罪の轍 の商品レビュー
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東京オリンピック前年におこった誘拐事件を犯人、警察、その地域に住む在日朝鮮人の娘の3人の視点から描かれている。実際の誘拐事件を土台としているのを読後に知った。 時代背景や犯人の特異性などあり、面白かった。 時代描写の点からするとミキ子のパートが必要なのはわかるのだが、個人的には落合のパートや描写がもう少し強くてもいいのではないかと思った。 ラストもありきたりかもしれないが、落合、大場で終わってほしかった。
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寛治の生きざま、想像を絶する生い立ち、なかなか真相に辿り着けず捜査が難航する重苦しい展開が続くのだが、昭和の時代背景や義理人情、オリンピック一年前の東京の街の様子、携帯もパソコンもインカムすらない時代の刑事たちの必死の捜査の様子がまるで映像のように浮かび上がり、どっぷりとその世界...
寛治の生きざま、想像を絶する生い立ち、なかなか真相に辿り着けず捜査が難航する重苦しい展開が続くのだが、昭和の時代背景や義理人情、オリンピック一年前の東京の街の様子、携帯もパソコンもインカムすらない時代の刑事たちの必死の捜査の様子がまるで映像のように浮かび上がり、どっぷりとその世界に浸ってしまった。哀しい結末ではあるが、その時代を必死に生きている人たちに魅了された。
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最後が特に読ませる。 大場警部が自分に被るな。プライド。 ミヤちゃんの葬儀の日、幡ヶ谷のドトールから読み始めて、今日読了。
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奥田さんはガールや家シリーズ、精神科医の話しか読んだことがなかったので、意外だった。すごく読みごたえがあった。 宇野はどこか憎めず、莫迦だけど、だからこそ親しみやすくて、信じたい気持ちが、刑事の落合と同じくあった。警察側の臨場感と、のらりくらりとした宇野の心情が対照的。犯罪の内容は腹立たしい、宇野のまわりの人達はあたたかい。必死に生きている。でも、莫迦だから利用してもいる。やるせない読後感。時代が古いのもあって、どっぷりとこの世界に浸かった。
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わ‐だち【×轍】 《「輪(わ)立(だち)」の意》車の通ったあとに残る車輪の跡。「ぬかるみに轍がつく」 (デジタル大辞泉) 北海道の礼文島で漁師として暮らす二十歳の宇野寛治。空き巣の常習犯だった彼はより良い暮らしを求め上京するが、幼い頃に両親から受けた虐待の後遺症で記憶障害を発症し、ぼんやりとした意識の中で犯罪を繰り返してしまう。捜査にあたる警察も、事件の話になるときまって意識を失う寛治に翻弄される。 題名の「轍」という言葉の無機質さに、この物語の主題が反映されていると感じた。ぬかるんだ泥道をトラックが通過した後にできる車輪の跡のような、どろっとした不快感。空き巣、誘拐、殺人。次々と罪を犯しても罪悪感を持たず、警察に追われていると知ってなお逮捕や死刑への怯えもない。いつもと変わらない日常を過ごし、日々の雑事を淡々とこなす主婦のように、流れるように罪を犯す。寛治が犯した罪の「轍」は、日常に完全に埋没しているという点でよりいっそう不気味だ。先日読んだ「カエル男」と繋がるところもあり、劣悪な環境で育ったが故に善悪の判断をつけられない人間に、罪の意識を持たせることの難しさがじわじわと伝わってくる物語だった。
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すっごくよかったぁー 読後には物悲しくて涙が少々… 昭和38年の世界が分からなくて 想像も難しいところが多かったけど (特に物価。 家賃が五千円。一万円は破格。 高級旅館は四千円。簡易宿は650円。朝食150円。 水商売の年収が24万、警察のお偉いさんが70数万?) 分からない...
すっごくよかったぁー 読後には物悲しくて涙が少々… 昭和38年の世界が分からなくて 想像も難しいところが多かったけど (特に物価。 家賃が五千円。一万円は破格。 高級旅館は四千円。簡易宿は650円。朝食150円。 水商売の年収が24万、警察のお偉いさんが70数万?) 分からないからこそ知りたくなるし、 作者も少年だった頃だから曖昧にしか覚えていないだろうに、 とっても詳しく丁寧な描写で、さすがの表現力と感服だし取材もいっぱいしたんだろうなぁ。 奥田さんてやっぱ人物を描くのもすごく上手で、登場人物がとっても魅力的。いつのまにか寛治に親しみを持ってしまっている。ニールとか大場もすき。明男も立木も。 「お前は空き巣か?」「そうだ!」のくだりも笑っちゃった タイトルの通り、本当に「罪の轍」 犯罪者たちは皆、愛されずに育った者たちだ というのも、きっとやっぱりそうなんだろうなぁと切ない。 「オリンピックの身代金」もすっごく好きだったんだけど、似てるなぁと思いつつ、読んだのが随分と前だから、5係のメンバーが一緒って気づかなかった!もう一回読み直したいなぁ、
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空巣の青年、刑事、旅館の娘の3者の視点から強盗殺人、身代金誘拐を描くストーリー。飽きさせない展開でスピード感と緊張感があり、最後までスラスラ読めた。
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ラストの舞台が冒頭の舞台に戻っていくようで、あたかもその間のことが、無かったこと夢の中と思わせるような、最後の展開だった。しかしながら、冒頭と違って、激しい逃走と逮捕のシーンがあり、それが、元には戻れない、取り返しのつかないことをした現実を表していた。まるで寛治が目を背けたいもの...
ラストの舞台が冒頭の舞台に戻っていくようで、あたかもその間のことが、無かったこと夢の中と思わせるような、最後の展開だった。しかしながら、冒頭と違って、激しい逃走と逮捕のシーンがあり、それが、元には戻れない、取り返しのつかないことをした現実を表していた。まるで寛治が目を背けたいものが現れた時に、夢の中に逃げ込んでいたのを、検事がビンタで現実世界の存在を知らしめたように。 【人物】 宇野寛治 礼文からの流れモン 赤井 礼文で寛治をだます 落合昌夫 警察 晴美 昌夫の妻 浩志 昌夫の息子、1歳 宮下大吉 捜査一課係長 森拓朗 捜査一課 仁井薫 捜査一課 沢野久雄 捜査一課 倉橋哲夫 捜査一課 岩村傑 捜査一課 新米 玉利 捜査一課長 大場茂吉 所轄、元捜査一課 町井ミキ子 山谷 明男 弟 鈴木吉夫 誘拐被害者 春生 父親、鈴木商店店主 敏子 母親 川田恵子 鈴木商店員
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1963年、東京オリンピック前年の年に実際にあった事件をモデルに描かれています。 4歳児が誘拐、殺害され、日本中の注目を集めた吉展ちゃん事件です。 この時代には生まれていませんが、読み進めていく中で、いまある世の中はここから始まった気がしました。 高度経済成長の折、東京オリンピッ...
1963年、東京オリンピック前年の年に実際にあった事件をモデルに描かれています。 4歳児が誘拐、殺害され、日本中の注目を集めた吉展ちゃん事件です。 この時代には生まれていませんが、読み進めていく中で、いまある世の中はここから始まった気がしました。 高度経済成長の折、東京オリンピックも重なり、急激な発展をとげる日本、交通網や電話網などのインフラも劇的な発展、あわせてテレビの普及により、マスメディアの可能性も広がり、世の中がこの事件を中心に大きく変わることに…… 北海道の礼文島に生まれ、記憶障害を抱えた彼は、いつの日か、東京にいくことを夢に見、ただそれだけを希望に生きていく…… ある事件を切欠に東京へ流れ着き、わずか半年ほどの時間の中、次々に事件が、空き巣、児童誘拐、殺人など、真相が明らかになればなるほど、切なくなります。最後も胸がキューっと締め付けられました。。。
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東京オリンピックの前年に実際に発生した誘拐事件をモデルにした作品。犯人の行動について読者として知っているはずなのに、犯人の言動が読めなくて、それが不気味で悲しく感じた。
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