ジヴェルニーの食卓 の商品レビュー
絵を見るだけでは分からない、画家やその周辺の人物の生身の人間としての魅力が詰まっていて、出てくる一人ひとりに愛着がわく小説。 絵が好きな、特に作品に出てくる画家が好きな人は、絶対に読みたい本。 (そうでなくても、十分楽しめるとは思う)
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モネが好きなので表題作の「ジヴェルニーの食卓」が一番楽しく読めた。絵を描く人間にとって、視力を失うことほど怖いことはない。ブランシュは、モネにとって、かげかえのない存在だったのだろう。 明るく、美味しそうな香りでいっぱいの、幸せに包まれた食卓のシーンが素敵だった。
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それぞれの章で、文章の書き方を変えて表現しているところが新鮮であり、すごいなぁと思いながら読んだ。私が後半はややだらけてしまったが。画家のことをまた知れてよかった。
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一度読みにくいなぁと断念していて、楽園のカンヴァスを読んでからアート小説にハマって再トライしたら、スルスルと読めた。 アートに疎かったわたしが原田マハの小説を何冊も読んで、画家たちの交流について知るきっかけが増えたので、小説に出てくる背景も捉えやすくなったからだと思う。 作品は品...
一度読みにくいなぁと断念していて、楽園のカンヴァスを読んでからアート小説にハマって再トライしたら、スルスルと読めた。 アートに疎かったわたしが原田マハの小説を何冊も読んで、画家たちの交流について知るきっかけが増えたので、小説に出てくる背景も捉えやすくなったからだと思う。 作品は品があって、読んでいて想像を張り巡らせて、別世界へ連れて行ってくれた感じ。
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流れるように読める物語。 ほんとうにこうだったのかもしれないと思わされる。 画家もふつうのひとたちなんだな。
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絵に興味を持ち出したきっかけは印象派との出会いだった。 サロンやアカデミーに歴史画や宗教画を出展して、世に認められることが画家の目指すべき姿であった時代に、絵画は最も身近のものあってもいいのではないかと挑んでいった印象派以降の人たち。 そんな画家たちの事実想像をもとに描かれた4つ...
絵に興味を持ち出したきっかけは印象派との出会いだった。 サロンやアカデミーに歴史画や宗教画を出展して、世に認められることが画家の目指すべき姿であった時代に、絵画は最も身近のものあってもいいのではないかと挑んでいった印象派以降の人たち。 そんな画家たちの事実想像をもとに描かれた4つのストーリー。 マティス、ドガ、セザンヌ、モネとそのそばにいる人物。 当時のバレエの風景を描いて、華やかに映って見えるドガの作品だが、実際にはパトロンに見出されるために日々出向いている踊り子たち。 そのうちの1人14歳の踊り子をエトワールにしたいと、本気で挑んだドガ。 14歳の踊り子のヌードであろうと作品のために、少女が売れるために、何でもやってのけるようにドガが見えた、メアリー・カサット。 アメリカから女性という立場でパリに赴き、挑戦したメアリーと、芸術で勝負するドガの信念は同じ方向に向いているように見えて、違うものなのか。 絵画と美術史には残ってない、想像に満ちあふれた物語。 想像だけれども、4人の画家、当時の情景をありありと思い起こさせてくれる原田マハの文章。 これを読んだ後に見る作品たちは、また違って見えるんだろうな。
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【あらすじ】 「美しい墓」アンリ・マティス マリアがマティスの元へマグノリアの花を届けると、マティスに花を生けてほしいと頼まれる。マリアは花瓶を選び、一輪の花を生けた。その様子は《マグノリアのある静物》と同じであった。これを機にマリアはマティスの家政婦として働くことになった。 マティスへの敬慕やピカソとの親交などが語られる。マティスの死後、マティスの集大成であるヴァンスのロザリオ礼拝堂にてマリアは修道女として生涯をマティスに捧げるのであった。 「エトワール」エドガー・ドガ アメリカ人女性画家であるメアリー・カサット視点で描かれた話。ドガが精力的にバレエの作品を製作していた頃が舞台。 当時、貧しい少女はバレエでパトロンに見出され、一発逆転することを夢見ていた。それは芸術家の世界でも同じであった。ドガは「彼女たちは私たちなんだ。」「だから私は描き続ける。星屑のような彼女たちを。星屑ではなく、いつか夜空に輝く一番大きな星になればいいと夢想しながら」と言う。 《14歳の小さな踊り子》 「タンギー爺さん」ポール・セザンヌ パリで具材屋を営んでいた「タンギー爺さん」の娘がポール・セザンヌに宛てた手紙の物語。 タンギー爺さんは、実在の人物をモデルにし、パリで画材屋兼画商を営んでいた。タンギーの小さな店には印象派・後期印象派の無名画家が出入りをし、セザンヌやゴッホも自分の絵画で画材の代金の支払いをしていたという。 《リンゴとオレンジのある静物》
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フィクションとはいえ、美術家の生活が垣間見えるようで とても新鮮。 各ストーリーも面白く、よく考えてると感心する。 心が洗われるような作品。
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たった一つの場面、それをなぜここまで美しく描くことができるのか。 4編収録の短編集で、モネやセザンヌといった芸術家の人生の断片を、彼らの周りの人から描いた短編集。 「うつくしい墓」でマリアが初めて、マティスの部屋に足を踏み入れる場面、表題作の「ジヴェルニーの食卓」の冒頭...
たった一つの場面、それをなぜここまで美しく描くことができるのか。 4編収録の短編集で、モネやセザンヌといった芸術家の人生の断片を、彼らの周りの人から描いた短編集。 「うつくしい墓」でマリアが初めて、マティスの部屋に足を踏み入れる場面、表題作の「ジヴェルニーの食卓」の冒頭でブランシュが目覚める瞬間。 この二つの場面を読んだとき、心がどうしようもなく震えたような気がします。 絵画というものは、一瞬を永遠に閉じ込めるもののような気がするのですが、期せずして芸術家を描いたこの短編集も、同じように美しい場面を、そして語り手の感情を閉じ込め、昇華したもののような気がするのです。それは素晴らしい絵画を見て、思わず息をつくような感覚を、小説で再現したと言えると思います。 読んでからしばらく経ってしまったため、それぞれの短編の印象は薄くなりつつあります。それでもこの二つの場面が美しかった、という事実だけは、自分の中で永遠に残り続けるに違いありません。 筆力はもちろんのこと、キュレータとして裏打ちされた知識、そして何より、原田さん自身の絵画と、芸術家への愛と敬意があるからこそ、描くことの出来た短編集だと思います。
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4人の美の巨匠を、その側にいる人物から描くアンソロジー。美術史にあまり学がない身からすれば少し読みにくい(共感しづらい)部分もあったが、一つ一つの物語としての完成度と何より"印象的な"風景描写に感嘆した。 特に3作目のタンギー爺さんの作品がお気に入り。セザンヌを描くのにセザンヌを登場させず、タンギー親父とポスト印象派の画家たちからの賞賛を、娘に語らせるという形式が非常に良い。淡々とした語りになりがちな手紙の形式でありながら、一つの一つの出来事が生き生きと描かれている。 馬渕明子さんの解説も読みどころ。史家は事実で止まってしまい、後は仮説としてしか描けないが、作家は史実を変えない程度で自由に人物を動かせる。歴史物とは少し違うが同じ魅力が詰まっている。とはいえ、本作は作者の表現力の為せる技であることに間違いない。
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