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罪の轍 の商品レビュー

4.2

250件のお客様レビュー

  1. 5つ

    94

  2. 4つ

    99

  3. 3つ

    34

  4. 2つ

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2020/12/05

とても読み応えのあるミステリーだった。 昭和の東京オリンピックの前年を舞台に 北海道の礼文島から訳あって東京にて出来た 20才の寛治は空き巣を繰り返し他人から莫迦だと罵られて来た。 そして、東京で強盗殺人が起きる。 その容疑者として、寛治が捜査線状に上がるが 足取りが掴めず刑事と...

とても読み応えのあるミステリーだった。 昭和の東京オリンピックの前年を舞台に 北海道の礼文島から訳あって東京にて出来た 20才の寛治は空き巣を繰り返し他人から莫迦だと罵られて来た。 そして、東京で強盗殺人が起きる。 その容疑者として、寛治が捜査線状に上がるが 足取りが掴めず刑事と寛治そして其れを取り巻く人間関係が逸材だ。そしてもう一つの誘拐事件へと 発展して行く。オリンピック前の日本の発展に伴い 交通、通信などが著しく発達して行く過程で 警察も混乱を極める。 寛治は、子供の時の悲惨な家庭環境から 過去を封印し記憶障害という病の為自分と言うものが無く殺人の記憶も霧に葬られて行く。 犯人の悪気の無さが、1番事件を複雑にしていて 刑事達と犯人の温度差やかけ引きも、昭和の匂い を感じるさせる設定になっている。

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2020/11/26

2020/11/25 さすが! 莫迦で漢字の読めない寛治と、オリンピック開催に沸く東京の下町での誘拐事件。 最初はこの厚さ読み切れるかな?と思っていたけど、進め方が上手くて残りページを確認しながら「どうなる?」と一気読み。 寛治には大罪を犯さないで欲しいし、誘拐事件も無事解放され...

2020/11/25 さすが! 莫迦で漢字の読めない寛治と、オリンピック開催に沸く東京の下町での誘拐事件。 最初はこの厚さ読み切れるかな?と思っていたけど、進め方が上手くて残りページを確認しながら「どうなる?」と一気読み。 寛治には大罪を犯さないで欲しいし、誘拐事件も無事解放されて欲しい。そう願いながら読んだ。

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2020/11/19

実際の事件をモチーフにした骨太警察小説。当時の時代背景がしっかりと描かれており、興味を持って読み進めることができた。描写がきめ細かく、50年前の出来事であっても、のめりこめた。

Posted byブクログ

2020/11/18

一気読み。幼い頃の仕打ちが気の毒でネジが一本飛んでしまっているような寛治が不憫でならない。莫迦だから、莫迦なのに…悶々としながら読む。 刑事側のパートになると少しホッとしながら読める。本当に面白かった

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2020/11/16

実際にあった事件をモチーフに書かれた作品と読後に知りました。背景やあらすじを知って読むか否か。前東京五輪の前年という時代の中で起きた劇場型の犯罪の一つ。時代の背景、警察の捜査、犯人の心理などどれも淡々と描かれ、モノクロの表紙が作品の切なさやるせなさを暗示している。児童誘拐殺人、作...

実際にあった事件をモチーフに書かれた作品と読後に知りました。背景やあらすじを知って読むか否か。前東京五輪の前年という時代の中で起きた劇場型の犯罪の一つ。時代の背景、警察の捜査、犯人の心理などどれも淡々と描かれ、モノクロの表紙が作品の切なさやるせなさを暗示している。児童誘拐殺人、作品が力作秀作だけに胸に残る澱は重くのしかかる。刑事たちの意地の結晶が霧の彼方に浮かぶ救いの光にみえた。

Posted byブクログ

2020/11/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

読み終わったあとに押し寄せる、得体の知れない虚無感、喪失感。 解決を期待して読んでいたつもりだった。 読み途中、寛治が事件に対してあまりに他人事なので、本当に事件とは無関係なのではないかと思うこともあった。 あんなことをしでかして、平気で旅行を楽しんだり、警察に嘘ついたり出来る寛治は、やはり鬼畜、モンスターなのだろうか。 本当に全部を寛治がひとりでやったの?誰にも相談せずに…? 寛治は盗みはするけど人殺しはしない莫迦なんじゃなかったの…。 最後まで、寛治が何者なのか、わたしには分からなかった。 犯人が逮捕されても、罪を認めても、何も解決しない。 幼い子が殺された悲しい現実があるだけだ。 理解の範疇を超えるひどい事件が起こると、捜査機関も司法もマスコミも、ストーリーのように、事件が起こった背景を詳しく語りたがる。 それは、傍観者である私たちが、「こんな酷いことをするには何か背景があるにちがいない」と、「納得できる理由」を知りたがるから。 でも、自分が犯した罪を、正確に合理性をもって語れる人なんているのだろうか。 それが出来る状況の人は、そんなひどい事件はそもそも起こさないのではないか…。 現実に起こる事件でも、犯人たちは型通りの動機を話す。 他方で、一般人が理解できないような話をする人は「自分の罪を軽くしようとしてる」と、世間から猛烈に叩かれる…。 何が正しいのか、正義なのか、私は分からなくなった。 吉夫ちゃん誘拐事件は、戦後の抗争期に実際に起きた事件をモデルにしている。 だから、吉夫ちゃんの運命は分かったつもりで読んでいた。なのに、改めて結末を知り、こんなにも悲しいのか。 近年は、身代金目的の誘拐は成功しないと知られていて、そんな無謀なことをする人はほぼいなくなったと聞く。 でも、当時は電話が普及して「電話がある家」をターゲットにする誘拐事件が頻発していたとのこと。 吉夫ちゃんも、自宅が商売をやってて電話があったからターゲットにされた。 家に電話がなければ、殺されなくて済んだかもしれないのに。 町井ミキ子は、「息子が寛治に声をかけなきゃ事件は起こらなかった」と嘆くミキ子の母親に対して「論理の飛躍」と思っているが、 理不尽に幼い子の命が奪われた現実に対して、誰しもが何かに理由を求めて、どうすれば防げたのかを思わずにはいられなかったんだと、私は思った。 いち早く寛治を捜査線上に浮上させた落合昌夫刑事は、有能すぎですね。 現実にも、こんなスーパー刑事がいたら頼もしい。

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2020/11/14

元から悪い人は極小数。酷い経験が人を歪める。…これを期待して読んだら期待外れ。主人公格の人物が多すぎ犯人に思いが乗り切らず。しかも皆私生活や思考人なりをしっかり描いたわりに最後で尻切れ。メインは寛治で引き立てる為に語り手が数人いる構成ならよかった。序盤はわくわくしたのに終盤が残念...

元から悪い人は極小数。酷い経験が人を歪める。…これを期待して読んだら期待外れ。主人公格の人物が多すぎ犯人に思いが乗り切らず。しかも皆私生活や思考人なりをしっかり描いたわりに最後で尻切れ。メインは寛治で引き立てる為に語り手が数人いる構成ならよかった。序盤はわくわくしたのに終盤が残念。人生の理不尽さが重く伝わるでもなく、冤罪判明等どんでん返しもなく、エンタメとしても微妙…終盤にページ割くか犯人家族にページ割いて寛治の人生をもっと描いてほしかった。当時の時代背景描写は楽しめた。(交通通信発達、オリンピック間際等

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2020/11/11

本の厚みと中身の厚みが合ってる。 想定内とか想定外とか思わせない、どうおさめるのか、着地点が気になってページを進めさせるのはさすが。 ただやりきれない。宇野という人に警察も振り回されたけど、私も振り回された。安易な言葉になるけれど、でも面白かった。

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2020/11/05

2020年11月3日読了。 昭和38年、翌年にせまった東京オリンピック。北の果ての礼文島で暮らす宇野寛治は地元の人から「莫迦」と言われていた。 それから数カ月後、東京で発生した殺人事件と誘拐事件、宇野寛治はどう関わっているのか? 多少ネタバレだけど、海は渡ってほしかった。ど...

2020年11月3日読了。 昭和38年、翌年にせまった東京オリンピック。北の果ての礼文島で暮らす宇野寛治は地元の人から「莫迦」と言われていた。 それから数カ月後、東京で発生した殺人事件と誘拐事件、宇野寛治はどう関わっているのか? 多少ネタバレだけど、海は渡ってほしかった。どうせなら最後は札幌で。このくらいにしておきましょう。 刑事が「オリンピックの身代金」と同じ刑事が出てくるらしいけど、誰かわからなかったし、オリンピックの身代金を読んでなくても充分楽しめます。 星は4.5をつけたいくらいの面白い小説!

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2020/10/25

水上勉「飢餓海峡」松本清張「ゼロの焦点」の映画のシーンのようなモノクロの写真が表紙です。渡辺雄吉という写真家の「張り込み日記」という作品からの引用のようですが、もうそこから空気がタイムスリップしたような気がします。古い昭和と新しい昭和が混じり合って靄を生んでいるような境目の時代が...

水上勉「飢餓海峡」松本清張「ゼロの焦点」の映画のシーンのようなモノクロの写真が表紙です。渡辺雄吉という写真家の「張り込み日記」という作品からの引用のようですが、もうそこから空気がタイムスリップしたような気がします。古い昭和と新しい昭和が混じり合って靄を生んでいるような境目の時代が舞台設定です。最初の東京オリンピックの一年前の1963年の物語を二回目の東京オリンピック、本来なら行われるべき、しかし延長されたことによって結果、前年に読む巡り合わせ。もはや知る人も少ない「吉展ちゃん誘拐事件」をモデルにしていますが、その後の「永山則夫連続射殺事件」の犯人像も取り入れているような気がします。大島渚の映画「少年」もこの作品に影響を与えているかもしれません。電話やテレビによって犯罪が変わっていく社会における警察の捜査そのものの変化、例えば、大学出の刑事の主人公落合と、叩き上げの刑事大塚(これ吉展ちゃん事件の平塚刑事がモデルか!と、今、気づく…)の対比…がこの小説を駆動していきますが、主旋律を奏でるのは、犯人。作者の巧みな構成によって、トリックスター的な生命力に感情移入している自分がいました。そして、彼の宿命。小説新潮連載時には「霧のむこう」という題名だったのが単行本では「罪の轍」になったことで、この小説のテーマがものすごく明確になったと思います。人は生まれなのか…中間層が消え、階層が固定化する平成と令和の境目に、また甦るテーマなのだと勝手に思い込むのでありました。

Posted byブクログ