透明な夜の香り の商品レビュー
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優れた嗅覚を持つがゆえに孤独を抱える調香師の朔さんと、引きこもりの兄を失ったトラウマで自分も鬱を発症して引きこもりになってしまった主人公の話 心に傷を負った時や心に病を抱えてしまった時、頑張って1人で乗り越える事が正義とされがちな世の中で、お互いが寄り添いながらゆっくり心を癒していくことを許されてる様な世界観 読んでてとても優しい気持ちになれた 食べる寝る動くは人間にとってやはり大切なんだな〜 料理の表現が好きで、読んでると丁寧に作った何かを食べたくなる 香りから食べ物からすべての表現が見事すぎて、本からもいい香りがしてるのでは?と思うくらい 洋館の爽やかで少し苦味のある香りがする気がした 朔さんの幼少期の話 ネグレクトされ、母親が家を出て行く時に必ず迎えにくるからねと抱きしめられるシーン 嘘の香りが分かる朔さんはそれがどういう意味なのかを理解してしまうんだけど 抱きしめて顔を見ないようにしても無駄なのにね、って穏やかに語る朔さんが泣いてないのがまた泣ける 朔さんが透明なガラス瓶で眠れる日を想像しては切ない気持ちになった こういうタイプの男性のこと好きになると依存してしまいそうで怖いな〜と思って読んでたら主人公がどんどん依存していって、ハラハラしながら読んだ笑 最終的には自立した姿でもう一度出会う事ができてよかったね
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素敵なタイトルに惹かれて選書。 兄の死に折り合いを付けられずにいた一香は、どんな香りでも作ることが出来る天才調香師・朔の下で家事手伝いとして働き始める。 そこでは、朔をはじめ、朔のサポート役・新城や庭の管理者・源さんなど個性的で魅力的なキャラクター達に囲まれながら過ごすことになる。 朔のところへは、様々な事情を抱えた客が調香依頼のため訪ねてくる。 一香はそんな環境で働くうちに、朔の所有物になりたいと望むようになり、朔も一香をいつまでも側に置いておきたいと思うようになる。 しかし、物語終盤で、朔は一香の兄を想起させる香りを生成し、一香を兄の死と向き合わせることで、兄からも、己からも解放することを選択する。 執着と愛着の違い…相手が嫌がっても手放さないのが執着。自分しか見えなくなっている状態。 朔は自分が一香へ執着していると考え遠ざけたが、そんな朔に最後、一香は歩み寄る。 一香と朔、今後の二人がどんな関係を築いていくのか、気になる終わり方だった。 香りの描写も素敵で、物語の中から香りが立ち上ってくる気がした。
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元・書店員の一香がはじめた新しいアルバイトは、古い洋館の家事手伝い。 その洋館では、調香師の小川朔が、オーダーメイドで客の望む「香り」を作る仕事をしていた。人並み外れた嗅覚を持つ朔のもとには、誰にも言えない秘密を抱えた女性や、失踪した娘の手がかりを求める親など、事情を抱えた依頼人...
元・書店員の一香がはじめた新しいアルバイトは、古い洋館の家事手伝い。 その洋館では、調香師の小川朔が、オーダーメイドで客の望む「香り」を作る仕事をしていた。人並み外れた嗅覚を持つ朔のもとには、誰にも言えない秘密を抱えた女性や、失踪した娘の手がかりを求める親など、事情を抱えた依頼人が次々訪れる。一香は朔の近くにいるうちに、彼の天才であるがゆえの「孤独」に気づきはじめていた――。 「香り」にまつわる新たな知覚の扉が開く、ドラマティックな長編小説。
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大きなお屋敷に住む調香師である朔と、そこに雇われた家政婦兼事務職の一香。 朔はありとあらゆる香りを依頼人のために再現する。それを渡して悪い結果になると分かっていても本人の選択として受け止め、渡す。 一香には兄との封じ込めて忘れたい過去がある。 2人の間で何が起き、一香は過去の自分...
大きなお屋敷に住む調香師である朔と、そこに雇われた家政婦兼事務職の一香。 朔はありとあらゆる香りを依頼人のために再現する。それを渡して悪い結果になると分かっていても本人の選択として受け止め、渡す。 一香には兄との封じ込めて忘れたい過去がある。 2人の間で何が起き、一香は過去の自分を許せる時が来るのか… 朔は、一香が一歩踏み出す手助けをするのか。。 香りにまつわる不思議な感覚の話だった。 まるでおとぎ話のような。 それでいて、向き合わなければならない問題は現実的だ。 朔はその「とてもききすぎる鼻」のために辛い幼少期を経験しているし、訪れてくる依頼者も皆んなどこか闇を持っている。 香り、色、風、周りを包む空気、それらが美しく言語化されて、読んでる自分にも纏ってくるかのよう。 香りが本から出てくるような錯覚におちいる。 物事が全てキッパリハッキリしているわけではなく、いつもヴェールがかかっているような、でも美しさが際立ってキラキラしているような、不思議な感覚の本だ。 でも部分的にある闇は、徹底的に闇だ。 暗くて静かで何かがヒタヒタと忍び寄ってくるような怖いくらいの闇。 そのコントラストが、また惹きつけられる一つの要因なのかもしれない。 「あなたは今取り繕っているだけ。もしくは流している。おそらく、あなたの中には今気力がない。人の言葉や出来事を受け止めて、呑みんだり弾き返したりするのが難しい状態にある。だから、感情を抑制してやり過ごす。それは嘘とは違うよ。欺いてもいない。」 「逃げてはいけない、なんて道理を聞かなくてもいいよ。そんなのは、人を殺す正義だ」 朔は人から出る匂いで、その人の状態も分かってしまう。 分かった上で静かに意見や提案をしてくれるのは、どんなにありがたいだろう。 「香りは脳の海馬に直接届いて、永遠に記憶されるから」 自分にもきっとあるだろう永遠の香り、それが何なのかは今は忘れているけど、いつか思い出したい。
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グイグイ来る人より少しずつ近寄ってくる人。 何気ない優しさでその優しさをちゃんと相手が気づく。そんな人と一緒いるのは幸せだろうなぁと思った。お互いに思いやって押し付ける事なく労わりあうって理想。
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この方の小説を初めて読みました! 丁寧で流れるような文章で読みやすく、それでいてキャラクターに沿った言葉選びや性格がにじみ出ていてウワッ、上手いなぁって思いながら、ゆっくり眠る前に読みました。 どの人物も魅力的で、綺麗の中にある複雑さや一人称視点ならではの描写一つ一つの深さがとて...
この方の小説を初めて読みました! 丁寧で流れるような文章で読みやすく、それでいてキャラクターに沿った言葉選びや性格がにじみ出ていてウワッ、上手いなぁって思いながら、ゆっくり眠る前に読みました。 どの人物も魅力的で、綺麗の中にある複雑さや一人称視点ならではの描写一つ一つの深さがとても魅力的です。 香りをテーマにした新しい読書体験でした!
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千早茜さんの特徴が良く出ている作品。主人公が感じる、人の表情、目線、感情、色、香り、変化が文字で細かく表されている。 変化を拒む調香師の朔が、主人公の女性と暮らしていく中で変化を覚える。 独特な世界観を感じるが決して遠くはない、不思議な作品だった。
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世界観柄、香りに関する描写が多く出てくる。これまではあまり意識することはなかったが、嗅覚でも読書を楽しむことができることを改めて感じた。 文章も綺麗でとても読みやすい。 一香ちゃんの徐々に明かされていく過去や、ミステリアスな朔さんなど、どんどん引き込まれていった。 続編はやさしい...
世界観柄、香りに関する描写が多く出てくる。これまではあまり意識することはなかったが、嗅覚でも読書を楽しむことができることを改めて感じた。 文章も綺麗でとても読みやすい。 一香ちゃんの徐々に明かされていく過去や、ミステリアスな朔さんなど、どんどん引き込まれていった。 続編はやさしい雰囲気の本作とはまた違うとのことなので、また読んでみようと思う。
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香りに繊細すぎる調香師のお話。 生きにくいだろうな。 そこにいる人のシャンプーや柔軟剤はおろか生活習慣や体調、病気までわかってしまうほどの鼻の持ち主である調香師が依頼人のために唯一無二の香りを作る。後ろ暗い依頼者もありかなり興味深い。 香りに纏わる素敵な話…ではなくかなりトリッキ...
香りに繊細すぎる調香師のお話。 生きにくいだろうな。 そこにいる人のシャンプーや柔軟剤はおろか生活習慣や体調、病気までわかってしまうほどの鼻の持ち主である調香師が依頼人のために唯一無二の香りを作る。後ろ暗い依頼者もありかなり興味深い。 香りに纏わる素敵な話…ではなくかなりトリッキーすぎて素敵とは真逆だったりする。 香りあるものを全て自作している普段の生活の方がよっぽど素敵。 とはいえ次作もあるようなので是非読みたい。
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「透明な夜」の香り、そんなの美しいに違いない!と思いタイトル買い。 冷たいガラスをゆっくりと手で温めていくような、じんわりとした温度があった。
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