透明な夜の香り の商品レビュー
香り、匂いで人の感情や生活環境、健康状態がわかる調香師との出会いで主人公の過去の過ちが救われる。香りは記憶と直結する特別な感覚。普段私たちは視覚に重きをおいていて、普段あまり気にすることのない匂いの世界も奥深いのだと感じた。 食べ物の描写が繊細。
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天才なのだろうな、と思うんです。ちょっと無責任で乱暴な言葉ですが。 自分を怖がるのは仕方ないけれど、目の前のものをよく見ずに恐れるのはとても損。
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この世に生まれたその瞬間から、人並みはずれた臭覚を持っていたら。 幼い物心ついた時すでに、人々が嘘を言う時に身体から発する臭いを感じ取っていたなら、この世界はどのように感じられるのか。 そして、親も周りの人々にもその事を理解されない子供時代。 この世の中にひとりぼっちの孤独だろう...
この世に生まれたその瞬間から、人並みはずれた臭覚を持っていたら。 幼い物心ついた時すでに、人々が嘘を言う時に身体から発する臭いを感じ取っていたなら、この世界はどのように感じられるのか。 そして、親も周りの人々にもその事を理解されない子供時代。 この世の中にひとりぼっちの孤独だろうか。 多分、口に出せば、周り中から恐れられ、気味悪がられるだろう。 同作者の初めて読んだ「しろがねの葉」では、 主人公のうめは、視覚に秀でており夜目がとてつもなく効く少女であった。 今作の主人公、小川朔は圧倒的に 香り 臭覚にのみ支配されて生きる臭覚のひと。 天才と言われる人々の生き様。 何か一つに秀でているという事。 羨ましい事なのかなと思う反面、生活していく上での不都合な場面を考えると、辛さの方が勝るのかもしれない。 登場する女性、若宮一香(いちか)もまた、とても静かで繊細な感性の持ち主で、心に深い傷を抱えている。 初めて電話で声を聞いた小川朔の声を「紺色の声」 と表現する。 小川洋子さんの解説より 言葉の意味を超えて臭覚が際立つと言う稀有な体験をさせてくれる小説である。 解説を読み終え、つい再度読み始めてしまった! とても、すてきな時間だったなぁ!
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静かに音もなく静かに…香りに惹きつけられてゆく。 静謐、と言ったらいいのだろうか? ゆっくりと香りの世界へ誘われてしまった。 物語は、元書店員の一香が心を病んで無気力になったが、生活のためにバイトしなければと見つけた先が、古い洋館での家事手伝いだった。 そこでは、調香師の小川朔...
静かに音もなく静かに…香りに惹きつけられてゆく。 静謐、と言ったらいいのだろうか? ゆっくりと香りの世界へ誘われてしまった。 物語は、元書店員の一香が心を病んで無気力になったが、生活のためにバイトしなければと見つけた先が、古い洋館での家事手伝いだった。 そこでは、調香師の小川朔が幼馴染の探偵・新城と共に「香り」のサロンを開いていた。 あくまでも秘密であり、特別な人だけに限られていた。 だが、「香り」を求める人は謎を秘めていて危険な要素も含まれていた。 小川朔は、人の匂いで嘘をついているのかも判り、病気を患っていても判る。 だれの体臭か、何を食べたのか、睡眠不足であるだとか…匂いですべてが明らかになる。 そして、どんな「香り」でも作りだすことができる。 いろんな人が「香り」を求めて自分を曝け出すうちに一香も心の中にある闇を朔に話していた。 やがて朔は、一香を解放すべき頃だと悟る。 それは、執着と愛着の違いに気づいたからなのか。 深い紺色の声が静かに響いた。その人は…。 香りは、永遠に記憶されるもの。 そのことばに嘘はないと思った。
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細かい情景を表す繊細な文章を読んでいると、小説の中の世界を五感で感じているような感覚になりました。文中に登場する植物や、香料の香りを知っていると、より楽しめる内容だと思います。
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千早さんの文章には、五感を刺激される。 今回は香りに纏わる物語なので、特に嗅覚が。 けれど、視覚も聴覚も触覚も味覚も全て使って味わっている感覚。 「香りは脳の海馬に直接届いて、永遠に記憶されるから」 読み進めるほどに、自分の中の香りの記憶も次々と呼び覚まされる。 どんな香りでも...
千早さんの文章には、五感を刺激される。 今回は香りに纏わる物語なので、特に嗅覚が。 けれど、視覚も聴覚も触覚も味覚も全て使って味わっている感覚。 「香りは脳の海馬に直接届いて、永遠に記憶されるから」 読み進めるほどに、自分の中の香りの記憶も次々と呼び覚まされる。 どんな香りでも作り出せる調香師とその幼馴染の探偵、そして主人公である家事手伝いの女性。 あらすじだけ読んでもう面白く、ぱらりと捲った頁にミントや苺といったワードが出てきて、何かがくすぐられる感じあり、次に読む本はこれ!と書店で意気込んで購入しました。 (CLAMPの「xxxHOLiC」が大好きで、それと構造が似ているのにも、ツボを刺激されたのかも。不思議なお屋敷に住む謎めいた主人と、そこを訪れる秘密を抱えた人々・・・良き) ラストの余韻。 きっとこれが一番美しい終わり方。 続編の「赤い月の香り」も今から愉しみです。
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森の中の洋館、自然派な食事、眉目秀麗な調香師。オシャレな物語。透明な夜の香りってどんな香りなんだろうって想像しながら読めた。少しミステリの要素もあり、面白かった。香りってその時の記憶を想起させるし、好きな人の香りはすごくよい匂いに感じたりする。小説×香りというところに目をつけた点...
森の中の洋館、自然派な食事、眉目秀麗な調香師。オシャレな物語。透明な夜の香りってどんな香りなんだろうって想像しながら読めた。少しミステリの要素もあり、面白かった。香りってその時の記憶を想起させるし、好きな人の香りはすごくよい匂いに感じたりする。小説×香りというところに目をつけた点も素晴らしい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
古い洋館でひっそりと営まれる完全紹介制の"香り"のサロン。表紙や表題の印象から怖い物語かと思いこわごわ読んでいたけれど、怖くなくて安心した。 特殊な嗅覚を持っている調香師・小川朔。サロンを訪れる依頼人からの、ちょっと変わったオーダーに次々に応えていく。 少し前に読んだ、上橋菜穂子さんの『香君』と比べてしまった。 他人より鼻が利き人の嘘なんかも簡単に嗅ぎつけるその特殊能力は、自分で自分を苦しめることになりストレスを抱えて辛くなるばかりだろう、と同情する。 そもそも香りの好みは人それぞれ。生理的なものやその日の気分にも左右されやすい。そして香りの思い出に縛られることも多々あり…苦しめられた経験が私にも何度かある。 誰もが好きな香りはないけれど、誰もが嫌がる匂いはある、というのに納得。 「嘘は匂う」 「嗅げば募る。鮮烈な記憶は人を狂わせる」 「香りは永遠に記憶される」 「香りは再起動のスイッチ」 香りに纏わる言葉にいちいち納得、の一冊。 サロンでバイトする一香が朔のために丁寧に創る料理はどれも美味しそうで食べたくなった。 爽やかなラストが心地よい。続編も早く読みたい。
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嗅覚が鈍感な私に繊細な匂いなんて分かるはずがないのに、文章を読んでいると想像できてしまう とても読みやすくて素敵な小説だった 続編も読もうと思う
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くせつよ登場人物がいっぱい出てくるので というかくせつよしかおらんので それにより一香さんの普通さが際立つね 読んでいるといい香りがしてくる (ような気がする) ハーブ、果樹、果菜類 緑でいっぱいの穏やかな時間に包まれる (ような気がする) すなわち癒やし
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