慈雨 の商品レビュー
刑事を定年退職後、手がけた事件の被害者の供養のため四国巡礼の旅に出た神場。 しかし本当は、同行する妻にも信頼するかつての部下にも打ち明けられないもう一つの動機があった。 ある事件の第一報を耳にしたとき、その心の奥底に秘めたものが再び痛みを伴って神場を襲ってきた‥。 実直な神場だか...
刑事を定年退職後、手がけた事件の被害者の供養のため四国巡礼の旅に出た神場。 しかし本当は、同行する妻にも信頼するかつての部下にも打ち明けられないもう一つの動機があった。 ある事件の第一報を耳にしたとき、その心の奥底に秘めたものが再び痛みを伴って神場を襲ってきた‥。 実直な神場だからこその強い悔恨。苦しむ神場を支える家族にもまた秘密がある。 残酷な事件を追うミステリーでありながら、お遍路の神聖で静謐な雰囲気が作品を貫き、清々しい読後感だ。
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贖罪…という言葉がずっとテーマとしてある様な作品でした。現役から退いた元刑事がお遍路参りをしながら、過去の過ちと現在起きている事件との関連を感じ、罪と向き合ってそして事件の解決へと進んでいく。 最後はあっけなかったなぁという感じはあったけど、重たい、やり切れない事件と空気がずっと...
贖罪…という言葉がずっとテーマとしてある様な作品でした。現役から退いた元刑事がお遍路参りをしながら、過去の過ちと現在起きている事件との関連を感じ、罪と向き合ってそして事件の解決へと進んでいく。 最後はあっけなかったなぁという感じはあったけど、重たい、やり切れない事件と空気がずっとあったので、良かったかな。
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読み応えのある小説でした。 定年退職後、妻とお遍路の旅に出た元刑事が旅先で知った幼女殺人事件は、かつて捜査にあたった 16年前の幼女殺人事件と酷似していた、ところから始まる話。 前半はお遍路旅に絡めて、人生の苦しさや不条理が散りばめられ、とにかく重苦しい雰囲気です。 ただ後半、そ...
読み応えのある小説でした。 定年退職後、妻とお遍路の旅に出た元刑事が旅先で知った幼女殺人事件は、かつて捜査にあたった 16年前の幼女殺人事件と酷似していた、ところから始まる話。 前半はお遍路旅に絡めて、人生の苦しさや不条理が散りばめられ、とにかく重苦しい雰囲気です。 ただ後半、その雰囲気をかき分けるように元刑事のかつて共に働いた刑事さんたちとの絆であったり、彼らの刑事としての誇りや魂が静かに、熱くジワジワと迫り出してくる様子に心を動かされました。 もうちょっと読みたかったんですが、このぐらいがちょうどいいんだな、って感じの美味しい一皿のような読後感です。『慈雨』がスパイスのように後味となって効いていました。
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警官を定年退職した男(神場)は、なぜお遍路の旅に出たのか。 それは、彼がかつて捜査した事件と同じ、少女を誘拐し辱める事件にまつわるものだった。 彼は推理をしない。 事実を一つ一つ積み重ね、確固たる証拠をもとに、加害者を捕まえる。 しかし、その積みあげた証拠の中に、危ういものが混...
警官を定年退職した男(神場)は、なぜお遍路の旅に出たのか。 それは、彼がかつて捜査した事件と同じ、少女を誘拐し辱める事件にまつわるものだった。 彼は推理をしない。 事実を一つ一つ積み重ね、確固たる証拠をもとに、加害者を捕まえる。 しかし、その積みあげた証拠の中に、危ういものが混ざっていた。 この逮捕は正当だったのか? それを、警察、検察、裁判所の怠慢と言えるのか? おかしいと思いながら、それ以上の証拠がなければ、そうせざるを得なかったのではないか? いや、証拠能力のないものを容認すること自体が罪なのか。 正義とは目に見えない。 だから私は正義を問い続けたい。 法律とは正義を体現しようとするものだけれども、どんなに頭のいい者が作ったとしても、法には穴がある。 だから後世の人間は必死で繕うのだ。 物語は、司法の限界について考え、「前科前歴」への思い込み、そして救いについて考えたが、二つの同様の事件については、もう少し解決の道筋を知りたかった。 問題を提起した点が良かっただけに、ミステリーの解決部分が弱いように感じた。
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退官後の神場が妻とお遍路しながらの 過去の冤罪かもしれない事件と 現在起きた事件との交錯。 なかなか重い話だったけど お遍路とか、退官後の刑事とか 設定が珍しく、興味深く読んだ。
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所謂警察物と呼ばれるジャンルを読んだのは初めてかも知れ無い。 捜査の現場と四国八十八ケ所の場面が交互に展開され主人公の人生も交錯していく。 長い刑事人生の一点の雲をやがて娘婿となる後輩刑事が晴らしてくれるとは。 何を悔いて生きているのかは己れにしかわからないものだと思う。
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非常に興味深く楽しめた。 本作は、警察ミステリー小説というよりも警察官を定年退職した元刑事の生き様を描いた人間ドラマと言った方が良いだろう。 僕は、柚月裕子氏の小説を読むのは『盤上の向日葵』に続いて2作目なのだが、著者の描く中年男の渋みというか、その格好良さは、実際に中年男の僕...
非常に興味深く楽しめた。 本作は、警察ミステリー小説というよりも警察官を定年退職した元刑事の生き様を描いた人間ドラマと言った方が良いだろう。 僕は、柚月裕子氏の小説を読むのは『盤上の向日葵』に続いて2作目なのだが、著者の描く中年男の渋みというか、その格好良さは、実際に中年男の僕から見てもほれぼれする。女性作家でありながら、よくもまあここまで中年男の心情をつまびらかにできるなぁと。 「無骨で朴訥。必要最低限のことしか話さない。そして人生にくたびれながらも、その根底に秘める正義への情熱は消えることがない」 こんな渋くて格好いい中年刑事を描かせたら日本一なのではないだろうか。 本作は、群馬県警を警部補で定年退職し、四国八十八ヶ所霊場をめぐる巡礼の旅に出る神場智則を主人公としている。交番勤務や駐在所勤務、そして長年勤めた刑事としての人生を振り返りながら、妻の香代子と共に一つ一つ寺院を回る。 そんな旅の途中で、神場は幼女殺害事件の発生を知る。その事件は16年前、自らも捜査に加わり、犯人逮捕した事件に酷似していた。 16年前の事件の犯人は現在も刑に服しているはずである。しかし、この16年前の事件には群馬県警が明らかにしていなかった秘密があった。絶対に明らかにできない秘密が・・・。 刑事を退職した神場の警察人生が、本小説を紐解くにつれ、少しずつ明らかになっていく、振り出しの交番勤務から、警察に協力的でない非常に閉鎖的な土地での妻と二人での住み込みの駐在所勤務。そして、刑事に取り立てられてからの神場の刑事人生。決して順風満帆ではない警察人生であったが、何とか定年まで勤め上げられたのは、本人の努力もさることながら、妻を始めとした周りの人たちのお陰であった。 そんな悔いのない警察人生であったが、一つだけ、そしてとてつもなく大きく、彼の警察官としての存在価値を覆してしまうような、妻にも言えない秘密を神場は抱えていた。それが16年前の幼女殺人事件。 退職した自分には、当然捜査はできない。 半年前までは県警捜査一課のベテラン刑事として活躍し、数多くの事件を解決してきた。そして今、16年前の幼女殺人事件に酷似した事件が発生した。 ひりつくような焦りを感じる。 しかし、もはや警察官でない自分は何もできない。 もし、自分が今刑事なら当時と同じ轍は踏まない。必ず真犯人を逮捕することができるのだが・・・。 自分にできることは、捜査一課の刑事である後輩の刑事から現在の捜査状況を聞くことぐらいだ。 捜査状況は芳しくない。ジリジリとした焦燥感を感じる。 神場は焦りと後悔とふがいなさを感じながら八十八ヶ所の霊場を巡る。 そのようななか、他のお遍路達との出会いや、妻との会話、そして自分の内面との対話を通じて、神場は自分の人生とは何だったのかを悟っていく。 柚月裕子氏が描く、退職刑事の悲哀と人生における喪失と再生の物語。 傑作である。
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西国巡りをしてるので、お遍路さんのあたりは読みやすかった。今と過去を振り返りながら、事件が絡んでくるのも よかった。柚月裕子さんは、検事シリーズを最初に読んだので こういう話はとても新鮮で、楽しかったです。
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初読み作家さんです。本屋さんに行くと平積み本の中から「読め、読め」と言ってくる本ってのがあるので、情報も取ってない、未知の作家なのに。思い入れかもしれませんが、これ、当たるんですよね。 ***** 警察官を退職した主人公が、四国八十八か所遍路を歩いてするのですが、なかなか...
初読み作家さんです。本屋さんに行くと平積み本の中から「読め、読め」と言ってくる本ってのがあるので、情報も取ってない、未知の作家なのに。思い入れかもしれませんが、これ、当たるんですよね。 ***** 警察官を退職した主人公が、四国八十八か所遍路を歩いてするのですが、なかなか興味深いのはその2か月間、共に遍路して歩いているかのように読み進める趣向になっていること、でもそのお寺お寺の様子など、くどく説明していないのがいいことです。夫婦で歩むのですがその夫婦の間合いもいいですね。 思うところがあるからお遍路を思い立つのであって、主人公も冤罪を許してしまった、警察官として後悔があったのです。そこにそのかかわった事件に似た幼女誘拐が進行形で絡んでいくのです。 穏やかなミステリーですが、幼児が行方不明になって殺されてしまう残酷な事件は、リアルでも後を絶たないです。当事者はどんなにつらいでしょう、しかし、捜索する警察関係者たちもどんなに苦労するのかがよくわかります。ほんと、慈雨のように後からこころに染みてきます。 ***** 上記を書いてから、柚月裕子さんを検索。ご活躍の作家さんではありませんか!ま、わたしも読書好きといえどもなかなか手が回らないということです。
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直前に読み終わった「なにかが首のまわりに」に頭も心も支配されすぎていたからか、ちょいと楽しめなかった。行間ぎっしり、考え込むことなしに読める本。どこかで聞いたような類の話が寄せ集まっていた感があるけれど、だから例えば読書をあまりしない人にはおすすめかもしれない。
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