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タコの心身問題 の商品レビュー

3.9

57件のお客様レビュー

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2024/07/07

ヒト以外の生き物がどう世界を認識しているのか、ちょっと自分の外に意識が出るような感覚を与えられる ヒトのような脳がないはずのタコが知性を持つ不思議が印象的。 ちょくちょく進化生物学の話が入ってきて、知性と関係なく思えるところの詳細が多く、読むのがしんどいところも。

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2024/06/12

神経系が非常に複雑に発達すると結果として意識が生じると直感的にも考えられるが、知性や認知力が鳥類や大型哺乳類などの脊椎動物とは別の進化系統であるタコやイカなど頭足類でも起きたということは非常に興味深い。脳で中央集権的な制御をしいる前者に対し、タコに代表される後者は分散的で全身に神...

神経系が非常に複雑に発達すると結果として意識が生じると直感的にも考えられるが、知性や認知力が鳥類や大型哺乳類などの脊椎動物とは別の進化系統であるタコやイカなど頭足類でも起きたということは非常に興味深い。脳で中央集権的な制御をしいる前者に対し、タコに代表される後者は分散的で全身に神経が張り巡らされており、触手一本一本が脳を持つと言われることもある。タコになるとどんな気分なのかを想像し、はるか古の単細胞生物からの進化史を思考実験的に味わうことができる本。著者は生物学者ではなくてスキューバが好きなオーストラリアの哲学者であるというのがまた面白い。

Posted byブクログ

2024/03/21

この本を読む前と後でタコの印象が大きく変わり、なんだか愛着を感じるようになった。すぐにでも生きてるタコを見に行きたくなる。 心身問題について論じる本はたくさんあるけど、下手に哲学的なものよりも、この本を読むほうが有意義かもしれない。単に知識が増えるだけではなく、これから先の生き物...

この本を読む前と後でタコの印象が大きく変わり、なんだか愛着を感じるようになった。すぐにでも生きてるタコを見に行きたくなる。 心身問題について論じる本はたくさんあるけど、下手に哲学的なものよりも、この本を読むほうが有意義かもしれない。単に知識が増えるだけではなく、これから先の生き物との関わり方が変わるかもしれない。少なくともタコが痛みをどのように感じているか、考えずにはいられなくなる。

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2024/03/16

まず本書はタコメインではあるが同じくらいジャイアント·カルトフィッシュが良く出てくるので頭足類を主軸と捉えても良さそう。 哲学者が書く、思考や知覚に焦点を当てた進化論の本でもあるし、タコなどの頭足類という不思議な生き物たちへの愛を綴る本でもある。 本当にタコという生き物は面白い。...

まず本書はタコメインではあるが同じくらいジャイアント·カルトフィッシュが良く出てくるので頭足類を主軸と捉えても良さそう。 哲学者が書く、思考や知覚に焦点を当てた進化論の本でもあるし、タコなどの頭足類という不思議な生き物たちへの愛を綴る本でもある。 本当にタコという生き物は面白い。あれだけ大きな目があるのに色覚は無さそうだし、色を変えるのは必ずしも擬態だけではないし、足は味覚だけではなく、個々でも動く、まるでタコの身体は指揮者のいるジャズバンドのようなものであったり。 心、本書では知覚·思考をすることを指すと思われるが、その進化を語るときは哲学的になるものだとは思う。数値化が難しく、感覚的に語るものになりがちだから仕方ないことだが、この手のものは生物学者が書くよりも哲学者が書くほうがこの点はわかりやすいかもしれないなと本書を読んで感じていた。 あと学者の方でもない限り、今後の人生で一番ジャイアント·カルトフィッシュという単語に目を通すことになる。

Posted byブクログ

2024/03/09

メモ→ https://x.com/nobushiromasaki/status/1766277974020755576?s=46&t=z75bb9jRqQkzTbvnO6hSdw

Posted byブクログ

2024/05/03

驚いたことにタコやイカは色の識別ができないらしいのだ。どうしてあんなに周囲に合わせて色を変えて擬態したり、威嚇のために体の色を変えるのだろう。 なんと、目による知覚で脳が指示するのではなく、皮膚細胞そのものが、周囲の色を感知して自律的に変化しているらしい。 これは“多くの動物では...

驚いたことにタコやイカは色の識別ができないらしいのだ。どうしてあんなに周囲に合わせて色を変えて擬態したり、威嚇のために体の色を変えるのだろう。 なんと、目による知覚で脳が指示するのではなく、皮膚細胞そのものが、周囲の色を感知して自律的に変化しているらしい。 これは“多くの動物では、脳と身体が明確に分かれるが、タコはその区別とは関係のない世界に生きている”ということの1つの証左なのだろう。 かといって、これはタコが感覚刺激だけで行動する、考えない動物だということではない。タコはじっくり目で見て観察してタコ同士や人間同士を区別できるし、食べられないものを使って遊ぶこともできる。 タコがあまりにも賢いため、つい擬人化したくなるが、タコは人や猫やカラスの親戚ではない。 なにせ、身体の中でどこからどこまでが脳なのかそもそも正確に定義できない、人を含む脊椎動物とは認知の仕組みが大きく異なる生き物なのだ。 筆者は生物学と神経心理学の面でタコを追求し、ダイバーとしてタコを愛する。しかし、哲学者たる筆者の面目躍如と感じるのは、ホワイトノイズから意識へと題された4章と、ヒトの心と他の動物の心の6章である。 極単純な進化的に初期の動物の中では、主観的経験はホワイトノイズに近いものだった。とりあえず常にざーと言う音が聞こえている状態に例えられる。その中で、痛みや快感といった根源的な感情、すぐに何かの反応を必要とするような感情が最初に生まれたのだろう。 これは既に主観的経験を獲得しているといえる。 主観的経験とは、「自分の存在を自分で感じること」という意味だ。別にヒトの特権ではない。 例えば、電気信号を発する魚は、主観的経験による認知がなければ、自分が発してている電気信号なのか、誰かが発した電気信号なのかの違いがわからない。つまり多くの動物たちは、主観的経験を備えているのだ。そうするとどの段階で、私たち人間が持っているような『意識』に近いものが生まれたというのが次の問いだ。 その道筋は1つではないだろう。ホワイトノイズから単純な形態の主観的経験、そして意識へと至る道は、進化の試みの中でいくつもあるはずだ。 帯びにも書かれた『進化はまったく違う経路で、心を少なくともニ度作った』ということ。 ではヒトの心と動物の心の違いを考えていくと、様々なレベルの意識が動物に備わっている中で、人間は高次思考ができる。 簡単にまとめると、「自分の思考についての思考」だ。 例えば、“なぜ自分は今、これほど機嫌が悪いのか”ということを人は考える 高次思考を行うためには、内なる声(インナースピーチ)が必要だ。言語は、コミュニケーションのための唯一の手段ではないのは事実だ。実際単純な言語手段しか持たない動物が複雑なコミニュケーションをとっている例はいくらでも見つかる。 しかし高次思考をするためには内なる声が必要であり、内なる声を獲得するためには言語化が必要である。ここが恐らくヒトの心に生じた特異性なのだろう。 “私たちは自分に向かって何かを問いかけることも多いし、自分に向かって説明や忠告をすることも多い。これは心に浮かんでは消える意味のないたわごとではない。 私たちの内面では絶え間なくおしゃべりが続く。そのおしゃべりから逃れるためには、瞑想の必要を感じるぐらいだ。” ここではちょっと苦笑する。 寿命を進化論で論じた章や、まだ見知らぬ海で起きている進化の壮大な実験など、読みどころが多くて学びの多い一冊であった。

Posted byブクログ

2024/02/02

タコやイカは知性が高いと言われている。進化樹の中でははるか昔に枝分かれした人類とタコであるが、異なる進化の中で神経系をそれぞれで発達させているのが興味深い。人間は脳で集中制御しているのをタコでは腕部にも脳のような機能があるなど、違いはあるもののタコにはタコの心があるようだ。また、...

タコやイカは知性が高いと言われている。進化樹の中でははるか昔に枝分かれした人類とタコであるが、異なる進化の中で神経系をそれぞれで発達させているのが興味深い。人間は脳で集中制御しているのをタコでは腕部にも脳のような機能があるなど、違いはあるもののタコにはタコの心があるようだ。また、もし異星人が存在するのであれば、独自進化した異星人の心を知るためにもタコの心を研究するのは有意義だ。まずはタコになった気分を考えるというのは面白い思考実験になりそう。こんなことを考えられるのも人間の特権のようなのだけど。何冊か類書を読んだうえで、この本にたどり着いたが、読みやすくて分かりやすい。

Posted byブクログ

2024/01/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

知らないことばかり,びっくりすることばかり。 タコやイカの寿命は1〜2年しかないらしい。 海は生命と心を生んだ場所で,心は海の中で進化した。 その海が酸性化しているらしい。 ジュンク堂からの新刊「メタゾアの心身問題」の案内でこの本をしって図書館から借用。

Posted byブクログ

2024/01/18

タコの知性、なんて考えたことなかった。 それが、読んでみて驚き! 研究用に飼育しているタコが人の顔を一人ずつ記憶していて、嫌いな人がくると水をかける。 水槽の中の電球をわざと壊して遊ぶ。 食べ物でないものにも純粋な好奇心で近づいてくるように見える。タコの方から人間に近づいてきて...

タコの知性、なんて考えたことなかった。 それが、読んでみて驚き! 研究用に飼育しているタコが人の顔を一人ずつ記憶していて、嫌いな人がくると水をかける。 水槽の中の電球をわざと壊して遊ぶ。 食べ物でないものにも純粋な好奇心で近づいてくるように見える。タコの方から人間に近づいてきて,時には,探るように腕を伸ばしてくることさえある。手をつないで散歩をしたダイバーもいるらしい。 海は身近な小宇宙、というけれど、 ここまで知性をもつ動物がこの小宇宙にいたとは。 しかもイルカやクジラではなく、無脊椎動物ですよ?! 脊椎動物と無脊椎動物が枝分かれしたのは6億年前。 タコと合流することは、まさに「宇宙人との交信」しているようなものなんだと思う!

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2023/07/05

科学史、科学哲学という分野。概念的な哲学ではなく、科学からスタートする意識の探索は、ある意味分かりやすくて面白い。タコを中心に頭足類の観察からの考察だ。 他の無脊椎動物と比べても、頭足類の神経系の規模は異常に大きく、短期記憶と長期記憶に明確な区別があり、目新しいものや、食べること...

科学史、科学哲学という分野。概念的な哲学ではなく、科学からスタートする意識の探索は、ある意味分かりやすくて面白い。タコを中心に頭足類の観察からの考察だ。 他の無脊椎動物と比べても、頭足類の神経系の規模は異常に大きく、短期記憶と長期記憶に明確な区別があり、目新しいものや、食べることはできずすぐに役立つわけではないものに興味を示し、コウイカにはREM睡眠らしきものがあるなど、人間の知性との類似点も見られるのだそうだ。 「身体化された認知」というのは面白い。脳だけではなく、身体も賢さの一部を担っていて、周囲の環境がどうなっているか、それにどう対処すべきかという情報は、実は身体にも記憶されていると考える。例えば手足の関節のつくりは、歩行などの行動を自然に生むようになっている。適切な身体をもっていれば、正しく歩くための情報のかなりの部分がそこに記憶されている、と。 頭足類のコミュニケーションを考察しながら、いったい何のためにこの信号(色が変わったりすること)を発しているのか?理由があるはず、と著者は考えるが、受け手となる相手がいなくても、なんだかつぶやいているような…という未だ解明されていない部分が神秘的で、素人にも面白い。 この本の原題は、”Other minds”. マインドという言葉を心、知性ととらえると、その境目はあいまいだ。著者のいう「主観的経験」、~になった気分、という考え方は面白かった。生きものの寿命も、持っている特徴も、すべてを「進化」というものさしの中で測る。ゴールも方向もない、試行錯誤を繰り返す生きものたちの中に人間もある。こうやって相対的に捉えて傲慢にならないことが、今の人間にとって一番大事なのかもしれない。

Posted byブクログ