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タコの心身問題 の商品レビュー

3.9

60件のお客様レビュー

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  2. 4つ

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2024/01/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

知らないことばかり,びっくりすることばかり。 タコやイカの寿命は1〜2年しかないらしい。 海は生命と心を生んだ場所で,心は海の中で進化した。 その海が酸性化しているらしい。 ジュンク堂からの新刊「メタゾアの心身問題」の案内でこの本をしって図書館から借用。

Posted byブクログ

2024/01/18

タコの知性、なんて考えたことなかった。 それが、読んでみて驚き! 研究用に飼育しているタコが人の顔を一人ずつ記憶していて、嫌いな人がくると水をかける。 水槽の中の電球をわざと壊して遊ぶ。 食べ物でないものにも純粋な好奇心で近づいてくるように見える。タコの方から人間に近づいてきて...

タコの知性、なんて考えたことなかった。 それが、読んでみて驚き! 研究用に飼育しているタコが人の顔を一人ずつ記憶していて、嫌いな人がくると水をかける。 水槽の中の電球をわざと壊して遊ぶ。 食べ物でないものにも純粋な好奇心で近づいてくるように見える。タコの方から人間に近づいてきて,時には,探るように腕を伸ばしてくることさえある。手をつないで散歩をしたダイバーもいるらしい。 海は身近な小宇宙、というけれど、 ここまで知性をもつ動物がこの小宇宙にいたとは。 しかもイルカやクジラではなく、無脊椎動物ですよ?! 脊椎動物と無脊椎動物が枝分かれしたのは6億年前。 タコと合流することは、まさに「宇宙人との交信」しているようなものなんだと思う!

Posted byブクログ

2023/07/05

科学史、科学哲学という分野。概念的な哲学ではなく、科学からスタートする意識の探索は、ある意味分かりやすくて面白い。タコを中心に頭足類の観察からの考察だ。 他の無脊椎動物と比べても、頭足類の神経系の規模は異常に大きく、短期記憶と長期記憶に明確な区別があり、目新しいものや、食べること...

科学史、科学哲学という分野。概念的な哲学ではなく、科学からスタートする意識の探索は、ある意味分かりやすくて面白い。タコを中心に頭足類の観察からの考察だ。 他の無脊椎動物と比べても、頭足類の神経系の規模は異常に大きく、短期記憶と長期記憶に明確な区別があり、目新しいものや、食べることはできずすぐに役立つわけではないものに興味を示し、コウイカにはREM睡眠らしきものがあるなど、人間の知性との類似点も見られるのだそうだ。 「身体化された認知」というのは面白い。脳だけではなく、身体も賢さの一部を担っていて、周囲の環境がどうなっているか、それにどう対処すべきかという情報は、実は身体にも記憶されていると考える。例えば手足の関節のつくりは、歩行などの行動を自然に生むようになっている。適切な身体をもっていれば、正しく歩くための情報のかなりの部分がそこに記憶されている、と。 頭足類のコミュニケーションを考察しながら、いったい何のためにこの信号(色が変わったりすること)を発しているのか?理由があるはず、と著者は考えるが、受け手となる相手がいなくても、なんだかつぶやいているような…という未だ解明されていない部分が神秘的で、素人にも面白い。 この本の原題は、”Other minds”. マインドという言葉を心、知性ととらえると、その境目はあいまいだ。著者のいう「主観的経験」、~になった気分、という考え方は面白かった。生きものの寿命も、持っている特徴も、すべてを「進化」というものさしの中で測る。ゴールも方向もない、試行錯誤を繰り返す生きものたちの中に人間もある。こうやって相対的に捉えて傲慢にならないことが、今の人間にとって一番大事なのかもしれない。

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2023/01/15

著者は熟練ダイバーでもあるそうだが、「オクトポリス」でのタコに手を引いてもらった(と感じた)体験、ジャイアントカトルフィッシュという種のイカとの交感の描写が、実らない愛を感じさせ切ない。 頭足類が地球上の動物の中で極めて特殊な位置づけの生き物であることに改めて感心。ボリュームあり...

著者は熟練ダイバーでもあるそうだが、「オクトポリス」でのタコに手を引いてもらった(と感じた)体験、ジャイアントカトルフィッシュという種のイカとの交感の描写が、実らない愛を感じさせ切ない。 頭足類が地球上の動物の中で極めて特殊な位置づけの生き物であることに改めて感心。ボリュームあり読むのはちょっと大変だが良書。 P10 頭足類を見ていると「心がある」と感じられる。それは何も私たちが歴史を共有しているからではない。進化的には互いに全く遠い存在である私たちがそうなれるのは、進化が、全く違う経路で心を少なくとも二度、作ったからだ。頭足類と出会うことはおそらく私たちにとって、地球外の知的生命体に出会うのに最も近い体験だろう。 P13 よい哲学は日和見主義だ。つまり、どのような情報であれ、どのような道具であれ、役に立ちそうであればすべて利用するということだ。 P40 クラゲのように上下の区別はあっても左右の区別はない構造の動物を「放射相称動物」と呼ぶ。一方、人間、魚、タコ、アリ、ミミズなどは「左右相称動物」と呼ばれる。【中略】元来、左右相称の身体は、移動に向いている。またこの身体の構造は、ほかにも多くの複雑な行動に適していた。 P65 タコは、ラットやハトなどに比べてはるかに、自分でこうしようという考えを強く持っているようである。【中略】タコの行動にどうも「いたずら」の要素が多くあり、また彼らには多分に狡猾な面もあるようなのだ。 P80 脊索は動物の背側にあり、身体の中央を貫く。瀬木作には神経が通り、一方の端には脳がある。一方、頭足類は、それとは大きく違った身体の設計、違った種類の神経系を進化させる。脊索動物の神経系を中央集権型だとすると、頭足類の神経系はそれよりも分散型だと言える。(はしご状神経系)【中略】頭足類の場合は(食道が)脳の中央を貫いているということだ。その位置関係はあまりにもおかしいように私たちには思える。そこは絶対に脳があってはならない場所だと感じるのだ。 P88 タコには余計なことをするだけの、内面の能力の余剰があるようだ。 P92 タコの身体には決まった形というものがなく、変貌自在だ。可能性のかたまりだと言ってもいい。決まったかたちを持ち公道をある程度決定する身体を持つと、そのためのコストが発生する一方で利益も得られるが、タコにはどちらもないということになる。多くの動物では脳と身体が明確に分かれるが、タコはその区別とは関係のない世界に生きている。 P163 ヒヒはメロドラマのような生活を送っており、おそらくストレスも多い複雑な社会にいる。にもかかわらず、情報を発信するための手段は非常に貧弱だ。反対に頭足類の場合、社会生活は非常に単純なもので、したがって言うべきことも非常に少ない。にもかかわらず異様なほど多くの表現をする。 P174 言語が思考のための重要な道具であることは間違いない。そして内なる声はただ泡のように無意味に湧いているわけではない。しかし、秩序だった思考をするのに言語が絶対に必要だとまでは言えない。言語は複雑な思考を一手に引き受ける媒体というわけではないのだ。 P191 皮膚に現れる色や模様は、たとえどれほど複雑なものであっても受取り手のいない一方通行のものである。頭足類は、自らの発する色や模様を、人間が言葉を聞くように認識するわけではないのだ。 P194 頭足類の多くは、その寿命の短さに比してあまりに大きく、あまりに賢いと言える。タコが卵からかえって2年以内に死んでしまうのだとしたら、彼らの高度な知能は一体何の役に立っているというのだろうか。 P253 この地球上では、少なくとも2回、同じような能力が、全く別のところで無関係に生まれ、進化したということである。【中略】頭足類は、独立して進化を遂げたにもかかわらず同じようなmindを持った非常に不思議な生物だ。昔から、異星人の想像図はタコに似た姿になっていることが多かった。偶然にしてはできすぎている。(訳者あとがき)

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2022/12/25

スキューバをしながらオクトポリスというホタテの貝殻に敷き詰められたタコ達の住処や生態を眺め、哲学や生物学の授業を受けているようだ。タコを擬人化してその知性を探りながら、読書中、私自身の意識は海底にある。ダンゴムシに心があると言われれば、それはこじ付けだと感想を述べながら、タコに知...

スキューバをしながらオクトポリスというホタテの貝殻に敷き詰められたタコ達の住処や生態を眺め、哲学や生物学の授業を受けているようだ。タコを擬人化してその知性を探りながら、読書中、私自身の意識は海底にある。ダンゴムシに心があると言われれば、それはこじ付けだと感想を述べながら、タコに知性があると言われれば、それなら分かる気がすると興奮しながら一気読み。また面白い本に出会えた。 カンブリア爆発と呼ぶ生物多様性を生む時期より前、エディアカラ紀にも多様な動物がいた事がわかってきた。6億年前だ。カンブリア爆発は、生物同士の関係性、被食者と捕食者の競争により激化したと考えられる。攻撃や防御の手段、海中を泳ぐ進化を遂げ、その樹形図を辿りタコは生まれた。 タコのニューロン数は5億と人間の1000億より少ないが、犬にかなり近い。頭が良い。ビンの蓋を開けたり、巣穴を記憶できる。カラスのように遊んだり、仲間同士で戯れるような仕草も見える。人間の顔を区別する事もあるらしい。しかし、タコの寿命は1から2年。知性の機構を持つ必要があるのか。こういう話の展開は面白い。 著者は哲学者らしく、その切り口でも知性を探る。ダニエル・カールマンはシステム2思考(人間が意識的に行う速度の遅い思考の事)、システム1思考(習慣や直感に頼る高速思考)を分類したが、そもそも心の声、言語無く思考が可能かという点まで論が及ぶ。人間の失語症患者にも心はある事を例示し、必ずしも言語は必要条件にならぬ事を説明。 知覚と運動、思考を司る脳を持ちながら、思考の果てにも自我は見抜けず、何のために生きるのかという主客転倒な哲学を時々考える。1年や2年でその命を終えるタコからすれば哲学など無意味か。無邪気な好奇心を8つの腕に託すその生き様に、考えさせられる。

Posted byブクログ

2022/09/05

まず、頭足類─タコやコウイカの観察があり、その後、知性 とは何か、何をもって意識とするかという科学的哲学的考察 に続き、さて頭足類に意識はあるのだろうか?と問う。簡単 に結論が出る問題ではないし、これからも観察研究が必要 なのは当然なのだが、何となく中途半端で終わっている感じ が...

まず、頭足類─タコやコウイカの観察があり、その後、知性 とは何か、何をもって意識とするかという科学的哲学的考察 に続き、さて頭足類に意識はあるのだろうか?と問う。簡単 に結論が出る問題ではないし、これからも観察研究が必要 なのは当然なのだが、何となく中途半端で終わっている感じ がしてしまった。進化の過程上、哺乳類・鳥類・頭足類と 別々に三カ所で意識が生まれたとすれば、それは偶然では なく、意識が生まれるのが進化のひとつの帰結なのかもしれ ないと想像するのは楽しかったが。あと、カラー口絵もある が、やはり動画で見たくなる。検索しまくりました(笑)。

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2022/08/28
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※このレビューにはネタバレを含みます

わたしの小さい頃、宇宙人をタコのように描くのが一般的だった記憶がある(息子には知らないと言われたが)。表紙のタコと目があってしまい手に取ってしまったが、この本を読み進めると、その記憶が40年経って結びついてきて知的な興奮を覚えることができた。 タコ、コウイカなどの頭足類は元を辿れば人間などの哺乳類と同じ。姿かたちは全く違うが、実はmind(この本では「心」と約されているが、日本語の心とは意味がやや異なる)を持っているなどの共通点があるという。生物の進化の神秘さを感じながら、コミカルなタコの意識の深淵に思いを馳せ、ついつい引き込まれてしまう。 さらにオーストラリアの巨大イカの色を発するシーン、頭足類の色を発することの意味などは人間などにはできない芸当であり、とても興味深い。そして寿命の短さを知り、知性と弱肉強食の世界での生き残りにエネルギーを割いたがゆえに燃え尽きるように死んでしまうのだろうかと思ってしまった(長生きのタコもいるようだが)。 訳者のことばが秀逸。わたしたちは宇宙に生きる生物の神秘のことを考えることがありますが、ちょっと海にいけば人類とは異なる知性が生息していると。タコを知ることで人類の進化についても考えることができる。とても良い本です。 この著者もなかなかユニークです。難しそうなテーマを扱いながら、海や頭足類への愛情を包み隠さず描く。別の作品も読みたくなる。

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2022/03/19

星10個あげたい! タコたちの楽園 オクトポリス この場所で、タコに「意識」が生まれる?! 全てのものは、連続的である。 人間が意識を持ち、言語を獲得したのも、 偶然の連続であり、突然空から意識が降ってきた わけではない。 タコは、人間と同じかそれ以上のニューロンを 持つと...

星10個あげたい! タコたちの楽園 オクトポリス この場所で、タコに「意識」が生まれる?! 全てのものは、連続的である。 人間が意識を持ち、言語を獲得したのも、 偶然の連続であり、突然空から意識が降ってきた わけではない。 タコは、人間と同じかそれ以上のニューロンを 持つという。人間にできて、タコにできない理由は ない。たまたまその機会に恵まれなかっただけ。 その機会を得たかもしれないのだ。 それこそがオクトポリス。全ての条件が揃った タコの楽園。 10万年後の地球は、タコ新生か?

Posted byブクログ

2021/08/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

オクトポリスの話がとても興味深かった。生命の死や進化についてもタコという一種の視点から覗き込むような構図も勉強になる。 意識の、哲学部分については読者自身が知識不足のため、関連する知識分野の概要を理解してから再読したい。

Posted byブクログ

2021/04/17

頭足類の多くの寿命は1~2年。その理由は殻を備えていない無防備さからくる淘汰圧によるもの。タコには約5億個にニューロンがあり、個人を識別できるくらい賢い。読んでるとタコが食べたくなる。

Posted byブクログ