我らが少女A の商品レビュー
作者本人がインタビューに答えている、 >解決されずに忘れられていく事件はたくさんありますけど、被害者遺族や加害者とその家族はもちろん、友人や知人といった関係者にもさざ波を起こします。波はあっちでつながり、こっちでつながり、いろんな反応をひき起こす。その連鎖反応が小説空間になる。 ...
作者本人がインタビューに答えている、 >解決されずに忘れられていく事件はたくさんありますけど、被害者遺族や加害者とその家族はもちろん、友人や知人といった関係者にもさざ波を起こします。波はあっちでつながり、こっちでつながり、いろんな反応をひき起こす。その連鎖反応が小説空間になる。 という言葉が端的に本作品の概要となっている。 https://shosetsu-maru.com/recommended/book-review-575 めちゃくちゃ面白かった。久々に寝食に少し影響が出るくらい没頭したし、たまたま割と近くに住んでいたのもあり現場の公園や一帯を尋ねてみたりした。 なにか新しい事柄が発見されて事件が華々しく解決する、というようなものではなく、表面上大きなドラマが起こる訳ではない。でも一人一人、一つ一つの感情の機微が丁寧に描写されていき、ぐいぐいと引き込まれる。登場人物たちと自分が同世代だったのもあるかと思う。 物語後半、ガラケーで撮られた何気ない写真たちで当時の情景が蘇ってくるシーンでなぜか泣けた。 合田シリーズ前作の冷血で、本人の階級も上がり、物語における主役・本丸が合田より事件・犯人に移り変わっているように思った。今回で言うとその本筋への関与はさらに薄くなっている。 作品の出来を毀損するものではないが、一応合田シリーズとして追いかけている身としては、もうこうなったら合田と加納だけに絞った作品が一本欲しい…過去に起こったことを遡っていくのではなく、現在進行形のものを追いかけていくような…定年間近の登場人物に求めるのは酷な気もするけど…
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登場人物が過去の記憶を手繰り寄せるように事実を明らかにしてゆく。しかしそれは断面的で、まるでドラクエ世界にも彷徨っていくように、現実と仮想も交錯する。1人1人が疑っていた疑惑や悔恨、真実さえ時の流れが隔てていく。
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一人の女性の死から始まる12年前の未解決殺人事件の記憶が、彼女の友人、同級生、彼らの両親、そして当時捜査に及んだ合田の心を揺り動かす。 思春期の不安定さ、親も含めた大人への不信、うちに抱える、いわゆる「暗い山」のようなもの(マークスで出てきたアレに近いというかなんというかうまく言...
一人の女性の死から始まる12年前の未解決殺人事件の記憶が、彼女の友人、同級生、彼らの両親、そして当時捜査に及んだ合田の心を揺り動かす。 思春期の不安定さ、親も含めた大人への不信、うちに抱える、いわゆる「暗い山」のようなもの(マークスで出てきたアレに近いというかなんというかうまく言えない)に突き動かされる衝動、子供をどうにもできなかった親たちの悔恨が、2005年と2017年の東京武蔵野の街の風景をまとって立ち上がってくるようだ。 人の心は自分でもどうにもならない。事件をきっかけに繋がった各登場人物も自らの心を疑いつつあの頃と現在を往復して心の有り様を模索する。真相はわからない。それは当事者が全てを握っているから、例え本心に迫る証拠を握っていても、周囲の者たちはただただ憶測でしか動けないからだ。
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大好きな合田雄一郎シリーズ。 髙村作品を読むと、いつも人の行動って実は明確な理由の裏付けがないことのほうが多いんじゃないかと思う。 幸せと不幸せ、落ち着きと混乱、充足と不満は本当は地続きで、平穏だと思っている日々も本当はどうしようもなく不安定なのに、私たちは見たいものしか見ないか...
大好きな合田雄一郎シリーズ。 髙村作品を読むと、いつも人の行動って実は明確な理由の裏付けがないことのほうが多いんじゃないかと思う。 幸せと不幸せ、落ち着きと混乱、充足と不満は本当は地続きで、平穏だと思っている日々も本当はどうしようもなく不安定なのに、私たちは見たいものしか見ないから、その不安定さに気づかない。 見たいものしか見ないってことは、この不安定な世界を生きていくうえで必要なスキルではあるけれど、そのスキルを持たない、あるいは持つことができなかった人が髙村作品には出てきて、その人たちへのまなざしはとても優しく、でも哀しい。
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すごい本でした。読んでいる間、自分が12年前の野川公園や多摩駅、吉祥寺に今いて、登場人物たちを見ているように感じるほどこの世界に引き込まれました。文章、描写、構成等見事で、激しい展開がないにも関わらず没頭させられ、読み終えてため息が出ました。別世界から現実に戻りましたがまだ呆然と...
すごい本でした。読んでいる間、自分が12年前の野川公園や多摩駅、吉祥寺に今いて、登場人物たちを見ているように感じるほどこの世界に引き込まれました。文章、描写、構成等見事で、激しい展開がないにも関わらず没頭させられ、読み終えてため息が出ました。別世界から現実に戻りましたがまだ呆然としています。
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結構なボリュームでしたが、展開が気になって夜更けまででイッキに読んでしまいました。 登場人物の目線、場面の移り変わりや、共時性、同時性、拡散性などの表現方法、生々しく想起させる緻密な文体などに惹き込まれつつ、最期にプツンと切れる感じがしばらく茫然としてしまいました。
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図書館の福袋の3冊のうちの1冊。福袋のテーマは「中央線沿線が舞台」。 袋を開けると高村作品が! 久々の高村ワールド。 読み始めてさらにビックリしたのは、野川公園の殺人事件。 本書に出てくる地名、施設名の全てが身近な場所。 高村女史はICUの出身だから、その時の思い入れがあるのだろ...
図書館の福袋の3冊のうちの1冊。福袋のテーマは「中央線沿線が舞台」。 袋を開けると高村作品が! 久々の高村ワールド。 読み始めてさらにビックリしたのは、野川公園の殺人事件。 本書に出てくる地名、施設名の全てが身近な場所。 高村女史はICUの出身だから、その時の思い入れがあるのだろうなぁ。 もう少しで読み終わるので、最後まで楽しみたい。
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Audibleで読了 合田刑事シリーズなので期待したのですが、イマイチ… 伏線が深すぎてよくわからんでしたね。私の理解では理由がわからず。
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安定の高村作品。合田シリーズは大好き。その合田さんも歳を重ね、共感しかない。 SNS、ゲームとか、よく書けてて凄い。全くわからなかったけど。次作品も早く出てほしい。
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久しぶりの高村薫でした。作家とともに、主人公も老いる。合田雄一郎の現在の地点の描き方に高村薫自身に流れた時を感じる読書でした。関西の人間には地理的な具体性が理解できないのですが、調布飛行場から飛び立つ飛行機の機影の描写に、時代を超えた「青春」のかたちの象徴のようなものを感じまし...
久しぶりの高村薫でした。作家とともに、主人公も老いる。合田雄一郎の現在の地点の描き方に高村薫自身に流れた時を感じる読書でした。関西の人間には地理的な具体性が理解できないのですが、調布飛行場から飛び立つ飛行機の機影の描写に、時代を超えた「青春」のかたちの象徴のようなものを感じました。 ブログにはあれこれ書きました。よろしければ覗いてみてください。 https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202210050000/
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