罪の轍 の商品レビュー
物語は北海道礼文島から始まるが、メインは昭和38年の東京下町が舞台。救いようが無い辛さがあるが面白い。当時の情景も浮かび非常に引き込まれる。著者の作品はほぼ読んでいるが、ベスト3に入る傑作。
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久しぶりです。読後のこの何とも言えない感じ。 宇野寛治。 君に同情は、しない。 けどなんとも切ないなぁ。 読み応えのある一冊でした。
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幼い頃、継父に当たり屋をやらされ、記憶障害を持つ宇野寛治。空き巣が得意。 男児誘拐事件が発生。まだ電話も各家庭になく、逆探知も出来ない時代。 窃盗、殺人、誘拐の嫌疑がかけられるが、平気で嘘をつくし、都合が悪くなると意識を失う寛治。 二十歳の人生と、警察の執念の戦い。じれったさ...
幼い頃、継父に当たり屋をやらされ、記憶障害を持つ宇野寛治。空き巣が得意。 男児誘拐事件が発生。まだ電話も各家庭になく、逆探知も出来ない時代。 窃盗、殺人、誘拐の嫌疑がかけられるが、平気で嘘をつくし、都合が悪くなると意識を失う寛治。 二十歳の人生と、警察の執念の戦い。じれったさと、最後はハラハラドキドキ。
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実在する「吉展ちゃん誘拐殺人事件」がモチーフの長編大作。 戦後間もない昭和中期という時代。 経済成長著しく、様々な文明や文化が発展し、世の中はオリンピック開催に向けて色めき立つ。 そんな華やかな舞台の影には、地方の格差や差別・貧困などが蠢いている。 時代と環境と人が作り出した貧困...
実在する「吉展ちゃん誘拐殺人事件」がモチーフの長編大作。 戦後間もない昭和中期という時代。 経済成長著しく、様々な文明や文化が発展し、世の中はオリンピック開催に向けて色めき立つ。 そんな華やかな舞台の影には、地方の格差や差別・貧困などが蠢いている。 時代と環境と人が作り出した貧困と虐待が負の連鎖となり、罪が罪を生み出し、抜け出せない轍となる。 あらゆるものに阻まれ翻弄されながらも、被害者も加害者も救おうと奔走する刑事達の熱き想いに感服した。 臨場感と緊張感に溢れ、映像を追いかけているような感覚で読み進んでいった。
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「オリンピックの身代金」の前年の誘拐事件。5係の皆さんも1歳若い。この様な奥田さんの作品も大好きです。もっと書いて欲しい。
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戦後高度成長期を必死に乗り越え世界と肩を並べられるようになった日本は 学もお金もない愛も知らない人間をどこか見えないところに置いてきたのか 1960年生まれの私は当時の背景を次々思い浮かべながら一気に読み進めた 陰惨で救いようのない物語であるにも関わらす小説として読者に提供できる...
戦後高度成長期を必死に乗り越え世界と肩を並べられるようになった日本は 学もお金もない愛も知らない人間をどこか見えないところに置いてきたのか 1960年生まれの私は当時の背景を次々思い浮かべながら一気に読み進めた 陰惨で救いようのない物語であるにも関わらす小説として読者に提供できる作者の力に感心致し更に奥田英朗に注目したい
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宇野寛治が引き起こした殺人事件を巡って、捜査する落合昌夫らのチームの行動をドキュメントタッチで記述した長編だが、楽しめた.寛治のような親に恵まれない人間が、成長してどのような人生を歩むかについて一例を提示しているが、64年のオリンピック直前の昭和の時代の風物も織り込まれており、刑...
宇野寛治が引き起こした殺人事件を巡って、捜査する落合昌夫らのチームの行動をドキュメントタッチで記述した長編だが、楽しめた.寛治のような親に恵まれない人間が、成長してどのような人生を歩むかについて一例を提示しているが、64年のオリンピック直前の昭和の時代の風物も織り込まれており、刑事たちの粗野な振る舞いも当時としては通常だったのだと思った.仁井刑事の傍若無人な態度も、それをある程度容認する度量を持った上司がいる組織も素晴らしいと感じた.面白かった.
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
北海道礼文島で育った宇野寛治は幼い頃から莫迦だった。 集団就職した部品工場で窃盗を働きクビになり、昆布漁をするも足手まといだった。 寛治もいつか東京で店員をやって暮らす夢を持っていた。そんな寛治を赤井はそそのかし、雇い主の酒井寅吉宅の金庫から金目のものを盗み船で逃げる手助けをしたはずだったがまんまと騙され、船の燃料は空っぽ、盗んだ金品もすべて赤井に横取りされ、このまま漂流して死ぬところかと思われたが運良く生き延びる。 あちこちで盗みを働きながら東京へ上京し、そこでも盗みを働くが殺人事件の現場に居合わせてしまい容疑者の疑いがかけられ警察が捜索に乗り出すがなかなか見つからない。そんな折に豆腐屋のこども吉夫ちゃん身代金要求の誘拐事件が起き、金の受け渡しの際、犯人逮捕に踏み切った警察官だったがまさかの取り逃がしてしまい、金は犯人へと渡ったが吉夫ちゃんは帰ってず安否不明となる。 犯人からの電話を頼りに、声質や訛りから宇野寛治ににていることをつきとめ2つの事件の重要参考人として宇野寛治の逮捕へ捜査がすすむ。その際重要視されたのが、里子という宇野の女と思われる人物であったが3日前より行方不明となっていた。 そんな矢先、宇野が逮捕されるが黙秘または知らないを繰り返し犯行を自供することはなかった。 さらに、知能障害があるのでは?と精神疾患が疑われていた。それについては5歳の頃母と再婚した男から当たり屋として使われていた時の事故によるものであると判明、そのときの記憶を本人に思い出してもらったことがきっかけとなり自供をはじめる。 母の再婚相手の男がまだ生きていることを知り、宇野は最後にその男に復讐を果たそうと企み取り調べ中に逃走するが警察に逮捕され断念。 里子はよしおちゃん誘拐事件の犯人に宇野を疑い始めたことで殺害され、よしおちゃんについても殺害しており、身代金要求の前にはすでに殺していたことも自供する。 蓋を開けてみれば行き当たりばったりの犯行でありなんともやるせない ばかだから犯行は無理と決めつけていたが、最終的には犯人となる部分は面白かった。なかなか逮捕に至らず、ずるずるいく感じはすこし退屈 2021/05/08 19:50
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凄かった‼︎ ページをめくる手が止まらず1日で読了。私的には、奥田英朗さんのベスト1かもしれません。 昭和38年。北海道礼文島で暮らし、皆から「莫迦」と言われていた、盗癖のある青年。ある事件から逃れるために東京に向かう。 一方、警視庁捜査一課の刑事たちは、南千住で起きた強盗殺人...
凄かった‼︎ ページをめくる手が止まらず1日で読了。私的には、奥田英朗さんのベスト1かもしれません。 昭和38年。北海道礼文島で暮らし、皆から「莫迦」と言われていた、盗癖のある青年。ある事件から逃れるために東京に向かう。 一方、警視庁捜査一課の刑事たちは、南千住で起きた強盗殺人を追っていた最中、誘拐事件も起き…。 推理小説や犯罪小説は好きで、よく読みますが、刑事の心意気に泣けてしまったのは初めてかも?よくある警察の中の争いや、上下関係、対面、ということでのしがらみも出てくるけれど、それよりも刑事たちの執念が、とても力強く、応援したい気持ちになった❗️ 「テレビの普及が社会を変えた」といっている時代背景。しかしこれは、今のネット社会に通じてきてるなぁと感じる。どんどんエスカレートして、間違った正義を振り上げる人達がいる。 容疑者の孤独もかなりの悲劇だけれど、これまた、現代社会でも変わらずある問題でもある。 彼は「莫迦」なのか?無自覚なのか?という人間性も、すごく怖かった。 なんか、取り止めもなく書いてしまいましたが…ネタバレしない程度に……心に残った言葉をいくつか。 『警察組織は複雑だが、人間関係は単純である。責任を取る上司が部下の信頼を得る』 『親切にしてもらってるから、お前と岩村がいいとよ』←私はここで泣いてしまった。 『まったく日本人は、他人をそっとしておいてやるってことが出来ねえからなあ』 『刑事は情念で動くし、犯罪者相手に裸でぶつかっていく』 『もしかすると、自分たちが今まで見たことのない怪物なのではないか』 『鬼畜の所業を目の当たりにしたとき、何か理由を見つけないと、人は不安で仕方がないのだ』 587ページに及ぶ力作、傑作でした。読んで良かった‼︎
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