透明な夜の香り の商品レビュー
半ば引きこもりのようになっていた一香が見つけた仕事は、調香師・小川の家事手伝いだった。とてつもない嗅覚をもつ小川のもとには、謎めいた依頼が次々と舞い込む。そして一香は自らの問題にもやがて向き合うようになる。透明感があって謎に満ちた、魅力的な作品です。 現実感のない小川邸での生活が...
半ば引きこもりのようになっていた一香が見つけた仕事は、調香師・小川の家事手伝いだった。とてつもない嗅覚をもつ小川のもとには、謎めいた依頼が次々と舞い込む。そして一香は自らの問題にもやがて向き合うようになる。透明感があって謎に満ちた、魅力的な作品です。 現実感のない小川邸での生活が、一見不自由なようで素敵です。嗅覚がとびぬけている小川の要求はたしかに変質的と捉えられてしまいますが、しかし彼は人に執着せずにあっさりとした態度なので嫌みがないんですよね。本当に、どこまでも透明な印象でした。対照的に思える新城とのやりとりも良いなあ。 嗅覚は視覚や聴覚と違ってシャットアウトしにくいものなので、小川の生きづらさにはとんでもないものがあると思うのですが。それも良い意味であまり感じさせられることがありません。彼の生活はとても素敵なもので(しかし真似できるかどうかは疑問ですが)、ときどき危うげだったりあやしげだったりする部分がありましたが、実に静謐な物語でした。
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妖しい雰囲気を漂わせつつ、透き通っている美しさと恐ろしさを持つ物語でした。 ストーリーとキャラクターは落ち着いているので薄暗いような印象があるのに、香りの話を中心に色が添えるように出てきて華やかにしてくれる。 忘れられないことに苦しむこともあるだろうが、 忘れない香りが私にも...
妖しい雰囲気を漂わせつつ、透き通っている美しさと恐ろしさを持つ物語でした。 ストーリーとキャラクターは落ち着いているので薄暗いような印象があるのに、香りの話を中心に色が添えるように出てきて華やかにしてくれる。 忘れられないことに苦しむこともあるだろうが、 忘れない香りが私にも存在して欲しい。 思い出させて、記憶に焼き付けたい。
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色々な人が出てきて、色々なことが起きるけど、一貫して穏やかで綺麗な雰囲気が漂う素敵な本でした。 この夏ミステリーばかりを読み漁っており、この本に出会えたことでドキドキしていた脳と心が穏やかになりました。
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匂いをつくる人天才と人生に迷う女性の物語。ひとつひとつの話がゆっくりしており、穏やかに話を読み進めることができる。 読み終わると自然の食品が食べたくなります笑
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好きな香りは何と問われると何と答えるだろう。こだわりの香りは、私の生活にはない。季節に咲く花の香りが心地よく感じることはあるけれど。初めて手にする千早茜さんの作品であり、私の暮らしの中で進んで用いていない香りがタイトルに入っていて、逆に興味を膨らませながら読み始めた。 中心人物...
好きな香りは何と問われると何と答えるだろう。こだわりの香りは、私の生活にはない。季節に咲く花の香りが心地よく感じることはあるけれど。初めて手にする千早茜さんの作品であり、私の暮らしの中で進んで用いていない香りがタイトルに入っていて、逆に興味を膨らませながら読み始めた。 中心人物は、仕事に行けなくなり半年間家にいた25歳の若宮一香と調香師の小川朔。朔には、人の匂いで行動や生活、その素性までを正確に判断することができる特別な力があった。その設定に惹きつけられていった。2人に加えて、それぞれとつながりのある個性溢れる登場人物がその魅力を発揮しつつ2人にかかわっていく中で、自然と物語の世界に引き込まれていった。その中で、一香には書店員のさつきという友人が、朔には探偵の新城が、それぞれに寄り添い、2人の背景を鮮明にさせていく。どの登場人物たちも、今まで私が出会ったことのないような魅力的な人物たち。そのことがより一層、私の想像力を膨らませた。同時に、展開が予想できなく、わくわくしながら読み進めることになった。 決して明るい展開ではないのに、何故だろう、読むことが楽しかった。それは、作者が登場人物の個性を際立たせ、その魅力を丁寧に繊細に描いたからだろうか。その個性溢れる登場人物同士のやりとりは、思わず笑ってしまうところも多々あった。 朔と一香、2人の関係は、雇う側と雇われる側。調香師という私の知らない生業にも、作品の中の一香と同様に引き込まれていった。そのような中、背景にある一香の過去は重たく、そこからくる苦しさも感じた。それを、朔は分かっているのか、分かっていないのか、それは、ラストに向かって明らかになっていく。一香にとって、蓋をしていた過去のこと、それは兄のこと。兄妹という閉ざされた関係は、当事者にしか分からないこともたくさんあるだろう。それが、辛いものだとしたら、抱え込んで生きている人もいるだろう。そのことを聞いて欲しい相手に伝えることによって、楽にはなるのかもしれない。でも、一香と朔のように、相手のことを知ることが、その関係を終わらせることにもつながるかもしれない。ラストに向かって、切ない気持ちが募っていった。結末を予想できない状況に、ページを捲る手が止まらなくなっていた。そしてついにラストの場面。その場面では、ほっとなり温かい気持ちが湧き、ゆったりとその余韻で満たされていった。 初めての千早茜さんの作品を読了した。想像を掻き立てられる豊かな表現の香りの描写のほかに、イメージを喚起する季節に応じた風景の色、人物を表す色、そこにも作者のこだわりを感じた。この作品をきっかけに、千早茜さんの作品を読んでみたいという思いが膨らんだ。
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ここまで嗅覚が優れていると生活は間違いなく大変だ。 やっぱり人間は、ある程度鈍感だから普通に生きられるんだなーと少しずれたことを感じる。 でも、香りで思い出すことってあるよね。 晴れた夏の 早朝の空気を香ると、 私は必ず幼少時代にラジオ体操に歩いて行っていた地元の道を思い出す(...
ここまで嗅覚が優れていると生活は間違いなく大変だ。 やっぱり人間は、ある程度鈍感だから普通に生きられるんだなーと少しずれたことを感じる。 でも、香りで思い出すことってあるよね。 晴れた夏の 早朝の空気を香ると、 私は必ず幼少時代にラジオ体操に歩いて行っていた地元の道を思い出す(笑) そういった感覚を、改めて物語の題材にしているのは作者さんの感性の鋭さ! 物語の面白さと魅力的な登場人物たちに導かれ、あっという間に完読。
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香りの世界へ誘われる。 変化を恐れた朔さんの、唯一、そのことと向き合うきっかけになった一香。きっと彼女は香水瓶の新しい形のひとつになれた。
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表紙から、かなり怖いサスペンス的なものを想像していたので良い意味で裏切られました。独特の不気味さはありつつも、あたたかい最後が良かったです。
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雰囲気抜群なうえに持ち込まれる依頼とその解決が面白い。やはり誰にも彼と同じ境遇にはなれないし、わからないけれど、どうか幸せであれと願いたくなります。 他の方も書いていらっしゃる方多いですが、食べ物の描写が美味しそう!普段断然ご飯派なのですが、この本を読んで無性にトーストが食べたい...
雰囲気抜群なうえに持ち込まれる依頼とその解決が面白い。やはり誰にも彼と同じ境遇にはなれないし、わからないけれど、どうか幸せであれと願いたくなります。 他の方も書いていらっしゃる方多いですが、食べ物の描写が美味しそう!普段断然ご飯派なのですが、この本を読んで無性にトーストが食べたい…シンプルに焼いてバターを塗ったもの。他にもおしゃれな食べ物もたくさん出てきて、それを感じるだけでも読む価値があると思います。
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どんな匂いも再現する調香師の朔さんの元に来る訳ありのお客さん。依頼の匂いが気になると共に自分やったら何を依頼するかな、と考える。 朔さんと一香ちゃん、新城さん、源さんの関係性ややり取りが好きでずっと見てたい。 この静かでゆったりとしつつ薄暗い雰囲気というか空気感がめちゃくちゃ好き...
どんな匂いも再現する調香師の朔さんの元に来る訳ありのお客さん。依頼の匂いが気になると共に自分やったら何を依頼するかな、と考える。 朔さんと一香ちゃん、新城さん、源さんの関係性ややり取りが好きでずっと見てたい。 この静かでゆったりとしつつ薄暗い雰囲気というか空気感がめちゃくちゃ好きすぎる。
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