透明な夜の香り の商品レビュー
千早茜さんの作品は何冊か読んでいますが、美しく、綺麗な文章だといつも思います にしてもこの主人公、朔さんの変わり者っぷり 生い立ちが生い立ちなので仕方ないかとも思いますが、目の前にこんな人がいたら私はたぶん初対面でダメだろうと思います 上手く言葉にできないですが、この作品が評...
千早茜さんの作品は何冊か読んでいますが、美しく、綺麗な文章だといつも思います にしてもこの主人公、朔さんの変わり者っぷり 生い立ちが生い立ちなので仕方ないかとも思いますが、目の前にこんな人がいたら私はたぶん初対面でダメだろうと思います 上手く言葉にできないですが、この作品が評価される理由がわかる気がした、そんな作品です 強く心を捉えて話さない香り そんな香りは、私にもあっただろうか
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
おもしろかった!! 読んでいて、本当に香りが漂ってくるような不思議な感覚になりました。 とても読み応えのある物語だったので、ネタバレありで、少し考察していきたいと思いますり 考察するポイントは、最後の朔のセリフ "一香さん、また新しい薔薇が咲いたよ“ が意味するものです。 考察する上で重要な要素は、ズバリ【朔と一香の関係の変化】です。 それでは、まいります! 最後の朔のセリフ「一香さん、また新しい薔薇が咲いたよ」 これは、文脈を深く理解せずに読むと、少しキザで、浮ついた言葉に思えてしまえそうです。 ですがこのセリフは、物語の流れ上、まさに狙いすました一撃と言えると思います。 一つは、序盤における庭師の源さんのセリフが伏線になっています。 "朔さんが庭に出てくると、決まって庭のどこかで花が咲いているんだ。朔さんはね、間違えない。(中略)そんな光のない暗闇でも、朔さんなら花が咲くのが見えるんだろう“ 朔は花が咲く瞬間を見逃さない。それゆえ、最後のシーンで、薔薇の花が咲く瞬間に朔が現れた、という繋がりになっているわけです。 これはとても分かりやすい伏線でしたが、それ以上に大事なのは、【一香と朔の関係の変化】と、薔薇の開花を繋げることです。 結論から言うと、薔薇の開花は、一香と朔の愛情の始まりを示唆していると思います。 友情ではなく、愛情としたのは、薔薇の花言葉は「愛」だからです。数ある花の中で、著者が物語の冒頭ととラストに登場させる重要なアイテムとして薔薇を選んだのは、それなりの意味があるはずです。 では、一香と朔の関係の変化を追っていきます。 一香が屋敷で働き始めた頃は、朔を「先生」と呼んでいました。これは一香いわく、先生という言葉には色がないから、朔を呼ぶ声に何の感情も付加したくなかったから、という理由でした。 しかし第4章で、猟犬を連れた男に絡まれたときに、助けに来てくれた朔を見て「朔さん!」と叫んだことがきっかけで、一香は朔への気持ちに初めて色、つまり感情を加えることになりました。 この変化は、一香のトラウマである兄の過去から立ち直る過程とも連動しています。 朔の館で健康的な食事や運動、生活をすることで、一香が少しずつ、立ち直るための体力と気力を養っていたのです。 一方の朔は、一香に触れない、ということを序盤から徹底していました。 これは、一香の存在を、あくまで「香り」としてしか捉えていないことを示唆していたのかもしれません。 そんななか、第6章の最後、朔が刑事の木場に、子供との関係を辛辣に語るシーンがありました。 そのシーンの後、朔は自分の幼少期のことを一香に打ち明け、そして、初めて朔は一香の手を握りました。 "朔さんのシャツを掴んだ私の手にそっと触れる。“ このシーンはとても美しかったですね。 この時点で、朔にとって一香の存在が、「香り」以上のものとなったのかもしれません。 その後、一香はトラウマとなっていた兄のことを話します。しばらくして、朔はそのときの記憶を思い出させる香りを嗅がせ、一香が蓋をしていた記憶を解き放ちます。 すると、どうなったか? 一香は、兄の記憶に蓋をして心を閉ざしていたが、それが解放された。そして、これからは一香は正常な心を取り戻し、感情を起伏させながら日々を送っていくことになる。 朔は一香を、感情の起伏が少ないことを好ましいと思っていたが、そうではなくなってしまった。 変化を嫌う朔は、一香との関係がいずれ破綻すると予感して、一香を遠ざけた。 これで2人の関係は終わると思われたが、しかし、朔は一香が去った後、自分が変化していることに気づく。 "あなたがいなくなってから紅茶の味が違う。香りは変わらないのに" 朔にとって、今までは「香りがすべて」だったが、一香という存在の有無によって、紅茶の味が異なることを発見する。 つまり、一香という存在自体が朔の心を動かしていることを知ったのです。 「こんな変化を僕は知らなかった」と朔は言います。 これ、一般的には「好き」と言っているようなもんですよね。 ここまで考察すると、最後のセリフ 「一香さん、また新しい薔薇が咲いたよ」 は、一香、または朔の心の薔薇(愛情)が咲いたことの暗喩だと私は読めました! というわけで、長くなりましたが、これだけ考察ができるほど、物語と登場人物の心理が連動した素晴らしい作品だと思いました!
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
先に赤い月の香りの方を読み、シリーズでこちらが先に書かれていた事を知り、読んだ。 それぞれ、赤と透明、という色が作品にぴったりだと思った。こちらの方が温度が低い感じ。朔さんの印象も少し柔らかいように思う。源さんに至っては優しいおじいちゃんになっている。 最後に朔さんが発していた言葉が衝撃だった。可愛らしく、ああこの人も人間だ、と思った。 主人公の一香さんは赤い月の方にもちょっと出てくるので、順番としてこちらを読んでから赤の方を読んだ方がより楽しめるかもしれない。
Posted by
この景色を見ると、田舎の小学生のころの複雑な気持ちを思い出すとか、この歌は大学の新歓で行ったカラオケが面倒だった気持ちを思い出す、というのと同じように、香りも忘れられない記憶と結びついていることに共感を持ちながら読んだ。 自分が不快と感じている香りが食べ物と共に出できたり、根底に...
この景色を見ると、田舎の小学生のころの複雑な気持ちを思い出すとか、この歌は大学の新歓で行ったカラオケが面倒だった気持ちを思い出す、というのと同じように、香りも忘れられない記憶と結びついていることに共感を持ちながら読んだ。 自分が不快と感じている香りが食べ物と共に出できたり、根底に流れている薄暗い感じが自分とは合わなかった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
・自分を怖がるのは仕方ないけれど、目の前のものをよく見ずに恐れるのはとても損。 ・杖のグリップに香りを仕込むのよ。そうしたら、あたしはいつも素敵な香りに導いてもらえるでしょう。
Posted by
この小説は切り口が変わっていますね。 テーマは”香り”。 恋愛小説の切り口を変えるだけで、大分印象が変わってくるな、と感じました。 「この手があったのか!」と新鮮でした。 ストーリーは次から次へと事件?というか、酷いことが起きるのに、一定のテンションで進んでいきます。 書き手に...
この小説は切り口が変わっていますね。 テーマは”香り”。 恋愛小説の切り口を変えるだけで、大分印象が変わってくるな、と感じました。 「この手があったのか!」と新鮮でした。 ストーリーは次から次へと事件?というか、酷いことが起きるのに、一定のテンションで進んでいきます。 書き手によってはファンタジー寄りにも、人情モノのお涙ちょうだいモノにも、どうにでも料理できるエンタメ度の高い内容なのですが、心がざわつく程度で大きく揺れることはないのです。 静かに酷いことが起きていきます。 あえてドラマチックさを演出しない。 静かな海辺の波打ち際のような雰囲気が全体に漂っています。作品からそんな印象を受けました。 主人公・一香と調香師の朔は存在が現実離れしているのですが、朔の友人・新城と庭師の源さんの存在が地に足ついた世界観を出してくれます。 ”2人:2人”で”非現実:現実”を作り上げている。どちらに傾くでもなく、バランスがいいんですよね。 この小説はラストが印象的でした。 ”あなたがいなくなってから紅茶の味が違う。香りは変わらないのに”(抜粋) 神がかった人物像で描かれていた朔にも人間っぽさがあったんだなぁ、と微笑ましくなりました。 調香師の朔が匂いではなく、他の感覚(味覚)で感情を表しているのも興味深いです。 本を読んでて思ったのですが、”香り”って見えないものだからこそ印象が大切になりますね。 匂いにまつわる思い出を振り返っていたのですが……。 いい香りの思い出は全く出てきませんでした。 なぜか不快な匂いのイヤな思い出が真っ先に出てきた。 早くいい香りのいい思い出で上書きしたいものです。
Posted by
そこにあるのは言葉なのに、 香りとして存在しているかのように 読むだけで引き込まれてしまう本の世界でした。 良かった、千早さん作品で今のところ一番好きです。 赤い月の香りをはやく読みたい…!✨
Posted by
【香りは永遠に記憶される】 その一文の通り、ハーブや柑橘、金木犀や薔薇など香りが想像でき、読んでいてとても心が落ち着く小説。 一香が家事手伝いとして働くアルバイト先は、人並み外れた嗅覚を持つ天才調香師・朔の古い洋館だった。 朔の事をよく知る幼馴染の新城や、洋館の農場菜園で働く源さ...
【香りは永遠に記憶される】 その一文の通り、ハーブや柑橘、金木犀や薔薇など香りが想像でき、読んでいてとても心が落ち着く小説。 一香が家事手伝いとして働くアルバイト先は、人並み外れた嗅覚を持つ天才調香師・朔の古い洋館だった。 朔の事をよく知る幼馴染の新城や、洋館の農場菜園で働く源さん。 素敵な人達に囲まれてはいるが、公には言えない事情を抱えた依頼人が香りを求めやってくる。 一香が過去に闇を抱えている問題を、朔を通して乗り越える。 そして幼少期から孤独だった朔は変化そのものを恐れるも、一香によって乗り越える。
Posted by
小川朔(調講師)は新城さんと大きな洋館に住んでいる。その庭掃除をする源さん、そしてこのたび来た通の一香さんと4人で生活している。この洋館は源さん持ち物、一香さんに託したかったけど、最後はここから出た、小川朔はその人の匂いで全てがわかる。活字は本当に色々なことを考えさせてくれる。こ...
小川朔(調講師)は新城さんと大きな洋館に住んでいる。その庭掃除をする源さん、そしてこのたび来た通の一香さんと4人で生活している。この洋館は源さん持ち物、一香さんに託したかったけど、最後はここから出た、小川朔はその人の匂いで全てがわかる。活字は本当に色々なことを考えさせてくれる。この本を読み始めて感じた事は変わった本と思った。香りその人の匂い。家に行くとその家の匂い、人はいろいろな匂いを出しているのだと思った、。
Posted by
【2023年149冊目】 見事な1冊でした。ずーっと深い森の中にいるような、空を見れば雨が降ってるのに、木々に阻まれているから、濡れずにいられるような、でもしんしんとした場所にいるような、そんな心地で読みました。すっごい深い読書体験をした気がします。ページをめくる間、ずっと潜って...
【2023年149冊目】 見事な1冊でした。ずーっと深い森の中にいるような、空を見れば雨が降ってるのに、木々に阻まれているから、濡れずにいられるような、でもしんしんとした場所にいるような、そんな心地で読みました。すっごい深い読書体験をした気がします。ページをめくる間、ずっと潜ってました。 しかもこれ続編あるんですか、やったー! 登場人物全員好きですね。それこそ、仁奈さんも含めて。ストーカーの彼女はちょっと中立な感じですが。 刑事の名前が木場さんだったのずるかった。こういうシンクロ、わざとなのか偶然なのかわからないけれど、何にせよ良かった。 国語の教科書に載せて欲しい。若人よ、琴線に触れてくれ。 あと普段は読書する時にハイボール飲んだりしてるけど、今作読んでる時はジンが飲みたくなりました。飲みました。
Posted by