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透明な夜の香り の商品レビュー

4.2

437件のお客様レビュー

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    164

  2. 4つ

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  3. 3つ

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2023/08/29

ページの間から香りが匂い立つような、不思議な世界。 少し前に読んだ千早茜さんの作品から伝わってきたのは むせるような植物たちの息遣いだった。 現実の世界から浮遊したようなこの世界観、なんだろう。 心に深い闇を抱え、勤務先の書店に行けなくなった一香。 何かに引き寄せられるように向...

ページの間から香りが匂い立つような、不思議な世界。 少し前に読んだ千早茜さんの作品から伝わってきたのは むせるような植物たちの息遣いだった。 現実の世界から浮遊したようなこの世界観、なんだろう。 心に深い闇を抱え、勤務先の書店に行けなくなった一香。 何かに引き寄せられるように向かった先は森の中の洋館。 そこは調香の天才、朔という青年の住家であり仕事場。 外の世界から遮断されたような繊細さを持つ朔。 一香はそこで雑用の仕事をしながら 深い香りの世界へといざなわれる。 源さんという老人が庭で育てるハーブたち。 それを朔のレシピで料理してテーブルにのせる。 タイムで香り付けした焼きトマト。 焼いたアスパラガスには岩塩をぱらりとふって。 塩豚の煮汁で白いんげん豆を炊いてベーコンを加える。 食べきれないほど採れるトマトはケチャップに。 食べ物の匂いも漂ってくるようで、たまらない! 朔は匂いで何でもわかってしまう。 「ここしばらく身体を動かしていませんね?」 付けているファンデーション、リップクリームも。 そして、嘘の匂いも嗅ぎ分ける。 少しの波風は立つものの、静かに流れる香りの世界。 ぼんやりとした朔と一香の影。 やがて輪郭を持つようになり、新しい世界が開く。 『朔は “深い紺色の声” をしている』 なぜか、香りとは関係のないこの描写にぐっと心を掴まれた。 千早茜さんの世界は、やわらかい絹でできた罠のよう。 もうすでに絡めとられてしまった気がする。

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2023/08/27

読んでいくうちに主人公同様に自分もだんだん匂いがわかる様に感じ、匂いを想像する様になってくる。そんな感じのお話。ユーモアもあって良い感じの本でした。

Posted byブクログ

2023/08/25

人並外れた嗅覚を持つ調香師、小川朔の物語。 気安く近寄りがたいどこか高貴な雰囲気があり、何でも見透かされてしまうような少し恐ろしい感じもして、とても不思議な印象の朔。気になる。(が、会いたくはない。) 朔以外の主要人物も、みんなそれぞれ味があって、好きだった。お屋敷で、朔抜きの...

人並外れた嗅覚を持つ調香師、小川朔の物語。 気安く近寄りがたいどこか高貴な雰囲気があり、何でも見透かされてしまうような少し恐ろしい感じもして、とても不思議な印象の朔。気になる。(が、会いたくはない。) 朔以外の主要人物も、みんなそれぞれ味があって、好きだった。お屋敷で、朔抜きの二人とか三人で話している場面とか、なんとなく好きだな。朔と一香が二人で話してるのは、少し緊張する。 それにしても、神経質な朔の指示どおりに家事をこなせるなんて、一香はすごく仕事のできる人なんじゃないか。 柔らかな心地いい香りが漂ってきそうな作品。

Posted byブクログ

2023/08/21
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辛い過去を抱える一香は、嗅覚の天賦の才をもつ朔のもとで家事手伝いをするようになる。 ありとあらゆる香りを嗅ぎ分け、又創り出す彼の元には、今日も奇妙な客が訪ねてくる─ まるで文章から漂うような香りの表現と、繊細な感情の揺れ動き。不思議で美しい世界観に圧倒され、一気に虜になった。

Posted byブクログ

2023/08/19

香りを巡って様々なストーリーが展開される。 読みすすめていると、自分の知っている匂いを思い出して、本から香りが漂ってきているかのような感覚になった。 ずっと静かな紺のイメージだったが、最後は明るいオレンジ色になった。

Posted byブクログ

2023/08/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

五感に訴えてくる小説だった。「香りは永遠に記憶される」...確かに、未だに覚えている香りってあるなぁ。田舎のおばあちゃんの家の匂いとか、海の香り、焼いたパンの香り、排気ガスの匂い、絵本の匂い。全て私の記憶と結びついていてその香りを嗅ぐと記憶が呼び覚まされる。 香りによってその人の感情、体調、嘘をついたことまでわかってしまう朔。そんな朔の孤独を理解しようとした一香。ラストはちょっと温かい気持ちになれた。朔にはこれからも一香が必要だと思う。

Posted byブクログ

2023/08/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

※ラストで泣きながら衝動のままに書きます 香りはとんでもない情報量を持っていて、それを余すことなく受け止められてしまう朔さんは、受け止められる情報があまりにも多すぎるから、自分から求めることや何かをアクションする必要が無くなったのか……と思っていましたがそれは違くて、朔さん以外の人はそうではないからこそ、自分からアクションすることに億劫さそして怯えを覚えてしまったんだ……そして執着と愛着の差……違う紅茶の味……………… 一香を結果的に救った罰の香り、その動機が臆病さだったというのがいじらしくて。一香の返答もまた最高だった。変わらない保証はない、でも友人として行く……良い……とても…… こういう関係性が本当に好きなのでラストの展開全部呻きながら読みました。最高でした。 全体的に本当に文章が繊細で優しくて、香りを余すことなく拾ってくれる空気感が最高でした。優しいのに、優しいからこそ、おそろしい人間の一面や一幕もイノセントに伝える、容赦のない作品。香りを大切にするということはそこに含まれているあらゆるものを大切にすると言うことなのだなあと。とっても好きな作品でした。

Posted byブクログ

2023/08/19

街外れの小高い場所に立たずむ、古い洋館。 オーダーメイド調香師の小川朔は依頼人の要望に合わせて香りを作る。 超人的な嗅覚という並外れた能力を持つ朔。 そこで働くことになった一香。 香りを巡って様々なストーリーが展開されていく。

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2023/08/17

匂いで感じて心の内や体の調子や嘘までわかってしまう「調香師」の朔と、家政婦として働く事になった一香。 読んでいて匂いを感じるお話しでした。 二人の関係や新城との関係も素敵でした。 大家さんやさつきちゃんも楽しい素敵な人で良かったです。 最後は結局どういう事だったのか、理解力がな...

匂いで感じて心の内や体の調子や嘘までわかってしまう「調香師」の朔と、家政婦として働く事になった一香。 読んでいて匂いを感じるお話しでした。 二人の関係や新城との関係も素敵でした。 大家さんやさつきちゃんも楽しい素敵な人で良かったです。 最後は結局どういう事だったのか、理解力がなくわからなくて2度読みしましたが、朔の気持ちが私にはよくわからなかったです。

Posted byブクログ

2023/08/17

ブクログの感想から興味を惹かれて、この本を手にし、香りってこんなにも雄弁なんだ、その表現に圧倒されました。 Last Noteに思わずじんわり。 ありがとうございます。

Posted byブクログ