透明な夜の香り の商品レビュー
読書記録72. #透明な夜の香り ひんやりとして清潔で少しだけ淋しくて でも、青い炎のような そんな作品 凛として爽やかな それでいて濃厚な香りが漂う そんな作品
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読了後、まるで残り香のような余韻を感じました。 海馬に記憶を鮮烈に刻む嗅覚。 その嗅覚の鋭さゆえに、苦しみの記憶を忘れられない朔。そして罪悪感ゆえに記憶に蓋をした一香。 1年を通して、彼らが出会い、変化していく様子に心を躍らせながら、ときに不安になりながら見守っていたような気分です。 香りの描写が繊細なのはもちろん、色や音の描写もとても精緻で、読んでいて五感の刺激される文章でした。 千早茜さんの別の短編集を読み、一目惚れ(一読惚れ?)して買った本作ですが、やはりミステリアスな男性が魅力的に描かれていてとても好みでした。次作も拝読したいと思います。
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久々にとても美しくて透き通った文章の作品に出会ったと思った。 ガラスの香水瓶が並び月明かりが照らす部屋で、一香が朔に秘密をささやく場面がとても印象的だった。 朔が人の感情や過去の行いまで匂いで分かることから、夜の暗さは、一香の心の機微もきっと伝わってしまう、という緊張感と諦め...
久々にとても美しくて透き通った文章の作品に出会ったと思った。 ガラスの香水瓶が並び月明かりが照らす部屋で、一香が朔に秘密をささやく場面がとても印象的だった。 朔が人の感情や過去の行いまで匂いで分かることから、夜の暗さは、一香の心の機微もきっと伝わってしまう、という緊張感と諦めに似た安堵をより一層際立たせる。 夜をこんな風に静かに、豊かに表現できる作家さんはとても好きだ。久々に新たな推し作家ができた。 なんとなく小川洋子さんの作風に近いものを感じるな、と思ったら、解説が小川洋子さんだったので少し嬉しかった
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繊細な作品だった。設定はファンタジーを感じるのに、ストーリーは一切ファンタジーを感じさせないところがとても良かった。ふたりの関係や言葉選びが穏やかなところもお気に入り。良作です。
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小川洋子スキーな皆さん、朗報です(誰)。 小川ワールドを愛する方には間違いなくハマるであろう今作、「透明な夜の香り」に新年早々出会えた私は本当にラッキーですありがとうございます。 物語の主人公は、ある日突然職場に出勤できなくなって以来、引きこもり生活を続けていた女性、一香(いちか)。 ハードルの低い求人ポスターを見た彼女が応募した仕事先は、完全紹介制の「調香師の助手兼家政婦」でした。 一癖も二癖もある調香師が手がける仕事は、「死んだ夫の匂いを再現して欲しい」「匂いを手がかりに行方不明になった娘を見つけて欲しい」など、奇妙な物ばかり。 そんな風変わりな仕事を手伝う内に、自身も人には言えない秘密を抱えた一香は、そんな己の過去と向き合うことになる。 って言うね、ありそうっちゃありそうな設定なんですが、今作の何が最高にいいって、主人公と調香師が安易にくっついてハイめでたし♡にならなかったことです。 調香師は愛情と執着の違いに煩悶し、それをクリアしないまま。 主人公も自身が抱えていた問題を傷として抱えたまま。 それを自覚したままで、物語は静かに終着します。 クリアしないからこそ、彼女達の物語は真の意味では閉じていないと思えたのが嬉しかった。 関係性は変わるかもしれない、だけどこの二人なら、形を変えていきながらも一緒にいる方法を探していけるんじゃないかな。そうだといいな。 最後のページが一面余白で占められてるのも、物語が続いている暗示のようで美しかった。 2024年も、良い本との出会いに恵まれますように。
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物語の合間合間に出てくる朔さんのレシピが美味しそうで、実際に作ってみたくなった 新城の言葉で、あいつは外見に興味がないんだ。外見ほど不確かなものはないってセリフがあった。これは鼻がとても効く朔さんに対する言葉だったけれど、現実に天才的な嗅覚を持ち合わせてない普通の人でも、外見は...
物語の合間合間に出てくる朔さんのレシピが美味しそうで、実際に作ってみたくなった 新城の言葉で、あいつは外見に興味がないんだ。外見ほど不確かなものはないってセリフがあった。これは鼻がとても効く朔さんに対する言葉だったけれど、現実に天才的な嗅覚を持ち合わせてない普通の人でも、外見はあまりこだわりがないって人も少なくないのではないかと思った。
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第6回渡辺淳一文学賞受賞作 長編小説ですが、各章がつながりはあるものの完結していて、調香師の小川朔がその嗅覚で次々と難問を解決していく短編集のように感じました。 香りという優美な世界観を楽しみながら穏やかに読める小説ですが、個人的にはじっくり長い物語が好みなので期待していたもの...
第6回渡辺淳一文学賞受賞作 長編小説ですが、各章がつながりはあるものの完結していて、調香師の小川朔がその嗅覚で次々と難問を解決していく短編集のように感じました。 香りという優美な世界観を楽しみながら穏やかに読める小説ですが、個人的にはじっくり長い物語が好みなので期待していたものと違ったのと、そこまで嗅覚で何でもわかるものか、人が依存するものか、という不信感であまり設定に入り込めませんでした。 小川朔が一香へ心を開いていく描写が素敵でした。
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千早茜さん初読み。恋愛小説のような、絵本ファンタジーのような、ミステリーのような。色々な要素を感じさせてくれながらも、ずっと静かで心が落ち着く本でした。紅茶を飲みたくなるような。「臭い」を題材にしてるためか、情景描写がごちゃごちゃしてなくてすっきり。登場人物もシンプル。掴みどころ...
千早茜さん初読み。恋愛小説のような、絵本ファンタジーのような、ミステリーのような。色々な要素を感じさせてくれながらも、ずっと静かで心が落ち着く本でした。紅茶を飲みたくなるような。「臭い」を題材にしてるためか、情景描写がごちゃごちゃしてなくてすっきり。登場人物もシンプル。掴みどころのない朔さんと、傷を負った一香、そのほかの人物の今後が気になります。心浄化本。
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面白かった!面白かったというか、いい読書をした、という感じの本。静かで厳かで深みのあるストーリー。上質、って感じだった。 千早茜さんの作品はこれ以外に、西洋菓子店プティフール と、男ともだち の2冊を読んだことがあったのでこれが3冊目だったけど、この作家さんの本は好きだなと確信し...
面白かった!面白かったというか、いい読書をした、という感じの本。静かで厳かで深みのあるストーリー。上質、って感じだった。 千早茜さんの作品はこれ以外に、西洋菓子店プティフール と、男ともだち の2冊を読んだことがあったのでこれが3冊目だったけど、この作家さんの本は好きだなと確信した。これからも読んでいきたいなあ。ちなみに、この作品の中で主人公が働いている洋館での暮らしが、THE ていねいな暮らし、という感じですごく憧れてしまった…笑
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