罪の轍 の商品レビュー
読了後 ものすごい喪失感に襲われる 面白かった 読み終わるのが勿体ないくらいに 引き込まれて読んだ だけど 事件の 経緯が明らかになっても あまりの悲惨さに 救われた気持ちにはなれない たくさんの課題を与えられたような気分 どこから 気持ちを整理して 感想をまとめるのがい...
読了後 ものすごい喪失感に襲われる 面白かった 読み終わるのが勿体ないくらいに 引き込まれて読んだ だけど 事件の 経緯が明らかになっても あまりの悲惨さに 救われた気持ちにはなれない たくさんの課題を与えられたような気分 どこから 気持ちを整理して 感想をまとめるのがいいのだろう しばらく 余韻から脱げ出せそうにない 「オリンピックの身代金」と続けて読んだせいか 余計に 繋がった世界に長く入り込んでしまっていたように思う 圧倒的な作品 まいった
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※このレビューにはネタバレを含みます
酒鬼薔薇事件をはじめ、実際に発生した事件を一つのレイヤーとして小説を書き、社会事件の分析を試みた小説は多くある。分類でいえば、本作品もその系譜上の一つである。1963(昭和38)年に、台東区入谷で発生したいわゆる「吉展ちゃん誘拐殺人事件」をモチーフとして本作品は描かれている。小説(フィクション)ではあるが、この作品はかなり事実に忠実に依拠していると思われる。 実際の事件で確認された事実のうち、以下の事柄は本作品にほぼそのまま取り込まれている。 ①報道各社との報道協定 ②犯人が子供を預かっている証拠として、子供の靴を利用した ③(警察が)身代金の紙幣のナンバーを控えなかった ④犯人からの電話の逆探知ができなかった ⑤報道協定解除後の公開捜査で、テレビやラジオで犯人からの電話の音声を公開 ほかにもあるかもしれないが、「吉展ちゃん誘拐殺人事件」が世間に注目された要素をそのまま取り入れて、かつ犯人、警察(複数)、犯人の東京での連れの姉といった複数の視点から事実を描き、一見野放図とさえ見える犯人の行動を明らかにしてゆく。にもかかわらず、一向に犯人にたどり着かない警察のセクショナリズムに阻まれた捜査過程に、読む者は苛々させられるだろう。ノンフィクションに近い小説との予見を持って読み始めた『罪の轍』は、しかし、他の多くの方々が評しているように、すばらしい人間群像劇でもあった。 奥田英朗といえば、『イン・ザ・プール』などのコミカルな小説を書く作家という認識を持っていたが、本作品を読んで、それは奥田氏の一面しか見ていなかったことを知ることとなった。昭和38年という「戦後」の色がまだ残っている中、高度経済成長を果たし、いよいよ東京オリンピック(第一回目の)開催を前に東京が大都市へと変貌を遂げる時代を背景として起きた事件を描いており、この時代の息遣いを知る作品ともなっている。だからといって、ノスタルジックな古臭さを感じるかといえば、令和の時代に読んでも昭和の息遣いは十分に感じながらも、作品の中に登場する人々はなおも活き活きとしている。 一向に進展しなかった事件は、「あること」をきっかけに急転直下の勢いで大団円へと向かう。そこから犯人逮捕へ、そして、真相が明らかになるくだりは、読む者の心拍数を急激に押し上げる。誘拐され、我が子を殺められてしまった両親の苦悩と、犯人が幼少の頃に受けていた(ことが捜査の中で明らかになる)継父あの虐待。どれも生々しく描かれており、かつ、おそいらく作者は意図的に複数の視点を使い分けているので、読み進めるうちに多くの人たちに、読者は感情移入してしまう。 奥田英朗の新たな、そしてすばらしい魅力を再発見した作品であった。秀逸である。
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息つく暇もなく読み通した。語られる物語に夢中になった。正直何の予備知識もなく、まさかこれほどの傑作だとは思わなかった。礼文島の漁師の話から始まり、空き巣の話を経て、いつの間にやら誘拐事件の話になっていた。オリンピックを控えた高度成長期真っ只中の東京を舞台に、ひとつの誘拐事件を軸に...
息つく暇もなく読み通した。語られる物語に夢中になった。正直何の予備知識もなく、まさかこれほどの傑作だとは思わなかった。礼文島の漁師の話から始まり、空き巣の話を経て、いつの間にやら誘拐事件の話になっていた。オリンピックを控えた高度成長期真っ只中の東京を舞台に、ひとつの誘拐事件を軸にして、その事件にまつわるたくさんの登場人物の心情を、鮮やかに、しかも深く描き出している極上のエンターテイメント。落合刑事、岩村刑事、大場刑事、仁井刑事、山谷のミキ子、そして宇野寛治、またその周辺の人々。すべての登場人物に血が通い、キャラクターが確立されている。今まで知らなかったのが本当に恥ずかしい。これは世紀の大傑作だ。
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軽度の記憶障害をもつ男、宇野寛治が、北海道の島礼文島から逃げた。盗みを働き、放火し、そして海で死んだことになった。しかし、その男が、東京にいる。そして、オリンピックを翌年に控え、高度経済成長に沸く日本の片隅で、南千住における富裕層の殺害事件、そして豆腐屋の子供、吉男ちゃんの誘拐事...
軽度の記憶障害をもつ男、宇野寛治が、北海道の島礼文島から逃げた。盗みを働き、放火し、そして海で死んだことになった。しかし、その男が、東京にいる。そして、オリンピックを翌年に控え、高度経済成長に沸く日本の片隅で、南千住における富裕層の殺害事件、そして豆腐屋の子供、吉男ちゃんの誘拐事件が起きる。捜査を担当する警察官たちが、必死にヒントを捉えて、犯人を追い詰めていく。警視庁捜査一課の落合は、北国訛りのある青年のすがたを情報を集める過程で固めていく。事件をネタとして追いかけるマスコミ、傷つけられる被害者、そしてそれを日本を守るために戦う警視庁の警部たち。一方で、二転三転する事実認識と、捜査線で起こるミス。新聞記者出身の塩田武士氏の罪の声などの取材する側から見たドラマとは全く異なる、事件を解決するために奔走する警察たちの意地、ある意味湾岸警察署の織田裕二ほどぶっ飛んでいない、リアルで等身大の警察官たちが、リアルかつ温度感を持った文章が心に響く。宇野の心理描写を通じて、我々が持つ孤独とか、社会に生きる意味とか、そういうものと、現実に起こっていることのギャップを心に訴えかけながら、事件に迫る警察官たちのプライドやサスペンスの要素もあって、500ページを超えるハードカバーを一気読みしてしまった。今年ナンバー1かもしれないといきなり思った。
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密度が濃すぎる話。強盗殺人の容疑者が誘拐事件に繋がり何とも後味の悪い結末。記憶障害などがあったにせよ、なぜ暴力的になったのかが語られないのがもやっとする。
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2020年の締めは奥田英朗さんのご本。 こちらは、昭和38年におきた吉展ちゃん誘拐殺人事件が下敷きに書かれているそう。 最初から引き込まれたし、結末がどうなるのか分からなくて夢中で読んだ。 特に最後の方はベテラン刑事と犯人のやり取りや、若手刑事たちの奮闘に胸が熱くなった。 ...
2020年の締めは奥田英朗さんのご本。 こちらは、昭和38年におきた吉展ちゃん誘拐殺人事件が下敷きに書かれているそう。 最初から引き込まれたし、結末がどうなるのか分からなくて夢中で読んだ。 特に最後の方はベテラン刑事と犯人のやり取りや、若手刑事たちの奮闘に胸が熱くなった。 『罪の轍』という題名が、読み終わるとすごく納得。 切ないような、虚しいような…複雑な気持ちになった。 そして舞台が私も土地勘のある場所だったので、読んでいて更に臨場感が増した。 去年旅行に行った稚内も出てきたから、そこも(そっちは土地勘はないけどね)。 刑事たちが人間味あって、魅力的に描かれていて、格好良かった。 特にニール。 あと、ヤクザの立木社長。 奥田英朗さんのご本は『オリンピックの身代金』以来だったけど、他の作品も読んでみたいな。
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図書館から借りた本 2020年、今年最後を飾るに相応しい作品でした ・ 東京五輪前年に起きた有名な男児誘拐事件がモチーフになっています 犯人の青年は周囲から「莫迦」と蔑まれ、行き当たりばったりの犯罪を繰り返します そんな青年に翻弄される警察 青年の孤独と刑事の執念がリアル...
図書館から借りた本 2020年、今年最後を飾るに相応しい作品でした ・ 東京五輪前年に起きた有名な男児誘拐事件がモチーフになっています 犯人の青年は周囲から「莫迦」と蔑まれ、行き当たりばったりの犯罪を繰り返します そんな青年に翻弄される警察 青年の孤独と刑事の執念がリアルに描かれていて緊迫感で胸がバクバクしました ・ ハイテク機器のない昭和の時代背景がノスタルジーを感じさせました 終戦直後の名残があり、皆んなが豊かになろうと活気のある時代であったのだろうな、と そんな中取り残されていく人もいたのだと物悲しさが残りました ・ 奥田英朗さんは大好きな作家さんの一人です 奥田さんは「空中ブランコ」のようなコミカルなものから本作のようなシリアスなものまでどれも面白く読み応えがあり大好きです 来年も期待したいです
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昭和の有名な誘拐事件をモチーフにした作品。 オリンピックの身代金と同じ時代設定で、犯人の孤独と刑事の執念を描いた作品だが、今回は犯人に感情移入できなかった。場当たり的で利己的な犯行が、同情を上回ってしまう。 この作品の魅力は、時代背景だろう。 ハイテク機器のない中で、地道に犯人に...
昭和の有名な誘拐事件をモチーフにした作品。 オリンピックの身代金と同じ時代設定で、犯人の孤独と刑事の執念を描いた作品だが、今回は犯人に感情移入できなかった。場当たり的で利己的な犯行が、同情を上回ってしまう。 この作品の魅力は、時代背景だろう。 ハイテク機器のない中で、地道に犯人に迫る刑事と、ヤクザの正義感、山谷の人々など、昭和生まれにすると、ノスタルジーすら感じさせる。 ひとつひとつ蓋を開けていくような展開で、なかなかの長編にもかかわらず、一気に読める作品でした。
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最後までドキドキハラハラ。どの人物も描写がしっかりされているので憎みきれない。 戦後18年の昭和ってこんなカオスだったのね。今でも連携取れてないと色んなところで言われるけど、昔はもっと。電話も電車も組織も皆、今と違う。同じようで同じでないデジャヴュでもない日本。でも人間って変わら...
最後までドキドキハラハラ。どの人物も描写がしっかりされているので憎みきれない。 戦後18年の昭和ってこんなカオスだったのね。今でも連携取れてないと色んなところで言われるけど、昔はもっと。電話も電車も組織も皆、今と違う。同じようで同じでないデジャヴュでもない日本。でも人間って変わらないんだなぁと。フレームは変化しても中身は変化してないのがよく分かった。
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SL 2020.12.13-2020.12.19 東京オリンピックの前年。 高度経済成長期。大きく時代が変わろうとしていた。 いろんなところで現代、今現在とシンクロする。 宇野寛治の人生が切ないというか、理不尽というか。でも、リアリティもありなかなかに辛い。
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