、遠く離れた地で孤独に暮らす相手にオンラインでオペレーターとしてクイズを出題するという仕事であった。 その特殊な仕事内でしか出会うことのない3人の外国人の多種多様な生い立ち、台風接近の最中に遭遇した現地の天然記念物・宮古馬(!?)などが、未名子に影響を与える。 . 本作は“孤独”を徹底的に描いている。 主人公も、順も、主人公が出題するクイズに回答している外国人も、未名子の家に迷い混んだ馬も。 端的に言うと、他の人物だって 全員、俗にいう孤独だった。 お喋りだ、という登場人物はいないけど、 読んでいて、虚無、寂しい、とは思わなかったし 逆に 芯が通っていて、力強ささえも感じた。 物語では意外な形で登場する「首里城」。 その首里城が炎に包まれ、過去のものとなってしまったあの日から、一年以内に本作は書き上げられ、出版された。一冊の本になって ひとりの女性の人生が、昨年のあのタイミングで世に放たれたことは、非常に意味のあることだと思う。 高山さんの著作は、リアリティのある題材・心理描写が軸でありつつも、どこか夢想的な雰囲気も醸し出していて(ご自身のデビュー作がSFなのも関係してるかな?)、心惹かれる。 1度だと 掴みきれないところもあったから 定期的に読み返す予定。

Posted byブクログ

2021/02/22

沖縄が好きなので、景色を想像しながら楽しく読めた。にくじゃが、まよう、からしのクイズの答えがわからないが。

Posted byブクログ

2021/02/21

決して大きな事が起きたわけではない。 けどヒロインにとっては、そして関わりを持っていた人たちには少しだけいつもと違うことがおきた。 きっとまだこの本の魅力を自分は理解できてない気がする

Posted byブクログ

2021/02/18

読んではみたが、理解できなかった。 沖縄の歴史と関係ある内容と思ったけれど、 遠い世界の住民とオンラインによるクイズ。? 年寄りの研究者と資料館? なぜ途中で宮古馬? 分からん、解らん。

Posted byブクログ

2021/02/04

孤独感、そして触れ合いを繰り返しながら自分と向き合い、馬というキャラクターが主人公の胸の奥底を掘り起こしていく物語と解釈しました。読みやすかったですが、もうひとパンチこい!と思う面もありました。

Posted byブクログ

2021/01/20

3.8 孤立する人々がほんの一瞬、心を寄せ合う物語。それぞれの孤立の状況が少しずつ明らかになってくる。馬と主人公だけが現実の触れ合いを獲得していく。孤独とどのように向き合うかを考える不思議な話。

Posted byブクログ

2021/01/14

ひたすら事実のかけらを集めることで、人と上手く繋がれない人が繋がろうとする人がいてもおかしくないかも。 世界の向こう側に隔離された孤独な人と繋がるネット上の仕事も今の時代ならあってもおかしくないかも。 台風の多い沖縄なら野生の馬が、民家に迷い込んでいてもおかしくないのかも。 ...

ひたすら事実のかけらを集めることで、人と上手く繋がれない人が繋がろうとする人がいてもおかしくないかも。 世界の向こう側に隔離された孤独な人と繋がるネット上の仕事も今の時代ならあってもおかしくないかも。 台風の多い沖縄なら野生の馬が、民家に迷い込んでいてもおかしくないのかも。 と思いつつ気づいたら読み終わっていた。 情報、歴史、孤独、リベラルアーツ

Posted byブクログ

2021/01/13

台風というのは低気圧の巨大な塊で、人間というのはみずの詰まった袋とほとんど同じだ。だから気圧によって人は体調も精神もすこしばかりおかしくなる。台風は、強い風と低気圧で、人の内側と外側を同時にひどく揺さぶり続ける。

Posted byブクログ

2021/01/11

ストーリーは少々唐突な向きもあったけど、沖縄の歴史や今の風景描写、孤独の中で過ごす人たちの会話が濃密に描かれていた。

Posted byブクログ