1,800円以上の注文で送料無料

私のなかの彼女 の商品レビュー

3.8

80件のお客様レビュー

  1. 5つ

    18

  2. 4つ

    31

  3. 3つ

    16

  4. 2つ

    7

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2022/02/11

仙太郎の和歌への態度が変わっていくのは、自身にものを作り続けるための土台がないことに無意識か意識があってか感じていたからではないかと思った。和歌も仙太郎も無意識に男女の力関係に囚われていて、はっとさせられる。

Posted byブクログ

2021/10/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

10代からの長い付き合いである彼氏の影響って本当に強い。 私も10代で初めて付き合った人と10年近く続いたけど、そこが自分の常識だった。 別れた後は何もかもが驚きであった。 和歌にとっての仙太郎は永遠のライバルであり物事の基準的存在。 恋人というより仙太郎が全ての目盛りだったのかも。 仙太郎は言うほど悪い人では無いと思った。 和歌と普通に向き合って人生を共にしていきたかっただけでしかない。 和歌が思うほど仙太郎は特別な人間では無かっただけ。どこにでもいる、あたたかい家庭の幸せを求める普通の人だったのだと思う。 攻められてる気持ちになるのは、和歌自身が自分の足りない部分への劣等感が強かったんじゃないかな。 和歌は自分の為に生きる人。 ある意味ワガママ。 仙太郎は周りを気にしながら気を遣い生きる人。 だから、相手の行動も目につくのかなと思う。 子供が本当に楽しみだったのが伝わってきたから、そこはとても悲しかった。 和歌が家族にも話していなかった事を知った時の仙太郎の気持ちはなんとなくわかった。 仙太郎の気持ちが離れたきっかけにもなったと思う。

Posted byブクログ

2021/10/17

本田和歌 わたしは彼女を、この物語の主人公である彼女を、自分の感情に誠実な女性だと思った。 この作品の時代背景は、ちょうどわたしが産まれた頃。 P11「1985年、200人いる和歌の学年で東京の四大に進学したのは、推薦入学をのぞくと28人だった」時代。 男女雇用機会均等法が成立...

本田和歌 わたしは彼女を、この物語の主人公である彼女を、自分の感情に誠実な女性だと思った。 この作品の時代背景は、ちょうどわたしが産まれた頃。 P11「1985年、200人いる和歌の学年で東京の四大に進学したのは、推薦入学をのぞくと28人だった」時代。 男女雇用機会均等法が成立した頃。 しかしまだまだ、女性が寿退社をするのが当たり前の時代。 物語を追うにつれ、『オウム真理教による地下鉄サリン事件』『阪神・淡路大震災』『酒鬼薔薇聖事件』など、実際の出来事も登場し、その時代背景を強化する。 のめり込むように読んだ。 解説で津村記久子さんがおっしゃるように、この作品の面白さ、内容を人に伝えようとすると、P389「どうも普通だな、というような内容になってしまう」。 わたしはだから、「どうも普通だな」というレビューにならないよう、慎重に、作品の言葉をお借りしながら、この作品の面白さを伝えていきたい。 この作品は、本田和歌という一人の女性の、生きた証である。 この作品はフィクションであり、実在の人物や団体とは関係ないかもしれない。けれど、これをフィクションとして片付けられる根拠も、実在した人物ではないという根拠も、どこにも存在しないのだ。 和歌の恋人・仙太郎を好きになれなかった。 P22「贔屓目でなくとも仙太郎は同世代の男の子たちよりは様子がいい。昨今もてはやされている醤油系統の顔立ちで、スタイルもよく服のセンスも悪くない」。 P24「ああ、本当に仙太郎は手の届かないところにいったと和歌はやけに強く実感した。今はただ、遠い存在のはずの人が隣にいることが奇妙に思えてならなかった」。 こういう人は、憧れの人、尊敬できる人として距離をとっておくのがわたしにはちょうどいい。 そして和歌は徐々に、仙太郎がいる場所へ向かってゆく。 P122「仙太郎と対等になれると和歌は思った。もう仙太郎をまぶしく見上げなくてもいい。うっすらといつも感じていた劣等感を脱ぎ捨てたところで向かい合うことが、きっとできる」。 この、憧れの感情がない交ぜになっている恋人と並べたような瞬間は、とても嬉しい。 しかし彼は、並ぼうとしてくる和歌に対して、棘の刺さったボールを投げてくる。ボールの速さは速すぎず、変化球でもない。普通のボールなら受け取れるそのボールは、よく見るとトゲトゲしていて、和歌は受け取る瞬間いつも、取りこぼしてしまう。指に刺さった棘は、いつまでも抜けないし、いつまでも痛い。 (解説ではそれが「未必の故意」という言葉で表現されていて、さすが津村さんの解説は素晴らしい!) だから和歌は、P210「安堵の必要なほどの緊張を、何に対してしているのだろう?」と思ったし、P200「会社を辞めようかと、その日、和歌は思った。辞めれば、受けた依頼の仕事をこなす時間も増える。(中略)けれど、それを仙太郎に告げることを思うと、億劫だった」のである。 角田さんは、恋人間の、毒を孕んだ関係性を描くのがとても上手な方で、この作品においても、それが冴えわたっている。 こんなにも、人と人というのは分かり合えないものなのか。 毒親って言葉も、デートDVって言葉もない時代。 たぶん、これらは和歌のような人が必死に言葉を紡いできたからこそ生まれた言葉なんだろう。 P332「自分は母親を、未だこわがっている。叱られることを、認めてもらえないことを、罵倒されることを、まるで母親に置いてきぼりにされた幼児のようにおそれ、こわがっている」。 P337「恋人の機嫌をうかがい、笑っていれば安堵し、不機嫌なら不安になり、自分の言葉、行動、返答、笑い、何かが暴力の起爆剤になるのではないかと終始気を張り巡らせている語り手の気持ちを、和歌は知り尽くしていた」。 言葉がなかっただけで、存在していた毒親とデートDVを、一生懸命受け止めながら、生きていくということ。 P393「『精一杯生きること』よりも価値のあることなんてあるんだろうか。『自分の人生を生きる』気概とは何か。この小説は、どんな『生き方を教えてあげる』という本よりも精細に、どんな先人の知恵よりもフェアに、そのことを教えてくれる」。 とても苦しい時代だったと思う。 とても生きづらかったと思う。 そこで時代を切り開いていく芯の強さ。その芯を奪う者の存在。 時代が変わろうとする時、そこで苦しむのは、いつだって社会の最前線にいる若者だ。 社会の最前線で、時代を切り開いてくれた方々に、和歌のような女性たちに、わたしは心から感謝を申し上げたい。

Posted byブクログ

2021/08/16

物語の中で時間が進んでいるのに、主人公だけ大学生あたりで止まっているような感覚。カレから離れることができて初めて時間が進んだように感じた。

Posted byブクログ

2021/01/27

登場人物は少ないものの、その人物描写たるや圧巻です。 主人公、和歌、同居人であり彼である仙太郎、和歌の父、母、祖母に至って全ての登場人物が絶えず脳内映像で動いていました。 大学から会社勤め~そして小説家へと悩みながら決断し、その時々で様々な葛藤があり、心が潰れそうになる時...

登場人物は少ないものの、その人物描写たるや圧巻です。 主人公、和歌、同居人であり彼である仙太郎、和歌の父、母、祖母に至って全ての登場人物が絶えず脳内映像で動いていました。 大学から会社勤め~そして小説家へと悩みながら決断し、その時々で様々な葛藤があり、心が潰れそうになる時の和歌の気持ちに共感出来ました。 客観的な意見が欲しい、自分ではどうしようもない そんな経験がある方は大なり小なり和歌の気持ちに寄り添える様な気がします。 スッキリとして無駄な部分がないのも著者の作品の魅力です

Posted byブクログ

2023/07/08

これまでの作品よりも「角田光代らしさ」が際立っている。 もやもや感が強く、イライラもするくらい。 それがまた彼女の作風のいいところでもあるのだけれど。 現実ってほとんどいつもそんな感じだから。 ただ、もうちょっと何とかできたんじゃないか?? 祖母をめぐるミステリーはあまり興味深...

これまでの作品よりも「角田光代らしさ」が際立っている。 もやもや感が強く、イライラもするくらい。 それがまた彼女の作風のいいところでもあるのだけれど。 現実ってほとんどいつもそんな感じだから。 ただ、もうちょっと何とかできたんじゃないか?? 祖母をめぐるミステリーはあまり興味深い展開を見せず、イヤミな彼氏もただイヤミなだけで…深みを感じない。 知らぬ間に自分を縛りつけ抑え込む彼らを、主人公が心理的に乗り越えていく過程にあんまりリアリティがないなぁと感じて、共感できなかった。 作者の自伝みたいな感じなのかな? 秘境を旅する展開なんかは本人の体験を元にしているっぽい気がする。 角田光代に低評価はつけたくないが…。

Posted byブクログ

2020/07/19

「妄想のなかで生きることと現実を暮らすことは矛盾しない」 繰り返しの内省と自問自答のなかでもがき、自分の出した結論に更に疑問を投げかけ、妄想と現実のなかで自らの軸としての祖母が自ら選んだ道を歩んだという妄想に現実の希望を見出していく・・・ 複雑ですっきりと入ってくる話ではあり...

「妄想のなかで生きることと現実を暮らすことは矛盾しない」 繰り返しの内省と自問自答のなかでもがき、自分の出した結論に更に疑問を投げかけ、妄想と現実のなかで自らの軸としての祖母が自ら選んだ道を歩んだという妄想に現実の希望を見出していく・・・ 複雑ですっきりと入ってくる話ではありませんでしたがじわじわと心に染みるお話でした。

Posted byブクログ

2020/04/22

これは、非常に重い。なかなか、生々しいお話。しかし同世代の女性に勧めたい一冊。 憧れの恋人を追いかける姿とか、周りが見えなくなる感じとか、彼が大した男ではなかった、と認めるのも辛いし、生きづらいんだな。。 結果、自分は自分、と生きて行く姿はかっこよかった。

Posted byブクログ

2020/03/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

特に何が盛り上がるわけでもなく、自分でも「なんだかなあ」と思ってるんだけど、読むのをやめられなくて、かなり夜更かしして読んだ本です。不思議。 仙太郎が怖い。 結局、自分の庇護のもとにいたはずの和歌が活躍していくのが許せなかっただけじゃないの? どうやら自分はたいしたことなかったっぽいし。 解説の津村さんの仙太郎評に納得。 祖母が作家だったかもしれなくて、でも母はあまり祖母について話してくれなくて……って設定はおもしろいんだけど、和歌の性格がよくつかめなかった。

Posted byブクログ

2020/03/01

思い通りにはいかない人生をもがきながら進んでいく。おばあちゃんと仙太郎を追いかけて。仙太郎のことは、追い越してしまったのだと思う。

Posted byブクログ