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教育格差 の商品レビュー

3.8

65件のお客様レビュー

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2022/12/04

日本は生まれた社会的な階層や地域によって歩む人生が最初から異なる凡庸な格差社会であり「自己責任」で済ますことは統計データからは許されない。教育格差を教職課程の必須科目にと言う著者に同意するし教育や子ども支援に関わるすべての人はまず本書を手にしてみるべきでしょう。どう分析しても格差...

日本は生まれた社会的な階層や地域によって歩む人生が最初から異なる凡庸な格差社会であり「自己責任」で済ますことは統計データからは許されない。教育格差を教職課程の必須科目にと言う著者に同意するし教育や子ども支援に関わるすべての人はまず本書を手にしてみるべきでしょう。どう分析しても格差社会であることがデータで延々と示される前半は苦痛かもしれないがそれでも知るべきだし、教育政策や制度を語る上で「自由」や「平等」がすでに存在している「格差」にどのような意味を持つのか、誰しも一家言持ちたくなってしまうテーマだからこそ議論の前提として知って欲しい。

Posted byブクログ

2022/09/28
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※このレビューにはネタバレを含みます

前半2/3ぐらいはSSM調査の結果を示すことに費やされているが、冗長な上、解釈にも慎重な姿勢が目立っているので読んでいてちょっと疲れる。 著者の主張は最後の一章。われわれには生まれによってそれぞれに異なった「ふつう」が与えられる。子供のまわりの「みんな」もそれぞれ階層化されており、日本全体の平均とは全く異なっている。「みんな」に合わせているうちに進学していく子もいれば、大学進学が珍しい高校に入学する子もいる。 スタート地点である親のSES・教育度が小学校時代の学習時間、学校への親の関与率、通塾率、メディア消費時間(YouTubeなどを眺めたりする時間)、大学進学率、、、とその後も格差を全く縮めることなく引き継がれていくという。 これを打開するには「平等」な教育の廃止、すなわち、同じ学校の同じクラスにいるから、と同じ教育を与えるのでなく、能力別の教育によって優秀なものは優秀さを追求するシステムが望ましいという。現代の日本のように、独自の価値判断や自由な風潮を強調して学校教育の間だけ表向きの平等を維持したとしても、最終的に労働市場に出た時には労働市場の価値基準で評価されることになる。

Posted byブクログ

2022/09/16

出身地域・親の学歴によって子どもの最終学歴は異なり、それが収入、職業、健康等様々な格差の基盤となる、そうした教育格差はどの社会にもどの時代にも存在することをデータを基に立証しています。 日本では、1970年代半ばに高校進学率が9割を突破し、2009年には四年制大学の進学率が5割を...

出身地域・親の学歴によって子どもの最終学歴は異なり、それが収入、職業、健康等様々な格差の基盤となる、そうした教育格差はどの社会にもどの時代にも存在することをデータを基に立証しています。 日本では、1970年代半ばに高校進学率が9割を突破し、2009年には四年制大学の進学率が5割を超えました。しかし、(70~80年代のデータがないので立証は難しいですが)「大衆教育社会」と呼ばれるその頃からSES(社会経済的地位)による影響が強まる階層化社会は始まっていたことは、当時の実態から伺えます。そして、教育意識の地域格差は2000年代以降確実に拡大しているのです。 アメリカの研究によると、中流家庭は「意図的養育」、労働者階級・貧困家庭は「放任的養育」と称される子育てロジックを持つことが分かっています。具体的には「日常生活の構造化(習い事参加・テレビ視聴時間の制限等)」「大人との議論・交渉の奨励(論理的な言語・豊富な語彙)」「学校等との交渉(子どもに便宜を図るため)」等への介入です。 親が大卒であるかということが世帯収入や子どもの学力に大きく影響しますが、その格差は未就学時より存在し、子どもの成長と共に拡大傾向にあります。また、地域格差も大きく、私立中学進学率は三大都市圏の両親大卒層で高く、特に都内の区部中学では、両親大卒層で公立中学に通う生徒の割合は53%、両親非大卒層で88%だとのことです。また、学習量、メディア消費量、親の学校関与度合いなどの「ふつう」度合いは学校間で異なります。高校になると、高ランク校が高SES校、低ランク校は低SES校であることは自明の事実です。そして、どの国においても、高学歴は高収入であることがOECDの調査でも分かっています。 私たちはデータを冷静に分析して改善を図らねばなりません。例えば、過度な受験戦争、詰め込み教育、画一教育を問題視して転換された「ゆとり」教育ですが、1990年当時さえ、中学3年生であっても毎日2時間以上勉強していた生徒は20%に届かなかったそうで、「受験地獄」が局所的な体験に過ぎなかったことが分かっています。教育改革のやりっ放しが多くの子どもの可能性を潰しているのです。 著者は、分析可能なデータを収集し研究知見に基づいた実践の拡散と、教育格差を教員免許取得の必修科目にするなどの改善を提言しています。 夏に受けた研修で話題に上がったため読んでみましたが、この根深い問題が私の生きている時代に改善されることはあるのだろうかという暗澹たる思いと、事実を受け止めて意識していかないと何も変わっていかないと鼓舞する思いが交錯しました。

Posted byブクログ

2022/10/19

 子供が受け取れる機会は、親が与える環境による格差がある。これが公共教育で埋められない学力差を産んでいることをデータを基に示された本。  また、その格差を意識せず、あの子は頭が良いから良い大学に行っていい職に着く、と済ましてしまうことは、公平平等であるべき公共教育の瑕疵であると整...

 子供が受け取れる機会は、親が与える環境による格差がある。これが公共教育で埋められない学力差を産んでいることをデータを基に示された本。  また、その格差を意識せず、あの子は頭が良いから良い大学に行っていい職に着く、と済ましてしまうことは、公平平等であるべき公共教育の瑕疵であると整理された本。  第1〜5章までは社会調査データにより、上記の内容が複数の側面から検証されている。しかし同じ結論の主張が繰り返し説明されるため、正直退屈で読みづらい。  第6章は、前章までの経緯を総括したうえで筆者の意見を述べられている。面白くて読みやすい。教育は、全員に良い機会を与えるべきである。一方で教育後に就く仕事は、席の数が決まっているため、教育が平等にレベルアップするほど、その後の競争は過酷になることに言及されている点が印象に残りました。

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2022/05/05

事実に基づいて、教育格差について知ることができる本。解決できた社会はないが、よりベターな方向に向かう作者の姿勢が好印象でした。 以前『教育という病』という本を昔読んだのですが、その本と共通して、データをとってちゃんと検証することが必要と書かれていました。当たり前だとは思うんです...

事実に基づいて、教育格差について知ることができる本。解決できた社会はないが、よりベターな方向に向かう作者の姿勢が好印象でした。 以前『教育という病』という本を昔読んだのですが、その本と共通して、データをとってちゃんと検証することが必要と書かれていました。当たり前だとは思うんですが、こと日本においては教育となると個人情報がからんで継続的なデータ取得と結果のトレースは行われていないようです。 面白いと思ったのは、 学校に求められているのは、「教育(子供が社会に適用できるようにする)」と「選別(能力によって格付け、適切な進路に割り振る)」の2点だということ、学力テストを行い、適切な偏差値の高校や大学に割り振るというのは当たり前といえば当たり前なんですが、あまり気にしたことはなかったです。 また世界的にみて、日本の高校制度というのは、学力で分けるという意味で特殊だという点ですね。ほかの国の教育制度と比べることがないので意外でした。ちなみに日本の教育格差は、世界的にみて普通にあって。緩い身分社会といえるそうです。 また、だれでも聞けばわかるとは思うのですが、公立小学校、公立中学校においても、学校間で大学進学や学習に関する常識(「普通大学いくやろ」とか、「普通は就職して、優秀な奴が大学は行くんや」みたいな)や、親がどういった文化資本や、資本を持っているかは違っていて、それによって学校間の学力格差は存在しているんですが、学習指導要領に従っているので、公立学校間の学力に差はないと誤認している人がいるようです。 その誤認によって、勉強ができないことが自己責任になっているということが書かれていました。 教育だけにかかわらないとは思うのですが、「自由と効率」と、「平等」はトレードオフの関係にあります。学習進度別のクラスを設ければ、優秀な人はより優秀になるので、「格差」はより拡大しますし、みんなに同じ画一的な教育を与えると優秀な人の学習効率は下がります。教育制度を考えるときには、その制度がどちらに立脚した制度なのかを意識して、その制度が誰を軽視したのかを意識しておくことが大事というのはなかなか響くものがありました。 また、以前どこかに、「教育の機会平等が徹底された場合、遺伝子レベルで進路が決まってしまうディストピアが来る」と書いたのですが、まさにそれについて、遠い先のことを、今の不平等を放置していい理由にはできないといったことが書いてあり、ちょっと赤面しました。 教育格差について格差社会の勝ち組といわれる、早大生に教育することによって、格差を助長している。つまり私の手も血に染まっているのだ。と書かれているあたりに真摯さを感じたりしました。

Posted byブクログ

2022/01/14

非大卒の友達と会って話しますか? この問いに「あんまり、、、」もしくは「非大卒でくくるなんて差別的だ!」と思うのであれば 絶対にこの本を読んでください。 ただ、 大学にいった方がよい、偏差値の高い学校にいった方がよい、家庭教師をつけたり、塾に通わせた方がよい というメタメッセージ...

非大卒の友達と会って話しますか? この問いに「あんまり、、、」もしくは「非大卒でくくるなんて差別的だ!」と思うのであれば 絶対にこの本を読んでください。 ただ、 大学にいった方がよい、偏差値の高い学校にいった方がよい、家庭教師をつけたり、塾に通わせた方がよい というメタメッセージがある本です。 そこに関しては問い直す必要があると思います。 『学歴の経済学』とセットで読むのがおすすめです。

Posted byブクログ

2022/01/13

データや同じ単語の繰り返しになるのはテーマ上しょうがないし、それだけ説得力はある。 生まれが学力や進学先に影響してくるのはもちろん、考え方(そもそも子供が大学に行きたい、と思うかどうか)にも関わってくるのは、当然と言えばそうだけれど残酷 . この教育格差を完全に消すのはた...

データや同じ単語の繰り返しになるのはテーマ上しょうがないし、それだけ説得力はある。 生まれが学力や進学先に影響してくるのはもちろん、考え方(そもそも子供が大学に行きたい、と思うかどうか)にも関わってくるのは、当然と言えばそうだけれど残酷 . この教育格差を完全に消すのはたぶん難しくて それ自体よりももっと危険なのは、格差が広がることで「学力が高いことで得られた数字やレッテルが、その人の価値や幸せを決定づける」という風潮が助長されることだと思う。

Posted byブクログ

2021/11/30
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※このレビューにはネタバレを含みます

データで環境による学力格差を表した。学力格差を埋めるために、データをもっと収集し、教職課程で教育格差の履修を提案している。 現在の日本の学校の機能は、学校という集団社会での生活方法を伝えること、学力によって選抜することである。 1990年代までは、地方の方が教育意識が高かった。しかし、現在は、三代都市圏内の方が高い。また、教育環境が不利な状況からでも、大卒になる人が多かった。現在は、教育環境が不利な状況の人は大学になりにくい。つまり、教育格差は拡大している。 幼児教育期 親が大卒以上である場合の方が意図的教育をする傾向にある。→親が高学歴であるほど、子どもの教育に関するスタートが早い 例 良い音楽を聞かせる、子どものテレビ視聴時間が短い、生活の中で時間管理をしている など 小学校 親の学歴によって、世帯収入は、子どもが大きくなるにつれ拡大。→教育にかけられる金額も変わってくる。また、学校間で格差がある。学校によって、「当たり前」「ふつう」といった感覚に差が生じているのである。 そのため、意図的養育に差がある 例 読書量の差、大学進学への期待度に大きな差、習い事、メディア視聴時間 など

Posted byブクログ

2021/10/12

研究者の本だなぁと思った。リアルだとめっちゃ早口で喋りそう。あとユーモアを交えた例えが良くわからん。 けども書かれていることは素晴らしくて、難病の病理を突き止めようと様々なエビデンスを用意してくれているし、分析も的確かと。人は生まれによって踊る舞台が決まっていて、教育制度もそれ...

研究者の本だなぁと思った。リアルだとめっちゃ早口で喋りそう。あとユーモアを交えた例えが良くわからん。 けども書かれていることは素晴らしくて、難病の病理を突き止めようと様々なエビデンスを用意してくれているし、分析も的確かと。人は生まれによって踊る舞台が決まっていて、教育制度もそれを助長するシステムに自ずとなってしまっているということよね?まぁそうだろうなぁを間違いなくそうですと言い切れるようになるにはとても労力がいることだし、研究の成果としては十分だと思う。 ただそれを承知で言わせてもらえれば、日本の教育制度はそれでも平等だと思う。別に入学金が払えないから低層の学校に行かされるわけでもなく、同じ教科書、同じ出題範囲で競うステージが用意されている以上、仮に進学校に通えなくても「やらなかった自分が悪い」と自分を責めることができる。生まれが違ったからだなんて如何ともし難い不条理を嘆き悲しむことがない。それって相対的でなく絶対的に平等じゃない?努力して勉強すればどっかしらには進学校はあるし、先生捕まえて理解しきればセンター試験だってまぁまぁ取れるでしょ。たかだか学生に自分の人生の舵取りの責任をすべて背負わせる訳にはいかないけど、それでも社会や他人のせいになんてできないよね?かっこわりーだろそれ。それを言わせないだけの同調圧力はむしろ若者の間に根強い気がしてる。 でも著者の言う通り、トラッキングできるデータの拡充や教育格差の科目を教員養成プログラムに盛り込むとかは至極肝要なことだと思います。

Posted byブクログ

2021/09/06

教育政策学の権威である著者による、日本に蔓延る「教育格差」を論じた著作。豊富なデータとファクトをベースに、淡々と日本にある「生まれ」によって分断された社会を論じていくのが特徴的。 父親が大卒の子供は80%が大卒となり、父親が非大卒の子供は35%が大卒となる。このように、親の学歴...

教育政策学の権威である著者による、日本に蔓延る「教育格差」を論じた著作。豊富なデータとファクトをベースに、淡々と日本にある「生まれ」によって分断された社会を論じていくのが特徴的。 父親が大卒の子供は80%が大卒となり、父親が非大卒の子供は35%が大卒となる。このように、親の学歴・親の収入・居住圏等の「生まれながらの性質」によって子供の進路が決まってしまう。 論調が淡々としているだけに飽きが来る本ではあるが、教養として非常に価値が高い。良書。

Posted byブクログ