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彼女の家計簿 の商品レビュー

3.8

98件のお客様レビュー

  1. 5つ

    18

  2. 4つ

    40

  3. 3つ

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2021/10/16

ここ最近で原田ひ香さんの小説を数冊読んで、そのたびに目のつけどころの面白さが生きた軽妙洒脱なものを書く人だなと思っていたんだけど、この本はちょっと趣が違って戦中・戦後に生きる女性の姿を織り込んだ作品。でもやっぱり、いままでの面白さとは別の意味で面白く思うところの多いいい小説だった...

ここ最近で原田ひ香さんの小説を数冊読んで、そのたびに目のつけどころの面白さが生きた軽妙洒脱なものを書く人だなと思っていたんだけど、この本はちょっと趣が違って戦中・戦後に生きる女性の姿を織り込んだ作品。でもやっぱり、いままでの面白さとは別の意味で面白く思うところの多いいい小説だった。 この小説には3人の女性が出てくる。戦中・戦後を生き、東京・谷中で食堂を営んでいた加寿。啓という娘を育てるシングルマザーの里里。水商売の女性のセカンドキャリアを支援するNPOの代表であり恋愛がらみで過去の傷をもつ晴美。3人ともが自分の過去を引き受けながら、半ば贖罪のように清貧な生活をかたくなに営んでいる。 印象的だったのは、彼女たちそれぞれにかかわった男たちの不実さであり勝手さであり、自分と関係のある女性への無理解さ。ああ、こういうこと世のなかにあふれているよなあと思った。女性が打算的って、この本のなかでもそんな自嘲的にそんな表現が出てくるけど、生きるってそういうもんじゃないだろうか、必死に生きるほどに(ま、必死に生きなくても打算的になるけどね)。それに対して、啓の父親はその存在を知ってか知らずかまったく影を現わさないし、晴美の元カレは刃傷沙汰があったことを忘れたかのようにしゃべりセールスする。加寿の夫は人生の不条理に負けてるし、木藤氏はやさしいけどやっぱり女性は自分が守るものと思ってる……。男たちって現世を生きたり、人の気持ちを思うことがほんとにできないんだなと思うばかり。 この小説の言わんとするところって、加寿の「私は仕事がしたいんだ」ってところじゃないかと思う。守られたり不自由なく過ごすことが幸せなんじゃなく、自分で自分の道を切りひらきながら生きていきたいという女性がいる。そんな女性の強さを3人の女性を通じて表しているのだと思う。 ちょっと気の毒なのが偏屈な里里の母親。親に捨てられたと思いながらけっこうな年齢になって、実は愛されていたことを知るのって、ある意味つらかろうと思った。 戦中・戦後の家計簿のメモに加寿は、自分の一人称を「加寿」って書くんだけど、そんなことってあるかい、と思いながらもそういう考証への疑念を吹き飛ばしていい小説だった。

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2021/10/07

最後の一文を読んで、私も「よし。」と声が出てしまった。 なんかすっごく自分の目の前にあるごちゃごちゃが 女性のごちゃごちゃが 整理整頓された感じ。

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2021/08/26

初読みの作家さん。 シングルマザーの里里のもとへ、疎遠にしている実母から届いた大きな封筒。その中には、加寿という、祖父の妻らしき女性が戦前から書いていた家計簿が入っていた。 備考欄に書かれた独白に引き込まれながら、彼女の、そして自分自身のルーツを探っていく。 この加寿という女性...

初読みの作家さん。 シングルマザーの里里のもとへ、疎遠にしている実母から届いた大きな封筒。その中には、加寿という、祖父の妻らしき女性が戦前から書いていた家計簿が入っていた。 備考欄に書かれた独白に引き込まれながら、彼女の、そして自分自身のルーツを探っていく。 この加寿という女性は果たして、心中したと聞かされていた祖母なのか…?と、謎解きをするように読み進め、少しずつ真実に近づいていくので引き込まれます。 なんと言うか、人の強さや弱さみたいなものを描く力が素晴らしくて、登場人物に対して「この人嫌いだな」「好きだな」という感情を抱いたりするものの、その背景にあるその人の弱さ、それがどこからくるものなのか、などもよく描かれているので読者の感情をシンプルな好悪に留まらせない巧みさがあるような気がしました。 誰もが過去で傷を負っている。 傷と向き合いながらひたむきに生きている。 その生きざまは人それぞれで、なんだかとても尊いもののように感じたのです。 傷ついた経験と向き合う中で、あるいは目を背ける中で、他者に対して貢献的になる人もいれば、排他的になる人もいるし、結果として思いがけない見方を他者からされる人もいる。何が正しい、というのではなく、みんな一生懸命で、そんな強さや弱さも含めて「人間だなあ」と何度も感じるのでした。 彼女の他の著作もぜひ読んでみたい。偶然手にしてよかった1冊でした。

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2021/08/17

家計簿に書かれた日記を紐解きながら、母子家庭の里々が、女性を助ける団体の晴美と心を通わせつつ、日記の筆者である祖母とのつながりを感じ取るという内容。その祖母に置き去りにされたことになる母朋子が変人になっている設定がいまひとつストンと来なかったが、まずまずの良作。

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2021/07/18

原田ひ香の本は推理小説のよう。この先どうなる?読みだしたらとまらない。 そうして知らなかったことをいろいろと教えてくれる。キャラクターがみな歴史を持っていて、だれもがお話の主人公になりそう。これは原田ひ香の手法だろうな。

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2021/06/13

強く生きていく女性たちが時代を超えて物語の中に綴られていく。戦時中の辛い世の中で仕事をしながら子育てをし、夫を支えるかず、シングルマザーとして生きていく心優しいかずの孫、りり。 どの女性たちも強く優しく逞しい。 読み終わったときには自分自身もよし、頑張ろうと思える一冊。

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2021/01/11

1人で働きながら子育てをしている女性。片や独身で、弱き女性を助ける事を仕事としている女性。古き家計簿の繋がりで、其々が自分の過去と向き合う。 家計簿から見えて来る、その家計簿をつけていた女性を含め3人の女性の生き方に、女性としての逞しさを感じる。

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2021/01/09

以前から気になっていた作家さん。何せ、名前のインパクトがすごい。なぜ、「ひ」がひらがななのだ…。あと、何とお読みするのだ…。 (そのまま、はらだ ひか、でよかった) たぶん図書館の蔵書リストに入っていてリクエストしたんじゃないかと…。 いや、違うかな、蔵書リストから同一作家リス...

以前から気になっていた作家さん。何せ、名前のインパクトがすごい。なぜ、「ひ」がひらがななのだ…。あと、何とお読みするのだ…。 (そのまま、はらだ ひか、でよかった) たぶん図書館の蔵書リストに入っていてリクエストしたんじゃないかと…。 いや、違うかな、蔵書リストから同一作家リストを眺めていて気になってリクエストしたんだったか…。 どっちでもいいけど、めちゃくちゃ面白かった。 面白かったというか…。 とりあえず、「また、読破したい作家さんに出会えた!」と、いうか。一冊しか読んでいないからまだはっきりは言えないけど、それでも、他のタイトルも読んでみよう。っていうか、年末の爆借り(何やねんそれ)でもう一冊別タイトルも借りている様子。 (あんまりにも冊数が多すぎて、自分が何を借りたのか把握しきれていないふしも…) 面白かったわりに付箋は一枚もない。先を知りたくて夢中で読んだなあ。 正直言うと、里里ちゃん(こちらも名前のインパクトがすごいな)や晴美さんの過去にはあんまり興味がないというか、だってそれ以上に和寿さんの人生が壮絶すぎるでしょうよ!!! 大正生まれの女は強い、を、見た気が…。笑 でも、激動の昭和を生き抜くためには強くないとこれは無理やな。これは無理。 そしてあらためて、昭和初期の女性蔑視の風潮は怖いぐらいやなと。 よくこれが、数十年で現状まで変わってくれたよ。 今でも大概やなと思うけど、数十年、いやまあ、約100年かな、前のことを思うと素晴らしい。 女性蔑視時代の何が辛いって、女性も女性を蔑視しているのがしんどいよね。 そしてそれが「当たり前」で、誰も疑わないっていう…。 そういえば「女としての幸せ」よりも仕事を選んだ女性の話をもう一遍読んでるよね(=「みおつくし」)。 それ(仕事を選んだこと)を「気の毒」と、結論づけるような結末がこなければいいな。 そもそも「女としての幸せ」って何よっちゅう話やもんね。 幸せではあるやろうけど、そうじゃない幸せを求める人だっているっちゅう話で、多様化するというのは、しんどいこともあるけど、有難いことも多いなあ。 この本は、仕事を選んだ和寿さんはどうやったのかって、そのへんはこちらで推測するしかないよね。 わたしは、幸せやったと思うことにした。 五十鈴母子も大概アレやけど、家計簿を和寿さんへ送ったところだけは及第点をやろう。(えらそう) あと、里里ちゃんがまじめでえらすぎて「ひええ」ってなった。こんなしなやかに強くてできた女性、格好良すぎるわ。

Posted byブクログ

2020/04/11

家族でも分かり合えない、なのに他人でも繋がる・・ 家計簿を通して違う時代を生きた女性の人生が主人公を変えていく 家計簿が軸になっている話は珍しいなと思い読んでみました。 主人公がこの先母親とうまくやっていって欲しいと思いながら読みました。

Posted byブクログ

2020/01/26

出てくる女性のほとんどに、心を寄せることが出来、あっという間に読み切ることが出来ました。 里里の母親、朋子の気持ちだけは、あまり理解できないと思っていたけど、最後の最後に少し、分かった気がします。 面白かったです。

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