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教育格差 の商品レビュー

3.8

65件のお客様レビュー

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2024/09/15

データが多く読みにくさがあるけど、内容はとても興味深かった。 教育格差は高校や大学など、分かりやすい学歴として可視化されるよりずっと前から存在する。生まれた時からそれぞれが生きる環境によって「ふつう」が異なり、行き着く先も異なる傾向が高い。 振り返ってみると、学生時代の私にと...

データが多く読みにくさがあるけど、内容はとても興味深かった。 教育格差は高校や大学など、分かりやすい学歴として可視化されるよりずっと前から存在する。生まれた時からそれぞれが生きる環境によって「ふつう」が異なり、行き着く先も異なる傾向が高い。 振り返ってみると、学生時代の私にとっての"社会"なんてせいぜい学校やら習い事やらの関わりにとどまるもので、もっと大きな"社会"の中で自分がどこにいるかなんて分かってなかった。 自分自身で選択できない子どもにとって、自分が見えてるものが「ふつう」でないことを認識するのは難しい。"親ガチャ"という言葉はあまり好きじゃないけど、親の収入や考え、教育方針で子供の将来が変わるのは残酷だけど否めない事実だなとデータからもよく分かった。 本著を読み、いろいろ思いを巡らせている自分は、新書を興味深く読めるくらいには教育面では恵まれた環境で育ったし、他の読者もそういった方が多いんじゃないかなと予想する。本当に苦しんでる人や届いてほしい人には届きにくくなってしまっているのも何だか皮肉のように感じる。 教員でもない、誰かの親でもない自分がこの教育格差問題に対してできることと言っても正直思いつかないけど、こういった現状があることを認識することは大切にしたい。 個人的には、「総括」の 「子供の頃に制度やルールに従うことを余儀なくされる度に、大人がしっかりと考えた相当な理由があるのだろうと違和感を飲み込んできた私が期待していたほど、頑健な合理性のあるものなどなく、恣意的に決まっていることばかりであると…」 という箇所が、自分と同じだ、、!と嬉しくなった。

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2024/07/05

親の社会階層や居住地域、学歴が子どもの教育機会にどのように影響するかを探り、教育格差がどのように形成され、維持されているかを解明した本。 徹底したロジックとデータ主義によって、日本の教育格差が今にはじまったことでなく、「緩やかな身分社会」として再生産されていたという事実を突きつ...

親の社会階層や居住地域、学歴が子どもの教育機会にどのように影響するかを探り、教育格差がどのように形成され、維持されているかを解明した本。 徹底したロジックとデータ主義によって、日本の教育格差が今にはじまったことでなく、「緩やかな身分社会」として再生産されていたという事実を突きつける。 本書前半では、就学前の幼児教育から小・中・高校に至るまでにどのように教育格差が拡大していくかを辿り、後半では「ではどうすれば良いか」への提言もなされている。 日本はアメリカに比べ、教育に関する大規模調査データが圧倒的に不足しているため、限られた調査結果から現状分析せざるを得ないらしい。 本書は教育格差についてのショッキングな事実だけでなく、社会科学における統計データの取扱い方のお手本としても参考になる良書。 ーーーーーーー一以下、抜書きーーーーーーーー . 人には無限の可能性がある。私はそう信じているし、一人ひとりが限りある時間の中で、どんな「生まれ」であってもあらゆる選択肢を現実的に検討できる機会があればよいと思う。なぜ、そのように考えるのか。それは、この社会に、出身家庭と地域という本人にはどうしようもない初期条件(生まれ)によって教育機会の格差があるからだ。この機会の多寡は最終学歴に繫がり、それは収入・職業・健康など様々な格差の基盤となる。つまり、20代前半でほぼ確定する学歴で、その後の人生が大きく制約される現実が日本にはあるのだ。 . 要するに人間社会はあまりに複雑で、すべてを把握することはそもそもできず、不足した人材と予算の中で調査研究が行われてきたので、信頼できるデータは数多くない。妥当な手法で行われた調査であっても、質問数と回答選択肢を増やしすぎると調査対象者の負担が大きくなるので、限られた事項しか把握できない。そう、みなさんが抱く多様な疑念すべてに応えることができるほど「現状」はわかっていない──わたしたちはわたしたちを知らないのだ。 . 近年に比べれば注目されなかった経済安定成長期の1970・1980年代にも「子どもの貧困」は実数として多く存在したし、貧困層と非貧困層の大卒割合の格差は明らかである。 . 格差論が隆盛する2000年代以前に子供時代を過ごした世代であっても、若年層と同じく出身地域による有利不利があったのだ。 . 大卒割合によって町の文化的雰囲気が異なり、それが教育意識の高低の基盤となっている。教育熱の高い地域に住む子供たちは、周囲の大人から高い教育を受けることが良いことであるというメッセージを意識的・無意識的に受けながら育つことになるのである。もちろん、様々な「文化」があってよい。ただ、現在の社会制度の中で「成功」するのに役立つ「文化」とそうでないものがあるのが現実だ。大卒割合によって近隣「文化」が異なることは、教育格差にとって大きな意味を持ち得る。 . 近年の研究でも、子が浴びる単語の量ではなく、親子の会話量とその質が言語能力の発達に重要であり、高SESな親がそのようなコミュニケーションを積極的にしていることが実証的に明らかにされている。 . 入学時点の「読み書き」と「算数」に、そして小学校4年生時点の算数の平均と偏差値60以上の割合に学校間格差が存在する。 . 国別の平均値とランキングはそのまま国の教育「制度」の「結果」を意味しない。経済の水準と格差・地域格差・教育制度・家庭教育・塾産業・社会全体の教育との親和性などすべてを含んだ総体だ。 . 理想的な教育を語るのはよいが、現実的に実施し結果に結びつかないのであれば、子供たちの人生の可能性を拡大することにはならない。「平等」なのか「自由」なのか、どちらに軸足を置くのか自覚することが重要だ。 . まずは、精神的にも物質的にも安定した家庭と学校で、親と教師だけではなく多くの大人に励まされ成功体験を少しずつ積むようなまっとうな教育を長期間受ける機会を付与しなければ、どれぐらい可能性があるのかわかることはないだろう。そう、遺伝による支配の到来を憂う前に、一人ひとりの潜在可能性を最大化するための教育環境の整備が先なのだ。

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2024/03/20

なんとなくそうではないかと薄々感じていたことが、膨大な統計データを元に論じられている。結論だけ知りたい人は総括の7章を読めば良いようにも感じた。しかし一番興味深いのは「おわりに」。著者の熱い想いが込められている。目次を後ろから前に向かって完全に逆に読むと面白いかもしれない。

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2023/12/09

・海外では、読書週間、環境、博物館訪問や観劇、文化的授業、課外活動、親子館の文化についての会話、文化や文学への態度、家庭の教育的資源などが指標化され、文化資本と学力などの教育成果は関係している ・大卒だと本や美術品を多く所持し、知識や教養なども身につけている傾向にある←美術品とは...

・海外では、読書週間、環境、博物館訪問や観劇、文化的授業、課外活動、親子館の文化についての会話、文化や文学への態度、家庭の教育的資源などが指標化され、文化資本と学力などの教育成果は関係している ・大卒だと本や美術品を多く所持し、知識や教養なども身につけている傾向にある←美術品とは、、 ・高学歴であればあるほど父母は読書をしている ・両親大卒層は多くの蔵書と読書週間を持つ傾向にある ・東京区内の私立中進学率は43%(想像より高い) ・東京区内の子供中3時点での年収中央値は約900万 ・進学校では授業に規律があり、学ぶ喜びに溢れ、同級生と協同し、成功にこだわる競争意識があり、学校の一員であることに誇りを持つ ・ゆとり教育により土曜が休日になったことで学力格差が拡大(高SESは文化的な体験をしたり学習塾で勉強したり、低SESはメディアに時間を割いたり)更には低SESの生徒には学習へのインセンティブ(勉強するといいことがあるよ!という誘因)が見えづらくなり、学習時間の格差が拡大 ・ゆとりを忌避する親は私立中を選ぶリッチフライト現象が報告された ・詰め込み教育に意義を唱えたのは殆どが難関大出身だった。実際に全体像で見るとそこまで白熱した受験戦争が行われていた訳ではない

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2023/11/30

丁寧なデータ分析を元にした、印象論や経験則ではない日本の教育の実態を示す本。 私個人は、全体として格差の縮小に努めるべきであるというスタンスである一方で、自身の子どもには(格差の再生産になろうとも)少しでもより良い教育環境を与えたいと願う、一般的な大卒である。そのことに自覚的であ...

丁寧なデータ分析を元にした、印象論や経験則ではない日本の教育の実態を示す本。 私個人は、全体として格差の縮小に努めるべきであるというスタンスである一方で、自身の子どもには(格差の再生産になろうとも)少しでもより良い教育環境を与えたいと願う、一般的な大卒である。そのことに自覚的でありつつ、教育のあるべき姿を考えていたい。

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2023/11/09

何となく気付いてはいたけど、様々なデータに基づいて改めて気付かされた感じ。 特に幼少期の環境は大事だなと感じた。

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2023/05/06

教育格差、生まれによる格差はある。その上でどういう社会を望むか。 ■初期条件(「生まれ」)である、出身家庭の社会経済的地位(Socioeconomic status, 「SES」)と出身地域 ■意図的教養と放任的教養 意図的教養:中流階級 習い事の参加、大人との議論・交渉の奨励...

教育格差、生まれによる格差はある。その上でどういう社会を望むか。 ■初期条件(「生まれ」)である、出身家庭の社会経済的地位(Socioeconomic status, 「SES」)と出身地域 ■意図的教養と放任的教養 意図的教養:中流階級 習い事の参加、大人との議論・交渉の奨励→結果、子供は相手が社会的立場のある大人であっても臆さず交渉し 自分の要求を叶えようとする意識を持つようになる 放任的教養:貧困層 子供の日常生活は大人によって組織化されてない。「自由」な時間が多い(テレビ無制限とか)。親は命令口調が多く、言語的な伝達は最小限にとどまる。→結果、子供は大人に対して自分の要求を伝えることを躊躇し、権威に対して従う成約感覚を持つようになる。 ■文化資本:3つの形態がある。本や美術品など「客体化された文化資本」、学歴 資格など制度に承認された「制度化された文化資本 」、言語力 知識 教養など簡単に相続されない「身体化された文化資本」。 ■国際的に見た日本の特殊性は、高校階層構造(偏差値ランキング)。制度的に教育困難校を作り、そこに勤める教師たちも教育を諦めるのが「普通」。(国際比較すると異常な仕組み)

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2024/01/03

世界中で似たような傾向にはあるが、日本にいると特に一部地区で受験熱が偏って高い事に気付く。通勤圏や地価からある程度収入の似通った家族が集まり、塾などの教育施設も充実。周囲との交流の中でも加熱していくのだろう。レールに沿って似たような価値観が集まる中学、場合によっては小学校を受験す...

世界中で似たような傾向にはあるが、日本にいると特に一部地区で受験熱が偏って高い事に気付く。通勤圏や地価からある程度収入の似通った家族が集まり、塾などの教育施設も充実。周囲との交流の中でも加熱していくのだろう。レールに沿って似たような価値観が集まる中学、場合によっては小学校を受験する事に、教育の格差以上に多様性の偏りが生まれる事に不安がある。島田紳助が昔、学校の教室は社会の縮図で、能力や親の年収、素行の良し悪しが混ざり合った公立に我が子を通わせたいと言っていて共感した事を覚えている。偏った集団意識から差別意識が生まれ、そこで刷り込まれた狭い承認欲求は社会生産性を高めるためのもので、必ずしも複雑な価値観を涵養しない。計測可能な偏差値が正義で、良い学校、良い就職先、良い友達付き合い、良い年収と、比較論による「良い」という価値観が形成される。やがてアルゴリズムさえ「良いね」で人同士を操り始める。 比較論で「ただ良い」事を追求しない社会。社会的に埋め込まれた価値観のKPIから自由になる事が必要と成田悠輔。これも大賛成。今、ダイバーシティと言えば、着替えやトイレなどの性区別の関係からLGBTQ、人不足の関係から外国文化に対して寛容さを高めつつあるが、学歴に対しては多様性が認められない。学力の基準で閉ざす方が、生産性には有利だからだ。 本著に書かれるような家庭環境、地域、親の学歴や年収、蔵書数などが子供に教育格差を齎す事は、肌感覚で分かっている。分かっているものをデータで立証した事に本著の価値がある。まるで、トマ・ピケティが縮まらない社会格差を立証したように。 学校現場でも諦められた低学歴。自覚と共にレールから外れていく教育落伍者の烙印。レールを走る労働者は与えられた幸福モデルの範囲で生き、外れたものは貧困、あるいは独自の幸福モデルを生きる。案外、後者の方がイキイキとした人生を送っていて、教育格差の上位者は、その優越感の代償として、社会による都合の良いイメージ、それによる搾取の累進性に踊らされているのかも知れない。

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2023/01/31

地域によってあらがえないほどの「子どもの質」(言い方が正しいとは思わない)に差があることは明らかである。 ○○市でしんどい学校は△△学校だよねと言った会話は誰しも1度はしたことがあるはず。 しかし、ここを世間的にオープンにしてしまうことは結果として差別を助長しかねないから賛成し...

地域によってあらがえないほどの「子どもの質」(言い方が正しいとは思わない)に差があることは明らかである。 ○○市でしんどい学校は△△学校だよねと言った会話は誰しも1度はしたことがあるはず。 しかし、ここを世間的にオープンにしてしまうことは結果として差別を助長しかねないから賛成しかねる。 一方、教育に携わる人は作者の言う通り知っておく必要があるでしょう。保護者や地域のニーズが地域によってまるで違うからです。

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2023/01/04

教育は正解がないからこそ最善の道を模索し続けなければならない。また、どれだけ手を尽くしても格差が0になることはあり得ないため、その事実を心に留めておくことも必要であろう。 ✏学校教育には教育機会の平等化装置として格差を縮小する機能があるといえる。 ✏教育は誰もが何らかの実体験...

教育は正解がないからこそ最善の道を模索し続けなければならない。また、どれだけ手を尽くしても格差が0になることはあり得ないため、その事実を心に留めておくことも必要であろう。 ✏学校教育には教育機会の平等化装置として格差を縮小する機能があるといえる。 ✏教育は誰もが何らかの実体験を持っているので自説を持ちやすい。どんな見解であったとしても白黒つけることは難しく、大半の教育論はその性質から完全な肯定も否定もできない。 ✏個別化制作の「効率」性の高さという「正しさ」に酔うだけではなく、その政策の「差異化」機能が格差を拡大する可能性を意識することで、「個別化を推進しながら、なんとか格差にも対処できる方策を同時に打てないか」と議論を進めることができる。 ✏学校現場では個人間の差異が表面化しないよう「平等」を重視する傾向がある。ここでの「平等」は「同じ扱い」を意味し、処遇を変えるのは差別の温床とされてきた。この帰結は明快だ。学力格差は縮小せず、学習努力など行動格差は拡大している。 ✏学校をコミュニティに開くといった議論もされ始めて久しいが、社会経済的にどんな地域かによって学校が使える資源量に格差があるため、それに伴って生徒が得られる便益に学校間格差が生まれる。 ✏「同じ扱い」の義務教育があるからこそ「機会の平等」という舷窓が流布していると解釈することもできる。「平等な機会」が付与されているのであれば、最終学歴・職業・収入・健康などあらゆる社会的に構成される「結果」は個人の責任となり、社会福祉政策は「能力」の低い「弱者」に対する「お情け」となる。 ✏望ましいとされる椅子の数が限られている以上ら目の前の子供を笑顔にすることはできても、それは目に見えないどこかの誰かの涙と落胆を引き起こす行為である。教育政策・制度を議論する際、労働市場との繋がりも含めて、この選抜機能という現実に向き合う必要があるのだ。 ✏学校を構成する最大の要素は生徒が「誰」であるかだ。カリキュラム、教育手法、伝統などの特色と進学実績を関連付けて議論する有名進学校の校長インタビュー記事が散見されるが、「どんな生徒がその高校に通っているか」を考慮すると、学校の効果はとても小さい。 ✏低SESの子どもたちの可能性に投資しないことで、私達は潜在的な損失を受けているかもしれない。

Posted byブクログ