希望が死んだ夜に の商品レビュー

天祢涼(著者)

2020/09/19

この作者の二作目。若い人かと思ったけどそうでもない。
ミステリとしても、世情を反映したものとしても、読まされてしまった一作。もっとこの人の本が読んでみたい。

2020/09/15

もしこんなことが実際にあったなら、とてもやりきれない。
つらく切ないラストだった。

同級生を殺害した疑いで警察に拘束され、取り調べを受ける冬野ネガ14歳。
殺害されたのは、誰からも好かれ、クラスの人気者だったのぞみ。二人に接点はなく、ネガがのぞみを殺す具体的な動機が見当たらない。
捜査一課の真壁は、どうやら署では変わり者扱いされている生活安全課の仲田という女刑事と組んで、この事件の真相を突き止める。

違和感は最初からあった。
ネガって本当はどんな子なの？知れば知るほど彼女が好きになっていく。じゃあ何故こんな事件を起こしたの？

生活保護を受けるということに対して、世間一般の目は冷たい。
わたしも恐らくそのうちの一人だと思う。
時間があるなら働けばいい。仕事を選り好みするから、そういうことになる。何もしないでお金がもらえるなんてうらやましい。
とか。
でも、そういうわたしを含む世の中の風潮がこういう悲しい子どもたちを生むのかもしれない。

elephant in the room.
誰もが気付いている大きな問題を、関係者全員が見て見ぬふりをすること。

2020/08/26

すごい。悲しいけど美しくて切なくて苦しい、、。余韻がすごい。貧困(というか社会)の問題は誰しもが何らかの形で関わっていて、むしろ当事者で。全く同じ人間がいないように、自分が知る世界が全てではないこと。他者の思いに心を馳せること、想像することがわたしたちでできること。この世界は悲しみで満ちている、でも明日の希望を信じて、誠実に優しく生きていきたいと思わされる。真壁刑事の変化に心揺さぶられた。

2020/08/23

「希望が死んだ夜みたいに真っ暗なこの国でー」
女子中学生が同じクラスの女子中学生を殺した動機とは。あまりにも悲しい結末と驚きの事実が明かされていく様子はミステリーとしてまとまりがよく楽しめた。しかしこの話はただのミステリーではないように思える。この物語の裏に流れるテーマは現在のこの国の闇の部分であり、ただのフィクションとは言いきれないのかもしれない。この事件を題材に筆者が訴えたかったものを考えさせられる。

2020/08/16

最後までどうなるのか分からなくて、読むのを止められなかった。

親友という言葉が温かくてぴったりの2人で、お互いを想い合う気持ちが本当に切ない。
そして、貧困についても色々考えさせられる。

いい本でした。

2020/07/01

主要人物
･真壁巧(まかべたくみ)刑事部捜査一課
･仲田蛍(なかたほたる)生活安全課少年係
･冬野ネガ(とうのねが)女子高生
･春日井希(かすがいのぞみ)女子高生

人は複雑に色んな人と絡まっていて、
それが真実をぼやかしてしまう。

ネガちゃんが初めて見つけた本当の友達。
痛みも弱さも分かち合い、心の根っこの部分で分かり合えるだいすきだった彼女との約束。
最後の最後まで信じたかったネガちゃんの心情が、
ひしひしと痛いほど伝わってくる。声に出ない声が本から届いた。

一方で、長谷川のあまりに自己中心的で、一方的な押し付けが招いた事件の全貌に唖然とした。

結末は変わらなかったかもしれない。
のぞみちゃんが同じ運命にあったのなら、苦しい思いをしないで済んだだけ良かったのかもしれないとも思ってしまった自分もいた。

期待させたと言ってたのぞみちゃんの謝罪の言葉。
そこには嘘はなくて、フルートから苦しみもがきながら見つけた光だったんだよね。「私も見つけられたから、あなたも大丈夫だよ！」って、ネガちゃんに伝えたかったんだよね。

ポロポロとピンクが剥がれていく心を、色んなもので心のようなものに魅せてたけど、最後には壊れてたことに気付いてしまったんだなぁ。

2020/06/02

一気読み。これは……ヤバい。読ませるなー。

内容的にはちょっとご都合主義感があるけど（貧困家庭の子がこんなに一ヶ所に集まるものかな……？関係者ほとんどシングルってのはちょっと不自然）グイグイ引き込んで最後まで読ませる構成力と文章力はすごい！！

でもって、子供たちの親が本当にロクでもないなぁ……と思いつつ、環境考えたら仕方がないような気もして、しかも死別とかとなると、本当もうそれは避けることができないわけで、いつ自分がそうなるかもわからないわけやし……って悶々とした。

ラストもなかなかな終わり方。マジかー。

もうちょい先を書いてくれたら良かったような気もするんだけどなぁ……というか、真壁刑事を城戸はどうするんだろう？電話つながらないままだよね？

2020/05/30

2020/5/29

地味で貧乏な中二のネガが、クラスメイトのお嬢様のぞみを殺した。その動機は？

貧困問題に言及したかったんだろうな。
貧困は自己責任って本当によく言われることだと思う。真面目な人ほど、その言葉に胸を痛めて助けを求められない。

本当の動機はちょっと、、そんなことで殺されたのぞみが哀れでならない。

2020/04/10

同級生を殺害したことを自白し、しかし動機については頑なに口をつぐむ14歳の少女・ネガ。彼女にいったい何があったのか、現代社会の問題を交えた痛切なミステリ。
テーマは貧困。だけど、彼女たちは貧困ではあるけれど、住む家はあるし食事もまあできるし、学校には通えるし親に暴力を振るわれているわけでもありません。まだまだ恵まれているじゃないか。もっと過酷な環境の人たちもいくらだっているんだし、もっと頑張ろうよ。……なんてなことをさらっと言えてしまう人たちは、決して薄情なばかりではないのだろうけれど。それこそ「わかってない」んだろうなあ。
それでも彼女たちが大人なら、乗り越えられたのかもしれません。だけど14歳でこの絶望は、あまりにつらい。世界の終りのように思えても無理はないかも。だけどそんな中、精一杯に友達を思いやった彼女の強さがあまりに悲しいものでした。この強さを違う方向に向けられていたら、違う未来があったのかもしれないのに、と思えばやり切れません。

2020/03/29

こんなに夢中になって読んだのはいつ以来だろう。中身がぎゅっと詰まってる。素晴らしい伏線回収。二転三転のどんでん返し。何度でも読みたいと思える作品。2人の刑事のキャラが引き立っている。想像力は人を救う。